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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第66回始まりました。大西さんよろしくお願いします。
(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?
今回のテーマ:第66回のテーマは「骨太方針」
(高山)今日のテーマは、先日発表された「骨太方針」について語っていきたいと思います。
(大西)よろしくお願いします。
(高山)骨太の方針は、来年に診療報酬改定があるため、今すごく注目される内容だと思います。
(大西)いくつか今お話をいただいていますが、今日はできるだけ分かりやすく、誰にでもわかるようにお話ができたらいいなという感じがします。
(高山)それではこの後、骨太方針について語っていきたいと思います。よろしくお願いします。
(大西)お願いします。
骨太方針とは何か?
(高山)政府は令和7年、つまり今年ですね、6月13日に、いわゆる「骨太方針」を発表しました。この骨太方針の正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針2025」で合っていますね。
(大西)合ってます。
(高山)今回のテーマは「『今日より明日は良くなる』と実感できる社会へ」ということで、良い言葉が並んでいますが、その通りになるといいなと思います。これは毎年発表されていますよね。
(大西)毎年発表されています。
(高山)この骨太方針は、政府の重要課題や年末の予算編成の方向性を示すもので、毎年6月13日に閣議決定されています。
この方針を見れば政策の重点ポイントがわかると言われており、医療政策も厚生労働省がこの方針に沿った予算組みをするため、注目されているわけです。
さて、昨年の骨太方針では、2040年頃に向けた医療・介護のニーズ、つまり85歳以上の人口がかなり増加することと現役世代の減少という社会構造の変化に対応するための医療提供体制の確保を図るという方針が発表されていました。
それを受けて2025年、今年の骨太方針ではどのような方針が明らかにされたのでしょうか。
医療分野の焦点「賃上げ」とその課題
(高山)内容は多岐にわたるので、今回は特に医療政策に関わることを大西さんにお伺いしたいと思います。
私が今回注目しているのは、「医療・介護・障害福祉等の公定価格の賃上げ」という項目です。実際どこまで賃上げされるのか。
公定価格分野とされているので、自由診療分野は対象外だということを明確にしているのだと思います。
そうなると、来年は診療報酬改定ですので、色々注目が集まるのかなと思います。
このあたりから、大西さんにポイントをかいつまんでいくつか教えていただければと思います。
(大西)賃上げアップに関しては、前回の診療報酬改定でもベースアップ評価料や、初診料・再診料・入院基本料が引き上げになりました。
現場では、このベースアップ評価料が単発で終わらなければいいなという思惑のもと、多くの医療機関やクリニックで算定されていました。
実際に算定してみるとわかりますが、賃上げの財源は患者さんに負担してもらうことになります。
ベースアップ評価料や初診料などがそれにあたります。その対象は、事務職を除く全てのスタッフです。
医師に関しても、経営者を除く勤務医が対象というイメージでした。
(高山)はい。
(大西)今回もそれを継続しようということが書かれているので、おそらく賃上げ路線は継続されると感じます。
(高山)その財源は、点数アップということなのでしょうか。
(大西)そうですね、患者負担になります。
賃上げがもたらすクリニック現場の二重苦
(大西)ここで重要に考えなければいけないのが、実際にやってみてわかったことです。
1%や2%賃上げをすると、先ほど言ったように看護師さんの給料を上げると、事務さんから「私たちはなぜ上がらないのですか?」という声が上がります。
(高山)上げてほしいですもんね、事務さんも。
(大西)当然、財源がないのに上げなければいけない状況になり、財源を超えてしまいます。
(高山)はい。
(大西)結果的に、持ち出しで賃上げをしている医療機関が多いのではないか、というのが前回の改定の振り返りです。
(高山)その賃上げの原資がないところも含めて、事務さんの給料も上げてあげないといけない、という気持ちの部分ですよね。
(大西)それもそうですが、もう一つの問題は、新しく入ってくるスタッフにはかなり高い賃金を提示しないと募集がかからない点です。
(高山)確かに。
(大西)そこの賃金を上げると、今度は既存のスタッフの給料も上げなければならないという二重苦でした。
国は「賃上げしろ」と言い、世の中は「給料が高くないと採用できない」という状況です。
(大西)1%、2%という話から、今回の国の提示では2.数%、そして今回の方針では全体的に5年間で毎年1%ずつ上げていきたいということが示されています。
当然、1%を複利で計算していくと、5年後にはかなりの賃金になります。
(高山)5%ちょっと、という感じですね。
(大西)そうです。そう考えると、世の中にとっては良い流れですが、クリニックにとっては頭の痛い問題がまだ継続するということですね。
(高山)事務職の方は、他のサービス業で働くとしても時給が上がってきているので、それに合わせてクリニックの時給も自然に上がっていく感じですよね。
(大西)そうですね。最近の傾向で言うと、パートタイムに関しても、おそらく「103万円の壁」をなくしたいという話がちょこちょこ出ているので、それを考えると「フルタイムパート」のような人も増えています。
(高山)フルタイムパート。
(大西)パートタイム契約でありながら、朝から晩まで働いている人です。そうなると軽く200万円とか超えてきます。
そう考えると、賃金アップはクリニック全体の経営に大きく関係してくる問題です。
(高山)そうですね。もちろん人件費は、経営側としてはできるだけ抑えたいところです。
これは公定価格なので、なかなか自分たちの努力で収益を上げるのが難しいという構造が影響していると思います。
賃上げ時代のクリニック経営、解決策は「生産性向上」にあり
(高山)このあたり、クリニックで何か工夫できることはあるのでしょうか。
(大西)難しいですが、DXをもっと活用すれば、労働時間をさらに減らせるのではないかと考えています。
(高山)なるほど。時給が発生する時間そのものを減らしていくということですね。
(大西)そうです。私は賃金は上げた方がいいと思っています。
ただ、残業は減らした方がいい。
だから、残業を減らす工夫をもっとすれば、総賃金は横ばいにできるのではないかと感じます。
(高山)なるほど。もしかしたら、少し発想を変えたらどうかなとも思うのですが、時給を上げて短時間で集中して働きたいという人は、能力的に高い人なのではないでしょうか。
(大西)そうですね。
(高山)なので、むしろ時給を上げた方が優秀な人が集まり、残業も減って、トータルコストはもしかしたら抑えられるのではないかと、今お話を聞いていて思いました。
残業ゼロを実現する組織風土とは
(大西)とあるクリニックでお話をした時に驚いたのが、毎日の目標が「残業ゼロで定時に帰る」というクリニックがあることです。
(高山)はい。
(大西)これは私が10年ほど前から関わっている医療機関が、かなり早くから取り入れていて良いなと思っていました。
そのスタッフさんにヒアリングしたところ、「同じ給料をもらうなら、働く時間は短ければ短い方がいい」
「昔のようにダラダラとタイムカードを遅く押して給料をもらうのは公平ではない。きっちり集中して働いて帰ろう」という考えでした。
では、その「定時に帰る」という目標を、誰が最初に破ると思いますか? なぜか破ってしまう人がいるんです。
(高山)時給が一番低い人ですか?
(大西)違うんです。院長です。
(高山)おお、院長。
(大西)院長が一番残業しているんです。
(高山)その縛りはないですからね、院長は。
(大西)そうです。しかし、院長が一番最初に帰るクリニックは、残業が少ない傾向にあります。
(高山)院長が先に帰ると、早く帰れる。
(大西)閉めてしまいますからね。
(高山)そうですよね。強制的に帰らないといけない。
(大西)それぐらいでいいと思います。
(高山)「後で閉めておいて」ではまずいですよね。
(高山)いくらでも残れてしまいますからね、「後で閉めておいて」だと。
(大西)そうです。信用はしていても、院長がいなくなったらダラっとしてしまうでしょうから。
院長が帰る時間を決めて、「僕が何時に帰るから、みんなもそれに合わせてね」と。
(高山)これは物は言いようですよね。
スタッフだけにしておくと、何か悪い人が強盗に入ってきたり、様々なリスクがありますから。
(大西)はい。
(高山)院長が帰る時に全員で帰る、と。
(大西)次にその約束を破りがちなのが、先輩社員です。
(高山)ああ。
(大西)年次の古い人ほど残りたがります。
(高山)それはなぜですか?居心地がいいのでしょうか。
(大西)難しいことを言いますね。居心地がいいというか、家の居心地が…。
(高山)いやいや、相対的な話ではなくて。
学校の部室が好き、みたいなことではないですか?
(大西)そういうことです。古い人ほどクリニックに長くいたい気持ちになりやすく、新しい人ほど早く帰りたいという傾向があります。
ですから、院長の次に問題なのが先輩社員です。
(高山)うん。
(大西)ここにメスを入れないと、院長も帰れません。
(高山)なるほど。
(大西)だから、朝の時点で「今日、残業する人?」と聞いて、「手を挙げて」「理由を教えてください」とやる。
厳しいところでは、残業の理由まで提出させます。
(高山)そうですね。うちの会社もそうしています。
(大西)それをすると、書くのが面倒なので、皆考えるわけです。「あれ、空いた時間にこれをやっておけば残業しなくていいな」とか、「これは自分が抱えているけど、タスクシフトして誰かに任せよう」とか。
知恵を絞ることが一番大事です。
(高山)そうですね。時間がない時こそ、工夫しないと早く終わりませんから。
(大西)今回の賃上げは、賃金を上げることが目的ではなく、賃上げをしてもクリニック経営をうまく成り立たせるために、残業を減らしたり無駄な時間を削ったりする「生産性向上」がポイントだと思います。
まとめと次回予告
(高山)なるほど。なかなか複合的な要素ですね。
賃金アップ一つとっても、経営の効率化という部分をセットで考えていかないと、実現は難しいということが分かってきました。
他にもこの骨太方針については、取り上げたい項目がたくさんありますので、今日は時間となりました。
ここで一旦区切って、続きは次回にしたいと思います。
(大西)ありがとうございました。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。
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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。
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DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)
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