医療現場の課題解決から始まった世界への挑戦/ ただともひろ胃腸科肛門科 理事長・株式会社AIメディカルサービス 代表取締役CEO 多田智裕

ただともひろ胃腸科肛門科の理事長であり、株式会社AIメディカルサービス 代表取締役CEOの多田智裕氏に、クリニック経営と起業について伺いました。
多田様には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOでもご講演いただいています。
※2022年11月1日にCPA EXPOは診療所マネジメントEXPOに名称を変更しました。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『世界に挑戦する日本の内視鏡AI』
本講演では、医療経営と医師の起業についてお話しさせていただきます。

まずは、開業5年目(2011年)で内視鏡検査数が年間9,000件のクリニックになるために、開業医として工夫をした点についてお話しします。
普段は起業をテーマにしたお話をすることが多く、クリニック経営について扱うのは今回が初めてになります。私のノウハウを包み隠さず話すので、開業医としても明日からのクリニック経営に役立てていただければと思います。

もう一つ、医師の起業について、医療現場の課題解決のための挑戦について私の事例をお話しします。
開業医にとって地域の診療に取り組むことは大切ですが、どの診療科の医療現場が進化しており常に課題が山積みです。
例えば私の場合、医療現場の課題解決のために、内視鏡AIに特化したスタートアップを作り、世界の医療発展に貢献できるような医療機器の開発にチャレンジしています。
私をひとつのロールモデルにして、課題解決のために挑戦するきっかけになればと思います。
映画の「翔んで埼玉」では埼玉県民の奮闘が面白おかしく描かれていますが、同じく埼玉県で開業をしている医師でも世界への挑戦が可能なことを確信していただけると嬉しいです。


診療所マネジメントEXPOログインページへ

起業のきっかけとなった、医療現場で感じた課題を教えてください

安全性に配慮した内視鏡検査から診断精度の向上に注力
医療現場には多くの課題があり、解決に向けて取り組んできました。
胃内視鏡検査では経口内視鏡から経鼻内視鏡が主流になったり、大腸ポリペクトミーでは焼灼切除を行う従来のポリペクトミーからコールドスネアポリペクトミーが一般的になったりと、医療発展が進んでおり、医師自身の知識と技術も追随しなければなりません。

特に大腸内視鏡は医師の技術と充実した機材が揃ってないと、穿孔など合併症リスクがあることから、教科書的な医学書「行列のできる 患者に優しい“無痛”大腸内視鏡挿入法」を執筆しました。
私のクリニックでは年間3~4、000件、これまでの累計で5万件以上もの大腸内視鏡検査の実績があり、本書は合併症ゼロを目指した内容になっています。
実売部数も5,000冊以上あり大腸内視鏡検査を行う医師の3人に1人は読んでくださっていることになり、「本を読んで勉強しました」と声をかけられることも多いですね。

消化器検査の課題を解決してきて、次に診断精度の向上について考えるようになりました。
AIがあれば内視鏡検査の診断精度を向上できると考え、研究開発を始めたのがきっかけで、現在では消化器内視鏡AIに関する論文を50本近くパブリッシュし、開発中の「胃がん鑑別AI」が薬事承認間近であるなど多数の成果を達成しています。

医療分野でもAIやDXが話題になっていますが、多田先生が時代の変化に柔軟に対応できたのはなぜでしょうか?

新しい分野に興味を持ち、伸び代がありそうだったら最初にチャレンジする
私自身の傾向をいいますと、とにかく新しい物好きです。

例えば、15年前から個人ブログを書いていました。
当時はブログをしている医師はほとんどいませんでしたが、それがきっかけとなりWEB媒体でコラムの連載が決まりました。

今自院での取り組みとして、セルフレジを導入しようと考えています。
その他に導入にしていることは、Googleフォームでアンケートを取ったり、QRコードをスキャンしてWEB版の名刺を配ったり、時間指定のWEB予約を取ったりと、アイデア自体は大したことありません。

今では時間指定のWeb予約は当たり前ですが、2014年は画期的なサービスでした。
当時の一般的なWEB予約は、順番予約のみで何時に行けばよいのか分からない。そこで、時間指定でWEB予約ができるようにしたんです。
診察時間は医師や患者さんによって異なるので、批判もありましたね。「時間指定の予約を取ること自体が非常識」と言われたこともあります。

また、2018年頃から広まったオンライン診療ですが、私は2016年に先駆けて行っていました。
共通して言えるのは、最初に始めた方が絶対得だということです。先発優位ともいわれるように、最初に始めれば、「さいたま市でオンライン診療やるんだったらこのクリニック」となりますよね。

AI研究だって今から始めたのでは、それほど話題性はないかもしれません。なので、これから伸びそうな新しい分野は最初に何でもいいから試してみるのがいいと思います。
医師の皆さんが若いうちに、面白そうな分野にどんどんチャレンジしていただくのが大事ですね。

先生が大切にしている”医療”への想いを教えてください

医療の原点は患者さんの役に立つこと
私自身も東大出身で多くの資格も所持しており、クリニックも新しい設備の導入に努めています。
そいった肩書きよりも価値があるのが「患者さんの役に立とう」という想いです。

クリニックのスタッフ全員に言っていますが、患者さんに「いいことあったな」と思って帰っていただけること大切にしています。
大がかりなことではなく、「待合室のイスが足りないときに、折りたたみイスを出す」、「通院が難しい方に郵送で検査結果を送る」とか、小さな工夫は誰でもできますよね。
クリニックへ訪れた患者さんのお役に立ち、喜ばれることを常に心がけることが大切だと思います。
もちろん、資格やスキルは世界トップレベルのものを持つことが前提での話になりますけどね。

医療でもビジネスでもいえることですが、相手のために行動すれば「一緒に仕事をして良かった」、「役に立った」と自分自身の満足度も上げられるはずです。

プロフィール


医療法人ただともひろ胃腸科肛門科 理事長
株式会社AIメディカルサービス 代表取締役CEO
多田 智裕 氏

2006年にさいたま市武蔵浦和駅前に内視鏡専門クリニックを開業し、開業5年目(2011年)で内視鏡検査数が年間9,000件のクリニックにまで成長しました。
クリニックでの診療と並行しながら、内視鏡検査を取り巻く現場の課題の解決を目指すようになりました。
2017年に内視鏡AIの研究開発に特化したスタートアップ「AIメディカルサービス」を設立し、CEOを務めております。
現在は内視鏡AIを用いた『がんの見逃しゼロ』の実現を目指して、世界の患者さんを救うことを目標に活動しています。