クリニック建築は将来の環境変化を見据えた設計が重要

Profile

内藤 稔(ないとう みのる)

株式会社スーパーワークス 代表取締役社長

丹青社(施工管理)、町の工務店、電通で企画、リーシング(誘致)などを手掛け、電通子会社から、TCワークス(日本経済新聞子会社)へ。有名ブランド店、セガのジョイポリスなどを手掛け、平成9年に、休眠していた亡父の会社で社名を変え再開し独立、約20年医療関係建築分野の専門家として活躍している。医師たちには、歩く食べログと呼ばれている一面も。

クリニック建築は、法律や医療特有の知識を熟知しなければ、対応することができない。建築業界で、長年施工管理を経験、現在はクリニック建築という特化した分野で活躍している内藤氏に、建築、開業において、事前に知っておいた方がいいポイントについてお話を伺った。

医師と誠実に真摯に向き合うことが自社の強みとなる

クリニック建築の仕事への原点は、工務店経営の父親の背中を見てきたこと、また母親も商売をしており、両親とも商売をしていたという家系の土壌もあったせいか、独立心は常にありました。独立した当初は、どのような受注でも受けていましたが、結局会社の強みである特徴を出すことができませんでした。

受注した仕事の中で、クリニックの建築という話があり、医療の面白みを知ることになりました。診療科による違いや同じ診療科でも導線の違いがあり、またクリニック立ち上げへの医師の思い入れなどを加味すると、無限にデザインすることができます。医師の要望を聞き入れ形にしていく中で自分自身の想像を超えるクリニックが出来上がった時や、正解が一つではない点に医療のやりがいを感じています。

知れば知るほど知識が蓄えられ、クリニック建築の受注が増え、特化した分野で経営していくことになり、現在では9割以上が医療関係の受注となっています。弊社は、設計、施工分野の7名で構成され、全員医療関係の建築を行いたいメンバーが集まってきています。また、外注に丸投げせずワンストップで運営しています。

私は、目の前にいる人が喜んでくれる、また悩みを抱えている人のために動けたときが一番の喜びであり、関わった医師と長いお付き合いをさせていただきたいと思っています。そのためには、お客様と誠実に真摯に向き合い、問題解決に取り組んでいくということを私のポリシーとしています。経営のヴィジョンとして社員に自分の姿を見せ認識してもらっています。

余談になりますが、自分自身食べることが好きということもあり、医師たちに美味しいレストランなどを聞かれ答えているうちに、歩く食べログと呼ばれるようになりました。今では医師たちと、予約が取れない店やこれから話題になりそうな店などで美食会という食事会を開催したりしています。これは私の活動の一つで、開拓の日々です。

クリニック建築で知っておくべきポイント

クリニック建築は、医療法施行規則16条から20条までが基本となっていることを頭に入れて開設準備を進行していきます。役所への手続きが多いので医療関係の法律などに精通している人間が必要です。地域や担当者により、対応の違いがあり、それは指導であるのか、要望であるのか、必ず確認する事が必要不可欠です。例えば、保健所に相談に行くと勝手にレイアウトを変えるよう指示される事もあります。そのため、医院開設準備のためのプロジェクトとして、誰がどのような役割を担うのか的確に指示を出す人間を明確にしておくべきです。

導入する医療機器は、設計時に電源容量、搬入などに備えないと、クリニックのデザインができないため、早めに決めておく必要があります。後から変更が入った場合、費用がかさむ可能性もありますので注意が必要です。

テナントで、クリニックとして入る場合は、消防設備をビル全体で入れ替えなければいけない時があります。その場合、どちらが費用を出すのか、ビルオーナーとトラブルになるケースがあるので留意しておかねばなりません。

メンテナンスは、外装において、防水は5年、塗装されている外部手すりは5年、屋上は10年ごとに行うのがよいでしょう。内装においては、排水配管の高圧洗浄(必要なところはバリウムを飲む場所)、ビスの増し締めは年に1回ぐらいです。照明は、LEDにする事で10年近くメンテナンスの必要はありません。定期清掃で、床のワックスで保護層を設け、傷を防ぎます。ドアのゆるみ、吊戸棚、引き出しなどのチェック、蛇口のゴムパッキンなどもチェックしましょう。細かくメンテナンスをすることでトータルコストは下がるということも医院経営には大切です。

医療業界の現状と未来

医師の周辺にいる業者が、医師に正しい情報を伝えていないという危機感があります。また以前に比べ自信を持っていない医師が増えてきているように感じます。これにより誤った情報を伝えた業者の話を鵜呑みにしてしまい、患者さんへの医療サービスの低下に繋がるケースも増えています。まずは経営者としての自覚を持つことが重要であり、全てを業者に任せるのではなく自らの目で現地状況を確認し、診療圏調査、推計患者数だけでは見えてこない実際の自分の感覚を大切にすることが重要になります。私も必ず医師と同行し現地の調査を行うようにしています。

少子高齢化の現代では、医療が悲観的にとらえられている面もありますが、海外から見て日本の医療技術、医療サービスの信頼度は高く、これはインバウンド向けになる新たな可能性があるのではないかとみています。このためにも、クリニック建築はしっかりとしたものにしておかねばなりません。

私は10年後も安定して長く使えるクリニックを視野に入れて、お客様に提案しています。クリニックの内装にも流行り廃りがあります。収納など長い期間が経っても長く使い続けられる、リニューアル、導入機器の入れ替えなど生じる可能性を予測した上でのクリニック建築をこれからも行っていきたいと常に思っております。

株式会社スーパーワークス

医療建築に特化したデザイン、コンサルティングから設計、各種施工、リフォームを行っている。 「ドクターに負担を掛けない」をコンセプトに地域性と診療コンセプトを考え、洗練された内装デザイン、患者の皆様に安心していただける空間、実用的な動線の配置などを提案、提供している。
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