骨太方針(2)政策と現場のズレに揺れる医療DXの本質_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード67全文書き起こし

骨太方針(2)政策と現場のズレに揺れる医療DXの本質_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード67全文書き起こし

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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第67回始まりました。大西さんよろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?

今回のテーマ:骨太方針と医療DX

(高山)前回に引き続き、骨太方針の中身についてポイントをピックアップしていきたいと思います。

(大西)前回は賃金アップについて話しましたが、今日は少し別の話をしようかと思います。

DXの話を先に少ししておきたいなと。

(高山)医療DXですね。

(大西)はい。

(高山)それではこの後よろしくお願いします。

(大西)お願いします。

医療DXの進捗と理想とのギャップ

(高山)ということで、骨太方針の第2回目、具体的な内容に触れていきたいのですが、医療DX、デジタルトランスフォーメーションは、だいぶ進んできたように見えますが、理想から考えるとどのくらい、何パーセントぐらい進んでいるのでしょうか?

(大西)10%ぐらいですね。

(高山)そうですか。ではこれはもう国も含めて、どんどん20%、30%と推進していきたいという感じですね。

(大西)そうですね。DXというのはコロナの頃からずっと叫ばれていて、いわゆる2020年ぐらいからです。

今2025年なので、この5年間一生懸命取り組んできたわけですが、国の思っているDXの推進と、現場のDXとでは少し話が違うんですよね。

(高山)ほう。

(大西)そのあたりが、政策と実情の乖離としてまた起きそうな内容だなという感じがしました。

国が進めるDXと現場のDXの違い

(高山)国がやりたいことというのは2つあって、1つは医療現場の状況をしっかり把握・分析して、より良い医療・介護の世界を作っていくこと。

つまり、把握するためのシステムですね。

(大西)そうです。

(高山)もう1つは、現場の生産性向上、つまり効率化を同時に進めてもらい、賃金アップにつなげてもらいたい、というような捉え方でよろしいでしょうか。

(大西)その後者、つまり現場の効率化というのが医療機関が期待することです。

国が進めたいことは「見える化」でしょうね。

(高山)そうですね。

(大西)今回出てきたのは、全国医療情報プラットフォームというのを作りたいという話です。

これが国の大きな目標で、医療も介護もリアルタイムで情報共有ができる世界を目指しています。背景には、コロナ禍での教訓がありますよね。

(高山)ええ。

(大西)当時は、コロナの患者数すらリアルタイムに把握できない国でした。FAXで情報を集め、手作業で集計し、間違いも発生するという、まるで選挙のような話でした。

(高山)ありましたね。

(大西)今でもまだやっています。5年経ったところで何かが変わったかというと、実はあまり変わっていません。

もちろん国は一生懸命変えようとはしています。

国のDX推進策と現場の課題

(大西)例えば、オンライン資格確認によってマイナンバーカードを使えば資格が確認できるようになり、全ての医療機関とネットワークで繋がることが可能になりました。

これが第1段階です。これにより、補助金を振り込む際の口座も紐づきましたし、様々な情報を提出するためのネットワークも整備されました。

最近注目されている外来データ提出加算なども、メールやオンラインで提出するよう求められており、紙での提出を減らすという国の方針が示されています。

(高山)なるほど。

(大西)しかし、ここが難しいところで、「紙はやめてほしい」と言いながらも、結局は許可してしまっているんです。

(高山)うーん。

(大西)紙媒体を。

(高山)やはり紙がいいという方がいるからですよね。

(大西)その通りです。だからレセプトのオンライン請求も100%ではありません。まだ紙が残っています。

国の方針としては、電子処方箋や、最近話題の標準型電子カルテなど色々考えていますが、これもまた紙を残してしまっているんです。

(高山)ほう。

電子処方箋と「紙の控え」問題

(大西)電子処方箋でやり取りをしても、患者さんには「紙の控え」を渡すことになっています。

(高山)控えを患者さんに出すのですか。

(大西)そうです。患者さんが不安になってしまうからです。

(高山)おお。

(大西)「電子処方箋で送っておきますね」と言われても、何も手元に渡されないと不安だということで、電子処方箋の「控え」という、よくわからないものが渡されるわけです。

(高山)ああ、なるほど。

(大西)その控えを薬局に持ち込み、そこに書いてある番号を伝えると薬が出てくる、という流れです。

(高山)引き換え券のようなものですかね。

(大西)ええ。なんだかおかしな話で、それならマイナポータルに情報を集約して、その画面を見せれば済む話だと思うのですが。

(高山)そうですよね。

(大西)ただ、そのマイナポータルが使いにくいという話もあり、紙がいいという人も根強くいます。

しかし、領収書も明細書も処方箋もいつも紙で渡されると、家に帰ると紙だらけになってしまいます。

(高山)そうですね。

(大西)私たち世代からすると、あれは全部いらないなと思ってしまいます。

(高山)ええ、私たち世代はもう必要ないですよね。取っておく必要がないのですぐに捨ててしまいます。

(大西)捨ててしまいますよね。年間の医療費もたかが知れていますし、医療費控除を受けないのであればすぐに捨ててしまう。なんならクリニックで捨てています。

(高山)うん。

(大西)申告すればいらない人はいらないと言えるのですが、そうすると今度は中身が分からなくなってしまう。

間違いがないか確認したいので発行してもらい、「間違ってないですね、はい、いりません」というような状況です。

標準型電子カルテと紙の併用

(大西)なんだか国の方針はちぐはぐで、今度の標準型電子カルテも面白いことになっています。

国が標準型電子カルテを開発し、現在実証実験を行っているのですが、「紙と併用しないと使いにくい」という意見が出たため、紙との併用が認められることになりました。

(高山)おお。

(大西)つまり、紙のカルテに記入し、それを電子カルテに打ち直す、というような作業が行われているんです。

(高山)紙に書いてから電子カルテに転記するのですか。

(大西)そうです。

(高山)おお。

(大西)それも「認める」と明記されています。

(高山)「認める」とはどういうことでしょう。メモとして書くのは自由だと思いますが、その紙カルテのメモも保存しておくということですか?

(大西)その通りです。スキャンして保存します。

(高山)そういうことですか。なるほど。

(大西)標準型電子カルテの中で、国が情報共有したい部分は決まっていて、その部分は入力が必須です。

しかし、それ以外の部分は手書きでも良い、と許可したのです。

(高山)ああ、なるほどなるほど。

(大西)そうなると、現場からすれば全部手書きの方が便利です。

一部が手書きで一部が入力となると、途端に負担が増えますから。

(高山)ええ、そうですね。

誰のためのDXなのか?

(大西)このデジタル化が一体何と戦っているのかと思ってしまいます。

今回もオンライン資格確認、電子処方箋、標準型電子カルテを普及させると明記されています。

医療機関からすれば、また費用がかかるという話になりますが、「補助金を出します」と。

しかし補助金は後から支払われるものですし、一体誰のためのDXなのだろうかと感じてしまいます。

(高山)本来は一気にデジタル化したいはずですよね。ダブルスタンダードではなく。

しかし、反対する人がいるというのは、単に反対したいのではなく、医療を継続させるために「なぜこんなことをしなければいけないのか」という思いがあるからでしょう。

「今まで通りで継続できるのに、デジタル化に追いつけないなら引退するしかない」という人が出てくると、やはり国としても対応せざるを得ないのかもしれませんね。

(大西)クリニックは特に構造的な問題があり、開業医の先生の平均年齢は60歳ぐらいです。

私たちの世代より10歳ほど上なので、DXが苦手な先生も多いのが実情です。

(高山)年齢層で言うと、やはり上の世代が一番多いですよね。

(大西)63、4歳ぐらいがボリュームゾーンではないでしょうか。

(高山)そうですよね。若手の開業も増えていますが、人口構成的には60歳以上の先生方が多いということですね。

(大西)そうです。団塊の世代が今75歳なので、その少し下の世代が一番のピークです。

そう考えると、苦手なのも無理はないと、医師会を回っていると感じます。

しかし、国は一度やると決めたらやります。そのために補助金もつけ、サポートもすると言っています。

ただ、そこには様々な忖度が絡んでいるように見えて、誰に忖度しているのかが見えません。

先日もある医師会で、「電子カルテを入れないと前に進めないなら、俺は辞める」と先生に言われました。

(高山)ああ。

(大西)なので、「辞めるのであれば、M&Aをするなり、きちんと承継するなりしてください」とお伝えしました。

(高山)厳しいですね。

(大西)厳しいですが、その地域のクリニックがなくなれば大変なことになりますからね。

(高山)その通りです。

(大西)やはりDXは患者さんのためであってほしい。

でも現状は、政府のため、関連企業のため、そして医療機関のためになっている。患者さんがどこかへ置き去りにされているように感じます。

(高山)ただ、先ほどの電子処方箋のように、患者さんが直接触れるものに関しては、完全電子化はまだ厳しいという現実があるわけですね。

(大西)あります。医療機関に来る患者さんの9割は75歳以上の方と子供で占められています。

つまり、デジタルが苦手な方がほとんどです。だからこそ、代替案として紙を残すという意思決定がされたのです。

オンライン資格確認も、マイナンバーカードを使えない人がいるから、紙の資格証という形を残しています。

これらがDXの進展を遅らせていると感じます。

(高山)そうですね。難しい問題ですね、ここは過渡期ですから。

DXの本質と今後の展望

(大西)難しいです。これが10年後には笑い話になっていてほしいと思いますが、今回の骨太の方針を見る限り、国はかなり本気でここに力を入れていることが読み取れます。今後もDX関連の診療報酬点数は付くでしょう。

だから、やらなければいけない。ただ、一体いつ終わりが来るのだろうかと…。

まあ、終わってしまうと私の仕事がなくなってしまうので、もっとゆっくり進めてほしいという、よこしまな気持ちもどこかにあります(笑)。

(高山)進めと言いながらも(笑)。

(大西)いや、DXの推進というのは面白くて、「デジタルを活用した改革の推進」なんです。

改革を進めること自体は良いことです。ただ、全てがデジタルで解決するとは私も思っていません。そこが現場への処方箋かなと。

(高山)確かに。

(大西)国はDXを進めると言いますが、全てのものがデジタルで解決するわけではない。

せいぜい10%、20%の範囲でしょう。残りの80%は、現場の知恵や考え方によっていくらでも改革を進められます。

どちらかというと、「トランスフォーメーション(変革)」の方が大事な要素ではないかと思いながら、いつもコンサルティングをしています。

(高山)では、あと10年ぐらいかかりますかね。

(大西)2035年…。いや、2040年ぐらい、あと15年はかかるかもしれません。

(高山)政府も2040年を目指すと言っていますからね。

(大西)ええ。そんな感じがするので、DXの波に遅れたくない気持ちは分かりますが、本質は「改革」、つまりトランスフォーメーションにあります。

ぜひ業務改善を進めていきましょう、というメッセージだと受け止めました。

(高山)分かりました。骨太方針にはまだまだ取り上げたい項目がありますので、今日は時間となりました。続きはまた次回にしたいと思います。

(大西)ありがとうございました。

(高山)ありがとうございました。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。

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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

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この記事の執筆監修者

DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)

DOCWEB編集部は、2016年の設立以来、一貫してクリニック経営者の皆さまに向けて、診療業務の合理化・効率化に役立つ情報を発信しています。
クリニックの運営や医療業務の改善に関する専門知識をもとに、医療機関の実務に役立つ情報を厳選してお届けしています。