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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
(高山)おはようございます。パーソナリティのドックウェブ編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、第79回始まりました。大西さん、今回もよろしくお願いします。
(大西)よろしくお願いします。
(高山)今日のテーマは何でしょうか?
(大西)今日のテーマはクリニックの福利厚生についてです。
クリニックにおける福利厚生の現状
(大西)福利厚生というと、普通の一般企業だと「福利厚生が充実しています」といった点がアピールポイントになったりしますよね。
でも、クリニックでそれを売りにしている医療機関はあまり見かけない気がします。どうしたらいいのか、悩むところかもしれませんね。
(高山)そうですね。他のクリニックがどのようにしているのか、参考にしていただければなと思います。それではこの後、よろしくお願いします。
(大西)お願いします。
(高山)ということで、クリニックのスタッフ向け福利厚生という話になると思いますが、院長自身の福利厚生も兼ねて、という側面もあるかもしれません。
最近のトレンドというか、スタッフに提供されている福利厚生の事例があれば教えていただけますか?
(大西)そうですね。昔の大きな流れとしては飲み会や、スタッフとちょっとお出かけするといったものがありましたが、コロナ禍を境に飲み会は控えるようになり、そういった文化は下火になったかなという感じです。
飲み会をするなら食事会やケーキ会といった形ですね。
最近では「オフィスおかん」という、総菜を冷蔵庫にストックしておいて100円で購入できるサービスや、グリコのお菓子を設置するような事例が一部で流行っています。
(高山)お菓子を置いて100円で買えるというのは、福利厚生と呼べるのか、という側面もありますよね。自分でお金を払うわけですから。
(大西)確かにそうですね。ただ、クリニックが全額負担ではないものの、一部を補助している形になります。
(高山)なるほど。利便性の提供と、少し安く購入できるという点が福利厚生の一環ということですね。経理上の処理はどうなるのか気になりますが。
(大西)一般企業では、福利厚生というと住宅手当もありますよね。
(高山)そうですね。
(大西)これはクリニックにとっては悩ましい問題です。
例えば最近、地方から東京に出てくるスタッフに対して、家賃が高いから住宅手当をつけてほしいという相談がありました。
そのクリニックにはもともと住宅手当の制度がなかったので、どうしようかという話になったんです。
結局、クリニックがマンションの一室を借りて、借り上げ社宅として安く提供するという形を取りました。
(高山)それは一般的な対応ですよね。給与明細に「住宅手当」として項目を追加しても、それは所得の一部とみなされて所得税の対象になりますから、結局は給料が上がったのと同じことになってしまいます。なので、住宅関連の福利厚生は借り上げ社宅という形が合理的ですね。
スタッフが本当に求めているものは?
(高山)そもそも、スタッフの皆さんは何を一番求めているのでしょうか?
(大西)お金です。
(高山)やはり、お金ですか。
(大西)これはクリニック特有の問題かもしれませんが、特に事務スタッフの給料は安い傾向にあります。
月給20万円前後だと、今の最低賃金ギリギリということも少なくありません。時給換算すると最低賃金を下回ってしまうケースすらあります。
難しいのは、看護師やコメディカルスタッフの給料はしっかりしている一方で、事務スタッフの給料だけがガクンと下がってしまう点です。
かといって事務スタッフの給料を上げると、経営を圧迫することになりかねません。
だからこそ、付加価値として福利厚生を充実させようと考えるわけです。
しかし、事務スタッフの立場からすれば、扶養の範囲内で働く「103万円の壁」の問題もあり、フルタイムで働きたいけれど給料が安い、というのが医療機関に対する悩みの一つになっています。
(高山)働く側としては、例えばお子さんが大学に進学するなど、お金がかかる時期でもありますよね。
(大西)おっしゃる通りで、30代、40代のスタッフがメインなので、年収で最低でも300万円は欲しいというのが本音でしょう。
そう考えると、福利厚生を充実させても、それが直接採用活動の決め手につながるかというと、難しいかもしれません。
新しい福利厚生の形「学びの支援」
(大西)ただ、お金だけではない面白い傾向も最近出てきています。それは、他のクリニックに見学に行きたいというスタッフが増えていることです。
(高山)見学ですか。
(大西)そうです。自分の仕事のやり方が正しいのか確認したい、何か参考にできることはないか、といった学習意欲の表れですね。
他にも、学会に参加したいという声も聞かれます。こうした「学び」に関する福利厚生は、もっと積極的に取り入れてもいいのではないかと感じています。
(高山)それは事務スタッフの方から出てくる要望なのですか?
(大西)そうです。
(高山)それは興味深いですね。看護師が学会に参加したいというのはよく聞きますが、事務スタッフがそこまで積極的に自分のスキルを高めようとするのは、以前はあまりなかったイメージです。
(大西)ええ、少なかったです。しかし、医療事務という職業そのものが変わりつつあるのかもしれません。
これまでは診療報酬に詳しい人や、レセプト点検が得意な人が評価されてきました。
しかし今はそれ以上に、院内の仕組みをきちんと回せる人や、業務の効率化を考えられる人が求められるようになっています。
スタッフの意識の変化と生産性向上
(大西)生産性向上というテーマに、現場の流れが変わってきているんです。スタッフ自身もそれを感じているのではないでしょうか。
例えば、以前は「スタッフが3人必要だ」と言っていた現場が、「2人でいいから、2人で回せる方法を考えたい」と提案してくるようになりました。
(高山)それは良い傾向ですね。もちろん、そうせざるを得ない状況に追い込まれているという側面もあるでしょうが、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが重視される中で、効率化は当然の流れです。
自分の時給単価を上げるための究極的な手段は、生産性を上げて、これまで3人でやっていた仕事を2人でこなせるように工夫することですから。
スタッフが自ら工夫し始めたという印象を受けます。
(大西)私たちコンサルタントも、この10年間、「人を増やす前にDXを導入したり、少ない人数で回す方法を考えたりしましょう」と、生産性向上の必要性を訴え続けてきました。
その結果、私がお手伝いしているクリニックでは、スタッフのマインドが変わり、「人が多いと自分の取り分が減る」ということに気づき始めています。
「人は増やさなくていいので、その分、私たちに還元してください。その代わり頑張りますから」と理解してくれるようになりました。
残業を減らしたり、有給休暇を取得したりすることも、生産性が向上しなければ実現できません。
効率化を目指すことが、結果的に自分たちの待遇改善につながるんだという意識が根付くと、組織は大きく変わります。
(高山)そうですね。まずはそういった考え方があるということを、院長からスタッフに伝えることが大切ですね。
福利厚生の本質と人材への考え方
(大西)今日のテーマである福利厚生に話を戻すと、福利厚生を勝ち取るのはスタッフ自身でもあるんです。
だから、「どんな福利厚生が欲しい?」というワークショップを開いてみると、面白い意見が出てくるかもしれませんよ。
(高山)確かに。個人の利益だけを考える人と、組織全体を良くすることで結果的に個人の利益につなげようと考える人では、出てくるアイデアも違うでしょう。
それぞれの意見を融合させていく機会は大事かもしれません。
(大西)その根底にあるのは、「何のために働くのか」という問いです。お金のためだけに働くと考えると、より条件の良い場所へと転々としてしまいがちです。
しかし、一つの場所で長く働く方が、結果的に転職する際にも有利になることがあります。
自分で自分の居場所をしっかりと築いていくという視点を持ってほしいと、私は思っています。
(高山)そうですね。一緒に働いていても、組織にとって「いなくてはならない人」、「いると助かる人」、そして「いると少し困る人」がいます。
生産性向上を自ら考えるようなスタッフは、間違いなく「いなくてはならない人」へと成長していくでしょう。
(大西)人材には「財産の財」「材料の材」「罪の罪」の3種類がある、という話をすることがあります。
ただ、自己肯定感が低い人も多いので、この話は慎重にしなければなりませんが、院長自身は心の中に「人を見極める尺度」を持っておくべきです。
そして、こういう時代だからこそ伝えたいのは、「人手が足りないから、とりあえず採用する」というのはやめるべきだということです。
先日もあるスタッフが辞める際に、院長が「すぐに補充しないと!」と焦っていましたが、「補充しない、という選択肢はないですか?」と問いかけました。
残ったスタッフと話し合ってもらったところ、結果的に「補充は必要ない」という結論になったんです。時代は変わったな、と感じました。
(高山)組織が筋肉質になることで、無駄なコストやコミュニケーションロスが減り、結果的に効率化が進むんですよね。
(大西)その通りです。パートスタッフを5人雇うよりも、正社員2人の方が組織としては強い。その根底に必要なのは、スタッフ一人ひとりの「改善意識」です。
(高山)福利厚生という軽いテーマから始まりましたが、思わぬ本質的な話になりましたね。
結局、福利厚生というのは、組織を活性化させ、良い方向に導くための動機づけの一つで、その目的意識に合った福利厚生を考えることが重要だということですね。
(大西)報酬という人参をぶら下げる旧来のやり方ではなく、スタッフの内なる炎を燃やすための薪になるような福利厚生、ということですね。
(高山)先ほどの「学会に参加したい」というような、学びへの投資は、まさに福利厚生の正しい形かもしれません。
(大西)「学びの福利厚生」、それが今日の結論ですね。
(高山)クリニックの先生方には、良い人材を採用し、育てていくという視点から、ぜひ一度、福利厚生を見直してみてはいかがでしょうか。
はい、ということで、この続きはまた次回にしたいと思います。大西さん、今回もありがとうございました。
(大西)ありがとうございました。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、最後までお聞きいただきましてありがとうございました。
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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。
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DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)
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