
開業準備が進む中で、物件や資金繰りと並んで多くの医師が悩むのが「人」に関する課題です。診療を支えるスタッフの採用や育成、さらに就業規則の整備といったチームマネジメントは、初期にこそ注力すべき重要なテーマです。
実際、理念に共感しない人材を採用してしまったことで、診療の流れが乱れたり、早期離職が起きたりするケースも少なくありません。
本記事は、「【完全ガイド】クリニック開業の手順と成功へのロードマップ」シリーズの一環として、チーム作りに焦点をあてた実践マニュアルです。
スタッフ採用から育成、そしてクリニックの行動規範づくりまで、組織づくりの実務ポイントをわかりやすく整理します。
理念に共感する人材を採用する
クリニックにとって、診療理念や運営方針は単なるスローガンではありません。実務の判断や患者対応において重要な基準になります。採用時点でこの理念に共感できるかどうかを見極めることが、長く安定して働けるチーム作りの第一歩です。
学歴や職歴といった定量的な条件だけでなく、面接では価値観や対話力、院長や他スタッフとの相性なども確認しましょう。特に開業初期は少人数体制のため、一人のミスマッチがチーム全体の空気に大きく影響します。
採用前に理念を十分に説明しなかった結果、患者対応で方針のずれが生じたという事例も見られます。事前のすり合わせがトラブル防止につながります。
導入研修と継続教育を仕組み化する
新たに採用したスタッフに対しては、業務フローだけでなく診療スタンスや接遇方針など、クリニックの文化を丁寧に共有する必要があります。導入研修を怠ると、現場の判断がバラバラになり、患者満足度の低下やスタッフ間トラブルの原因になります。
また、医療制度や技術は常に変化するため、開業後も継続的に学びの機会を設けることが大切です。外部研修や勉強会の参加支援など、意欲的なスタッフを後押しする姿勢が、クリニックの専門性や信頼性を高めることにもつながります。
スタッフに任せきりにした結果、指示の意図が伝わらず、患者クレームにつながったケースもあります。指導とフォローのバランスが重要です。
チームワークを支える多能工化と情報共有
診療を効率的に進めるためには、特定の業務が一部のスタッフに偏らないような業務体制が必要です。例えば、受付と診療補助、会計と電話対応など、業務を限定せずに複数の役割をこなせる体制にしておくと、欠員時のリスクも軽減されます。
また、院長が定期的にスタッフと対話する時間を設けることも、日々の小さなズレを早期に修正する上で欠かせません。特に開業初期は、日々のオペレーションの見直しや改善が頻繁に必要になります。スタッフからの意見が吸い上げられる仕組みを整えておきましょう。
スタッフの信頼を得るコミュニケーション設計
院長が一方的に方針を伝えるだけでは、スタッフの納得感は得られません。報連相が自然に行われるような空気を作るには、スタッフ一人ひとりの声を尊重する姿勢が求められます。
ちょっとした困りごとや不満が蓄積すると、やがてモチベーションの低下や退職につながります。日常的な雑談や1on1の時間を通じて、院長が「聴く」姿勢を持つことが、組織の安定と成長の鍵になります。
開業時に就業規則を整備しておく意味
クリニックにおけるルールの不在は、チームの混乱を招くだけでなく、労務トラブルの原因にもなります。特にスタッフ数が少ない開業初期ほど、曖昧な運用は避けるべきです。
就業規則では、労働条件や勤務時間、休憩・休日、有給取得、服務規律、懲戒、休職制度などを明確に定め、採用時や入職時にしっかり説明しておきましょう。紙に残すことが安心感につながります。
また、診療方針や院内で大切にする価値観も文章化し、行動指針として周知することで、スタッフが迷わずに判断できる場面が増えていきます。
衛生・服務ルールの明文化で秩序を守る
医療機関として、感染症対策や衛生管理のルールも初めから整備しておく必要があります。例えば、手洗いやうがい、マスク着用の徹底、体調不良時の報告義務など、具体的な運用ルールを就業規則やマニュアルに明記しておきます。
さらに、職場の秩序を保つために、服務規律(禁止事項・注意事項)も整理しておきましょう。患者やスタッフ同士に対する迷惑行為、院内の情報漏えい、不適切なSNS投稿などについても、あらかじめ方針を示しておくことで、問題発生時の対応がスムーズになります。
オープニングスタッフの採用準備はいつから始めるべきか
オープニングスタッフ採用準備のタイムライン
時期(開業までの期間) | 準備内容 |
---|---|
6か月前 | 採用職種や人数の設計、就業規則のドラフト作成、募集媒体の選定。 |
5か月前 | 求人票の作成、採用スケジュールの確定、面接フローの設計。 |
4〜3か月前 | 求人公開、応募受付、面接・選考の実施、内定通知。 |
2か月前 | 雇用契約の締結、入職準備(制服・IT環境・備品などの手配)。 |
1か月前〜開業直前 | 導入研修、業務シミュレーション、接遇や診療フローの確認。 |
スタッフの採用準備は、開業の約4〜6か月前から始めるのが理想です。採用条件の設計や求人媒体の選定、就業規則の整備など、準備すべき内容が多岐にわたるため、余裕を持ったスケジュールで動く必要があります。
求人公開のタイミングとしては、開業の3〜4か月前が最適とされます。採用後すぐに勤務開始できる人材ばかりではなく、現職の退職や引継ぎの調整が必要なケースも多いためです。また、採用後の導入研修やオリエンテーションの期間も考慮することで、開業当日にスムーズな業務スタートが可能になります。
実務的には、開業2か月前までに採用を終え、1か月前から研修や模擬運用を行えると理想的です。これにより、診療フローや接遇方針の共有、院内の動線確認などを事前に整えることができます。
トラブルを未然に防ぐために必要な視点
開業時には、診療のことだけでなく、人と組織をどうマネジメントしていくかという視点が欠かせません。「時間が経てば馴染むだろう」といった感覚では、信頼関係は築けません。
むしろ開業初期こそ、理念を共有し、ルールを整え、スタッフと丁寧に向き合う姿勢が、組織の強さにつながります。最初の準備こそが、後の合理的な運営とスタッフの定着を左右するのです。
開業準備の一環として、早めにスタッフ体制やルール整備に取り組むことが、長期的な安定運営につながります。
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DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)
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