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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第37回始まりました。大西さんよろしくお願いします。
(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?
今日のテーマ:模擬診療のやり方
(高山)今日のテーマは模擬診療のやり方についてです。
(大西)模擬診療、またはシミュレーションと言われるものですが、以前話した診療フローの設計をさらに具体的に落とし込んで、当日はどうするかといった話をしていきたいと思います。
模擬診療の目的と理想的な実施時期
(高山)以前、診療フローの設計が重要だという話がありましたが、今回はその設計通りに練習・訓練していく方法、具体的な模擬診療のやり方について詳しく教えてください。
(大西)実際やっている内容としては、大体開業2日前くらいに行います。
1日前にもう一度やりたいという先生もいるので、できれば2日間確保したいと思っています。
理由は、フロー通りにいかないことが多く、大体1回目はうまくいかないからです。
うまくいかなかったところを反省し、どう修正していくかが大事です。設計時はうまくいきそうに思えても、実際やってみるとうまくいかない。
楽観的ではなく、失敗から学ぶという姿勢で、たくさん失敗できる場として模擬診療を捉えています。最初にそれを宣言します。
(高山)うまくいかないことに落ち込むのではなく、うまくいかない点を洗い出し本番に備えるということですね。
(大西)開業前はピリピリしているので、うまくいかないと「大丈夫かな」という不安が蔓延します。
例えば、12月2日に開業だとすると、11月の後半に模擬診療を2回行います。
1回しかやっていないと、うまくいかないまま開業当日を迎えることになり、初日からバタバタしてしまいます。
メーカーさんがサポートに入ってくれるので、リカバリーはできますが、最近は当日に立ち会ってくれる回数も減っています。
以前は3日間や1週間だったのが、1日だけというケースも増えてきました。そのため、事前にどれだけ準備できるかが重要です。
模擬診療実施上の注意点
(高山)開業直前に行うべきことですが、既に開業していて診療フローを見直すクリニックでも、同じように段取りを踏んだ方が良いのでしょうか?
(大西)電子カルテの入れ替え時や、紙カルテから電子カルテに移行する際も同じ流れです。
(高山)診療フローが大きく変わる時は、現場スタッフが慣れていないですもんね。
(大西)過去に何百回も模擬診療に立ち会ってきましたが、模擬診療を進行する人がとても重要だと感じています。
私が担当する時は私が行いますが、患者役を先生にお願いすることもあります。
そうすると、1時間に1人しか診られないので、6時間やっても6人しか練習できません。
模擬診療を円滑に進めるためのポイント
(高山)進め方は、やりながら決めていく感じですか?
(大西)実は、決め方がわからないことが多いんです。決まっていない状態で始めることが多い。
細かいことですが、保険証はいつ確認するか、いつ返すのか、問診票は紙かウェブか、予約の有無、保険証の有無など、状況ごとに決めておく必要があります。
それを決めないまま始めると、その都度考えることになり、混乱が生じます。
会議をしながら決めているような状態です。
会議には司会、書記、意思決定者の3人が必要ですが、この3つの役割が機能しないと、先生は業者と話し込んでいたり、受付はバタバタ、看護師は暇そうにしている、といった状況になりかねません。
模擬診療なのに患者が来ない、なんてことにもなります。そして、「開業できそう?」と聞くと「できなそう」と返ってくる。
これでは時間の無駄です。
事前準備の重要性:診療フロー設計と再現性
(高山)診療フローの設計ができていて、再現性が高いことが前提になりますね。
(大西)診療フローがない、決まり事もないのに模擬診療をするというケースが多いです。
模擬診療は、決まっていることを確認し、できていないところを洗い出すためのものです。
開業前に患者役を立ててやってみるというのと違います。
(高山)私もそうなりそうです。
(大西)それで良さそうですが、私の場合は最初1人10分と決めて、次に7分、5分と時間を短縮していきます。
本番に近い状態を作っていくわけです。
(高山)ライザップみたいですね。プログラムが決まっていて、トレーナーが本番に近い形に近づけていく。
(大西)落ち込んだら励まし、なぜミスしたのか、間違えたのかを反省し、次回に活かします。
先日やってみて良かったことは、電源が入らない、ネットが繋がらない、システムが外れているといったトラブルへの対応です。
どうすれば良いかの練習になります。
(高山)慌てずに済みますね。
(大西)慌てますよ。ルータが止まっていたり、サーバーが動かなかったり。
(高山)しかも、自分のせいではないトラブルです。
(大西)どこに電話すれば良いかも分からず、適当なところに電話して、結局全部の部署に電話することになります。
しかし、正しくは上位から連絡する必要があります。
ネットトラブルなのか、電子カルテのトラブルなのか、順番に確認していく必要があります。これは難しいですよね。
(高山)ITに詳しい人ならすぐに分かりますが。
(大西)だから、よくあるのは「昨日の工事で何かトラブルがあったのでは?」と工事会社に電話することです。
「何もやっていません」と言われることもありますが。
(高山)工事会社も不安になりますよね。
(大西)ネットが断線した、ということもあります。オンライン資格確認システムが動かないということもありました。よくよく聞くと、単に繋がっていないだけだったのですが。線の接続なども確認しておいた方が良いです。
(高山)ジャックが間違っていても繋がりません。
「業者さんがやっているから大丈夫」と思って触ってはいけないものに触ったり、「やっちゃおう」と勝手に設定を変えたりすると、混乱します。
(大西)業者から「絶対に触らないでください」と言われているところがトラブルの原因だったりします。
誰も触らないので、接続が抜けていたりする。
システム導入時の注意点とトラブル対応
(高山)最近はシステムを導入するクリニックが多いので、気を遣う部分が増えていますね。
(大西)マイナンバーカードの保険証読み取りや問診、予約など、ネットを使う場面が増えています。
そこで問題になるのがネットのスピードです。
「朝の時間帯はネットが遅い」といったことが起こります。
以前、LAN回線が遅く、100メガだったことがありました。
今は1ギガが普通なので、遅いですよね。ベストエフォートなのか、スピード保証なのかもプロバイダによって違います。
Wi-Fiの混乱なども考えられます。
(高山)目に見えないので難しいですね。
(大西)そういったネットワークトラブルが多いので、確認が必要です。
(高山)Wi-Fiがよく繋がらないこともあります。「繋がった!」と思ったら、なぜ今まで繋がらなかったのか、と不思議に思います。
(大西)IPアドレスが勝手に自動で割り振られると不具合が起きることもあります。
先生に「IPアドレスの振り直しをした方が良いですよ」と言っても、「どうやってやるんですか?」と聞かれることもあります。
(高山)エンドユーザーには分かりませんよね。
(大西)だから、メーカーの立ち会いがあると良いですね。
(高山)全部分かっている人、または切り分けができる人がいると安心です。
(大西)システム関係の業者、ネットワーク設置の経験がある人がいると助かります。
ネットが繋がっているかの確認もしてもらえます。
最初の1週間だけでもいてくれるとありがたいです。
悲劇的なのは、クラウド系のサーバーが開業当日に止まってしまうことです。
(高山)地獄ですね。
(大西)何もできず、待つしかありません。オープン日なのにオープンできない。
(高山)そういうことも想定して、次の手を考えておく必要がありますね。
(大西)初日の過ごし方も慎重にしたいです。
開業初日の過ごし方と心構え
(高山)初日から大繁盛で患者が押し寄せることを夢見ている先生もいるのでは?
(大西)実際に、呼びすぎてクレームになることもあります。
模擬診療の日は工事が途中だったりするので、先生が工事対応に行かなければいけないこともあります。
そのため、院長以外にリーダーを1人決めておくと良いです。
院長が不在の時は、代わりに先生役をやってくれる人がいるとスムーズです。
客観的に状況を把握できる人がいると良いですね。
(高山)クレームは避けたいですが、致命傷にはならないでしょう。
これから何年もやっていく中で、最初のドタバタはよくあることとして受け入れられると思います。
それでも、気持ちの良いスタートを切りたいですね。
(大西)クレームが口コミサイトに書かれることもあるので、怖い時代です。
(高山)Google訴訟のようなことが簡単に起きてしまいます。
(大西)メーカーの立ち会いの人をスタッフと勘違いして、「挨拶しないスタッフがいる」と書かれたこともありました。
(高山)メーカーの人も可哀想ですね。
(大西)メーカーの人の過ごし方も重要です。
どうすれば良いかは、経験が重要になります。
初めてやるのと100回やるのでは全く違います。
そこを求められる立場ではないので、型を作っておくことが重要ですね。
(高山)パターン作りは経験に基づいて行います。流れを想定できるからこそ作れるものです。
コンサルタントの役割と重要性
(大西)初めてでもうまくできるような模擬診療の型を、コンサル会社に考えてもらいたいですね。
(高山)色んなクリニックを見ているコンサル会社がやるべきことです。
積み重ねて、修正して、励まして、お手本を見せるのがコンサルの仕事だと思います。
システム導入によるリスクと対応策
(高山)以前も話しましたが、システムを導入すると、スタッフがシステムに気を取られ、患者への対応がおろそかになりがちです。
患者は診てもらいたくて来ているのに、ほったらかしにされて、スタッフはシステム対応にバタバタしている。
本質を見失っている状態です。システム化の初期は、慣れていないのでリスクとなります。
(大西)システムは楽をするために入れるものなのに、システムのせいで余裕がなくなってしまう。
何のために入れたのか分からなくなります。
そこで頑張り、鼻歌が出るくらい余裕を持って対応できるようにならないといけません。
(高山)本末転倒ですね。特に最初は。
(大西)便利なはずなのに不便になる。
(高山)励ましが大切です。
(大西)「ダメだったね」「もう一回やってみよう」「仕切り直し!」など、元気な声かけが大切です。
(高山)調整して、順番を決めて、もう一度やってみる。チューニングは大変な作業です。
情報共有とリカバリーの重要性
(大西)情報共有とリカバリーの観点が重要です。現場にいた人しか状況が分からず、当日いなかった人は何も知りません。
リカバリーは何度でもやり直せるというマインドが重要です。
このマインドセットがないと、「失敗したら怒られる」「患者に迷惑がかかる」という恐怖で動けなくなります。
(高山)核となるスタッフを作り、前向きに進めていくことが重要ですね。
(大西)楽観的に物事を進める癖をつけてほしい。計画は悲観的に、行動は楽観的に。
(高山)楽観的の定義は人それぞれですが。
適当に、と捉える人もいます。大雑把になったり、雑になったりすると逆効果です。
(大西)英語のポジティブが適切です。ポジティブは前向き、ネガティブは後ろ向きです。楽観的とは少し違います。
ポジティブ思考の重要性と患者中心の考え方
(高山)何に対してポジティブなのかを明確にする必要があります。
システムや診療フローをうまく回すことが目的ではなく、患者に安心してもらい、気持ちよく診療を受けてもらうことが重要です。
(大西)どうしても「ねばならない」「マスト」という思考になりがちです。
「こうしなければならない」ではなく「こうした方が良い」という風にしたいですね。
患者に満足してもらい、快適な環境で帰ってもらうには、「こうした方が良い」という考え方です。
(高山)どうしても「患者に迷惑をかけてはいけない」というマスト思考になってしまいます。
マスト思考になると、融通が利かなくなります。
原点主義になり、「決めた通りにやらないといけない」と思ってしまいます。
目の前の患者の行動に合わせて対応を変えなければいけないのに、本質を見失ってしまいます。
(大西)失敗しても良いんです。失敗を隠さない組織風土が必要です。
スタッフ間の価値観の違いと対応
(高山)色んな人が集まるので、スタッフの価値観も違います。
決めたことをきっちりやる人もいれば、苦手な人もいます。
柔軟に考える人もいます。
そこで衝突が起きることもあります。「こう決まっているんだから、こうやってください」といったように。
(大西)一生懸命やっているベクトルは同じでも、細かい人と雑な人では結果が変わります。
細かい人は時間がかかりますし、雑な人は早いですがミスをします。
先生が良いバランスに調整する必要があります。
極端な人がいますね。
(高山)バランス感覚が良い人をリーダーにすると良いですね。
(大西)バランス感覚のある人とはどんな人でしょうか。一言で言えば、優しい人です。
(高山)気遣い、思いやり、他社への想像力のある人。
(大西)自分の言葉が相手にどう響くか分かっている人です。言葉は大事です。
次回予告
(高山)次回のテーマはスタッフの役割分担です。今日はこの辺で終わりたいと思います。ありがとうございました。
(大西)ありがとうございました。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。
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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。