理念の改新と実践化によるスタッフの意識改革 / 医療法人hi-mex 徳永雅之氏


医療法人hi-mexの事務長を務める徳永雅之氏に、理念の改新と実践化についてお話を伺いました。医療法人hi-mexは大阪府和泉市で耳鼻科クリニック3院を展開。規模の大小にかかわらず、クリニック経営にはスタッフ管理が重要だとおっしゃいます。
徳永氏には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOにご登壇いただきます。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『院長を支えてくれるスタッフが育つ5つのステップ』
今回は、スタッフマネジメントに役立つ課題を5つのステップで紹介します。

クリニックの多くの院長先生は、スタッフに関する色々な悩みを抱えているかと思います。
人がすぐに変わるのは難しく、自院で取り組みをしても、スタッフ間で拒否反応も起こることがあります。このような困難な状況を乗り越えるために、じっくりと取り組める方法を段階に分けてお伝えします。

講演では理念についても触れていますが、私自身も「自分が何をしたいのか」「どんな貢献をしたいのか」を大切にしています。具体的には、チームで協力しながら、スタッフがやりがいを感じたり、患者さんに感動を与えたりできるような職場づくりを実現したいと考えています。

クリニックの院長先生のお話を聞くと、スタッフマネジメントで苦労されている方が多いです。その中で、あの手この手を尽すもののなかなか思うようにいかずお悩みの先生がいらっしゃいましたら、何か新たなヒントとしてお役に立てればと思います。

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事務長として現在取り組んでいることを教えてください

医院の理念を改新。実践化のため取り組みも
理事長の希望もあり、医院の理念の作り替えとその浸透を行いました。
新しい理念は「想いをカタチにする医療で、みんなの豊かな人生を創る」というものです。理念を掲げるクリニックは多いですが、何となくつかみどころがなく、スタッフがどう仕事に生かせばよいのか分からない状態のことが多いのが現実です。

新しい理念の浸透の前に、スタッフ自身が大切にする仕事観や働くことにどのような価値や意味を見出すかが大事だと考え、2ヵ月に1回ペースでグループワークを1年間行っています。
具体的には、スタッフ個々の転機となった体験を語り合ったり、患者さんのことをトコトン考え抜く時間を設けたり、スタッフ同士で理念研修をしあいました。スタッフ自身がどのように働きたいのか、どんなふうに貢献したいのか等の探求を続け、最後に「わたしの働く意味」について全員が発表をする予定です。

仕事の意義が明確になり、スタッフの自尊心が向上

当初は、「働く意味をここまで深く考えることはなかった」と言うスタッフがほとんどでした。ただ、実際にはスタッフそれぞれの中に、大切にする仕事観や患者さんや仲間のためにすでに貢献している価値はたくさんありました。意識されていないだけなのです。

ですので、ワークショップでは、ただ教えるのではなくスタッフ自身が対話をしながら、何かに気づけるように努めました。医療の仕事の意義を確信し、自分がやっていることの価値を自覚しはじめたことで、いい意味で自信や誇りを持つスタッフが増えてきました。面白いことに、自ずと自分が働く意味と理念が結びつくシーンがそこかしこで生まれました。
私自身もスタッフが満足できる職場作りを目指して、悩んだり楽しんだりしながら取り組み続けた経験が活かされたと思います。

クリニックの事務長になられたきっかけを教えてください

前職は畑違いの営業事務マネジメントに従事
クリニックの事務長になって8年経ちますが、以前は専門商社で営業や経理の補助、営業事務のマネジメントをしていました。1000人規模の会社でしたが、仕事を楽しんでいる社員が少なく、みんなバラバラの状態でした。会社の軸になるようなビジョンもなく、社員同士が連携して協力できたらとずっと考えていました。

どうせ働くのなら、仕事を楽しんだ方がよい結果につながると思います。いい仕事ができれば顧客貢献にもつながり、感謝もされるでしょう。前職では自分の理想の実現が難しく、次の職場を探す中で自院を紹介していただきました。

理事長と組織のビジョンが一致。いち医師としての使命感に敬意も
クリニックは組織がコンパクトなので、運営上の一貫性を保ちやすくいい組織がつくりやすいです。何より、理事長である老木が、スタッフに生き生きと働いてほしいと考えていることに強く共感しました。

また、耳鼻科クリニックは手術をしない施設が多いですが、理事長は開業しても耳鼻科医として手術を続けたいと考えていました。これまで研鑽を積んできた技術と経験でできる限りの患者さんを診たいという想いからです。

彼は「ジタバタする医療」をポリシーにしており、患者さんのために最後まであきらめないことを大切しています。このような医師としての姿勢にも感銘を受け、自院の事務長をすることに決めました。

事務長として解決したい課題や今後の展望について教えてください

スタッフが自発的に動く医院づくり
理想は、院長や事務長である私が細かい指示を出さなくても、スタッフが考えて動いてくれることです。すでに、以前よりも事務長としての負担は少なくなっています。

当初は理事長と私で決定して、ひとつひとつの課題の解決をしたいと考えていました。今は、スタッフがやりがいと使命感を持ちつつ、各々の個性を発揮しながら自発的に動いてくれます。

理事長自身も、以前は自院のことは全部把握して決定したいと考える人でしたが、現在は、スタッフを信頼して任せるようになり、いい意味で全て把握をしていないかもしれません。耳鼻科医として診療に集中しやすい環境にいるといえます。

プロフィール


医療法人hi-mex
事務長
徳永 雅之氏

老木理事長とともに、大阪和泉市の耳鼻科クリニック3院の運営をしています。
本院は、慢性副鼻腔炎・鼻中隔湾曲症・慢性中耳炎などに対する短期滞在手術に対応しており、法人全体では、60名のスタッフが日々クリニック業務に勤めています。
私自身は、事務長として、理事長と二人三脚で法人運営の全般を担っており、直属の部下であるマーケティング担当、人事総務や経理の3名とともに、各院の運営にも携わっています。