コロナの影響による「がん診断の検査数」の一時的な減少を初めて確認

千葉大学医学部附属病院(所在地:千葉県千葉市、病院長:横手 幸太郎)は、千葉大学大学院医学研究院、公益財団法人ちば県民保健予防財団との共同研究により、厚生労働省が蓄積管理しているレセプト情報などを利用して、がん診断のために行う検査の数がCOVID-19パンデミックの前後でどう変化したのか、調べたところ、パンデミック直後に一時的に減少していたことを初めて確認した。その後、速やかに回復したものの、減少分を補うほどの増加は認められず、一部のがんの未発見やその後の予後の悪化が懸念される。本研究の成果は、1月11日に、学術誌Journal of Cancer Research and Clinical Oncologyに掲載された。

研究の方法

厚生労働省からNDB(National Database)(※1)のうち、2015年1月から2021年1月のサンプリングデータセット(※2)の提供を受け、各検査の診療報酬明細書件数をカウントし(1月、4月、7月、10月) 、パンデミックがなかったと仮定した場合の検査数の予測値と実際の検査数の変化量を推定した。
その結果、多くの検査は、パンデミック直後の2020年4月と7月に減少し、その後速やかに回復したが、検査によっては、やや長期に影響を受けたものもあった(「解析方法」参照)。

【対象の検査】 胃内視鏡検査、胃生検、大腸内視鏡検査、大腸生検、肺X腺検査、肺CT検査、肺内視鏡検査、肺生検、マンモグラフィー、乳生検、乳センチネルリンパ節生検、子宮頸部細胞診、子宮頸部コルポスコピー、子宮頸部生検

【解析方法】
時系列分析(※3)という手法を用いて、パンデミック前の検査数の推移から、パンデミック後の検査数の予測(パンデミックがなかったと仮定した場合の検査数の予測値)と実際に観察された検査数の変化量を推定した。

※1:高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、厚生労働省が蓄積管理している「レセプト情報・特定健診等情報データベース」。我が国の診療報酬明細書情報と特定健診・特定保健指導情報が蓄積されている。
※2:NDB情報は、研究等が利活用するために、一定の条件の下、第三者に提供されている。提供形式は3種類あり、そのうちの一つがサンプリングデータセット。サンプリングデータセットは、年に4回(1月、4月、7月、10月)、NDB情報から診療報酬明細書情報を一定の確率で抽出したもの。
※3:Interrupted time-series analysis using seasonal autoregressive integrated moving average (SARIMA) modelsを用いて解析を行った。この方法を用いることで、自己回帰、移行平均、トレンド、季節変動を調整したうえでの変化量を推定することができる。

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