
勤務医としての仕事を続けるなかで、「いずれは自分のクリニックを持ちたい」と考える瞬間は、誰しも一度はあるものです。
しかし実際には、日常の業務や生活に追われるなかで「今じゃないかもしれない」と判断を保留し、そのまま数年が過ぎてしまう——そうした医師も少なくありません。
「物件を見つけたけど踏み出せない」
「資金準備は進んでいるのに決断できない」
「やりたいことがぼんやりしている」
この「タイミングがつかめない」状態には、理由があります。
本記事では、そんな逡巡の構造を整理し、「開業に向けて動き出すべきかどうか」を判断するための視点を提示します。
「今ではない」の正体、感覚と条件のねじれを捉える
「開業の方向性」と「現実の条件」を分けて考える
開業に迷ったときは、
- 方向性(どこに向かいたいのか)
- 条件(今の自分に何が揃っているか)
この2つを切り分けて整理すると、迷いの構造がはっきり見えてきます。
方向性(やりたいこと) | 条件(揃っていること) | 現時点での判断 |
---|---|---|
明確 | 整っている | 今が動くタイミング |
明確 | 整っていない | 現実側の準備を進める段階 |
あいまい | 整っている | 目的や価値観を再確認すべき段階 |
あいまい | 整っていない | まだ判断する段階ではない |
このように「方向性」と「条件」を切り分けるだけでも、迷いの構造が見えてきます。
クリニック開業における方向性を描く|未来像の言語化
方向性を定めるとは、「決意を固めること」ではなく、納得できる未来像を描くことです。
現状の評価として、まず直観的に実現したいことや、現状の不満点を洗い出します。
- どんな医療を、どのようなスタイルで提供したいか?
- 今の働き方に違和感はあるか?
- 開業によって実現したいことは何か?
その上で、実現したい方向性に具体性を持たせていきます。
例:
- 高齢者の在宅医療に力を入れたい
- 生活習慣病の予防を重視したい
- 家族との時間を確保しつつ、自分のペースで働きたい
これらが見えてくると、必要な開業形態や規模も輪郭が浮かび上がります。
クリニック開業の条件を確認する|物件・資金・人材などの接点
一方の「条件」は、実際に手元にあるリソースや環境です。
開業へ動き出す条件の確認例:
- 信頼できるベンダーや施工会社とのつながりがある
- 物件を紹介され、診療圏に関心を持った
- 融資やリースの相談を始めている
- スタッフ候補と会話が進んでいる
近年では「ベンダーが物件紹介も担うケース」や「無人受付を取り入れたミニマム開業」といった選択肢も増え、条件の形はより多様化しています。
→ 参考記事
【クリニックの開業資金|診療科別費用と融資の選び方】
【クリニック開業に適した物件の種類と選び方】
【ミニマム開業の手法と医療DXツール活用】
クリニック開業のタイミングを見極める|方向性 × 条件の判断フレーム
「今ではない」と感じたときに大切なことは、「何が自分を止めているのか」を可視化することです。
方向性があるのに止まっているときは現実的な条件を整理し、
条件があるのに止まっているときは価値観やビジョンを再確認します。
最初の段階で明確にしておくことで、今後の資金準備やシステム選定、スタッフ採用といったクリニックの根幹にかかわる選択をスムーズに進めていくことができます。
方向性(やりたいことは明確か) | 条件(環境や準備は整っているか) | 今の判断 | 次の行動 |
---|---|---|---|
明確 | 整っている | 今やる | 開業に向けて実務を一気に進める(融資・内装・届出など) |
明確 | 未整備 | 待つ(条件を整える) | 物件・人材・資金など、足りないリソースを順に埋めていく |
曖昧 | 整っている | 再設計(価値観・ビジョンを棚卸し) | 「なぜ開業するのか」を言語化し、将来像を明確にする |
曖昧 | 未整備 | まだ動かない | 無理に決断せず、関連情報の収集や見学など低負荷な活動を |
「やりたいこと」がはっきりしていて、かつ信頼できる施工・ベンダー・資金の目処が立っているなら、今こそ実行フェーズ
「やりたいこと」は見えているけど、人材・場所・制度の準備が追いついていないなら、整備フェーズへ
準備はできていても「なぜ自分が開業するのか」が曖昧なら、目的整理フェーズ
どちらも不明なら、焦らず探索と棚卸しの時間を設けることで、迷わずスタートを切ることができるでしょう。
参考記事【院長、理念を語ってください!院長が悩んだら聴くラジオ(DOCWEB×MICTコンサルティング大西大輔氏)】
まとめ|動くかどうかは“整っているかどうか”で決めればいい
開業のタイミングは、「腹をくくるかどうか」ではなく、「方向性と条件が整っているか」で見極めることができます。
たとえば、「良い物件が見つかった」「このベンダーなら信頼できそう」といった具体的な接点が現れたときこそ、進むタイミングかもしれません。
逆に、方向性がまだ曖昧なら、今は立ち止まり、価値観の棚卸しをする時期と割り切っても構いません。
その判断こそが、合理的な開業準備の第一歩です。
- 医療モールの企画から、クリニック新規開業のサポート歴30年
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DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)
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