地域から求められる医療と介護の実現に向けて / 新潟医療福祉大学 特任教授 青柳親房

新潟医療福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科 特任教授の青柳親房様に、地域包括ケアシステムの視点から見るこれからの医療と介護について伺いました。
青柳様には、現在公開中のCPA EXPOでもご講演いただいています。

CPA EXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『患者に求められるクリニックとは-地域包括ケアシステム・在宅医療の視点からみるこれからの医療・介護-』
本講演でお話する内容は主に3つです。
①2005年から始まった地域包括ケアシステムの構想ですが、当時から今に至るまでで様々な変化がありました。その上で、医療と介護の連携面で見直すべき点があると感じており、その辺りを詳しくお伝えしたいと考えております。
②地域包括ケアシステムを成り立たせるために必要な要因について。
③2024年には、医療計画や介護保険事業計画、診療報酬、介護報酬が同時期に改定されるため、それまでにしっかりと準備、検討を重ねれば、より良い医療と介護の連携を実現させるためのチャンスだと捉えています。
そこで、2024年の改定までに我々が議論すべき内容について、私の居住している練馬区のケースも絡めてご紹介いたします。


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地域包括システムの現状をお聞かせください

2025年までのシステム構築を目指して
諸外国に例を見ないスピードで高齢化が進む日本では、2005年以降厚生労働省を中心に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み馴れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

現状では、全国約1700の市町村が中心となって、それぞれの地域規模や特色に根ざした地域包括ケアシステムの構築に尽力している段階であり、2025年までの構築を目指しています。

しかし、当初考えていたシステムと現在に至るまでの変化を踏まえて、医療と介護の連携については改めて考え直す余地があると考えており、この辺りについては詳しくお伝えできればと思っています。

クリニックが在宅医療に取り組むのは当たり前になるのでしょうか

実現のためには医療と介護の連携が重要
結論から言えば、多くのクリニックが24時間365日の在宅医療をやることが当たり前になっていくのは難しいと考えています。
これは、在宅療養支援診療所において現状の診療報酬制度では明確に評価されている疾病が非常に限られているからです。

さらに言えば、在宅医療に慎重なクリニックの医師からは、24時間365日の医療提供はハードルが高く、また現実に在宅医療に取り組んでおられる医療関係者から伺う声は本当に医療が必要な患者からの呼び出しだけではなく、むしろ心細さや不安におそわれた高齢者からの呼び出しも少なくないと言うのが本音だと思います。

しかし、だからこそ地域包括ケアシステムの構築をさらに推進し、医療と介護の連携がさらに増すことで、こう言った問題はある程度解消できるのではないかと考えています。

具体的には、高齢者からの呼び出しに対して、いきなり医療機関や訪問介護ステーションに連絡が行くのではなく、定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスなどを利用して介護事業所に先に連絡が行くようなシステムを構築するのです。
その上で、駆けつけた介護職員が必要に応じてクリニック等に連絡をして医療提供必要に応じてクリニック等に連絡をして医療提供に結び付ければ、医療の負担をある程度軽減できると考えています。

こう言った地域包括ケアシステムを構築する上で最も重要な点は、自治体や関係者が間に入り、「どうしたら医療従事者の負担を考えた上で患者のニーズを満たせるか」を念頭に置いて行動していく必要があるということです。

高齢者のみならず、障害者や子供に対しても同様の対応ができれば理想的であり、それぞれの地域における地域福祉計画の策定も含めて検討して行く必要があると考えています。

理想とする未来の医療はどのような姿でしょうか

医療以外の側面の拡充が急務
地域包括ケアシステムに含まれる医療、年金、介護、保健、福祉などの側面のうち、医療だけが突出している状態は健全ではないと考えています。
それぞれがバランスを取り合いながらうまく連携し合い、互いの負担を軽減しながら患者のニーズを満たしていくことが、理想的な未来の医療の姿だと考えています。

優れた医療以外にも地域包括ケアシステムには必要なファクターがたくさんあると考えており、以上のことからも、患者さん(利用者さん)に信頼され、医療従事者にも頼られるようなソーシャルワーカーの教育が急務であると痛感しています。

医療業界の変化の波に乗れるクリニックの特徴を教えてください

地域で求められている役割を模索し続ける
自己完結型の医療提供ではなく、どのようにすれば地域の中で医療、介護、福祉などの複数分野がともに同じ方向を向いて医療提供を行えるか模索し、早期に良いパートナーを見つける事が出来るクリニックこそが生き残って行くと思います。

選挙に喩えて「出たい人より、出したい人」という言葉があります。
クリニックも同様で、自分が関心のある、やりたい分野の治療を追い求めるのではなく、地域の中で自治体がどういった方向性を求めているのか理解し、患者の生の声を聞いた上で、地域の中で自分に求められた役割を模索し、常にアンテナを張っているクリニックこそ今後求められて行くのではないでしょうか。

プロフィール


新潟医療福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科
特任教授
青柳親房氏

昭和51年に東京大学経済学部を卒業し、当時の厚生省に入省しました。
厚生省では、年金、介護保険、医療保険、社旗保険などの制度の製作や改訂に携わりました。
その後、三重県福祉部老人福祉課長・社会課長、厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長、内閣参事官(中央省庁等改革推進本部事務局)、厚生省保健医療局企画課長・厚生労働省健康局総務課長、厚生労働省政策統括官付参事官(社会保障担当)、社会保険庁運営部長、厚生労働省九州厚生局長などを歴任し、平成21年に厚生労働省を退官しました。
平成26年より現職につき、社会保障論や福祉行財政・計画・運営論について教鞭をとっています。

他に、拓殖大学大学院地方政治行政研究科非常勤講師、協会けんぽ新潟支部評議員、新潟県地域包括ケアシステム推進会議委員、新潟市北区地域福祉計画推進委員などを務めてきました。

これらの経験から、現在は主に医療、年金、介護、福祉などの制度に関する内容についての議論や、これらを含めた地域福祉計画に関する事業内容についての議論を中心に行っています。

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