「新・かかりつけ医制度」開始で、医院経営が激変する可能性も_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード27全文書き起こし

Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード27全文書き起こし

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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

オープニングトーク

(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第27回始まりました。大西さん今回もよろしくお願いします。

今日のテーマ:かかりつけ医制度とは?

(高山)今日のテーマは「かかりつけ医」です。

(大西)「かかりつけ医」という言葉が使われるようになって、20年ぐらい経ちますね。日本では、なかなか「かかりつけ医」や「かかりつけ薬剤師」といった言葉が浸透してきませんでした。

その背景には、「専門医」という考え方があると思います。この辺りについて、今日はお話できればと思います。

(高山)そうですね。この後、「かかりつけ医」について詳しくお伺いしていきます。

制度化とクリニックへの影響

(高山)「かかりつけ医」が制度化されると聞きましたが、いつから何がどう変わっていくのでしょうか?

(大西)2025年4月から、「かかりつけ医機能報告制度」がスタートします。これまでも、入院の機能報告は行われてきました。私の病院は何床あるか、どんな手術や検査ができるかといった情報を報告していたんです。

(高山)病床機能報告ですね。

(大西)その後、外来機能報告制度ができましたが、これらは病院中心でした。今度はクリニックの制度として、「かかりつけ医機能報告制度」ができるということです。

(高山)いよいよクリニックにも手が伸びてきた、という感じがしますね。病院では、ベッド数に応じて看護師や医師の人数を定めるルールがありますが、外来や「かかりつけ医」にはそういった決まりがありません。

かかりつけ医のイメージと現実

(高山)「かかりつけ医」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?ホームドクターのように、いつも一番最初に行く医師、そこから他の専門医に振り分けてもらう窓口のような存在でしょうか?

ただ、実際は、目の調子が悪ければ眼科、皮膚の調子が悪ければ皮膚科と、患者さん自身が専門医を探して受診するケースが多いのが現状です。

(大西)誰でも自由に医療機関を選べる一方で、自分の病気がよく分からず、どの医療機関を受診すべきか決められない人もいます。

「なんとなく調子が悪い」という場合は、「かかりつけ医」を受診した方が良いのですが、「どこかおかしい」と感じると、多くの人は病院で多くの検査を受け、すぐに結果を知りたがる傾向にあります。

医療費と病院、クリニックの役割

(大西)病院を受診すると費用が高くなります。医療費は増加傾向にあり、10年後には60兆円に達するとも言われています。

これは国家予算をはるかに超える金額です。2000年に介護保険が導入されたのも、医療費の増加を抑えるためでした。

しかし、医療費は伸び続けており、介護保険と合わせると70兆円、場合によっては80兆円に達する可能性もあります。

医療費の増加を抑えるには、安価な診察や治療を受け、必要がなければすぐに帰る、ということが重要です。

ただ、現場の感覚では、クリニックの先生の方が、問題発見能力が高い可能性があります。

病院では、検査をしても原因が分からなければ「分かりません」で終わってしまうこともあります。

しかし、クリニックでは患者さんを継続的に診ているため、「こういう病気が隠れているのでは?」といった当たりをつけてくれる可能性があります。

検査結果に現れなくても、再検査で病気が見つかることもあります。そういった点で、クリニックの先生、特にベテランの先生に期待されている部分があるのだと思います。

病院の医師の平均年齢は40歳くらいですが、クリニックの医師は57歳くらいです。年の功で、発見能力が高いと考えられています。

病院では、原因が分からなければCTやMRIを撮影することがありますが、必ずしも必要とは限りません。「とりあえずMRIを撮っておきましょう」といった判断が、医療費の増加につながっている可能性があります。

クリニックにはMRIやCTがないため、採血、レントゲン、エコー検査など、安価な検査から始めます。

そこで発見できれば治療を開始し、発見できなければ大きな病院を紹介する、という流れになります。厚生労働省も、そういった点に着目しているのではないでしょうか。

医師会と制度化の関係、そして定義の明確化

(高山)医師会は、「かかりつけ医」を以前から推進していましたよね?今回の制度化と、どのような関係があるのでしょうか?

(大西)医師会は、診療報酬改定において生活習慣病管理料の点数を下げるなど、譲歩しました。

その背景には、今回の制度化があると思います。

医師会は、電子カルテシステム「ORCA」を開発しましたが、国が新たな電子カルテシステムを開発する動きがあるため、ORCAは今後、取り上げられる可能性があります。

また、オンライン資格確認システムについても、医師会が資格制度を管理したいと考えており、現在、認定制度を運用しています。

さらに、研修制度も立ち上げており、その中に「かかりつけ医研修制度」が含まれる予定です。

医師会としては、クリニックは自分たちの領域だと考えており、ルールを定めて主導権を握りたいという思惑があるのではないでしょうか。

厚生労働省も、その要求を受け入れた部分があるのだと思います。

(高山)これまで「かかりつけ医」の定義は曖昧でしたが、今回の制度化によって明確になるのでしょうか?

(大西)「かかりつけ医」という言葉の定義はありましたが、具体的な内容は曖昧でした。1号機能、2号機能といった分類とルール化によって、定義が明確になるはずです。

「かかりつけ医」かそうでないか、がはっきりと区別されるようになるでしょう。

今後のクリニック像と患者への影響

(高山)今後、クリニックは、「かかりつけ医」を標榜するクリニックと、専門医として特定の科目を専門とするクリニックに二分化していくのでしょうか?

(大西)「かかりつけ医」を標榜することはありませんが、厚生労働省が新たに立ち上げる「病院ナビ」というサイトで、「かかりつけ医」を検索できるようになります。

このサイトでは、クリニックの検索だけでなく、機能検索も可能になります。

例えば、「夕方6時以降に診療しているクリニック」といった条件で検索できるようになります。

複数の専門領域を扱うクリニックも検索できるようになるため、複数の症状がある場合などに便利です。

(高山)患者としては、どこを受診すべきか分かりやすくなりますね。ただ、「かかりつけ医」という言葉から、特定の医師に固定されるイメージを持つ人もいるかもしれません。

皆保険制度では、どの医療機関を受診しても良いことになっていますが、「かかりつけ医」というと、「いつも診てもらっている医師」というイメージがあります。

国が作成した病院検索サイトで、その都度、医療機関を選ぶとなると、患者が特定の「かかりつけ医」を持たずに医療機関を転々とする可能性も考えられます。今後、その辺りはどのように変化していくのでしょうか?

(大西)医師会は、「フリーアクセス」の原則を主張しています。日本では、保険証があればどの医療機関でも受診できますが、アメリカでは、契約した医療機関しか受診できません。

医師会は、日本の制度の方が優れていると考えています。今回の「かかりつけ医」制度では、患者と医師の間で契約を結ぶわけではありません。

どの医療機関を受診しても良いけれども、まずは「かかりつけ医」を受診するのが望ましい、という、少し複雑な関係性です。

(高山)「かかりつけ医」は、特定の医師に固定されるわけではありません。条件を満たした医師の中から、患者が自由に選択できます。

日本の医療制度の特徴と「かかりつけ医」「専門医」

(大西)日本は、「かかりつけ医」と「専門医」の両方を組み合わせた制度を作ろうとしています。「専門医」を直接受診しても、「かかりつけ医」を直接受診しても構いません。

これは、日本のフリーアクセスの原則に基づいています。そうでなければ、内科以外の診療科が減少してしまう可能性があります。

医療の質の変化と「治し支える医療」

(高山)「かかりつけ医」制度によって、医療の質はどのように変化していくのでしょうか?

(大西)医療の質は変化していくと考えられます。以前は、日本の人口は若年層が中心でしたが、現在は高齢者が多くなっています。

高齢者は、どこかしらに痛みや不調を抱えていることが多く、これは避けられないことです。

そこで、これまでの「治す医療」から、「治し支える医療」へと、医療の定義が変わってきています。

慢性疾患に対して、継続的にフォローアップしていくための制度となるでしょう。

地域医療構想、地域包括ケア、そして効率化

(大西)これまでの地域医療構想では、地域に必要な病院のベッド数や機能を計画していました。

地域包括ケアシステムでは、医療、介護、在宅医療を組み合わせ、地域社会で完結することを目指しています。

そこに、「かかりつけ医」機能が加わることで、効率化が進むと考えられます。検査目的で医療機関を受診する場合、費用は自己負担となります。

必要な検査を受けるのが医療ですが、「かかりつけ医」は、検査だけでなく相談にも対応します。

例えば、高齢の親の介護について相談する場合、病院では「時間がない」と言われるかもしれません。しかし、「かかりつけ医」は、そういった相談にも対応します。

かかりつけ医の守備範囲拡大と点数化

(高山)「かかりつけ医」の守備範囲が広がるんですね。1人あたりの診療時間も長くなるのでしょうか?新しい点数が設定されるのでしょうか?

(大西)1人あたりの診療時間は長くなると考えられます。点数については、「機能強化加算」や「地域包括診療料」などがすでにありますが、すべての内科医が算定しているわけではありません。今回の制度化をきっかけに、算定する内科医が増える可能性があります。「治し支える医療」とは、具体的にどのようなイメージでしょうか?

「治し支える医療」の具体例

(高山)「治し支える医療」について、もう少し詳しく教えてください。

(大西)例えば、病気になった場合、薬をもらって治癒する、というのが1つのパターンです。

一方で、リハビリや手術、処置なども医療に含まれます。病名が判明しない場合は、検査を続ける必要があります。

この「支える」という部分に、予防も含まれると考えています。再発予防や、病気の防止も含まれます。
生活習慣病の管理などが、まさに「治し支える医療」です。

予防医療と健康な人への対応

(高山)予防についても教えてください。健康な人が、健康を維持するためにフィットネスジムに通ったり、食事に気を遣ったりするのは、医療の対象外ですよね?

健康な状態であれば、医療の対象外です。健診などで異常が見つかり、コントロールが必要になった段階で、医療、そして予防の入り口となります。病気を悪化させないための「支える医療」が必要になります。

(大西)医療保険は、病気にならないと適用されませんが、介護保険には、介護が必要になる前に予防するという概念がすでに含まれています。

介護保険との連携、未病への対応

(大西)介護保険には、予防という概念がすでに組み込まれています。医療も、そこに連携していく必要があるでしょう。

健康と病気の間の「未病」という領域も重要です。未病の段階で相談すれば、病気を早期発見できる可能性があります。

顕在化されていない医療ニーズへの対応

(高山)「未病」の状態にある患者も受け入れていく、という流れになるのでしょうか?

(大西)徐々に広がっていくと思います。顕在化された医療ニーズと、顕在化されていない医療ニーズがあります。「かかりつけ医」は、顕在化されていない医療ニーズにも対応していくと考えられます。

(高山)前半はここまでとさせていただきます。後半では、「かかりつけ医」制度の具体的な内容について、詳しくお伺いしたいと思います。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。この番組への感想は「#院長が悩んだら聴くラジオ」でXなどに投稿いただけると嬉しいです。番組のフォローもぜひお願いします。この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

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