コロナ禍で迫りくる事業承継と多店舗化のトレンド

株式会社G.C FACTORYでは、大型医療法人からクリニックまで医療機関のM&Aや事業承継のマッチング及びサポートを手がける企業として注目を集めています。
業種業界問わず人手不足や後継者問題が叫ばれているなか、コロナ禍における医療機関のM&Aはどのような動きをみせているのでしょうか。
同社の代表取締役である金子隆一氏にお話を伺いました。

<インタビュアー>

近藤隆二(こんどう りゅうじ)
1957年生まれ
医業経営コンサルタント
ファイナンシャルプランナー(CFP)
一般社団法人 医業経営研鑽会 副会長
https://www.doctor-dock.jp

<スピーカー>

株式会社G.C FACTORY
代表取締役
金子 隆一
https://ma.gcf.co.jp

一からの新規開院ではなく、事業継承という形での開院が増加中です

―-株式会社G.C FACTORYの事業概要はどのようなものでしょうか。また、コロナによる影響はいかがですか

株式会社G.C FACTORYは「最善の経営支援を通じて、良質な医療機関の創出に貢献する」というミッションのもと、医療機関のM&A、開業支援・運営支援などを行っております。
M&Aにおいては個人で運営されているクリニックから大型医療法人まで、あらゆる医療機関様とお付き合いさせていただいており、最終的な契約を締結した後の開業支援や税務面でのアドバイスなど色々な形でサポートが可能です。
成約件数のボリュームとしてはおよそ年間20件程度で推移しており、2020年にコロナが流行してからもお問い合わせをいただく件数自体はそこまで大きな変化はありませんでした。
しかし、ご相談やお問い合わせを頂戴する方がここ最近で変わりつつあり、今まで積極的にM&Aを展開されてきた大型法人の買い手さんが一旦保留にされるような流れになっています。
逆に、今までご相談をいただくことがなかった新規の法人様や、個人の先生からもお問い合わせをいただくことが増えてきました。
個人で買収を検討されている方は、新規に開院したいというニーズがありながらも、事業継承という形でリスクヘッジをされるケースが多いと感じています。

各地域の状況を細かく見ていけば、新規開院を待っている患者さんもいる

―人口減少に伴ってクリニックの競争も激化していることはないですか

確かに、人口がどんどん少なくなっていっているなかでクリニックが増えていけば、単純計算ではクリニックに訪れる患者さんの絶対数は減っていく傾向はあると思います。
お問い合わせをいただくなかで、買い手さんとしても新規開院は厳しいのではという認識を持っていることも多いです。
ですが、日本全体として見るのではなく、それぞれの地域の状況を細かく見ていくと、実は患者さんが病院に通えずに困っているということも珍しくありません。
〇〇駅の近くには△△科を診てくれるところが少ないということは当然起こり得るので、日本全国至る所で競争が激化しているということはないと考えています。
コロナ禍になってから約一年が経過したこともあり、直近にどのくらいの患者さんが訪れたかという数字もリアリテイのある形で見やすくなっており、継承の検討もしやすくなってきているはずです。

M&Aにはある程度の時間が必要になるため、余裕を持った承継計画が非常に重要です

―医師も高齢になってきつつあるなか、引退したくても身内への継承も意外と難しいと聞きました。最近は第三者へのM&Aが増加してきているのでしょうか

例えばある先生のお子さんが医師であったとしても、診療科目が異なったり、承継したいタイミングではまだ研修医だったりということも往々にしてあるものです。
また、先生を親にもつお子さんとしてもそれぞれの生活やライフスタイルもあるので、場所・タイミング・診療科目がぴったりと合わない限りは、たとえ身内の方であったとしても承継は難しいでしょう。
M&Aのマッチングを活性化する我々のようなプレイヤーも増えてきたことから、徐々に第三者へのM&Aも認知が広まってきており、増加傾向にあるのではと推測しています。
一方で、一都三県や大阪・兵庫など都市圏を除いてはまだまだだと感じますので、引き続き認知拡大に努めていきたいですね。
お問い合わせをいただく中で、「すぐに承継したい」、「来月までには譲渡したい」というご要望を持つお客様もおられますが、M&Aはフローをこなしていく上でどれだけスムーズに進んでも最低3ヶ月程度はかかります。
売り手側で期限を切ってしまうと焦る気持ちから意図しない契約になってしまったり、譲渡価格も下がったりといったことも起こり得るので、余裕を持ってプランニングすることが重要であることも、たくさんの方に知っていただく努力が必要だと考えています。

設備投資資金を抑えられ、一定の患者さんの来院を見込めることが買い手側のメリットです

―M&Aにおける買い手側の最大のメリットはどんな点でしょうか

M&Aで開院する買い手側のメリットとしては、やはり最初の設備投資費用を抑えられるという点ですね。
新規に開院しても患者さんが来るかどうかわからない中でスタートすることと比べると、ある程度計算を立てられるということは非常に有利なポイントだと思います。
患者さんが少ない、既に閉院しているケースですと、
実際に、抱えている患者さんの数が多く、営業権に対する評価が高くなればなるほど、譲渡価格も高くなる傾向にあります。
では患者さんがついていない、いわゆる営業権の評価が低いとその案件の価値も下がるかというとそうとも言い切れません。
例えば、ある法人が小児科でうまく行かずに事業撤退して譲渡するといった場合、営業権の評価は低くなります。ですが、その資産を安く受け継いで例えば内科や婦人科などの他の診療科目で開院するということも可能ですし、実際に上手くいっている例もあります。
こういった例では純資産の部分が割安かどうかで買い手側の評価が変わることになります。
つまり、マーケテイングノウハウに自信があり、設備があれば患者さんを集められる自信があるのであれば資産を買う、逆にマーケテイングに自信がなく集客リソースも十分でないのであれば現在来院中の患者数を重視することに目を向けるといった風に、買い手さん次第でどのような案件が最適かは大きく異なってくるということです。
さらに、継承に至るまでの背景や売り手側のニーズとしても様々なものがあり、金銭的なものよりもむしろ、「今いる患者さんを引き継いで診て欲しい」と考えられてご相談に来る先生も多いです。
買い手側と売り手側がwin-winの関係になれることがM&Aにおけるポイントといえるかもしれません。

買い手は明確な判断軸を持つこと、売り手は早め早めの行動が重要です

―M&Aをうまく進めるために、どのようなことが重要だと考えられていますか

当社では平素より50~60件ほどの売却希望案件を抱えており、当然ながら条件はそれぞれで大きく異なります。
その中でまずは買い手側としては、どのような案件を探しているかが明確になっていれば当社としても非常に提案しやすいです。
法人として分院を作るのか、個人で新規に開院するのか、ということはもちろんのこと、「M&Aでなく完全に一から新規開院する場合どのくらいの金額になるのか?」という予算感があれば、その金額と譲渡価格との比較ができるため、より検討がしやすくなります。
M&Aで開院する場合でも、銀行融資は必要になることがほとんどだと思いますので、時間と投資の軸がはっきりとした事業計画を、案件探しの段階であらかじめ練っておくといいでしょう。
売り手側としては繰り返しになりますが、可能な限り早く動き出すことが重要です。
様々な買い手と商談することで経験が身についていきますし、最終的に完全に納得できる買い手さんと出会う確率が高くなります。
さらに、患者さんがコンスタントに来院している状態であれば譲渡価格も高くなりやすく、金銭的なメリットも大きくなります。
売り手さんと買い手さんの間での経営ノウハウに関するミスマッチについては、当社が間に入ることでなるべく少なくなるよう、徹底的にサポートいたします。

最後に、M&Aは譲渡が完了すれば終わりでありません。
医療機関のM&Aにおいては、譲渡後に売り手さんが買い手さんの病院で勤務医として働いたり、非常勤医師として付き合いが続いたりということもよくあります。
患者さんの数・場所・資産など定量的なものはもちろん大事ですが、お付き合いが長くなることを踏まえると最終的には人と人との相性や感覚といったことが大切になってくるものだと思います。
そのために焦らずに余裕を持ったスケジュールで進めていくことが何より大事だと考えています。
引き続き、一つでも多くの譲渡・継承を成功に導けるようにサポートしていきたいですね。

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特別講演/コロナ禍で迫りくる事業承継と多店舗化のトレンド

 

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