院長の書類作成作業を極小にする方法_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード36全文書き起こし

Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード36全文書き起こし

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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

オープニングトーク

(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第36回始まりました。大西さんよろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?

今日のテーマ:書類作成

(高山)今日のテーマは書類の作成です。

(大西)前回、コミュニケーションの話をしましたが、書類もコミュニケーションの1つのあり方ですよね。
紹介状なら病院、訪問看護指示書なら訪問看護ステーション、指示意見書ならケアマネージャー、と相手は違えど、医療の世界では書類がキーを握っています。

この書類をどう処理していくかがクリニック経営の肝だと思います。

(高山)なるほど。では、書類作成について詳しくお聞きします。

書類作成は誰が行う?

(高山)診断書などの書類作成は先生しかできないのでしょうか?

(大西)昔は医師のみが作成するルールでしたが、2007年にタスクシフティングに関する通知が出て、医師の責任のもと、事務や看護師が代行して作成できるようになりました。

診断書、紹介状、カルテ、指示意見書、訪問看護指示書、療養計画書など、様々な書類が該当します。

(高山)2007年というとかなり前ですね。

(大西)そうですね、もう17年ほど前になります。

働き方改革が2019年ですから、その10年ほど前から厚労省はこういったことを考えていたことになります。

医療クラーク、いわゆる医師事務作業補助者を立ち上げる際に法改正が必要だったという背景があります。

明確なルールがないと現場は混乱しますから、通知を出したわけです。

(高山)医師事務作業補助者が診断書などを作成しても良いと明記されているということですね。看護師でも可能でしょうか?

(大西)医師および医療関係職、医療事務員の役割分担についての通知なので、医師は誰に頼んでも良いとされています。

院内スタッフであれば誰でも作成可能です。

(高山)とはいえ、作成するにはそれなりのスキルが必要ですよね。

(大西)もちろんスキルも必要ですし、「医師事務作業補助者ってどんな資格ですか?」とよく聞かれますが、実は明確な資格はありません。

医師事務作業補助体制加算という点数を算定するための研修はありますが、医師事務作業補助者になるための研修ではないんです。

役割を担う人の総称なので、国家資格ではないということです。

看護師や薬剤師のように資格として定められていないので、少しややこしいですね。

厚労省も資格化を検討していたようですが、業務範囲が広すぎて難しくなったのかもしれません。

そもそも医療事務にも資格がないですし。

(高山)民間のテストに合格すれば名乗れるようなものでしょうか。

(大西)実際にはテストに合格していなくても名乗っているケースも多いですね。

クリニックで働く人は誰でも医療事務を名乗ることができてしまうのが現状です。

医療事務スタッフという役割の名前のようなものです。

医師事務作業補助者のメイン業務である書類作成ですが、誰が書いてどのように進めるのかがあいまいなままになっているクリニックが多いように感じます。

書類作成の現状と課題

(高山)今でも診断書などは医師が作成しているケースが多いのでしょうか?

(大西)そうですね、多いです。文章作成はハードルが高いと感じるスタッフもいるようですが、実はそれほど難しくありません。

古いスタッフの中には「書類作成は医師の仕事」という意識が根強く残っている人もいます。

カルテは医師のもの、書類も医師のもの、特別なトレーニングを受けた人だけが代行できる、といった感覚です。

しかし、例えば診断書であれば、カルテから病名を読み取って入力するだけなので、主病名かどうかの判断さえできれば誰でも作成できます。

紹介状、指示意見書、訪問看護指示書などもテンプレートがあるので、それほど難しくはありません。

国としては簡略化を目指しているはずなのですが、現場では難しく捉えすぎているのではないでしょうか。

(高山)行政が用意したテンプレートが使いにくいというケースもありますよね。

(大西)そうですね。クリニックごとにテンプレートを整理して、作成フローを確立すれば、任せやすくなると思います。

もう一つ重要なのは、書類ごとの点数を理解しておくことです。

診断書は3000円、紹介状は2500円、訪問看護指示書は3000円、療養計画書は6000円など、クリニック経営にとって重要な収入源となります。

作成できる人を増やすことで、業務効率化と収益向上に繋がるでしょう。例えば、あるクリニックでは書類作成に1週間かかるのに対し、別のクリニックでは帰りに渡してもらえる、といった差が出るとクリニックの競争力にも影響します。

処方箋や診断書など、様々な書類が患者さんの目に触れる機会は多く、お金が発生する以上、国は書類作成を医療機関に任せているわけです。

医療機関にとって書類作成は診察と同じくらい重要な仕事と言えるでしょう。

書類作成の効率化

(高山)書類作成をスムーズに行うための体制づくりが必要ですね。

(大西)そうですね。私はよくオープニング研修で書類作成のルールを決めています。

誰が、いつまでに、どの書類を作成するのか、発生条件なども明確にします。

例えば、「患者さんが介護相談に来たら指示意見書を作成する」「患者さんが会社に提出する必要がある場合は診断書を作成する」「患者さんから紹介状作成の依頼があったら、〇〇病院に紹介状を作成する」といった具合です。

疾患別に整理しておくと分かりやすいですね。受付で書類の必要性を確認し、処方箋のフォーマットに記入して医師に渡す、といったクリニックもあります。

医師が書類のニーズを理解しているからこそできることです。

患者さんの中には「面倒な書類を無理やり作ってもらっている」と感じる方もいるようなので、受付の対応も重要です。

スムーズな書類作成はクリニックの評判にも繋がります。

(高山)「しょうがないな、作ってあげるよ」という雰囲気を出さないように気をつけないといけませんね。

(大西)「すみません」と謝る必要はありません。患者さんの権利ですから、堂々と「先生、書類を作成してください」と言って良いのです。

医師も「書類作成は大変だ」と抱え込んでしまうケースがあるので、こういった意識改革も必要です。

紹介状には返信が必要ですが、返信が増えると負担になる、というジレンマもあります。

「この度はご紹介いただきありがとうございます。確かに受け取りました。」という返信を作成するのも、立派な書類作成の一つです。

行政への提出書類ではありませんが、礼儀として必要ですし、返信がないと紹介状を送ってくれなくなる可能性もあります。

ファックスを送信した後に電話で確認するのと同様です。

返信がないと届いていないのではないかと不安になりますよね。

最近はメールを送った後にSNSで「メール送りました」と連絡するパターンもあるようですが、私は「全部SNSで済ませましょう」という提案をしています。

LINEでやり取りする場合、添付ファイルを送信するにはパソコンが必要になるなど、少し面倒なケースもあります。

メッセンジャーの方が楽ですよね。書類のやり取りをもっと簡便にしたいところですが、ファックスだとプリントアウトが必要になります。

ネットファックスやPDFでの送受信ができれば良いのですが。厚労省はオンライン資格確認のように、将来的にはネットワーク上で書類のやり取りができるようにする計画のようです。

すぐにでも実現できそうな気がしますが、なかなか難しいのが現状です。書類のやり取りができるプラットフォームを作ろうという企業も出てきていますが、国も作成を進めているようです。

しかし、マイナンバー制度導入時にも問題になったように、「紙が良い」という人たちが必ずいるので、なかなかスムーズに進まないようです。

全員がオンラインで書類をやり取りするのではなく、紙が良いという人のための例外措置を先に決めておくべきだったのかもしれません。

少し話が脱線しましたが、国はこういった方向で考えているようです。

クリニックで書類作成のルールを作る際は、まず医師もスタッフも抱え込まない仕組みを作ることが大切です。

そのためには、協力体制、スケジュール管理、そして作成プロセスの見える化が必要です。

具体的な対策

(大西)私がお手伝いしているクリニックでは、書類が発生した段階で誰が何個の書類を持っているかを確認し、

一番少ない人に割り振るようにしています。

得意不得意に関わらず均等に割り振ることで、負担を平準化しています。

子供が熱を出したなど、どうしても作成できない場合はヘルプを要請する仕組みも作っています。

(高山)前提条件を明確にすることが大切ですね。

(大西)そうですね。最近はAIの時代ですから、AIに書類作成の一部を任せるのも良いでしょう。

(高山)文章生成はAIの得意分野ですし、私も原稿を書く際はAIに目次を作成してもらっています。劇的にスピードアップしますよ。

(大西)目次を考えるのが一番大変だったので、AIに目次を作ってもらってから本文を書き始めると、とてもスムーズです。

(高山)このラジオの書き起こしを公開しているDOCWEBのコラムにもAIを活用してみました。

幹となる部分が既にできているので、枝葉を付け足していくだけで完成しました。

(高山)クリニックでの書類作成にもAIを活用できそうですね。AIで文章を生成し、必要な情報を追記して、最後に修正すれば良いわけですね。

(大西)そうですね。AIに校正まで任せられれば、誤字脱字や言い回しなどもチェックしてもらえます。

(高山)なるほど、AIによる校正ですね。

はい。プロンプトで「ですます調で書く」「意味が重複する場合は1つの文章にまとめる」といった指示を出せば、AIがきれいに仕上げてくれます。

敬語についても、二重敬語にならないようにチェックできます。

「〇〇させていただきます」のような分かりにくい表現も修正できます。

こういった細かい部分に時間を取られるのはもったいないので、AIに任せてしまうのが良いでしょう。

コミュニケーションと書類作成

(高山)コミュニケーションにおいて、言葉の癖は大きな問題ですよね。

公的な書類や、知り合いの医師宛の書類などは特に、癖のない文章にしたいものです。

(大西)敬語、謙譲語、丁寧語の使い分けは難しいですからね。

(高山)間違えると恥ずかしい思いをしますし、

(大西)AIに任せてしまえば良いと思います。最終的には医師が監修する必要があるので、院長先生が見た時に間違いだらけだと「最初から自分で書いた方が早い」となってしまいます。

(高山)そうですね。ある程度の訓練は必要ですね。最初から自分で書いた方が良いという先生もいますし。

(大西)一度任せてうまくいかなかった場合は二度と手伝ってくれなくなるかもしれません。

人間は感情の生き物ですから、言い方一つで相手との関係が悪化してしまうこともあります。

先生方には「スタッフが作成した書類を受け取る際は、当たり前に思うのではなく『ありがとう』と感謝の気持ちを伝えるように」と伝えています。

(高山)なかなか難しいですね。

(大西)「はい」だけで済ませてしまう先生も多いのですが、依頼しているのは先生なのですから、それは失礼にあたります。「ありがとう、助かる」と伝えることが大切です。

(高山)そうですね。相手への配慮、最初の心構えが重要ですね。

(大西)書類作成においてもコミュニケーションにおいても、思いやりが大切です。

(高山)書類はコミュニケーションの一部であり、作り方や受け渡し方一つでスムーズにも逆効果にもなり得ます。最初のマインドセットが重要です。

(高山)今回の話は研修では学べない、とても大切な内容でしたね。

(大西)思いやりを持っている人を採用することが、最も重要なのかもしれません。

(高山)そうですね。思いやりがあるかどうかが入口、ベースとなって、その上でスキルなどを判断していくべきですね。

エンディング

(高山)今回は書類作成というコミュニケーションについて話しました。続きは次回にしたいと思います。今回もありがとうございました。

(大西)ありがとうございました。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。

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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

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