クリニック成功のカギはハード面よりもソフト面にある_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード29全文書き起こし

Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード29全文書き起こし

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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

オープニングトーク

(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第29回始まりました。大西さん今回もよろしくお願いします。

(高山)今回のテーマは、視点を変えて、これから開業する先生向けの内容にしていきたいと思います。

(大西)はい。

(高山)開業の準備には、1~2年かかることも珍しくありません。大西さんは開業直前のクリニックにおける準備について、数多くの先生方を支援されていますよね。準備すべきこと、よくある事例などを教えていただけますか?

(大西)分かりました。開業したばかりの先生はもちろん、既に開業している先生にも役立つ内容だと思います。

開業ギリギリになって慌てて研修したり、スタッフの育成に苦労したりするケースはよくあることですから、今更でも遅くない、今からできる対策についてお話しできればと思っています。

今日のテーマ:スタッフ同士の相互理解を深める

(高山)ありがとうございます。まず最初に、今日取り上げたいテーマは「スタッフ同士の相互理解を深める」です。

(大西)お願いします。

(高山)開業準備を進めていると、徐々にスタッフが集まり、いよいよオープンに向けて動き出すというタイミングが来ます。この時にやるべき研修内容について教えてください。

(大西)そうですね。

(高山)スタッフ同士の相互理解を深めることが必要だとおっしゃっていましたが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?

(大西)まず前提として、スタッフがうまくやっていけるかどうかは、開業の成否を分ける重要な要素です。

とかく建物やシステム、医療機器、場所といったハード面に目が行きがちですが、実際に開業してみると、本当に大切なのは「人」だと感じます。

私が20年間コンサルタントとして活動してきた経験からも、最初の印象、つまりファーストインプレッションは非常に重要です。

そこで、スタッフ同士の理解を深めるために、いくつか工夫を凝らした研修を行っています。

(高山)スタッフ同士の理解を深めることで、信頼関係を構築するだけでなく、患者さんからの信頼度向上など、様々な効果があるのでしょうか?

(大西)スタッフ同士が仲が良いと、患者さんからは良い組織、良いクリニックに見えます。

反対に、スタッフ同士の人間関係がギスギスしていたり、誰かが陰で泣いていたりすると、クリニックの雰囲気も悪くなってしまいます。

そういった意味では院長先生とスタッフの良好な関係も大切です。院長とスタッフ、お互いをどう理解し合っていくかは、必ず患者さんに伝わるものです。

(高山)開業準備中は、どうしてもハード面の整備に意識が向きがちです。買い物も多いですし、人の部分がおろそかになりやすいですよね。

(大西)おっしゃる通りです。これはある意味、宿命的な部分もあるかもしれません。

開業準備をサポートするコンサルタントの多くは、土地探し、医療機器、医薬品など、何かを「売る」ことに関連した業務に従事しています。

そのため、どうしてもハード面に注目が集まりがちです。私のような、何も売るものがない人間は、必然的に「人」に注目せざるを得ないのかもしれませんね。 開業において、実は一番重要なのはこの部分なのに。

人はなぜ揉めるのでしょうか?そこが本質的な問題です。高山さん、人々が揉める原因は何だと思いますか?

(高山)自分なりの正義を持っているからではないでしょうか。

(大西)そうです。実際は、自分しか見ていないことが原因です。

自分のことしか考えない、自己中心的なベクトルを持っている人は、他人と揉めやすい傾向があります。

このベクトルを、いかに相手に向けることができるか。そこが人間関係構築の最初の、そして重要なポイントです。

(高山)それは難しいですね。第三者から指摘されない限り、自分ではなかなか気づけません。

自己紹介より他者紹介

(大西)そこで、私がまず最初に行うのが自己紹介です。ただ、自分のことばかり話すのではなく、最後に「他者紹介」を取り入れています。

2人1組になってお互いをヒアリングし、その内容を相手に代わって発表してもらうのです。

自分の強みだと思っていたことが、他の人から見るとそうではなかったり、意外な長所に気づいたり、思わぬ発見があるようです。このような自己紹介と他己紹介を行うことで、お互いの理解が深まります。

(高山)なるほど。第一印象についても共有してもらうのですね。

(大西)そうです。第一印象は、その後の関係性を大きく左右します。怖い印象、優しい印象など、お互いの受け止め方を共有することで、より良いコミュニケーションに繋がるはずです。

(高山)話した内容から、意外な点に興味を持ってもらえたり、初めてお互いの個性が見えてきたり、他己紹介は盛り上がるようですね。

共有事項探し

(大西)そうですね。その上で、共通の話題を探る「共通事項探し」というワークショップを行います。

例えば、「今ハマっていることは何ですか?」という質問に対し、「私は韓国が好きです」と誰かが答えれば、「私も好きです」「韓国にはよく行きます」といった反応が返ってきて、K-POPの話で盛り上がったりするわけです。

そうやって2人の間にラポール、つまり信頼関係が築かれていきます。
この作業は非常に重要なのですが、クリニックが開業してしばらく経ってから行うケースが多いのが現状です。本当は、オープン前に、休憩時間などに自然発生的に会話が生まれるよりも前に、こうした研修で盛り上がっておくべきでしょう。

(高山)知らない者同士でクリニックをスタートさせるのは、なかなか難しい状況ですよね。

(大西)特に10人程度の小規模な組織では、スタッフ同士が密にコミュニケーションを取ることが重要です。自分の考え方や価値観を共有し、相手との共通点や相違点を理解しておくことで、より良い人間関係が築けます。

(高山)強制的に時間を作って研修しないと、なかなか難しいのではないでしょうか?

(大西)30分でも良いので、時間を確保して行うことが大切です。人間は自然に仲良くなれるとは限りません。どうしても表面的な付き合いに終始しがちです。特に職場ではその傾向が強いかもしれません。

(高山)そうですね。職場は仕事をする場ですから、趣味のサークルとは違いますよね。

(大西)今の時代、お酒を飲む機会も減りましたし、クリニックではスタッフがお昼を一緒に食べることも少ないですよね。シフト制で勤務しているため、なかなか親睦を深めるチャンスがありません。

(高山)そもそも分業制なので、それぞれの役割が違います。業務連絡以外の会話はあまり生まれません。

(大西)シフト勤務であるがゆえに、顔を合わせる機会が少ないと、親しくなるのは難しいですよね。部署が違うと、看護師、事務、検査技師の間でセクショナリズムが生まれることも少なくありません。

そこで私がいつも最初に言うのは、「皆さんは同期です」ということです。これまでの経験の長短は関係なく、オープニングスタッフとして同じスタートラインに立っている仲間なのだから、横のつながりを大切にしていきましょう、と。

そうすることで、院長先生にも自分のことをより深く知ってもらえる機会が生まれます。院長先生は、とかく「大西さん、やっておいて」とスタッフに任せがちですが、最初の研修は院長先生自身に行ってほしいのです。

「なぜこのクリニックを作ったのか?」「自分はどういう人間なのか?」を語ることで、スタッフは院長先生の思いを理解し、より深く共感してくれるはずです。

(高山)クリニックの軸となるのは、やはり院長先生です。先生方が実現したいことを形にするためにクリニックがあるわけですから、リーダーとして、最初に所信表明を行うことが大切なのですね。選挙で言えば、所信表明演説のようなものですね。

(大西)そうです。選挙演説のように、「私はこんな国にしたい」というビジョンを語り、共感を得ることで支持の輪が広がっていくように、院長先生の所信表明と、スタッフ一人ひとりの思いを共有し、共通の目標を見つけることが重要です。

「私たちには共通の想いがある」という共通項を見つけることで、組織の一体感が生まれます。私は常々、まずは院長先生とスタッフが仲良くなることが大切だと言っています。

(高山)中には、「職場なのだから、仲良くする必要はないのでは?」という意見もあるかもしれません。

(大西)しかし、それは後々、問題となる可能性があります。例えば、院長先生が考えていること、スタッフが考えていることが食い違う場合、意思疎通がうまくいかず、衝突してしまうかもしれません。

「仲が良い」とは?心理的安全性

(高山)「仲が良い」とは、どのような状態を指すのでしょうか?

(大西)院長先生の指示やスタッフからの提案を、互いにバリアなく受け入れられる状態です。

(高山)「受け入れる」とは、相手の意見を理解し、意見交換ができる状態ということでしょうか?

(大西)その通りです。会議などで意見を言いたくても言えない、波風を立てないように黙っているといった状態では、真の意味で「仲が良い」とは言えません。

(高山)それは、良好な関係を壊してしまうことになりますね。

(大西)「仲が良い」というのは、意見が違っても臆することなく発言できる状態です。お互いの考えを受け入れる土壌があることが重要です。

(高山)よく言われる「心理的安全性」ですね。

(大西)心理的安全性を確保するためには、教科書的には様々なバリアや障害を取り除くことが重要だとされていますが、私は「歩み寄り」の精神が大切だと考えています。

日本的に言えば、「和」の精神です。「ここは主張するけど、ここは引く」「これは重要だけど、これはそれほどでもない」といったように、コミュニケーションのキャッチボールをすることで、心理的安全性を確保しやすくなります。

「仲が良い」というのは、フラットな関係であること、議論ではなく、共感に基づいた関係であると言えるでしょう。

(高山)スタッフの能力や個性は様々なので、標準化するのは難しいと思いますが、ベースとしてお互いを知っているという状態を作らないと、実現は難しいのでしょうか。

(大西)そうです。例えば、「話すのが苦手」「話すのが得意」「経験が浅い」「能力に自信がない」といったことをお互いに知っていれば、自然と優しく、思いやりのある対応ができるはずです。

能力があっても性格が悪い人よりも、能力は低くても、努力家で性格の良い人を採用するべきです。能力も性格も良くない人は論外です。

仕事はできるけれど、周囲への配慮に欠ける人、あるいは誰かが困っていても手を差し伸べようとしない人、これらは、チームワークを阻害する要因になりかねません。

この研修の目的は、相手に歩み寄る精神を育むことです。単なる自己紹介や他者紹介では不十分です。相手を知り、強み弱みを理解した上で、初めて良好な人間関係を築けるのです。

(高山)自己開示や他者紹介を通して相互理解を深める目的は、まさにそこにあるのですね。

カバーしあう精神

(大西)そうです。研修を通して強みや弱みを理解し合うことで、日常業務でもお互いをカバーし合えるようになります。

(高山)カバーし合う精神こそが、クリニックの土台となるのですね。

(大西)そのカバーする精神がないと、「それは私の仕事ではありません」「それは看護師の仕事です」「それは事務の仕事です」といった発言が生まれてしまいます。私はいつも、「みんなの仕事ですよね」とスタッフに言っています。

(高山)それは院長先生が考えるべきこと、ではなく、みんなで考えるべきことなのですね。

(大西)そうです。開業前にやっておくべき大切なことなのですが、多くの院長先生は、開業後しばらく経ってから、この重要性に気づくようです。

(高山)開業前には、なかなか考えが及ばない部分ですね。

(大西)院長先生は大きな責任を背負っているため、すべて自分で決めなければならないと思い込んでいます。

まして新しいスタッフばかりだと、なおさら自分で仕切らなければならないというプレッシャーを感じてしまうのでしょう。

しかし、人間には限界があります。得意不得意もあります。
そこで、「この人はこんな強みがあるんだ」と気づく機会として、開業前に「スタッフ同士の相互理解を深める会議」を行うことをお勧めします。

(高山)分かりました。スタッフ同士の相互理解を深めることについて、様々なお話を伺いました。

後半では、院長先生自身がどのように自己開示し、将来のビジョンをスタッフに伝えるか、についてもお話いただけますか?

(大西)そうですね。後半では、院長先生の思いをどのようにスタッフに伝えるかについてお話しましょう。

(高山)はい、分かりました。今回はこの辺で終わりまして、続きは次回にしたいと思います。大西さん、ありがとうございました。

(大西)ありがとうございました。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。この番組への感想は「#院長が悩んだら聴くラジオ」でXなどに投稿いただけると嬉しいです。番組のフォローもぜひお願いします。この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

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