かかりつけ医機能の強化に向けクリニックが準備するポイント / 衣笠病院グループ 相談役 武藤正樹

衣笠病院グループ 相談役、武藤 正樹 様にかかりつけ医機能の強化に向けクリニックが準備するポイントについてお話をお伺いしました。
武藤様には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOでもご講演いただいています。
※2022年11月1日にCPA EXPOは診療所マネジメントEXPOに名称を変更しました。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『2025年問題とクリニックの役割』
2024年度の医療介護同時改訂、第8次医療計画が控えている現在は、クリニックにとって取り組むべき大きな課題が数多くあると思います。
それらに向けてかかりつけ医の機能の強化のポイントはどんなところか、どんな準備をしておくべきか、オンライン診療・電子カルテ・オンライン服薬指導などの医療DXはどのように関わってくるか、といったような観点でお話しできればと思います。


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第8次医療計画や、2024年の医療介護同時改訂に向けて、クリニックが準備するべきことは何でしょうか?

2022年度の診療報酬改訂では、外来機能の分化というテーマが強調されたものになっており、かかりつけ医の機能が大きく変わってきつつある状況にあると思います。
次回の改訂や第8次医療計画においてはこの動きがより一層大きなものになることが予想されるため、クリニックとしては激動の時代になるといえるかもしれません。

逆紹介の推進が強化されるため、逆紹介患者を迎え入れるための準備が必要
本年10月からは、紹介状なしで受診する場合の定額負担の見直しが適用されることから、病院からクリニックへ患者さんを紹介する、いわゆる逆紹介の推進が強化されていきます。
病院側が従来のかかりつけ医に逆紹介する「Uターン紹介」が増えるケースもありますが、むしろボリュームとしては、救急外来に来た高齢の患者さんなどの非紹介患者をクリニックに紹介する「Iターン紹介」や、かかりつけ医とは別のクリニックに紹介する「Jターン紹介」が増えていくのではと考えられます。

直近においてクリニックがとるべきアクションは、このIターンとJターンをいかに獲得していくか、スムーズに逆紹介患者を迎え入れるためにどのような準備をしておくか、が重要なテーマとなるでしょう。

かかりつけ医機能の規模を積極的にアピールする
それらIターンやJターンを獲得するためには、普段から病院と密に関わって関係を構築しておくことの他に、かかりつけ医機能の規模を病院側に対して積極的にアピールしていくべきだと思います。

具体的には、糖尿病のインスリン治療に対応している、抗がん剤治療患者さんを診られる、CKDやパーキンソン病患者さんであっても受け入れられる、といった実績や具体的な数値をホームページに掲載するなどの工夫が必要になります。

その他、近い将来において在宅医療もかかりつけ医機能の大きな柱の一つとなります。
在宅医療に対して抵抗を感じている方も多いかもしれませんが、必要に応じて他のクリニックや病院と協力して、24時間体制の在宅医療が行えるように体制を整えておくべきだと思います。

クリニックが逆紹介を増やすために、ホームページ掲載によるPRの他にどんな準備をしておくべきでしょうか?

医院のDX化は必須だと考えられます
やはりDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要になると考えられます。
オンライン診療、電子カルテなどの医療DXは、情報感度の高い医療機関では既に導入・活用が始まっていますので、この流れに乗り遅れないようにしないといけません。
特に在宅医療を推進する上でのかかりつけ医機能は、オンライン診療・電子処方箋・オンライン服薬指導と密接に関わっているので、DXを進めることは必須といえるでしょう。

衣笠病院では今後に向けてどのようなことに取り組んでいますか?

在宅機能の強化をテーマに地域密着型の医療センターの開設を進めています
まさに在宅機能の強化というテーマを持ち、地域に密着した医療センターを開設しようとして、現在横須賀市と相談しながら進めているとことです。
看多機と呼ばれる看護小規模多機能型居宅介護や、24時間体制での定期巡回によって、夜中でも医療・看護サービスが提供可能な施設を立ち上げたいと考えています。
イメージとしては、地域全体を病院にしてしまえるような施設にすることを目標としています。

地域医療密着サービスは、クリニックの方々の支援なしには実現は不可能です。
こういったクリニックの積極的な支援が在宅医療の根本になると思うので、ご賛同いただける方がいらっしゃればぜひとも参画いただければと思います。

プロフィール


衣笠病院グループ
相談役
武藤 正樹 氏

1978年に新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として従事していました。その後1986年にブルックリンのニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学し、家庭医療について学びました。
国立横浜病院に在籍している頃より、国立医療・病院管理研究所で政策研究なども行っており、2006年頃から前任だった国際医療福祉大学で医療福祉経営の教鞭を執っていました。
そして2020年より現職である日本医療伝道会の衣笠病院グループの相談役を務めています。
その他、内閣府の規制改革推進会医療・介護ワーキンググループなどにも参画しています。