次世代医療基盤法の現状 / 内閣府 参事官 姫野泰啓

内閣府 健康・医療戦略推進事務局 参事官、姫野 泰啓様に次世代医療基盤法の現状についてお話を伺いました。
姫野様には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOでもご講演いただいています。
※2022年11月1日にCPA EXPOは診療所マネジメントEXPOに名称を変更しました。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演テーマ『次世代医療基盤法の現状』

講演の中では、次世代医療基盤法によって、どういったことが可能になるのかという制度的な概要について改めてご紹介させていただきます。

また、先述の認定事業者にどのような情報が集まっているのか、どんなデータベース利活用が行われているかという実態についてもいくつかご紹介します。
さらに、この先次世代医療基盤法をさらに発展させていくために、内閣府としてどういった取り組みを行っているかもお話し致します。
繰り返しになりますが、次世代医療基盤法によるデータベースの構築とその利活用が発展していくために、診療所の先生のご協力が不可欠だと考えています。

これを機にご参加を検討いただければ幸いです。


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次世代医療基盤法とはどのようなものでしょうか

次世代医療基盤法は2018年に施行された、日本の医療発展を目的に作成された法律です。
具体的には、医療分野の研究開発に役立てる医療情報を、国が審査して認めた認定事業者を通じ、国民患者の医療情報を安心・安全に匿名加工した上で利活用していこうという仕組みになります。
認定事業者に対する国の審査は、組織体制のチェックはもちろん、情報システムがオープンネットワークから分離されているかなどセキュリティ対策の管理状況も含まれるので、患者さん個人のプライバシーには十分に配慮されています。

医療機関からのデータの中でも、PDFや手書きなどのデータは難しいかもしれませんが、カルテ情報・レセプトデータ・DCPデータなど電子で入力された情報であれば幅広く利活用されます。

匿名加工された情報は、新薬の開発や新しい治療法の確立など今後の医療の質の向上のために利用されます。
また、提供された情報はレセプトデータだけでなく電子カルテの情報も含まれているため、どういう診療が行われたかということに留まらず、その結果どうなったかということも分析することができます。
認定事業者は、複数の医療機関の個人情報を名寄せして活用できるので、異なる病院・診療所に通院する患者さんを紐付けて分析することも可能です。

2022年4月時点で、この国の審査を通過した認定事業者は全国で2件あり、全国で94件の医療機関と2件の地方自治体の合計96件と個別に協議を行い、契約済みとなっています。
現在のところ参加いただいている医療機関の多くは病院ですが、既に一部の診療所にも参加いただいています。

次世代医療基盤法の現状と、今後期待することについてお聞かせください

次世代医療基盤法関連の制度が始まって4年弱と、まだまだこれからの部分が多いと考えていますが、少しずつデータベースの利活用が進み実績もいくつか出始めています。

特に次世代医療基盤法に限りませんが、病院と診療所の連携は最近の医療業界全体の大きなトレンドであり、課題だと思います。
医療の質を向上していくために、病院だけの情報でなく、入退院前後の診療所での診療情報なども含め、各地域で面として広がりのあるデータベースを構築していくことが求められます。
今後は病院だけでなく、地域単位で診療所の先生にもぜひご関心を持っていただきたいですね。

診療所での対応としては、患者さんに情報提供停止の機会があることを通知することが必要となります。情報提供に同意する署名までは必要ありません。
匿名加工しているとはいえ、情報提供したくないと思われる患者さんは、情報提供しないことができます。このような対応に伴って発生する様々なコストについては認定事業者がで負担するため、費用負担が診療所にかかってしまう心配はありません。

このデータベースの情報サイクルがうまく循環していけば、診療所でも新しい治療薬や治療方法などが提供できるという形で還元されます。
また、認定事業者は情報セキュリティ管理や医療情報の分析に優れた事業者でもあるので、医療情報を提供するだけでなく、PHRサービスへの活用や医療情報の分析などに関する助言を提供しているケースもあります。

プロフィール


内閣府
健康・医療戦略推進事務局 参事官

姫野 泰啓 氏

1996年に厚生省(当時)に入省し、医療保険制度などの制度改正関連の業務に従事してきました。
直近においても、保険局保険課で健康保険制度の制度改正に携わっており、健康保険証一枚で誰でも医療が受けられる、いわゆる医療のフリーアクセスを実現することが主な仕事となっていました。
昨年の9月に内閣府の健康医療戦略推進事務局に異動して以降は、これまでの医療アクセスとは異なった観点の業務を行なっており、現在は医療分野の研究開発を進めるために、いかに医療情報を円滑に利活用していくかという業務が中心となっています。