医療業界で働く専門家たち Vol.1

Profile

大森紀彦(おおもり・のりひこ)

株式会社EM システムズ開発本部 次世代研究統括部長

アルフレッサ株式会社、日立メディカルコンピューター株式会社などでの電子カルテ開発を経て現職。

次の10年を見据えた医療情報ネットワークを構築する

社会人になってから23年間医療に関するシステム開発に従事されていたという株式会社EM システムズの大森氏に、電子カルテやレセコンといったものを含めた医療情報ネットワークについてお話を伺った。

電子カルテはPHRの中核を担う

少子高齢化が急速に進む中で、国家予算97兆円のうち約40兆円が医療費として使われ、2025年には60兆円に膨れ上がると言われています。そこに介護や年金といった社会保障費が上乗せられ、今後起こりうる国家予算の減少も視野に入れると、医療費の増加が国の財政を圧迫していくことは明らかです。そこで、医療費を削減するためにサービスの抑制や、コストの削減が必要になってきます。

弊社はこうした将来に向けて「患者起点で自らの医療情報が確認できる世の中を構築することのお手伝い」を会社方針として掲げています。患者起点の医療インフラの構築と、医療従事者の方々が利用しやすいツールを作ることは、結果的にはイコールです。そうした社会を作るための一つとして、電子カルテの開発を行なっているのです。

日本には、いつどこで医療機関にかかっても1点10円で受診できる素晴らしい国民皆保険制度があります。しかし、医療費が増大する中で、今までと同じ保険制度を維持することが難しくなっています。

現在、自己負担率が3割の医療費ですが、5割~7割支払わなければ行けない時代が近い将来やってきます。そうなれば患者自身が、症状や経済状態を考慮して検査法や処方薬を選択するという状況も生まれてくるでしょう。そこで重要な意味を持ってくるのがPHR(Personal Health Recordsと言われる電子的な記録です。2018 年から開始される医療ID も、単なる電子カルテとしてのEMR(Electronic Medical Recordではなく健康診断や介護に関する記録も含めた、その人の健康に関わる全ての記録です。医療費の負担が増えてくれば、こうした医療データが自分のものであるという認識も強くなってくるはずです。医療費の約半分が人件費であると言われています。

その30 兆円の3分の1、約10兆円程度は、業務の効率化によってカットできると考えられます。そうした効率化で、起点となるものの一つが電子カルテです。現在の電子カルテは、まだレセコン由来の作り方が主流なので、データをインプットするのに労力がかかり、アーカイブされるデータ以外に利便性が少ないのが課題です。しかし、そこを超えていくととても便利なものになる。そのためにクラウド化は必須です。

システム開発の次の段階に向けた試金石

オンプレミス版は、ハードウェアもデータベースも各社指定のものを使用する必要がありソフトも高額です。導入設定においてもインストラクターのサポートが必要 になるので人件費もかかる。そこでソフト はユーザーが自立的にサポートしやすい 仕組みになれば、ここでも人件費を抑え ることが可能で、もっと安くサービスを供 給できるはずです。

電子カルテシステムの革新にともなって、 いつでもどこでもカルテ情報が確認でき るようになり、在宅医療や遠隔診療のシー ンの増加を考えると、業界全体として現 役世代としての頭打ちの時期に来ていて、 今後の研究開発上の必須の要件と捉えています。第三者の不正アクセスや通信障 害といったリスクも、技術の進歩によって、 リカバリーする方法論はいくつでもありま す。実は、クラウドのほうが一番セキュリ ティの高い状態でサーバーを管理してくれ るので安全ですし、一定期間でバックアッ プされるのでリスクは低いのです。

今後、クラウド化にが主流になるのは 確実です。しかし、現在リリースされてい るクラウド版ソフトは、レセコンの部分が オンプレミスのままなので、完全クラウド 版ではありません。上モノである電子カル テはワードとパワーポイントとエクセルを 組み合わせたようなものなので比較的簡 単に作れます。重要なのは、そのデータ を全部受けとめて、請求をデータに構築 し直すという部分です。そこには長年医師 とともにレセコンや電子カルテを作り、知 見を蓄積してきたメーカーのノウハウが必 要になってきます。

また、大前提として、クラウド化を進め るには「患者起点で医療情報ネットワーク を構築していく」という思想がメーカーに なければいけません。数年おきに買い替えなければいけない旧態依然のビジネス 形態を取らざるをえない企業は、クラウド 化に踏み切ることが難しいでしょう。さらに、全国一律に同じサービスを提供でき る販売サポート体制などが既に整ってい る必要があります。このように、レセコン と電子カルテを両方クラウド化するのは、費用面・技術面で非常にコストがかかる のです。加えて、今後は医科と調剤といっ た医療保険だけでなく、新たに介護保険 にも対応できるレセコンであることが重要 になってきます。EMシステムズは介護系 ソフト開発事業にも参画していますので、 社会保障費の計算を全て統合して行える システムを構築可能です。私たちは、こう した条件を全てクリアした真の意味で医 療従事者にとって最高の電子カルテを作 るメーカーの先駆けになると思っています。

電子カルテはオンタイムで稼働させるだ けでなく、数日前に来院した患者さんに 対応したり、患者さんが帰ってからの入力 業務といったイレギュラーな作業が入るの ですが、それに対応しようとすると個々の ソフトのクセみたいなものが生まれてきま す。現行システムの課題を上手く解消しな がら、システムイノベーションを図ろうと するうえで、そうした部分の調整も考慮し ながらアップデートしていく必要性を感じ ています。現在は、データをインプットす るという作業が前提のシステムですが、患 者動態に対応しやすいソフトウェアである ことも理想ですね。

医療におけるIT 化は大きくわけて「業務の効率化」「情報の共有化」「経営の見 える化」の3つがありますが、このすべてを電子カルテが司っています。近年、若い医師を中心に、電カルテやレセコンに 入ってるデータを分析して、経営データとして活用したいというニーズが出始めてい ます。このような情報の二次利用まで踏み 込めると、大幅に医療費の削減に寄与で きるし、国民皆保険制度の維持に貢献できると思います。現在もこうした分析は可 能ですが、非常に手間と時間がかかります。場合によっては業者や会計士・税理士に 依頼することになりますが、医療の現場 を知らない人が分析しても患者動態的な 視点が抜けてしまうということも多いでしょう。

そうしたニーズに応えるために経 営管理ができるPMS(Practice Management System)というものを、今度弊社のレセコ ン融合型電子カルテ「MRN」に搭載する 準備をしているところです。現行のオンプ レミス版でできることを徹底的に良くして いくことが、クラウド版への準備にも繋 がっていきます。その延長線上にクラウド化があるといえます。また、クラウド 化さ れたからといって使い勝手が変わる訳 で はありません。クリニックの先生方が求め ていることは、分厚いマニュアルを読まな くても使える商品です。今は医療制度が 大きく変わっていく過渡期ですが、 私たち は「患者起点の医療情報ネットワーク」と いう発想に基づいたソリューションサービ スを提供できるように、今から少しづつ試 行錯誤してアップデートし、次の10年を 見据えた医療情報ネットワークの 構築に 貢献していきたいと思っています。

↑MRNは「カルテスタイル」と「クラークスタイル」の2つの運用タイプを同じ一つのシステムで利用することが可能で、今までの電子カルテやレセコンの枠組みを超えた様々な診療シーンに対応している。

株式会社EMシステムズ

医療業務処理用コンピューターソフトウェアの開発・販売などを展開。レセコン融合型カルテ「MRN」や調剤システム「Recepty NEXT」介護システム「つながるケアNEXT」など優れた商品開発で注目を集めている。

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