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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
オープニングトーク
(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第33回始まりました。大西さん今回もよろしくお願いします。
(大西)よろしくお願いします。
今日のテーマは何でしょうか?
今日のテーマ:個別指導の原則
(大西)今日のテーマは個別指導の原則についてです。
(高山)個別指導とはどんなものでしょうか?
(大西)開業して1年か1年半経つと必ず呼ばれます。開業したての先生にとっては初めての事なので、非常に心配で不安だと思います。
どうすれば乗り越えられるかについてお話できればいいなと思います。
(高山)よろしくお願いします。
個別指導を受けるまでの流れ
(高山)前回、先生の診療科の経験がある事務スタッフを集めていきましょうという話がありました。
もし、そういったスタッフが集まらない場合は、ご自身で診療報酬の制度や点数から教えていかなければならないとのことでしたが、初めての開業だと個別指導が不安ですよね。
備えが必要だと思うので、押さえておくべき個別指導のポイント、原理原則を教えていただけますか?
(大西)個別指導は「もし入ったらどうしよう」ではなく、「必ず入るもの」と考えて準備しておくべきです。
だいたい最近の傾向だと、開業から1年から1年半後に行われます。コロナの影響で見送られていた時期もありましたが、去年からまた再開されて、今は開業1年~1年半後が目安です。
個別指導に向けての準備
(高山)電子カルテを使っている先生が多いと思いますが、個別指導ではどのような点を確認されるのでしょうか。
(大西)多くの場合、事前に「この患者さんのカルテを印刷して持参してください」と指示があります。電子カルテ自体を持参するケースは稀です。
(高山)つまり、個別指導は立ち入り検査ではなく、指定された場所へ呼ばれていくという形ですね。
(大西)そうです。開業後にレセプトデータを提出しているので、その内容をチェックされて個別指導の対象に選ばれるのだと思います。
基本的にはカルテとレセプトの内容が一致しているかどうかのチェックが行われます。
個別指導の対象選定
(高山)個別指導の対象となるのは、開業後1年~1年半経った先生全員ですか?レセプトの内容に問題がない場合は、呼ばれないこともあるのでしょうか?
(大西)いいえ、開業医は必ず呼ばれます。
新規開業でも承継開業でも、理事長が変わると個別指導の対象になります。また、電子カルテを導入した際にも呼ばれることがあります。
紙カルテから電子カルテに移行すると、記載内容の傾向や言葉遣いなどに変化が生じやすく、指摘を受けるケースが多いようです。
個別指導で想定される指摘事項
(高山)個別指導で一番怖いのは、不正請求を疑われて診療を取り上げられてしまうことだと思います。
実際にそのような極端なケースはあるのでしょうか?
(大西)ありますね。開業直後にそのようなケースは少ないですが、悪質な不正請求をしている場合は、免許取り消しもあり得ます。
例えば、実際には1回しか受診していない患者が、10回受診したことになっていて、架空請求をしていた歯科の事例などがあります。
医師免許の取り消し事例で多いのは、架空請求とカルテ改ざんです。
(高山)不正請求とまではいかなくても、ミスで指摘されるケースにはどのようなものがありますか?
(大西)カルテに記載がないのにレセプト請求されているケースがよくあります。
例えば、炎症反応を調べるCRP検査。電子カルテであらかじめセットされた検査項目を全て実施した結果、実際には不要なCRP検査まで請求してしまった、といったケースです。
スクリーニング検査として、全ての患者に特定の検査を実施するルールを設定している場合でも、CRP検査のように、必ずしも全員に必要なわけではない検査項目は個別に削除する必要があります。
HbA1c検査なども同様です。
(高山)なるほど。検査項目をセットで登録している場合は、不要な項目を削除していく必要があるのですね。
(大西)検査をする以上は、必ず病気の疑いがあり、カルテにもその疑いが記載されていなければなりません。
もし、レセプトのチェックで疑わしい点があれば、後から病名を追加して再請求するのではなく、カルテに追記しなければなりません。
カルテとレセプトの記載が一致していないと指摘の対象になりますね。
(高山)電子カルテの内容をきちんと確認できる事務スタッフの配置が重要になりそうです。
(大西)レセプト業務に携わるスタッフは、どうしてもコスト欄ばかり見てしまいがちで、カルテの記載がおろそかになっているケースも少なくありません。
紙カルテの時代には、前回と同じだからカルテは書かなくていい、という理由で真っ白なカルテを提出して指摘を受けたケースもあったそうです。
個別指導後の対応と注意点
(高山)個別指導で指摘を受けたら、どのように対応すれば良いのでしょうか?
(大西)カルテに書いていないことは算定できないので、過去のカルテを遡って修正しなければならないケースもあります。
例えば、特定疾患療養管理料の指導内容がカルテに記載されていなかった場合、返還しなければならないケースもあります。
これは自主返還という形になるので、自分から「間違っていたので返還します」と申し出る必要があります。
金額は最大で600万円にもなるそうです。
開業したてでお金がない時期に、このような高額な返還請求をされると大変です。
(高山)日頃からカルテをきちんと書いておくことが大切ですね。カルテを書く習慣がない先生もいるのでしょうか?
(大西)忙しいと、カルテの記載を後回しにして、結局書かないままになってしまう先生もいるようです。
1日の患者数が多く、カルテの記載がスカスカでも、「後でまとめて書けばいい」と考えているうちに1年経ってしまう、といったケースです。
(高山)確かに、後回しにして忘れてしまうこともあるかもしれませんね。
(大西)医療事務を後回しにして、月に1回まとめてチェックすればいいと考えていても、結局やらないまま1年間放置してしまうと、個別指導で指摘された際に大変なことになります。
個別指導対策としての医療クラウドと保健協会
(高山)個別指導を受けずに済むためには、どうすれば良いでしょうか?
(大西)私が提唱している医療クラークを導入し、カルテをきちんと記載することです。そして、先生一人で全ての責任を負わないようにすることも大切です。
(高山)責任は負わなければならない立場だからこそ、事務作業をスタッフに任せ、先生自身は診療に集中できるようにする必要があるのですね。
(大西)病名、カルテの記載、コストが常に一致しているか、診察時間内に確認し、遅くともその日のうちに完了させるようにすれば、毎月のレセプト点検も楽になりますし、個別指導にも慌てずに済みます。
(高山)個別指導を受けた際に、注意すべき点はありますか?
(大西)個別指導が来ると聞いてから急にカルテを修正する先生もいますが、電子カルテには全てのログが残っているので、いつ修正したかがバレてしまいます。
後から追記すると、不正請求の疑いをかけられる可能性もあるので、絶対にやってはいけません。
(高山)事実であっても、後から追記すると疑われてしまうのですね。
(大西)個別指導後も、急に追記が増えていると指摘を受ける可能性があります。
(高山)指摘を受けなくても、そういう目でみられてしまいますね。
(大西)1回目の個別指導で指摘を受けたら、素直に修正することが大切です。指摘された方が良い場合もあるかもしれません。
税務調査との類似点と相違点
(高山)個別指導は、企業の税務調査に似ている点があるように思いますが、いかがでしょうか?
(大西)そうですね。税務調査も、売上がおかしいという指摘はあまりなく、経費ばかり見られます。
領収書がない、印紙が貼られていないといった指摘はありますが、「今回は大目に見ておきましょう」と言われることが多いようです。
(高山)個別指導でも、多少は削られるということですね。
(大西)それは受け入れるしかないでしょう。重大な違反は、カルテが真っ白だったり、カルテが書かれていないことです。
(高山)昔は、手書きのカルテの方が個別指導を乗り切りやすいと言われていたそうですね。
(大西)字が読みにくいので、不明瞭という指摘で済んだのでしょう。
今は、明瞭に書き直すように指示されるので、結局全部書き直すことになり、かえって大変です。
個別指導に役立つ機関
(高山)個別指導について、他に何かアドバイスはありますか?
(大西)個別指導について詳しく知りたい場合は、地域の保健医協会に相談することをおすすめします。
医師会とは別の団体ですが、個別指導に詳しいので、相談に乗ってくれるはずです。
入会金は医師会ほど高くなく、月数千円程度です。診療報酬や個別指導に関する相談にも対応してくれます。
(高山)個別指導について事前に準備しておけば、安心して開業できますね。
(大西)個別指導で見送られないためには、今日話した内容をしっかりチェックしておいてください。
(高山)分かりました。大西さん、個別指導の具体的な事例については、また別の機会に取り上げていきたいと思いますので、その際はよろしくお願いします。
(大西)お願いします。
(高山)それでは続きは次回にしたいと思います。大西さん、ありがとうございました。
(大西)ありがとうございました。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。
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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。