クリニック開業のトレンド(6)クリニックフォアに学ぶ運営モデル_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード78全文書き起こし

クリニック開業のトレンド(6)クリニックフォアに学ぶ運営モデル_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード78全文書き起こし

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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

(高山)おはようございます。パーソナリティのドックウェブ編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、第78回始まりました。大西さん、今回もよろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。

クリニックの開業トレンド

(高山)今日のテーマも引き続きクリニックの開業トレンドということで、前回に引き続き「クリニックフォアがすごかった」というテーマで進めていきたいと思います。

(大西)今回もクリニックフォアを取り上げますが、かなり進化したクリニックで見どころがたくさんあります。ぜひ続きをお話ししていきたいなと思います。

(高山)それでは、続きをよろしくお願いします。

(大西)お願いします。

オンライン診療と外来診療のシームレスな連携

(高山)今、クリニックフォアのホームページを見ているのですが、非常に特徴的なのが入り口の設計です。

「オンラインで診療を受ける」という選択肢と、「クリニック(外来)で診療を受ける」という選択肢が、最初のページに並んで表示されています。

患者として最初に訪れた際に、そこから選ぶようになっており、オンライン診療が初診からでも可能だという雰囲気が伝わってきます。

(大西)2020年に国の方針で、オンラインでの初診が原則解禁されました。

それから5年が経ち、初診では適用できないケースも定められましたが、ほとんどの疾患で初診からのオンライン診療が可能になっています。

その制度の変化が反映されているのかもしれません。

(高山)「オンライン診療を受ける」を選ぶと、自費診療はもちろんですが、内科などもそのままオンラインで受診できる流れになっています。

私はこのクリニックでオンライン診療を試したことはないのですが、これは、そのクリニックに所属する先生が診察している、という理解でよいのでしょうか?

(大西)いえ、違う可能性があります。

(高山)違う可能性があるとすると、その形式は問題ないのでしょうか?

(大西)基本的には、そのクリニックに所属している医師であれば、診察する場所は問わない、というルールに変わりました。

(高山)そうなのですね。

(大西)ルールが少し変わったのです。ですから、マンションの一室を「オンライン診療の部屋」として使っている先生もいます。

グループ全体のDX化と効率的なリソース活用

(高山)ということは、この11のクリニックに雇用契約を結んでいる先生は、どのクリニックでも診察する可能性があると。

そしてオンライン診療に関しては、例えば大阪の先生が東京の患者さんを診ることもあり得ると。

最初からそういう契約になっていれば、1店舗だけでなく、グループ11店舗のリソースを最大限に活用できますね。

空いている先生がオンライン診療を担当すればいいので、非常に効率的に運営できる可能性があります。

(大西)そして、この仕組みのすごいところは、もともと予約システムを使いこなせる、リテラシーの高い患者さんしか受け入れていない点です。

リテラシーが低い方は、そもそもこの仕組みに入ってこられない。

(高山)確かにそうですね。

(大西)だから、トラブルが起きにくいのです。

例えば「今日10人診察します」と決めて、そのうち3人がオンライン、7人が外来だとしても、先生たちがやることは基本的に同じだと聞いています。

(高山)なるほど。

(大西)患者さんは予約した時間に来院し、15分診察を受ける、という流れです。

ただ、その15分をうまく使えない先生だと、時間がずれてしまう可能性はあります。

そこはきちんとトレーニングが必要でしょうが、そもそも15分もきっちり診察することは少ないですからね。

(高山)今、話しながらホームページを見ていたら、やはり書いてありました。

「クリニックフォアグループでは、どこでもカルテを共有しています」と。

どの店舗でもカルテが共有されているので、最寄りのクリニックで受診できますし、オンライン診療も可能です、とのことです。

やはり、グループ全体でオンライン診療を運営することで、患者さんがいつでも予約できる状態を作り出しているのですね。

(大西)これは非常に賢いやり方です。

(高山)一つの医療法人で運営していれば、レセプト(診療報酬明細書)も一括で提出できるかもしれません。

(大西)やろうと思えば可能ですね。

(高山)都道府県単位にはなりますが。

(大西)そうです。ただ、こうした新しい形態のクリニックの先生方が気にするのが、医師会に加入するかどうか、という問題です。

まあ、結論から言うと、加入しないでしょう。

(高山)このスタイルだと、加入する必要性がなさそうですね。

(大西)あとは、レセプトの審査が厳しくなるかどうか、という点も懸念されます。

しかし、今はもうそういう時代ではないと割り切っているのだと思います。

(高山)逆に、この仕組みでは、診療報酬をごまかすような余地は少ないのではないでしょうか。

(大西)点数自体が低いですからね。

(高山)複雑な点数の取り方をしないでしょうし、余地がない分、経営面から見てもシンプルで安心かもしれません。

(大西)患者単価も高くないので、あまり目をつけられないという側面もあります。

あとは、自費診療と保険診療が混同しないように気をつける必要がありますね。

(高山)電子カルテがグループで共通化されているので、先生たちはどのクリニックで働いても同じシステムを使え、操作性が良いというメリットもありますね。

(大西)店舗がどんどん増えていけば、先生が引っ越しをしても働き続けられますし、患者さんも引っ越し先で通い続けられます。

(高山)患者側のメリットも大きいですね。

(大西)全国に展開した場合の課題は、レセプト請求の事務処理くらいでしょう。

(高山)それにしても、この仕組みはすごいですね。

(大西)ただ、おそらくこのクリニックは、売上の8割くらいが自費診療なのだと思います。

(高山)なるほど。

(大西)そうなると、保険診療のレセプト業務は全体のわずかな部分になります。

(高山)メニューを見ても、AGA、低用量ピル、肥満症(ダイエット)、美容皮膚科、FAGA(女性の薄毛治療)、EDなど、入り口として自費診療が強い印象です。

もちろん一番上には「内科一般」があり、広く患者さんを受け入れているようですが。

保険診療をマーケティングツールと捉える新戦略

(大西)患者さんの側にも変化が起きています。

特に若い世代は、自費診療を上手に利用するようになってきました。

昔は「保険証が使えないなら嫌だ」という風潮がありましたが、今は「自費でもある程度の金額なら構わない」と考える人が増えています。

性感染症や肥満症、EDなどは、保険を使わずに自費で、と考える若い人が増えているのかもしれませんね。

面白いですよ。こういうクリニックのレセプトを見ると、通常のクリニックで算定するような医学管理料などをあまり取っていません。

つまり、保険制度の仕組みに依存していないのです。

(高山)なるほど。

(大西)彼らが考えているのは、完全にクロスセルの仕組みです。

Aという患者さんが来たら、その人が他にどんなニーズを持っているかをリサーチし、どんどん新しいメニューを増やしていく。

そして、利便性だけを徹底的に高めていく、という戦略です。

(高山)内科・皮膚科の保険診療でベースを作りつつ、自費診療で利益を出す、というハイブリッド型ですね。

(大西)このタイプのクリニックの先生方は、保険診療を「マーケティング」だと捉えています。

(高山)保険診療で患者さんを集め、その後に自費診療へつなげていく。

最初の関係づくりは国の制度(保険診療)を利用できるので、いわば国が用意してくれたマーケティングツールだ、という考え方です。

(高山)そういう見方をすれば、国の仕組みを使って実質7割引のセールで集客し、その後の自費診療で収益を上げる、というフローが成立しますね。

(大西)その先生方も、「保険診療は、いわば”客寄せパンダ”のようなものだ」とはっきり言っていました。

(高山)かなり大胆な発言ですね。

(大西)そういう考え方の先生もいる、ということです。

だから、従来の保険診療を中心にしてきた先生たちから見ると、これは気持ちの悪いやり方に見えるでしょう。

「なぜ保険でしっかり稼がないんだ」と。

(高山)一方で、自費診療を中心にしてきた先生たちからすれば、「なぜいまだに保険制度に依存しているんだ」と思うわけですね。

(大西)見え方が全く違います。例えば「ダイエット外来」を保険でやりたい先生と自費でやりたい先生では、治療の設計思想が全く異なります。

保険診療は、厚生労働省が定めたスケジュールに沿って、「食事療法、運動療法をまず行い、最終手段として薬を使う」という設計になります。

(高山)しかし、自費診療では最初から薬を使います。「楽して痩せましょう」というアプローチです。

今の若い世代は、そちらを選ぶ傾向にあります。

ハイブリッド型経営とドライな人間関係

(高山)まさに時代の過渡期という感じで、今できる最大限のハイブリッド型経営を実践しているのですね。

(大西)これはこれから増えていく形態で、一つの有力な選択肢だと思います。

既存のクリニックの先生がもしこのモデルを導入するなら、本院とは別に、この形態に特化した「別院」を建てるのが一つの手です。

今のクリニックの枠組みでやろうとするから、難しいのですね。

これだけ空きテナントが多い時代ですから、別院を出せばいいのです。

(高山)これから開業される先生は、クリニックフォアのホームページを見て研究されると、非常に参考になると思います。

(大西)クリニックフォアだけでなく、似たような形態のクリニックは他にもたくさんあります。

このビジネスモデルで何が肝心なのか、だいたい把握しています。

一番肝心なのは、人間の「感情」と「行動」を切り分けてシステムを設計している点です。

(高山)どういうことでしょうか?

(大西)人間は感情で動くと「忙しい」「忙しくない」と感じますが、この仕組みでは、感情的に「忙しい」と感じる状況が生まれにくいのです。

感情を抑制する仕組みが組み込まれています。

その代わり、スタッフ間の関係もかなりさっぱりしたものになります。

「クリニックフォア命」みたいな、熱い思いを持った人が集まるわけではないのですね。

そうです。例えば「1年間働いて、ちょっと旅行に行ってきます」というような働き方も普通にできます。

(高山)タクシーのライドシェアや、フードデリバリーの配達員のような感覚に近いでしょう。

(大西)「所属意識は本当に必要なのか」という問いが、従来の保険診療モデルとの大きなギャップですね。

美容や自由診療の先生方は、スタッフ、システム、建物をすべて同格の経営資源として捉えています。

一方、保険診療の先生方は、スタッフを非常に重要な、そして悩みの種でもある存在として捉えがちです。

仕事の進め方も全く違います。

我々がこうしたクリニックにコンサルティングで入る際は、ひたすら「設計」の打ち合わせをします。部屋の数、スタッフの人数、予約枠の作り方、新規サービスの導入などです。

そして、マーケティングが非常にうまい。

(高山)マーケティングについては、ウェブの活用法など、不安に思っている先生も多いと思いますので、また次回、詳しくお話ししていければと思います。

(大西)はい。

(高山)では、今日はこのあたりで。大西さん、今回もありがとうございました。

(大西)ありがとうございました。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、最後までお聞きいただきましてありがとうございました。

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新しいエピソードがいち早く届きます。

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の番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さようなら。

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