医療AIで診療業務に専念できる環境を創出 / 医療AIプラットフォーム技術研究組合 専務理事 宇賀神敦

現在、CPA EXPOにてご講演いただいている、医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP) 専務理事、宇賀神 敦 様にHAIPの取り組み、医療AIで実現できることについてお話をお伺いしました。

HAIPとはどのような団体なのでしょうか?設立背景についてもお聞かせください

HAIP(医療AIプラットフォーム技術研究組合)は、技術研究組合法にのっとった厚生労働大臣及び経済産業大臣認可の非営利共益法人です。
医療AIの普及促進に必要な共通のプラットフォームの研究開発及び社会への実装を、組合員だけでなく、医療機関・AIサービス提供ベンダー・アカデミア等と共同して進めています。
2021年4月1日に日本ユニシス・日立製作所・日本IBM・ソフトバンク・三井物産の5社で設立し、その後さらに5法人が参画して現在は計10法人で運営している組織です。

設立背景としては、2018年にスタートした内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「AI(人工知能)ホスピタル
による高度診断・治療システム」プログラムにて、開発中のAIサービスを社会実装するために、また既に市場に投入されているAIサービスの利用を促すために、全体として提供するプラットフォームが必要なのではという議論になりました。
そのような研究開発を1社1社が単独で行うのではなく、目的を同じくする複数の法人が叡智を結集させることで、医療現場が直面する様々な課題を解決するための研究開発を加速できるのでは、という考えに至ったことが設立の背景です。

医療AIが普及した先に、医療現場はどのような姿になるとお考えでしょうか

AIというワードを聞くと、何となく「自分達の仕事が奪われるのでは?」と感じる方もいると思います。
ですが、個人的にはAIの本質は社会との共生だと考えており、仕事を奪う存在ではなく、良きパートナーとなり得る存在です。
医療従事者の方々が本来時間を割くべきことは、患者さんとじっくり向き合って診察し、確定診断をして疾病を治療することです。
一方現在は、先生は電子カルテの入力に追われており、看護師も看護記録の入力作業に多くの時間を取られているのが実情ではないでしょうか。
ある統計によれば、医療従事者は全体の業務時間の2~3割は入力作業に費やしているというデータもある通り、患者さんと向き合う時間が取れなかったり、最新の医療を学ぶ時間も作れなかったりという状況の方も多いと思います。

AIやIoT、デジタルツールなどをうまく活用し、それらが医療従事者の良きパートナーとなれば、本分である患者さんと向き合う時間をより創出しやすくなると考えています。
特に、近年医療従事者の働き方改革は課題になっており、2024年からは医師自身も年間時間外労働が960時間以上は禁止になります。
AIやデジタルツールのようなものを使いこなしていかないと、患者さんにかける時間がますます減っていってしまうリスクもあるのではと感じています。

今後、クリニックと取り組んでいきたいことはどんなことでしょうか

直近においては、医療従事者の方がHAIPプラットフォームを通じ、AIサービスを利用いただくという試行運用を開始しています。
実際にAIサービスに触れていただいた上でフィードバックしてもらい、現場のご意見を吸いあげてよりよいサービスにするというトライアルを22年度にも実施を計画しています。
クリニックの方々もお忙しいとは思いますが、まずはぜひこの試行運用に参画いただければと考えています。
「こういうところがよかった」、「ここがこうなればもっといい」など忌憚ない意見をどんどんあげて欲しいですね。

中長期的な視点では、クリニックや介護施設は医療機関の中で最も患者さんとの距離が近い存在です。患者さんとクリニック・介護施設・自治体・病院がデータによって繋がってくる社会において、クリニックが担う役割は大きくなると考えています。人中心のヘルスケアを達成するために、クリニックがどんなところに注力するべきかを一緒に考え、共同で進めていきたいと考えています。

CPA EXPO講演内容の概要をお聞かせください

講演テーマ『医療AIプラットフォームの取り組み-健康・医療のDX実現に向けて-』

まずHAIPの設立背景や、HAIPが何を解決したいか、それを解決するための医療プラットフォームはどんなものかといった点をお話しさせていただきます。
また、AI・デジタルツールのデモを5種類ほど用意しています。もちろん、クリニックの方でも使えるものもありますので、このようなサービスが実際にHAIPを経由して使えるようになることを少しでも実感していただければ幸いです。
最後にHAIPは何を目指しているのかをお伝えさせていただく予定です。

プロフィール


医療AIプラットフォーム技術研究組合
専務理事

宇賀神 敦 氏

日立製作所にてコンピュータの設計・マーケティング・販売責任者を一通り経験し、2009年に米国シリコンバレーに赴任した際、日本と海外の医療の違いを痛感しました。
帰国後にグローバルなヘルスケア事業の立ち上げに参画し、2015年には英国のロンドンに駐在してナショナルヘルスサービスや糖尿病デジタルサービス関連の業務も経験しました。
現在はAIやIoTなど、ITを用いたデータ利活用による健康医療介護のデジタルトランスフォーメーションを加速するための機関である、医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)の専務理事、並びに内閣府戦略的イノベーション創造プログラム「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」プログラムの研究責任者を務めています。また、データ利活用の視点で日本医療機器産業連合会や日本医療研究開発機構の仕事にも関わっています。

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