DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
オープニングトーク
(高山)おはようございます。パーソナリティのDOCWEB編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第17回始まりました。大西さん今回もよろしくお願いします。
(大西)はい、よろしくお願いします。 今日のテーマは何ですか?
今回のテーマ:クレーム対応
(高山) 今日のテーマは何ですか?
(大西) クレーム患者への対応です。
(高山) 最近、大西さんは医療事務のクレーム対策を研究されているとお聞きしましたが、どのような内容でしょうか?
(大西) 医療事務向けのクレーム対応研修のニーズが増えています。医療事務の専門学校とも共同で、クレーム対策の研究を進めているところです。
クレーム社会と口コミ社会
(大西) 世の中はクレーム社会、さらに言えば口コミ社会です。先生方が一番頭を悩ませているのはGoogleの口コミで、「どうにかしてほしい」という相談をよく受けます。一度書き込まれるとずっと表示されてしまうため、全体の口コミ数が少ない場合、1件のクレームでも大きな割合を占めてしまう、という問題があります。
50件中10件でも2割がクレームと、比率の高さも重要ですが、患者さんは直近の10件ほどしか見ないそうなので、最初の数件の印象が大切です。星の数も重要で、平均点が低いと口コミ欄を見ようとも思われないようです。
お褒めの言葉で埋め尽くす?
(大西) クレーム対策として、「お褒めの言葉で口コミを埋め尽くす」という方法を提案される先生もいますが、私は本質的な解決にならないと考えています。お褒めの言葉を無理に集めようとすると、やらせのように見えてしまう可能性があります。
(高山)実際に、良いコメントを誘導するキャンペーンで批判を受けたクリニックもありました。
(大西)食べログでも同様のことが過去に問題になっていましたね。良い口コミだけを掲載したり、特定の人に書かせたりする行為です。医療機関でも同じことが言えます。Googleはそういった行為をコントロールしているので、発覚するとペナルティを受ける可能性があります。
患者の感想と法律
(大西) 患者さんの感想をホームページに掲載すること自体、法律違反です。治療行為に関する感想を載せてはいけないという決まりがあるのですが、Googleの口コミはそれが許されている。これが、現在訴訟が起こっている原因の一つです。
病院検索サイトとの比較
(高山) 病院検索サイトにも口コミ機能がありますが、Googleの口コミと構造は同じですよね?
(大西) そうですね。病院検索サイトは公式のものなので、公平性の観点から医療機関側が口コミを誘導することは禁じられています。しかし、医療機関に寄せられた感想を都合の良いものだけ選んでホームページに掲載することは可能です。一方、病院検索サイトやGoogleではそれができません。
(大西) 患者側もリテラシーを高め、どれがやらせでどれが真実かを見抜く力が必要になります。食べログのように、病院検索サイトでも口コミが誘導されている可能性は否定できません。公平性という点では問題です。
クレームの種類
(大西) クレームには、スタッフからと患者からの2種類があります。さらに、患者からスタッフへのクレームが先生に伝わるケースもあります。つまり、スタッフのストレスの原因が患者からのクレームである場合です。患者へのケアだけでなく、スタッフへのケアも重要だと考えています。
スタッフを守るためのクレーム対策
(高山) 最近は、スタッフに対して理不尽なクレームをぶつける患者もいると聞きます。スタッフを守るためにも、クレーム対策は重要ですね。
(大西) 医療機関の受付は女性が多いので、男性からの威圧的なクレームに恐怖を感じるスタッフもいるでしょう。私も実際に、激昂した男性患者に代わり対応したことがあります。私のような男性が対応すると、相手も落ち着くことが多いですね。「どうされましたか?お話をお聞きしますので、別室へどうぞ。」と案内し、事務長だと名乗って話を聞きます。「なるほど、そうですね。それは当院の落ち度です。申し訳ございません。」と謝罪すれば、多くの場合納得してもらえます。
暴力とクレームの境界線
(大西) しかし、クレームと暴力は区別する必要があります。レストランで例えるなら、料理にゴミが入っていた時、「なぜゴミが入っているんだ!金返せ!」と言うのは暴力ですが、「ゴミが入っているので交換してください。」と言うのはクレームです。患者さんにはこの点を理解してほしいのですが、難しいですね。人それぞれですから。
クレームの原因
(大西) クレームの原因は様々ですが、調査によると、待ち時間、接遇、説明不足の順に多いようです。待ち時間については、30分以上待たされるとクレームになりやすいと感じています。体感的なものですが、予約制のクリニックでは10分でもクレームになる場合もあります。職種によって時間の捉え方が違うのでしょう。
待ち時間の伝え方
(大西) 患者さんは「何分待ちますか?」と聞くことが多いですが、医療機関側はあまり答えてくれません。レストランでは30分単位で答えてくれるのに、医療機関はなぜか答えてはいけないという風潮があります。
あるクリニックでは、受付に待ち時間を掲示するという工夫をしていました。「現在30分待ちです」のように、少し長めに表示することで、待ち時間について聞かれることがなくなったそうです。
待ち時間の質問
(高山) 入り口に掲示するというのは良い方法ですね。無駄な交渉を避けることができます。「待てる人はどうぞ、待てない人は他へどうぞ」という意味になります。患者さんの動線としても、「今日はどれくらい待つかな?」という疑問は最初に解消しておきたいはずです。
(大西) ドアを開けて「待つのか。じゃあ出直そう。」となるわけです。そうすると質問の内容は「いつなら空きますか?」に変わります。「午後3時以降は比較的空いていますよ。」と伝えれば、患者さんも時間を有効に使うことができます。医療機関は「何分待ちますか?」ではなく、「いつ空きますか?」という質問に答えるべきです。患者さんにとっても、クリニックにとってもメリットが大きいです。
私はいつも、待ち時間を聞かれる前に提示することを勧めています。「待てない方は、空いている時間をご案内します。」と書いておけば、患者さんの方から聞いてきてくれます。
(大西) ちなみに、医療機関は午後1時が比較的空いています。朝や夕方に集中するので、意外に穴場です。曜日では火曜日がおすすめです。月金土は避けた方が良いでしょう。
クレームとコミュニケーション
(大西) クレームの多くは、待ち時間、接遇、説明不足といった、比較的簡単にコントロールできる事柄に起因しています。これらを適切に管理し、患者さんとコミュニケーションを取ることが重要です。
(高山) クレーム内容で言うと、待ち時間の他に、接遇や説明不足などもありますね。
(大西) 接遇はファーストインプレッションで決まります。「はじめまして、こんにちは。」の第一声で印象が悪ければ、クレームに繋がりやすい。感じの悪さは、挨拶ができない、目線を合わせない、言葉遣いがとげとげしいといった要素から生まれます。接遇研修を受けても、30年、40年と同じ対応を続けていれば、なかなか変わりません。急に接遇が変わることはありません。私は、接遇研修を受けさせるよりも、最初から接遇の良い人を採用する方が良いと考えています。
(高山) 接遇の具体的な改善策については、次回に詳しくお聞きしたいと思います。
非言語コミュニケーションの改善
(大西) わかりました。「インプレッション」を分解すると、非言語、つまり見た目と、言語、つまり言葉遣いになります。「人は見た目で9割」と言われるように、ノンバーバルコミュニケーションは大きな影響力を持っています。受付に入った瞬間の雰囲気は、言葉を発する前から伝わってしまうものです。見た目で判断されるということです。言葉を発しなくてもコミュニケーションは始まっているのです。
解決策をすぐに話したくなりますが、まずは非言語コミュニケーションの部分をどう改善していくかが重要です。そして、それがクレームに繋がっているということに気付いていない医療機関が多いことが問題です。
(高山) 気づいていれば直せるというわけではないですが、非言語コミュニケーションの方が改善しやすいですよね。見た目を変えるのは簡単です。服装や化粧、表情、目線など。
(大西) フィジカルな部分を意識的に変えることは有効です。非言語コミュニケーションを研究していくと、「態度」が重要だということが分かります。腕を組むか組まないかだけでも印象は大きく変わるので、意識的に改善していくことが可能です。
(高山) 自分の態度が相手にどう見られているかを客観視するのは難しいですね。
(大西) そうですね。次回、「接遇を劇的に変える方法」というテーマでお話しできたらと考えています。有料級のノウハウになりそうです。
診療内容が伝わらない
(高山) 最後に、診療内容が伝わらないことについてのクレームについてもお聞きしたいです。
(大西) 昔はインフォームド・コンセント(IC) と言われていましたが、最近はSDM(シェアード・ディシジョン・メイキング) という言葉が使われています。先生と患者だけでなく、家族や医療従事者も交えて話し合い、全員が納得した上で治療方針を決めるという考え方です。在宅医療の分野ではかなり浸透しています。患者はセカンドオピニオンを求める権利や、看護師に質問する権利、家族と相談する権利などがあります。
患者の権利
(大西) これまでの医療は、「先生が決めた治療を受ける」という一方通行のものが多かった。選択肢がなかったことが問題でした。患者さんに選択肢を与えることが重要です。
外来診療ではあまり見かけないですね。火傷の治療薬を選ぶ際に、「ゲンタシン軟膏」と「リンデロンVG」のどちらが良いか説明を受けたことがありますか?「リンデロンVGは痒みと炎症に効きますが、ゲンタシン軟膏は炎症だけに効きます。」のような説明です。
(高山) 先生からそういった説明を受けた経験は少ないかもしれません。
(大西)最近は看護師から説明を受けるケースも増えているようですが、薬の選択を患者に任せることはほとんどありません。本来は、レーザーメスを使うか、普通のメスを使うか、CO2で焼くかなど、治療方法を選択できるべきです。自費診療では選択肢が与えられるケースが増えていますが、保険診療では難しいのが現状です。
(高山) 「患者は医療の知識がないから選べない」という意見もありますが、
(大西) それは「患者には知識がない」と決めつけていることになり、危険です。世の中には多くの医療関係者がいます。看護師や医師など、10人に1人は医療関係者だと言われています。彼らは患者と話す時、無意識に言い方を変えているはずです。なぜそれを全ての患者さんにしないのでしょうか?
専門用語と情報量
(高山) 言い方を変えるとは、専門用語を使うのではなく、相手に合わせた情報量で話すということでしょうか?
(大西) そうですね。適切な情報量をコントロールすることが重要です。適当に話すのではなく、相手に合わせて必要な情報を伝える。そこに読み違いが生じるとクレームに繋がります。医療関係者に対してダラダラと説明されると、クレームになりやすい。問診票には職種が書いてあるので、それを見て判断することも可能です。会社員と書く人は少ないですが、私は会社員と書くので、少しややこしいかもしれません。会社員の中にも、医療に詳しい人と詳しくない人がいます。私はクレームを言わずに、「そうですね、知っています。」と思いながら対応します。
(高山) それは患者側の作法として必要なことかもしれませんね。
(大西) 説明不足は、患者さんが期待する説明と実際の説明にズレがあることが原因です。期待している人には詳しく説明し、そうでない人には簡潔に説明する。早く帰りたい患者さんもいれば、たくさん検査をして安心したい患者さんもいます。検査結果を伝える際も、「大丈夫です。」ではなく、「〇〇が正常値なので大丈夫です。」と具体的に説明する必要があります。
クレームの本質
(大西) クレームの本質は、患者さんが期待するレベルのコミュニケーションと、実際のコミュニケーションのギャップにあります。期待値が高い場合は、それに応えなければいけません。逆に、期待していないのにベラベラと話されるとイライラする患者さんもいます。相手の価値観や考え方、忙しいか忙しくないかなども考慮して対応する必要があります。
(高山) 長くなりましたので、続きは後半にしたいと思います。本日はありがとうございました。
(大西) ありがとうございました。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。この番組への感想は「#院長が悩んだら聴くラジオ」でXなどに投稿いただけると嬉しいです。番組のフォローもぜひお願いします。この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。