「新・かかりつけ医制度」で規定される診療科目と傷病名_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード28全文書き起こし

Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード28全文書き起こし

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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

オープニングトーク

(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第28回始まりました。大西さん今回もよろしくお願いします。

今日のテーマ:かかりつけ医機能報告制度

(高山) 今日のテーマは、前回の続き「かかりつけ医制度」についてですね。

(大西) そうですね。前回はかかりつけ医全般について取り上げましたが、今回は制度の内容を具体的に掘り下げていきましょう。

(高山) 2025年4月から始まる「かかりつけ医機能報告制度」。どのような報告が求められ、どのような仕組みで機能していくのでしょうか?

(大西) 制度開始前に、どのような内容を報告させるか議論されました。2024年7月に報告書としてまとまったので、それを基に説明します。

簡単に言うと、医療機関は都道府県知事に対し、かかりつけ医機能を定期的に報告する制度です。

報告頻度は年1回。都道府県知事は報告を受け、医療ナビに登録します。つまり、既存の医療ナビがより詳細になる仕組みです。

報告内容の具体例

(高山) 報告内容の核となる部分は何でしょうか?

(大西) 一番重要なのは「何を報告するか」です。大きく分けて二段階の報告内容があります。

まず一つ目の「1号機能」は、発生頻度が高い疾患や日常的な診療を統合的・継続的に行うための機能についてです。

つまり、よくある病気や日常的に必要な診療について、それができる機能を定義して報告します。

これまで専門医は「何が得意か」をアピールしていましたが、これからは「どのような範囲の診療を見ることができるか」という17の領域を定め、報告することになります。

もう一つは、「どんな病気を診ることができるか」という40の疾患です。これらを院内に掲示し、ネットにも登録することで、患者さんがかかりつけ医を選ぶ際の判断材料になります。

内科だからといって、全てのかかりつけ医が同じではないことが明確になります。

(高山) なるほど。「かかりつけ医」の定義が明確化され、その定義に基づいた報告によって、患者さんが適切なかかりつけ医を選べるようになるわけですね。

(大西) そうです。ただ、これは認定制度ではなく報告制度です。病院には「特定機能病院」など様々な名称がありますが、かかりつけ医には名称がありません。

そのため、報告を通じて「かかりつけ医」を定義づける側面もあります。報告した医師は「かかりつけ医」、報告しなかった医師は「かかりつけ医ではない」と判断されます。

報告における注意点と課題

(高山) 報告する上で注意すべき点はありますか?

(大西) 17の診療領域や一次診療に対応可能な疾患を掲げる際、自分の専門外の領域まで記載してしまうと、対応できない相談が来てしまう可能性があります。

報告書には皮膚科から眼科、整形外科まで含まれており、内科医の領域を超えている場合もあります。

一次診療、つまり「患者が病気であるかどうか」を診ることはかかりつけ医の役割ですが、専門外の疾患の治療まで請け負う必要はありません。

精神疾患や鬱病、認知症なども含まれているため、注意が必要です。また、産婦人科領域の産褥ケアなども含まれており、「これは苦手」という領域があると問題なので、研修によって補う必要があります。

かかりつけ医機能に関する研修の修了状況や総合診療専門医の有無も報告項目に入っています。

(高山) かなり広範囲ですね。他に報告が必要な項目はありますか?

(大西) 医師や看護師、専門看護師や認定看護師の数、研修修了者数などです。

そして、目玉となるのが「全国医療情報プラットフォームへの参加の有無」です。これは、オンライン資格確認で構築されたネットワークを基に、全国の医療情報を集約・公開する仕組みです。

紹介状や処方箋のデジタル化など、あらゆる書類がデジタル化されデータベース化されます。このデータは分析や二次利用が可能になります。

(高山) 報告項目が多いですね。

(大西) そうですね。これから始まる制度なので、現場の医師は「デジタルが苦手」とは言っていられなくなります。

全国医療情報プラットフォームで公開されるのは、このような機能報告の書類です。

(高山) 報告内容に総合診療専門医数も含まれているようですが、これはかかりつけ医機能推進のキーマンになりそうですね。

(大西) そうですね。大学に総合診療科ができたものの、卒業後に開業した医師は「売りが無い」と苦労しているケースがあります。何でもできることが、逆に何でもできないと捉えられてしまうようです。

なるほど。私もコンサルティングの仕事をしていて、「何でもできます」と言っても仕事は来ないですから、共感します。「何が得意か」を明確にすることが重要ですね。

(大西) そうですね。かかりつけ医機能報告制度によって、ようやくその点が明確化されるのではないかと思います。

(高山) この制度によって、どのような効果が期待されるのでしょうか?

(大西) 患者さんは「何の疾患を診てもらえるのか」「どのような医療スタッフがいるのか」が分かるようになります。

(高山)これまでの病院の報告制度と似ていますね。

2号機能

(大西)2つ目の「2号機能」は、「どのように連携するか」を表すものです。具体的には、以下の4つの機能について報告します。

  1. 診療時間外の対応を自院で行うか、他院と連携するか。
  2. 入院が必要な場合、どこに紹介するか。
  3. 在宅医療を行うか、行わない場合はどこに紹介するか。
  4. 介護の相談に乗り、介護サービスと連携できるか。

これらは、かかりつけ医に以前から求められていた機能です。

介護連携の重要性

(大西)高齢化率の上昇に伴い、介護ニーズはますます高まっています。かかりつけ医は介護サービスとの連携が求められますが、そのためにはケアマネージャーとの綿密なやり取りが必要です。

「適切な介護サービスを紹介してほしい」という相談に対して、ケアマネージャーを紹介したり、ヘルパーステーションや訪問看護ステーションを紹介したりするケースが増えるでしょう。こうした紹介機能は、かかりつけ医の負担を増大させる可能性があります。

デジタル化の必要性

(大西)これらの業務は医師が行うには負担が大きいため、事務スタッフの仕事になるでしょう。

受付業務の自動化や無人化が進む中で、事務スタッフには秘書機能、つまりスケジュール管理や予約管理などが求められます。

例えば、他の医療機関とのアポの調整、先方との連絡、そして定期的なフォローなどです。

(高山)こうした仲介機能は非常に重要ですが、同時に大変な業務でもあります。

(大西)特に、ドクターはこうした業務が苦手とする場合が多いでしょう。

(高山)そのため、ケアマネージャーと医師の間に入る地域連携室の役割が重要になります。

(大西)地域連携室のスタッフは、看護師や事務、あるいはメディカルソーシャルワーカーが担当します。

地域連携室のスタッフは、電話だけでなくメールやSNS、地域連携ネットワークなどを活用する必要があり、高いITスキルが求められます。

ケアマネージャーとのやり取りも、単に電話連絡だけでは済まないケースが増えるでしょう。そうすることで、誤送信や間違い、不備などを防ぎ、スムーズな連携が可能になります。

クリニックにおける体制の変化

(大西)クリニック内では「介護相談会」などを定期的に開催し、高齢者の方の相談に対応する体制を整える必要があるでしょう。

受付や会計を担当していた事務スタッフも、高齢者の方の相談に乗ったり、アンケートを集計したりといった業務を行うようになるかもしれません。

こうした体制の変化に伴い、開業医の人員配置も変わってくるでしょう。

これまで受付3名、看護師3名といった配置が一般的でしたが、今後は受付1~2名、看護師3名、そして地域連携室のスタッフ2名といった配置になるかもしれません。

トータルの人数は変わらなくても、仕事内容は大きく変わります。

求められる人材

(大西)先生方も採用基準を変える必要があるでしょう。

書類作成能力、コミュニケーション能力、そして制度理解能力が重要になります。

特に制度理解能力は、診療報酬や今回の報告制度など、複雑な制度を理解し、運用していくために不可欠です。

厚労省が作成する文書を正確に読解する能力が求められます。意外と読解できない人が多いので、注意が必要です。

こうした業務をスムーズに進めるには、ケースワーカーの役割が重要になります。

ケースワーカーは介護保険制度や医療保険の公費などに精通しており、患者さんやその家族の相談に乗り、適切なサービスにつなぐ役割を担います。

日本ではケースワーカーの数が不足しているため、介護福祉士や社会福祉士を病院で雇用する動きも出てきています。

こうした人材を育成するためには、専門学校教育の内容も見直す必要があるかもしれません。

今後の準備

(高山)2025年4月の制度開始に向けて、どのような準備が必要でしょうか。

(大西)まず、かかりつけ医機能報告制度の報告書を読み込み、必要な準備を把握しましょう。

必ずアンケートが配られるので、それに回答できるように準備しておく必要があります。

また、スタッフ教育も重要です。受付スタッフに危機意識を持たせ、マルチタスクをこなせる人材を育成していく必要があります。

「私はこれしかできない」ではなく、「これもあれもできます」と言える人材が求められます。

最後に、柔軟性があり、様々な状況に対応できる人材を採用しましょう。

おわりに

(高山)今回は前編後編に渡り、「かかりつけ医機能報告制度」について詳しく見てきました。開業を考えている先生にとっても重要なテーマですので、今後もウォッチしながら新しい情報をお伝えしていきます。

今回はこれで終わりたいと思います。大西さん、ありがとうございました。

(大西)ありがとうございました。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。この番組への感想は「#院長が悩んだら聴くラジオ」でXなどに投稿いただけると嬉しいです。番組のフォローもぜひお願いします。この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

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