クリニックの業務効率化を成功に導くための考え方 / 医療法人社団メレガリ 長田 潤氏


医療法人社団メレガリ理事長及び、うるうクリニック港南台院長の長田潤氏にクリニックの業務効率化の秘訣とポイントについてお話を伺いました。
長田様には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOにご登壇いただきます。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『slackを活用した疑義照会の効率化-テキスト化でリアルタイムに―』
講演では、院内の情報共有をテキスト化するメリットについてお話します。
院外薬局やメーカー卸とのやり取りは、電話がメインの時代がありましたが、内容が残らなかったり、間違って相手に伝わったりすることがありました。何より時間がかかり、非効率な部分が多かったと思います。
当院ではSlackというチャットツールを使い、音声コミュニケーションを減らすことで、随分と仕事が楽になりました。

どの先生も院内の業務改善に取り組んでらっしゃるかと思います。院長の仕事に疲弊を感じている先生や無駄な仕事をなくしたい先生に、講演を聞いていただければと思います。


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糖尿病の専門医を志されたきっかけを教えてください

生涯現役を見据えて内分泌を専門に
私が医師になったのは、2004年の臨床研修制度が始まった年でした。当時はどの診療科するか全く決めておらず、多くの診療科から自由に選んだという形です。

私は、自然と内科を意識するようになりました。また、年齢を重ねるごとにできなくなることが増えるよりも、できることが増えた方が良いと感じたのも理由の1つです。

内科でも、消化器は内視鏡検査がありますし、循環器はカテーテル治療など手技の多い診療科でもあります。糖尿病内科や内分泌科なら、手技が少なくずっと現役でいられると考えました。

業務効率化を成功させるための考え方について教えてください

クリニックの理念を軸に引き算をする
まずは、大きくどの方向に進んでいくかを決めることが大切です。1つのオペレーションを改善するとき、理念が1本の軸になれば、方向性が自ずと決まっていきます。複数の方法があって、多少揺れ動きがあっても、目的の方向に集束していくものです。

また、業務改善には足し算よりも引き算が大切だと考えています。
業務改善ではデジタル化が目標になりがちですが、残業がなくなったとか、仕事が楽になるべきで、トレードオフが起こるのは避けなければなりません。
業務改善のために、院内教育やスタッフ増員をされている先生もいらっしゃいますが、そうではなく、音声コミュニケーションなど今まであった業務の引き算の考え方も知っていただければと思います。

どのようなクリニック運営を目指していますか?

自助の精神を大切にしたクリニックが理想
患者さんが自分でできない部分を医療者がサポートするクリニックです。患者さんのサポートは、来院後に初めてするのではなく、来院前の在宅でも色々なアプローチできるクリニックでありたいと考えています。

目の前にいる患者さんと対話しながら、顔色や歩き方、身体所見などの院内でしか得られない医療情報を生かした診療ができればと思います。
システムを活用して事前に得られる情報は事前に、後で得られる情報は後に適切に取ることで、院内にいる時間をより濃厚にできると考えています。患者さんが来院しているときは、院内でしか得られない情報にフォーカスして診療していきたいと思います。

クリニック運営で大切にしていることや今後の展望についてお聞かせください

指揮命令系統はトップダウン形式
当院の指揮系統は私のみで、三角形を成してます。看護師長や事務長もいないので、スタッフは皆フラットな状態です。それぞれ得手不得手はありますが、スタッフ全員がレセプト業務もやるし、経営会計業務もやるといった方針です。

また、スタッフがクリニックの課題抽出することがあっても、新しいオペレーションについて私が知らないことはまずありません。どんなに小さな計画でもアプローチ方法については、必ず私が関与していますし、口頭など周知もします。
院内はハンズオンで、分かる人が分からない人に教えることで学んでもらっています。

開院時の失敗経験から現在の形に
当院では、私が全てを把握する体制をとっています。
私と逆パターンで、セクションごとに担当者に任せているクリニックもあるでしょう。例えば、院長先生が事務的なことを一切知らないのも、1つの目指し方だと思います。

実は、私も開業時はセクションに分けて、各担当者に任せていました。ある程度の情報共有はしてもらっていましたが、やはり把握できないブラックボックス的なことが少しずつ出てきました。
上手く行っているうちはいいですが、担当者がいなくなると引き継ぎが大変でしたし、引き継ぎをしないで急にやめられてしまうケースも何度かありました。こういったことを何度か繰り返すうちに、これでは駄目だと感じました。

また、セクションに分けると、それぞれで違った理念を構築していくことがあります。目の前の短期的な目標を見て計画を組み立てていくので、無駄が増えたり、不要な仕事をいくつもしたりする結果になりました。
指揮系統は1つの理念に沿っているかチェックすることが大切です。オペレーションは陳腐化するので、修正が必要ですが、修正時に何に沿っているかは、方針や目標が1つではないと駄目だと感じています。

プロフィール


医療法人社団メレガリ 理事長
うるうクリニック港南台 院長
長田 潤氏

横浜の港南台で、内科クリニックを開業して4年になります。もともとは横浜の大学の医局で糖尿病専門医を取得して、研究や教育に携わっていました。

2014年から5年間、地域の基幹病院で勤務医をし、その後開業。2024年5月には、横浜の関内・馬車道で分院展開する予定です。クリニックを開業した理由は、臨床・教育・研究の3つのすべてをバランスよくやっていきたいと考え、それにはプラットフォームとしてクリニックを持つのが良いと考えたことです。