PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)とは?

PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)

PHRの概要

PHR(Personal Health Record)とは、患者自身が自分の健康・医療情報をオンラインで閲覧・管理できる仕組みです。

どんな情報が含まれる?

以下のような情報が対象です。

  • 特定健診・検診結果
  • 予防接種履歴
  • 電子処方箋情報
  • 薬剤情報(レセプト)
  • 電子カルテ情報(検査結果や診療内容等)
  • 妊婦健診、乳幼児健診情報 など

これらはマイナポータルやPHRサービス事業者(民間)を通じて患者が閲覧でき、同意のもとで医療機関側も閲覧可能となる情報です。

PHRの導入スケジュールと現在の状況(2025年時点)

PHRの導入は、政府が掲げる「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」の一環として、段階的に整備されてきました。2020年以降、閲覧対象の拡大と民間サービスとの連携が進められており、2025年現在では以下のように展開されています。

◆ 2020~2021年度

  • 特定健診・予防接種履歴等のマイナポータル閲覧が開始。
  • 民間PHR事業者とマイナポータルとのAPI連携も始動。

◆ 2022年度

  • 学校健診、事業主健診、妊婦・乳幼児健診など、自治体や教育機関の健診情報がマイナポータルから閲覧可能に。
  • 健診結果データの標準フォーマットも策定され、自治体間やPHR事業者との連携がしやすくなった。

◆ 2023年度

  • 電子カルテや検査結果の一部もPHRとして提供可能に。
  • 民間PHR事業者に対する第三者認証制度が開始。情報セキュリティや本人同意の取扱いに関するガイドラインも整備。

◆ 2024年度~現在(2025年)

  • 全国の学校健診への対応が進められ、多くの教育機関とマイナポータルの連携が完了
  • PHR閲覧環境の利便性向上に向けた改善(マイナポータル以外の閲覧手段も検討中)
  • 一部のPHR対応電子カルテ・レセプトシステムがクリニックで実運用され始めている

このように、PHRはすでに実用段階に入りつつあり、今後も対象情報や利便性が拡充される予定です。
クリニックでも、「PHRからの事前情報取得」や「PHRに連携する電子カルテ製品の選定」が現実的な課題になり始めています。

今後どう波及していくか?

PHRは、単なる患者サービスの一つではなく、医療提供の質や効率に直結する基盤インフラとして今後さらに普及が見込まれます。

患者の情報を「持ち込む」時代へ

これまでは問診票や紹介状に頼っていた患者情報も、PHRの普及により患者自身がマイナポータルやアプリを通じて、診療情報や検査結果を提示できるようになります。

  • 例)「最近の特定健診の結果をスマホで見せる」
  • 例)「予防接種歴をアプリ経由で提示」

→ 初診時の情報収集がスムーズになり、問診・診断の精度向上が期待されます。

クリニックにもPHR活用の流れがやってくる

国の「全国医療情報プラットフォーム」整備により、将来的にはレセプト、電子カルテ、健診・検診情報などもクリニック間・地域間で連携可能な前提で制度設計が進んでいます。

  • すでに一部の電子カルテや予約システムではPHRとの連携が始まっている
  • 医師・患者双方が「PHRによる情報共有」を前提とした運用に慣れることが求められる

クリニックが今からできる対応

ポイント 具体的な対応内容
PHRの仕組みの理解 スタッフ含め、PHRとは何かを簡潔に共有。診療時に患者から提示される可能性を意識。
PHR提示への対応手順整備 患者がマイナポータルやPHRアプリから情報を提示した際、受付や診療でどう確認・活用するかを院内で共有。
電子カルテの対応状況を確認 使っているカルテソフトがPHR連携に対応しているか、ベンダーに確認(将来的な買い替えや更新の判断材料にも)。
個人情報の取扱ルール整備 PHRの閲覧には本人の同意が前提。クリニックとしても適切な同意確認・情報管理の体制が求められる。

まとめ

PHRの普及は、医師にとっても患者にとっても「無駄のない、質の高い医療」を実現する一歩です。
政府が主導する医療DXの柱として、近い将来、PHRを前提とした診療体制がスタンダードになる可能性は高く、今のうちから情報収集と備えを進めておくことが望まれます。

参考
第44回厚生科学審議会資料(令和4年2月2日)
経済産業省資料「医療DXの推進について」
総務省「PHR サービス提供者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」の公表(令和7年4月30日)

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この記事の執筆監修者

DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)

DOCWEB編集部は、2016年の設立以来、一貫してクリニック経営者の皆さまに向けて、診療業務の合理化・効率化に役立つ情報を発信しています。
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