AI医療機器の活用で変化する医師の働き方 / 医療機器センター付属医療機器産業研究所 主任研究員 松橋 祐輝

公的財団法人 医療機器センター付属医療機器産業研究所の主任研究員である松橋様にAI医療機器の活用や医師の働き方のポイントについてお話をお伺いしました。
松橋様には、現在公開中のCPA EXPOでもご講演いただいています。

CPA EXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『クリニック×AI医療機器-診療業務負担軽減で医療はどう変わる』
少子高齢化による人口減少が進む中、これから医療職数の減少の懸念があり、AI技術を活用しながら質を担保しながらの医療の発展を考えていくことが重要になっています。
すでに日本でもAI医療機器が活用されていますが、今回の講演では海外(米国)と国内におけるAI医療機器の活用事例について紹介いたします。
特に海外(米国)の事例として紹介するAI医療機器は、日本で未導入の新しいもので、今後、日本でも導入や開発の可能性があります。
また国内の事例として紹介するAI医療機器は、承認取得し、これからますます活用が期待されるような技術としてご理解してしていただければと思います。


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AI医療機器の得意分野とどのように業務効率化の貢献につながるのか教えてください

AI医療機器は判別や識別が得意。そして、今後は疾患を予測する機器が増えてくるのではないでしょうか。
これまでもX線画像の読影補助やデータ解析などにおいて、AI医療機器が活用されてきました。
今後さらに技術の発展にともない、 AI医療機器の画像解析技術の発展により患者さんの症状の特徴の抽出、異常所見の検出、さらには疾患の鑑別と活用の幅が広がるようになるでしょう。
またAI医療機器による患者さんの術後の経過、予後を予測する研究も盛んに行われています。
例えば、術前の患者さんの画像所見やカルテなどの診療情報を統合・分析して、術後の経過について予測するといった具合です。

AI医療機器が担うデジタルドクター。一部の医師業務がコメディカルも可能に。
すでに日本でもCureApp(キュアアップ)社の禁煙治療用アプリが登場しています。
通常の禁煙治療は薬物療法を行いますが、患者さん本人の心理的依存により次回の来院までの空白の期間を経て次回の治療へつなげるのが難しい点がありました。
世界初の禁煙治療用アプリの登場により、患者さんの心理的依存を緩和して行動変容を促すことが期待されており、まさにデジタルドクターと呼べる存在です。

他にもまだ実現はされていませんが、クリニックと大学病院など規模の異なる医療機関同士の連携も、AI医療機器を活用できるでしょう。
このように医師と患者さん、医療機関同士の各連携をAI医療機器が支援することで、医療システム全体における業務効率化が可能になると考えています。

またAI医療機器で期待されている技術にキャプションガイダンスがあります。
例えばエコー検査において、 AI医療機器のガイダンスに従えば、専門的な知識や技術がない人でも、熟練した医師と同程度の検査が行えること目指したものです。
これにより現在は医師のみが行っていた業務を、看護師や放射線技師などの医療スタッフが行えるようになるかもしれません。

AI医療機器の発展にともない、医師の働き方はどのように変化していくのでしょうか

AI医療機器の活用で患者さんとの関係がより深いものになることを期待しています。
AI医療機器の活用により時間を生み出し、医師として重要な部分に力を入れていただければ嬉しいですね。
例えば、疾患の診断にかかわる一部はAI医療機器を活用し、浮いた時間を医師として必要な業務に注力すれば、これまで以上に患者さんを診ることができるでしょう。
診るべき患者さんにより多くの時間を割くなど、患者さんに必要な医療の依頼が増えれば、医師の働き方も変わっていくかもしれません。

AI医療機器の未来展望について教えてください

現状の AI医療機器がさらに発展。日本発の技術も続々と生まれるでしょう。
先の話と重なりますが、現状のAI医療機器の技術がさらに躍進します。
1つ目が、X線画像の読影や疾患の鑑別といった新しい診断方法や治療生み出す技術。
2つ目が、業務効率化など医師の働き方改革と関わりがある技術。
最後の3つ目が、禁煙治療用アプリのように、普段の生活の中で医療的なアプローチができる技術。
この3つのAI医療機器の技術がそれぞれの方向性でさらに発展を遂げるでしょう。

また今後は、日本発のAI医療機器も着々と開発されると思います。
禁煙治療用アプリもそうですし、同じくキュアアップ社の高血圧症治療アプリも、日本の医師が起業されて開発したものです。
その他にも、研究費助成プログラムの採択状況からみても、AI医療機器の開発に関する提案が多くあります。

AI医療機器はツールのひとつ。十分に理解して上手く活用することが大切。
開発側からすると、技術開発のみならずクリニックの医師である皆さんにどのようにAI医療機器を活用していただくのかも重要と考えています。
AI医療機器の技術開発の次に続く社会への応用、つまり社会実装ですね。
AI医療機器の技術を開発しても社会実装を進めていかないと、十分な活用は困難と考えています。

特にAIについてよく言われるのが、中がブラックボックスだということです。
AI医療機器を用いて自動分析しても、結果を得るためにどのような過程を踏んだかは分かりません。
そのため、クリニックの医師自身がAI医療機器の特性を把握していないと、「AIが何も言わないから、疾患はない」といった誤った診断につながる恐れもあります。

医師にとってAI医療機器は単なる一つのツールにすぎません。
医師である皆さんが AI医療機器に対する理解や知識を深めていただくのが重要だと考えています。

最後になりますが、AI医療機器に対して過度な期待や嫌悪感を持つことなく、皆様の理想とする医療の実現のための一つのツールとして、使っていただくことを願っています。

プロフィール


公益財団法人 医療機器センター付属医療機器産業研究所
主任研究員
松橋 祐輝 氏

モノづくりや開発などの工学技術(機械工学)と、それを社会で応用する社会実装をキーワードとした社会科学(レギュラトリーサイエンス)という二つの視点から医療機器の開発に取り組んでいます。

私のバックグラウンドは機械工学です。機械工学は現象を分析し、モデル化したもの図面に落とし込み、加工して作り出せるのが強みです。この特長を活かして、生体の心臓や脳血管周辺の環境をモデル化したシミュレータを開発し、医療機器をどのように設計、使用したら効果的か、安全に使用できるのかといった手法を開発するという取り組みを行っていました。

また、医療機器のレギュラトリーサイエンスの研究にも取り組んでおります。革新性の高い医療機器ほど、技術開発だけではなく、医療環境や社会環境を踏まえた社会実装の方法を検討する必要があります。新しい技術を早く患者さんに届けるために、社会科学的にアプローチする取り組みを行っておりました。

現在は、わが国初の医療機器産業専門のシンクタンクとして2010年4月に設立された医療機器センター附属医療機器産業研究所にて「医療機器産業における課題の分析・検討と解決策の提言」「研究会開催を通した情報提供・相互理解・周知活動」「客観的かつ専門的立場からの事業化支援」などを行っております。

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