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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
(高山)おはようございます。パーソナリティのドックウェブ編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、第76回始まりました。大西さん、今回もよろしくお願いします。
(大西)今日のテーマは、クリニック開業の規模をどうするか、というお話していきたいと思います。
クリニック開業の規模、どう考える?
(高山)規模について考えるとき、開業当初からそれを意識しているかというと、どうなのでしょうか。僕の感覚では、開業した時から規模の拡大を考えている先生が多いですね。開業自体が目的の人と、クリニックを大きくすることが目的の人と、大きく二種類に分かれているように感じます。
(大西)そうですね。分院展開をするのか、あるいは単独でまずはやっていくのか。そのあたり、考え方には色々あると思いますので、その点についてお話していきたいと思います。よろしくお願いします。
(高山)お願いします。
分院展開を目指すのは「経営者型」の先生
(高山)今回はクリニックの規模をどう決めていくのか、あるいはどのような思考法があるのかについてお聞きしたいと思います。
(大西)昔は分院展開というより、1人で1つのクリニックを作って一生を終えるというイメージが強かったですが、最近は分院展開する先生も増えてきているように感じます。
(高山)そうですね。
(大西)分院展開をしたい先生というのは、おそらく経営者型の先生でしょうね。
一方で、分院展開に興味がない先生は、いわゆる医師型の先生です。診察そのものが大好きなんだと思います。
(高山)そうですね。
(大西)医師型の先生は、一生を一医師として生きていきたいと考えています。
それに対して、分院展開をする先生たちは、将来的に必ずしもドクターでなくても良いと考えているかもしれません。
(高山)世の中的に選択肢が広がってきていますよね。ビジネスの世界に進む人も増えていますし。
(大西)本当にそう思います。面白い傾向として、医師免許を取得しても、クリニックや病院に勤務しないという選択をする先生も出てきています。医師の免許を取ることと、医者になることが必ずしもイコールではない時代が来ているのかもしれません。
(高山)それは医師に限った話ではないですね。ビジネス自体の自由度が非常に高まり、活動の幅も広がっています。
クリニックの将来像は開業時に描くべき
(大西)クリニックの規模については、開業する時に考えておいた方が良いと思います。
10年後、20年後のクリニックをどうしたいかについて、「その時が来たら考えればいい」というスタンスでは、少し遅いかもしれません。
(高山)なるほど。
(大西)ただ、分院展開をしたいと考えている先生は、だいたい開業の時からその話をされますね。「将来こうしたいんだ」と。
(高山)結構早い段階から、はっきりとビジョンを持っているんですね。
(大西)理由を尋ねると、「1つクリニックを作るのも、2つ、3つ作るのも、手間はそれほど変わらない」とおっしゃいます。
(高山)手間が、ということですね。
(大西)分院展開をしたい先生は、例えばエステサロンや脱毛サロン、あるいは手もみのようなマッサージ店の展開をイメージしているのではないでしょうか。
(高山)やることは同じですものね。提供するサービスは同じで、同じような箱(施設)を作り、ただエリアが違うだけ、と。
分院展開を成功させるための戦略と課題
(高山)同じエリア内で店舗を増やすドミナント戦略をとる先生もいらっしゃれば、少し広い範囲でブランディングを図る先生もいるでしょうね。
(大西)そのため、昔のような「赤ひげ先生」や「カリスマドクター」といったタイプの先生は減ってきたように感じます。どんどん標準化が進んでいますからね。
(高山)そうですね。
(大西)私としては、2つの視点があると考えています。分院展開では、建物を建て、場所を選び、人を集めるわけですが、どうしても自分の目が届きにくくなります。
そのため、監視や統括といったマネジメントが難しくなります。
一方で、多くの医師を雇用して、一つの大きなクリニックを運営する先生も増えてきています。
(高山)そうなのですね。
(大西)この形だと、院長の目が届きやすいです。
一人の院長に対して5人の勤務医がいる、といった体制なら、院長が全体を管理できます。
また、内科と皮膚科、眼科など、複数の診療科を持つクリニックも増えています。
(高山)なるほど。
(大西)「分院展開」と「一つのクリニックを最大化する」という、大きく二つの流れがありますので、後者を狙うのも最近の選択肢としては良いのではないかと感じます。
(高山)医師型の先生を集めて、経営者型の先生がそれを束ねていく、というスタイルですね。
(大西)その通りです。「院長をやってもいい」という人が現れてから分院展開をする、という手もあります。
(高山)どちらにしても、最初の1施設目を成功させることが大前提になりますよね。
(大西)そうですね。ただ医療業界の面白いところで、1店舗目が成功したからといって、2店舗目がうまくいかないということは、実はそれほど多くありません。
(高山)そうなんですか。
(大西)1店舗目がうまくいけば、2店舗目もだいたいうまくいくものです。
(高山)先生方の学習能力が高いということでしょうか。
(大西)成功のコツを掴んでいるのでしょうね。
それに、少し失礼な言い方かもしれませんが、他の業種に比べて競争が比較的少ないという側面もあります。
(高山)他の業種、例えば飲食店などと比較すれば、ということですね。飲食店は本当に大変ですから。
(大西)飲食店は、次々と店舗を出しては失敗していく、ということもありますよね。「これは違ったか」というように。
(高山)難しいですよね。
(大西)医療機関は面白くて、エリアと人口動態さえ間違えなければ、比較的成功しやすいのです。
そのため、かなり狭い範囲で分院展開する先生が多いですね。
(高山)その方が効率的ですし、目も届きやすいですね。
(大西)その地域のこともよく分かっていますから、「あの先生が辞めるなら、その場所に入ろうか」といった判断もしやすいです。
(高山)なるほど。
(大西)そういった意味では、ドミナント戦略的に狭い範囲で展開しているので、例えば「全国47都道府県に1店舗ずつ作る」といったことはありません。
各都道府県、各市町村で保健所など様々な行政機関とのやり取りが必要になり、非常に手間がかかりますから。
(高山)そうですね。
(大西)そう考えると、エリアをぎゅっと絞った方が分院展開はしやすく、成功パターンも作りやすいと言えます。
(高山)狭いエリアで多店舗展開をすると、かなり目立つと思いますが、地域の医師会の中で浮いてしまったりはしないのでしょうか?
(大西)浮いてしまうでしょうね。
そういう先生は、だんだん医師会の会合などには行かなくなる傾向があります。
常勤の先生から「活発ですね」と、少し嫌味っぽく言われたりもするようです。
(高山)それが本当に嫌味なのか、受け手の問題なのかは分かりませんが…。
(大西)「活発ですね」というのは、「うちの近くには来ないでくれよ」という意味合いが込められているのでしょう。
(高山)警戒されてしまうのですね。
(大西)それは人間社会では、多少なりともあることだと思います。
規模拡大の最大の壁は「人材確保」
(大西)何よりもまず、人材の確保が大変です。
(高山)そうですよね。まさにスタッフの取り合いですね。
(大西)正直なところ、院長が一番考えなければならないのは、どうやってドクターを集めるか、どうやって看護師を集めるか、どうやってスタッフを集めるか、ということです。
本当にそれだけと言っても過言ではないくらい、そこが悩みどころになります。
(高山)確かにそうですね。例えば受付のスタッフにしても、「実は以前、あそこのクリニックで働いていました」という人が応募してくることもありますよね。
(大西)来ますね。そして、前の職場の悪口を結構言うものです。
「あの先生は大変ですよ」といったことを、平気で言うスタッフもいます。
(高山)なるほど。
(大西)私はそういう人を必ず採用するようにしているのですが。
(高山)逆に自院のことも言われてしまう可能性がありますからね。
(大西)その通りです。逆に面接の時に「どんなところが大変だったの?」と聞くと、洗いざらい話してくれます。それを聞くと、「うわ、怖いな」と思いますね。
(高山)大企業のようなコンプライアンス研修を受けているわけではないでしょうし、そこまでの意識はないのかもしれませんね。
(大西)スタッフに口止めをするのが難しいとすれば、地域の評判というのは、従業員が作っていると言ってもいいのかもしれません。
(高山)そうですね。働いているスタッフが「この先生は本当に良い先生ですよ」と心から言ってくれる、その内側からの声が一番リアルですからね。先生自身がそうあるべきですし、スタッフもそうした心根を持った人を採用したいものです。
スタッフマネジメントがクリニック経営の鍵
(大西)そうですね。だから最近増えているのが、「新人研修をしてください」という依頼です。
クリニックがオープンする際に、コンプライアンスや、人を尊重することの大切さ、そして私たちの仕事の意味や目的について、きちんと話してほしい、と。
(高山)なるほど。
(大西)私は院長にいつも言うのですが、「本来は院長先生が話すべきことですよ」と伝えています。
(高山)そうですよね。今お話を聞いていて、それは院長の仕事ではないか、と思っていました。
(大西)でも、そういうのが苦手な先生もいらっしゃるんです。
(高山)人には得手不得手がありますからね。
(大西)私が専門学校で教えている経験があるから、依頼が来るのだと思いますが、専門学校の1年生を教えるのは大変ですよ。
本当に基礎の基礎から教えます。「なぜ医療事務になりたいのですか?」と聞くと、「親に行けと言われたから」とか、「他の仕事より安定してそうだから」といった、少しマイナスな理由で入ってくる学生が多いです。
あるいは「看護師になれなかったから」とか。
(高山)なるほど。
(大西)そこをいかにして「魅力的な仕事だ」と思わせるかが、私たちの重要な仕事になります。
(高山)そこから始めるのは、先生としては大変かもしれませんね。
(大西)そうなんです。医療の現場は、診察だけではないというのが難しいところです。
新卒を採用しても育てる人がいなかったり、中途採用をすれば、言葉を選ばずに言うと、色々な癖のある人が入ってきたりします。
(高山)そうですね。
(大西)それを人事経験のない院長が一人で担うのは、かなり厳しいです。
(高山)確かに大変ですね。
(大西)分院展開を成功させる秘訣は、人事部長のような役割を担える人材を確保できるかどうか、そこが大きいですね。
(高山)なるほど。コストに見合うような人が見つかれば良いのですが。
(大西)毎日いてもらう必要はないんです。週に1回でもいい。
(高山)コンサルタントのような形で、顧問契約ができるとやりやすいかもしれませんね。
(大西)やはり、クリニックの規模というのは「人」なのだと思います。武田信玄の言葉ではありませんが、「人は石垣」です。
人をうまくコントロールすることが、クリニック経営そのものなのだと感じます。
(高山)そうですね。
(大西)そのあたりが、会計事務所や財務系のコンサルタントには分かりにくい部分です。
彼らはどうしても「前年比でいくらか」ということばかりを気にしてしまいます。
(高山)それが彼らの仕事ですからね。
(大西)「あれ、去年より伸びていませんね」とか、「利益率が下がっていますね」とか。
彼らは結果をまとめるのが仕事なので、そうなりますよね。
プロセスの部分が見えていないから、根本的な原因が分からないのです。
プロセスを分解して考えることができていないのかもしれません。
(高山)難しい問題ですね。
(大西)よく話すのですが、物事を因数分解して考えると、結果から逆算していくことになります。
そうすると、行き着く先は「人」だったりするのです。
「この期間、スタッフの数が極端に少ないですね」とか、「この時期、先生の機嫌が悪くなっていませんか?」とか、そういったことが、もろに数字に現れます。
(高山)高山さんも、仕事の調子が良い時と悪い時があるでしょう?
(高山)人間ですから、当然あるでしょうね。
(大西)それは経営にも絶対に影響します。だからこそ、人のマネジメントが重要になってくるのです。
(高山)人のマネジメントをするには、まず自分自身のマネジメントをしなければならない、ということですね。
(大西)その通りです。だから、相談できる相手を作っておくのが良いと思います。
(高山)相談相手が欲しい方は、ぜひ大西さんまでメッセージをいただければと思います。
(大西)いやいや、そこまで務まるかどうかは分かりませんが。ちょっとした雑談ができる相手がいるだけでも、大きいですよね。
(高山)そうですね。
次回予告:女性医師の開業
(高山)この番組のリスナーさんの中にも、一人で悩みを抱えている方がいらっしゃるかもしれません。
最近の傾向として、女性のリスナーが増えているんです。
女性の先生が増えているのか、あるいは院長の奥様が事務長としてクリニックを切り盛りしていて、色々な悩みを抱えているのかは分かりませんが、そうした方々も、どんなことで悩んでいるのか、ぜひ番組に投稿いただければと思います。
それを次回のテーマとして取り上げていきたいと思います。
(大西)次回で良いと思うのですが、「女性の開業」というテーマは一度取り上げてみたいですね。
(高山)そうですね。実は今日もその話をテーマにしようかと考えていました。時間も迫ってきましたので、その続きは次回にしたいと思います。
(大西)次回にしましょう。
(高山)はい。では大西さん、今回もありがとうございました。
(大西)ありがとうございました。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、最後までお聞きいただきましてありがとうございました。
少しでも気に入っていただけましたら、番組のフォローをぜひお願いします。
新しいエピソードがいち早く届きます。
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DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)
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