クリニック開業の集患と経営不安を整理|患者数の目安・診療圏調査・実践的集患対策【クリニック開業見通しサポートガイド】

「開業後、本当に経営は成り立つか?」 診療圏調査・資金繰り・集患対策をまとめ 黒字化の道筋を解説

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はじめに:開業医に共通する「集患不安」

クリニックの開業準備を進め、内装やスタッフ採用も整ってきた頃、多くの医師が直面するのが

「果たして患者さんは来てくれるのだろうか」

という不安です。
勤務医のときには病院や組織の看板があり、患者は自然と来てくれました。しかし、開業医はゼロからのスタートです。地域に認知されず、患者数が伸びなければ経営はたちまち苦しくなる。この「集患不安」は、開業直前に必ず押し寄せてきます。

本記事では、その不安の正体を解き明かし、合理的に課題へ置き換えていくための視点を整理します。

クリニックは”固定費型ビジネス”だからこそ強まる不安

医療機関の経営は「固定費型」です。家賃や人件費、医療機器のリース代などは、患者数に関係なく毎月支払い続けなければなりません。

総収入 -(変動費+固定費)= 利益
利益 - 税金 - 借入返済 = 手取り

この仕組みを見れば、損益分岐点を超えるまでは赤字が続きやすい一方、軌道に乗れば利益が大きく伸びることも理解できます。だからこそ、開業初年度に資金ショートを起こさないことが最重要課題になります。

「1日何人診れば経営が成り立つのか」を把握し、運転資金を厚めに確保しておくことが、安心感に直結します。診療科によって平均患者数は大きく異なるため、自分の診療科の相場を確認し、保守的にシミュレーションすることが欠かせません。

個人クリニックの損益構成図例(総売上高ー変動費・固定費=利益、利益ー税金・借入金=手取り)

不安を分解する ― 情報で見通しを持つ

不安を和らげる最初の一歩は、「数字と事実で現実を直視すること」です。

診療圏調査の限界と活用

診療圏調査は、候補地における患者数のポテンシャルや競合の存在を見極める基本資料です。
想定患者数は「エリア人口 × 受療率 ÷(競合医院数+1)」で推計されます。

しかし、単純な計算だけでは不十分です。将来のマンション建設や再開発計画、住民の年齢層や交通の流れなども加味する必要があります。例えば、駅前にありながら「駅とは逆方向に住民が流れる立地」では患者が集まりにくいケースもあります。

こうした診療圏調査の手法や注意点は、別記事で詳しく解説していますので参考にしてください 。

→クリニック開業のダンドリ:マーケティング戦略の全体像

患者ターゲティングの明確化

地域の人口構成や競合状況が見えたら、「誰に選ばれるクリニックにするのか」を決める必要があります。
高齢者層を重視するのか、子育て世代をターゲットにするのか。
それに応じて診療時間、接遇、院内動線、情報発信のスタイルが変わります。
子育て世代をターゲットにするなら、健診はもちろん、発熱外来なども検討すると、初診のきっかけを得ることができます。
また、「幅広く診察する地域のかかりつけ医」を目指すなら、在宅医療の知識を付けたり、地域包括支援センターとの連携に力を入れると良いでしょう。
ターゲット層の生活に一歩切り込んだ経営戦略を立てると「受診しやすい・安心感のある」クリニックとして選ばれる機会が増えていきます。

開業前後にできる実践的な対策

ここではフェーズごとに有効な施策を整理します。詳細なノウハウは既存記事に譲り、本記事では全体像を俯瞰できるようにしました。

開業前

開業直後

開業半年〜1年

承継開業なら集患は万全か?承継に潜む落とし穴

「承継だから集患は問題ない」と安心してしまうのも危険です。実際の現場では、想定していなかった集患リスクが潜んでいます。

患者の離反リスク

  • 内装の古さ:築年数が経ったままの施設だと、「清潔感がない」「古臭い」と感じられ、特に新規患者の獲得に不利に働きます。内覧会での印象が集患に直結するため、承継時こそ小規模でもリフォームや徹底清掃の検討が必要です。
  • スタッフの雰囲気の違い:患者にとっては「顔なじみのスタッフ」も通院を続ける理由のひとつ。スタッフの入れ替えや接遇スタイルの変化は、意外と大きな離反要因となります。
    採用・教育段階で理念の共有を丁寧に行い「前と同じ安心感」と「新方針の理解」をどう両立してもらうかが重要です。
  • 前院長との比較:承継後の患者からよく聞かれるのが「前の院長はもっと薬を出してくれた」「時間をかけて診察してくれた」といった比較の声です。これに正面から反論しても信頼は得られません。現状と治療に必要なこと・方針を丁寧に説明し、徐々に信頼を再構築する姿勢が求められます。

経営・集患面の落とし穴

  • 地域の認知がリセットされる可能性:承継だから地域に自動的に認知されると考えがちですが、院長が変わると「新しいクリニック」として再認知が必要になるケースがあります。特に口コミや紹介で支えられていたクリニックでは、地域への再アプローチ(挨拶回り、内覧会)が不可欠です。
  • スタッフの既存文化:承継でスタッフをそのまま引き継ぐ場合、院長が変わっても従来のやり方に固執することがあります。経営理念や勤務ルールを最初に丁寧に共有し直さないと、スタッフとのズレが患者対応に直結し、集患の足を引っ張ることになりかねません。

承継を成功させるための心得

承継を成功させるには、「そのまま引き継ぐ」のではなく、むしろ「新たな信頼を築く」つもりで臨むことが大切です。前院長の方針や患者層を事前に確認し、必要なら地域住民や基幹病院への再挨拶、内覧会の実施を組み合わせる。
承継開業はゼロスタートよりも有利な面は確かにありますが、「安心材料」ではなく「新しい課題が表面化しやすいフェーズ」と理解しておくと、不安を過小評価せず、現実的に備えることができます。

クリニック開業のトレンド(1)承継と経営スタイルの変化

資金繰りリスクに備える合理的な選択

開業一年目しばらくは赤字の経営となる可能性もありますが、特に資金ショートは、開業初年度で最も避けたい事態です。
クリニックの効率化や利便性のため、先行投資を大きくして立ち行かなくなることも、クリニック開業では珍しくないことです。

  • 来院数は楽観視せず、保守的に計算する
  • 運転資金は半年分は事前に準備し、借入枠も余裕を持たせる
  • ツール導入は従量課金制や拡張可能なものを選び、スモールスタートから始める

合理的に準備していれば、不安は「備えがある」という安心感に変わります。

ミニマム開業で成功するには?医療DXツール段階的導入のススメ

不安を課題に変える心構え

集患の不安の裏には、資金ショートへの恐れがあります。固定費が重いクリニック経営では、運転資金を厚めに準備していても、日々の資金繰りやスタッフ管理に神経をすり減らしがちです。

こうした負担を和らげる一つの手段が、事務長代行の活用です。経営や人材マネジメントを外部に任せることで、資金計画や集患施策を数字に基づき整理でき、不安を「管理可能な課題」に変えることができます。院長は診療と方向性の判断に専念できるため、資金繰りの不安を現実的に抑え込む手助けとなります。

誰も知らない‶クリニック院長の孤独〟に共感し、裏で支える事務長代行という仕事


まとめ

「ちゃんと集患できるだろうか」という不安は、開業医が必ず通る道です。しかし、その不安の多くは数字で把握でき、対策を講じられる課題です。

診療圏調査で地域のポテンシャルを見極め、ターゲティングで「選ばれる理由」を明確にする。資金計画を保守的に組み、スモールスタート可能な仕組みを導入する。そして、開業前後の施策を一つずつ実行していく。

不安を放置せず、課題へ変換し、合理的に捌いていくことこそが、開業成功への最短ルートです。

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よくある質問(FAQ)

Q. 開業直前に一番多い不安は何ですか?

A. 多くの医師が「患者さんが来てくれるか」「経営は成り立つのか」という集患不安を抱えます。特に固定費型の収支構造ゆえ、資金ショートへの懸念が強くなります。

Q. 承継開業なら患者はそのまま残りますか?

A. 必ずしもそうではありません。内装の古さやスタッフ対応の違い、前院長との比較で離反が起きるケースもあります。承継こそ「新しい信頼関係の構築」が必要です。

Q. 集患のために最初にすべきことは何ですか?

A. 診療圏調査で地域のポテンシャルを把握し、挨拶回りや内覧会で早期に地域と関係を築くことです。並行してホームページを公開し、予約システムや情報発信の基盤を整えるのも効果的です。

Q. 資金繰りの不安はどう減らせますか?

A. 来院数を保守的に見積もり、運転資金を厚めに確保することが基本です。加えて事務長代行など外部の専門家に経営や集患を任せれば、院長は診療に集中でき、資金繰りの不安を現実的に抑えられます。

この記事の執筆監修者

DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)

DOCWEB編集部は、2016年の設立以来、一貫してクリニック経営者の皆さまに向けて、診療業務の合理化・効率化に役立つ情報を発信しています。
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