働きやすさとは?コクヨが提案する、医療現場の新しいワークスタイル

近年、「働き方改革」が政府から提唱されて以来、あらゆる業種や職場でワークスタイルの見直しや変化が課題となっている。勤務時間や出退勤時間、賃金格差の解消など、多くの職場が従来の働き方に改善点を見出し実行に移しつつある。

そんななか、ワーカーの働き方に着目したオフィスづくりを手がけるコクヨ株式会社に、医療現場に働き方の変化を求めるならどのようなスタイルが理想的なのか、同社の考えを伺った。

医療現場に求められる「働き方改革」

ショールームは品川駅から徒歩5分、コクヨ株式会社東京品川オフィスに併設されている。到着すると、医療バリューチームの坂井さんと諸岡さんにお出迎えいただいた。

今回、同社の東京ショールームで見せていただいたものは、診察デスクやドクターが座るイス、患者が待ち時間を過ごす待合スペース、医師やスタッフが過ごす執務室だ。

空間や配置、それぞれのアイテムを見たり触れたりするだけでなく、実際にその場での働き方や過ごし方をイメージできるとして、学会やセミナーで上京した流れでショールームを訪れる医師や病院・クリニック経営者が多いという。

 

「ABW」による働き方改革

まず案内された場所は、最近のオフィスで増加しているリビングライクな空間だ。中央に大きなソファーとデスクがあったり、会議に使えそうなデスクとイスが揃っていたりなど、全体的に整っている一方でそれぞれの用途に合わせたエリアが用意されている。医療現場の執務スペースは個々が独立したイメージが強かったためか、同社のショールームはとても革新的に見える。

同社の考えによると、ここでのキーワードは「ABW(Activity Based Working)」による多様な場づくりであるそうだ。従来固定化されていた執務席をフリーアドレスとすることで削減し、多目的スペースを創出。医師やスタッフそれぞれが自分の仕事に集中できるのはもちろん、チームワークや団結力を意識して行動することもできる、2つの目的を同時に叶えられる環境に仕上がっている。

一般的な病院・クリニックは医師や看護師、スタッフがともすれば縦割りで部門最適が重視されがちだが、医療に関わるチームが共通に過ごせる空間を構築する事が重要だという。

多目的スペースの使い方は、基本的に自由だ。個人で仕事をする場合にはPCを持ち込んで集中でき、ミーティングが必要なときは医師・スタッフが集まる。また、休憩やランチの場所として活用することもできる。

このような多様な場で「業務や気分に応じて働く場所が選べる」と、医療現場にかかわるすべての人間が明るく快適に過ごせるようになるというメリットが生まれる、そんな魅力がストレートに伝わってきた。

患者が利用するスペースへの展開も

こうした「ABW」による場づくりは、患者が利用する待合空間にも応用できる。特に仕事の合間にサラリーマンやキャリアウーマンが訪れる場合、仕事ができるスペースがあると、待ち時間を効率的に使える。多種多様なライフスタイルに合わせた使い方を考えることも、今後の働き方改革への大きなヒントとなっていくだろう。

体の自由な動きをさまたげない360°グライディングチェアー「ing」

次に見せていただいたものは、同社によって開発された新感覚のイス「ing」だ。座り心地の良さと快適さはもちろん、独自設計による新機構で実際に使用している医師から絶賛されているという。

「ing」で採用された360°グライディング機能とは2層のメカの組み合わせによって、前傾、後傾、左右のひねりまで、体のどんな動きにも追随。バネを使用しないブランコのようなメカは、動きはじめの負荷をなくし体を動かしやすくしてくれる。さらに、動いたあとは揺り戻しがあるため、バランスを崩すことなく安心して体を預けることができる。

バランスボールと似たような動きだが、バランスボールは筋力によって使用時間に差が出てくるのに対し数時間使用可能だ。むしろ揺れ続けることでカロリー消費につながるだけでなく、α波やβ波も増加するということなので、集中力アップやリラックス効果も期待できるというから驚きだ。

診断書の作成や論文の執筆など、パソコンに向かう時間が多い医師にとって、長時間イスに座った状態でパソコン作業に集中していると、どうしても体への負担が気になってくるもの。そこで「ing」を使うことで足腰を自由かつ適度に動かせ、良い運動にもなり、リラックスにもつながる。「作業後の疲労感もなく、快適に過ごせる」と実際に使用している医師からの評判も高い。

診察する時などはワンタッチで固定することができるので、作業に集中するときと患者と話すとき、両方のシチュエーションで万能に使える、それが「ing」の持つ最大の魅力と言えるだろう。元々オフィスワーカーに向けたイスとして発明された「ing」は、ハードな業務が日常的に行われる医療現場でも今後大いに活躍するだろう

「ing」以外にも多種多様なイスが用意されているので、是非ショールームを訪れて実際に体験していただきたい。

音漏れ問題を解決する「サウンドマスキングシステム」

さらに同社が見せてくれたものは、「サウンドマスキングシステム」だ。患者プライバシーへの配慮や集中阻害対策として、部屋間で起こる音問題を解決する「サウンドソリューション」だ。

デスク裏や壁に貼り付けるタイプ、天井から吊るすタイプ、床下や壁に埋め込むタイプなど、様々なソリューションが用意されている。

同社が手掛ける「サウンドマスキングシステム」は、独自のマスキング音をスピーカーから流すことで会話音を聞き取りにくくするだけでなく、例えば鳥のさえずりや音楽など、好みの音を同じスピーカーから流せる機能もついているため、自然な音環境をつくることができる。

音の流し方にも同社ならではの技術と気配りが活かされていて、音がスピーカーから直接耳に届くような感じではなく、一度天井や家具に当ててから響かせる間接方式で音を出している。この仕組みを用いることで音が柔らかく自然になり、耳や心に優しい響きが生まれるのだそうだ。

心地よい音がじんわりと広がっていくだけでも、空間のイメージは大きく変わっていくことが強く感じられた。

コクヨ株式会社のショールーム見学から、これからの医療現場は他業種と同様、働き方やワークスタイルの変化が必要不可欠になっていくことがわかった。医師・スタッフがストレスフリーに業務をこなせることはもちろん、人間関係やチームワークの構築も一層重要なポイントになる。それを可能にするうえで、環境面での変化や空間の考え方も、非常に役立つと実感した。

また、実際にショールームを見学して空間や配置を体感することで、イメージがより鮮明になる。病院・クリニックの環境改革や働き方改革を検討される先生は、ぜひ同社のショールームを訪れてみるといいだろう。