採用難時代のクリニックにおけるスタッフ教育のポイント / 医療法人梅華会グループ 理事長 梅岡比俊

医療法人梅華会グループ、梅岡様にクリニックにおける人材課題やスタッフ教育のポイントについてお話をお伺いしました。
梅岡様には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOでもご講演いただいています。
※2022年11月1日にCPA EXPOは診療所マネジメントEXPOに名称を変更しました。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『クリニックにおけるスタッフ教育のポイント』
クリニックにおけるスタッフ教育というテーマでは、受付業務や会計業務といったテクニカルな内容をイメージされる方も多いと思います。
確かに、受付スタッフの応対の質は、患者さんのクリニックに対する印象や評価に大きく影響するポイントの一つです。
よってそれらも当然大事なことなのですが、あくまでもクリニックが提供するサービス全体の中の氷山の一角であると考えています。
目に見える業務・サービスといった部分の根本にある、クリニックとしてどんなサービスを提供したいか、どのように患者さんと向き合うか、という理念や考え方はなかなか意識が向きにくいものです。
ですが目に見えるサービスと、それを支える理念の両輪を回すことが大切だと考えているので、この辺りについて詳しくお伝えできればと考えています。


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現在のクリニック運営における人材課題は、どんなものがあるのでしょうか?

受け入れ体制と教育体制の整備が重要
まず大きなポイントとして、クリニックスタッフ・医療事務といった職業は、AI技術やITツールに取って代わられるかもしれないという課題に直面しています。

そんな影響もあり、働き手としては医療事務という職業に対して「長く働ける」「じっくりキャリアを形成する」というイメージを持ちにくくなっています。
なおかつ働き手を求めるクリニック側としても、明確なキャリアパス制度などの仕組み作りが十分に出来ていないことが多いです。
特に女性の働き方が多様化してきている昨今、様々なライフスタイルに適応した働き方を準備できていないクリニックが、人材確保の面で苦労している印象を受けます。

AI時代の医療事務スタッフには、「マニュアルを超えて主体的に行動できる人材」や、「患者さんの気持ちを汲み取って共感できる人材」が必須になってくると考えています。
そのような人材を受け入れる体制に加え、しっかりと教育していく体制の両面を整えていくことが今後益々重要となってくるでしょう。

クリニックにおける人材育成のポイントとは、どんなものがありますか?

医院の仕組み化と理念の共有をする
実際にタスクを実行する戦術面では、入職したスタッフがいつまでにどの業務ができるかを、スケジュールから逆算して仕組み化することです。
当院では、「入職後何ヶ月で医療器具洗浄を習得する」「さらに何ヶ月後に受付会計業務を習得する」という風にスケジュールを立て、PDCAを回しながらブラッシュアップしています。
例えば、受付業務を習得してから会計を学ぶのと、会計を習得してから受付業務を学ぶ、という順番が違えば、それぞれ習得に対するスピードは変わるはずです。
このようなPDCAを回していくことで、どの順序で教育していくと最もスムーズに工程が進むかが明らかになっていきます。

さらにそのクリニックの在り方や理念といった戦略面では、自分自身の考え方と理念を冊子にまとめ、入職したスタッフに対して理念教育を行なっています。
こちらに関しては何が正しいか、何がベストかではなく、クリニックとしての理念をスタッフ全員で共有することが狙いです。
一例を挙げるのであれば、当院では患者さんのことを「患者様」ではなく、「患者さん」と呼んでいます。
これはリッツカールトンホテルの標語である「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」という考え方を背景としており、あくまでも対等な立場で質の良いサービスを提供していきたいという理念に基づいたものです。

実は当院では、入職するスタッフのこれまでの医療キャリアや、現在の能力・技術といった面はあまり重要視しておらず、この理念や考え方に共感してもらえるかが大きな判断材料となっています。
それぞれのスタッフのパフォーマンスを最大限引き出すためには、同じ考え方や理念を共有することが何よりも大切だと考えています。

プロフィール


医療法人梅華会グループ 理事長 M.A.F 主宰
梅岡 比俊 氏

奈良県立医科大学卒業後、勤務医を経て2008年兵庫県西宮市に梅岡耳鼻咽喉科クリニックを開業するも、様々なトラブルを経験しました。
その際に経営者として成長するために数々のセミナーに参加し、自己理念経営の大切さを痛感しました。
そこで得られた知見をもとに、2011年に初の分院である阪神西宮駅前梅岡耳鼻咽喉科クリニックを開設したのを皮切りに分院展開を進め、2022年現在、兵庫県に耳鼻咽喉科4院・小児科2院、東京都に消化器内科1院、計7院の運営を行なっています。
また、クリニック運営のみにとどまらず、企業主導型託児所3園、児童発達支援スクールコペルプラス2校を開校し、地域の皆様に喜んでいただけるよう、活動の幅を広げています。
2016年には、日本全国のクリニックを活性化し、より良いクリニック運営を広めるための、開業医コミュニティM.A.F(医療活性化連盟)を発足しました。

全国の志高い開業医の方々と共に、これまでの経験と知恵を絞り共に学びながら、医療業界全体の向上に取り組んでいます。