地域包括ケアへの取り組みとクリニックの未来像

事務長 福田 篤史

医療法人翔誠会ふくだ内科

関西学院大学卒業。ウェールズ経営大学院MBA(医療経営専攻)卒業。製薬会社のファイザー株式会社に入職して、約10年間営業に携わる。その後ベンチャー企業を経て、実家のふくだ内科に入社し、地域医療に貢献出来るように事務長として診療のサポートを行っている。


クリニックが様々な競争にさらされる時代が近づいている。地域に根ざした医療を展開するために様々な試みを行っているふくだ内科。その試みの仕掛け人である事務長の福田氏にお話を伺った。

地域包括ケアの取り組み

当クリニックは「地域包括ケア」の一環として、「健康カフェ」を4月からオープンする予定です。「健康カフェ」をやろうと考えたきっかけは、トコトン「地域密着型」の医療を提供してみたいという想いが強くなり、カフェを通じた医療情報によって患者さんや市民の方の健康に貢献が出来るのではないかと思ったからです。そしてその結果、地域に根ざした医療機関として認められ、この後の時代を生き残れるようになればいいなと思っています。

現在は、健診や予防接種を除けば、病気になったからクリニックにいくという患者さんの受診パターンになっています。しかし、患者さんとしては「病気にかからないこと」や「生活習慣病の予防の方法を一緒に取り組んでくれること」が理想であると思います。すなわち、予防についての医療情報や一緒に取り組める仕組みが大事だと思っております。

一方で、予防というのはクリニック的には患者さんの受診行動に相反するものにもなりえますが、ここはよく考えなければいけないところで、患者さんの本音の部分に耳を傾け、その要望に応えられることが、長期にわたり信頼関係を築いていける本質的な方法だと思います。

医療者が予防についての医療情報を発信していき、正しい医療情報を持った患者さんになるように教育したり、ともに学んでいく時代になってきていると思っています。タイムリーに正しい情報をウェブ上で発信する一方通行だけではなく、リアルな場所を提供し一緒に歩んでいくことによって、患者さんや地域との関係を強固にしていくことが出来るのではないかと思っています。

憩いの場の提供

当クリニックは「地域包括ケア」の一環として、「健康カフェ」を4月からオープンする予定です。「健康カフェ」をやろうと考えたきっかけは、トコトン「地域密着型」の医療を提供してみたいという想いが強くなり、カフェを通じた医療情報によって患者さんや市民の方の健康に貢献が出来るのではないかと思ったからです。そしてその結果、地域に根ざした医療機関として認められ、この後の時代を生き残れるようになればいいなと思っています。

現在は、健診や予防接種を除けば、病気になったからクリニックにいくという患者さんの受診パターンになっています。しかし、患者さんとしては「病気にかからないこと」や「生活習慣病の予防の方法を一緒に取り組んでくれること」が理想であると思います。すなわち、予防についての医療情報や一緒に取り組める仕組みが大事だと思っております。

一方で、予防というのはクリニック的には患者さんの受診行動に相反するものにもなりえますが、ここはよく考えなければいけないところで、患者さんの本音の部分に耳を傾け、その要望に応えられることが、長期にわたり信頼関係を築いていける本質的な方法だと思います。

医療者が予防についての医療情報を発信していき、正しい医療情報を持った患者さんになるように教育したり、ともに学んでいく時代になってきていると思っています。タイムリーに正しい情報をウェブ上で発信する一方通行だけではなく、リアルな場所を提供し一緒に歩んでいくことによって、患者さんや地域との関係を強固にしていくことが出来るのではないかと思っています。

憩いの場の提供

現在、「学習支援団体ひまわり」や「介護予防を支援しているNPO団体」の2つの団体に場所を貸しているのも地域との繋がりの一環として進めているものです。診療時間の兼ね合いで、水曜午後と土曜午後はクリニックを開けていないので、その時間に待合室スペースを有効活用したいと思っていました。

そこで偶然地域の社会福祉協議会の方を通して紹介頂き、場所の有効活用をしてもらえるようになりました。学習支援団体やNPO団体は継続した場所の確保が困難であったという事情があります。例えば公民館のようなところだと地域以外の住民も利用する活動になると借りられなかったりして、当院のような場所で借りられるのは非常に助かるということだそうです。

医療と直接関連のない団体さんと交流を持つことによって新たな広がりが出れば良いと思っています。医療とは関係ない団体であっても、介護予防のNPOさんには管理栄養士さんを派遣したりしました。また、学習支援団体には性教育の部分などで人を派遣したりといった出来る範囲での協力をしていきたいと考えています。

健康カフェをオープン

冒頭でも触れましたが、4月からは「健康カフェ」をオープンする予定で、認知症カフェとしての保健所の届け出も済んでいます。カバーする領域は認知症だけでなく、様々な疾患の予防や健康情報を多職種の有資格者(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など)が発信をしていき、相談窓口の形や健康講座をやっていきたいと思っています。

また、運動療法の1つとして、都内の循環器系の病院でも利用されている「心臓リハビリ」としての「ヨーガ療法」も週に1回ほど実施予定です。収益モデルに関しては、当院に現在ある人的リソースを利用できるので、まずは企業の献金や国の助成金の協力を求めずにやってみたいと考えています。ワンドリンク・お菓子など500円を頂こうと考えております。

クリニックにおいては、せいぜい5分程度の診療しか患者さんと繋がることができない時間的な制約があるので、診察以外の時間と場所を設けて正しい医療情報に触れる接点を増やしていくことで、患者さんや市民の方々の健康度が上昇するのではないかと思っています。特に生活習慣病は患者さんの行動変容(食事と運動)が必要になってくるので、有用ではないかと思っております。

病院やクリニックは元々社会貢献する企業としての機能を持つものの、さらにカフェとしての機能を付加させて、患者さんや市民の方に貢献できるクリニックになるのではないと思っています。そしてその輪が他の病院やクリニックへと広がっていけば、健康のことを気軽に相談できることで健康を保て、安心して暮らせる良い社会になるのではないかと考えています。

クリニック入職した経緯

さて、私のことを少しお話しさせて頂きます。大学は関西学院大学に行って教師になろうと思っていました。しかし、卒業が近づくにつれて実家がクリニックで父が医師だということを再確認して、人の助けになる医療関係の就職を考え、製薬会社のファイザーに10年近く勤務し、栃木県でMRをしていました。週1回週末に東京で講義受けてMBAをとったのもこの頃です。しかし、大企業なので営業のことはわかっても、経営のことなどは全くわからない状態でした。

MBAを学ぶと実際にその知識を使える場所も欲しくなりました。このままではいけない思い、東京に戻ってきて、規模の小さな再生医療系のベンチャーに転職しました。保険外の医療というものに触れたのも初めてでしたし、一人で何役もこなすことが出来たことはとても貴重な経験になりました。

大学院やベンチャーを通じて色々な情報収集や知人が出来たこともあり、その経験や知識を実家のクリニックにどのようなプラスアルファをもたらせるかという想いで取り組み始め、入職してから2年が経ったところです。

今後の展開

さまざまな新しい医療にも関心を持っておりますので、クリニックの事務長プラスアルファで、いくつかのわらじをはいている状態です。いずれは分院を作ったり、事務長もアウトソーシングしたり、医療機器開発をしたりと様々な構想を練っています。

とりわけ開業支援については興味があり、新しいスタイルの開業支援をやっていく予定です。開業予定の先生に入職してもらい、MBAで学んだ経営メソッドをベースにして課題を先生に出して、ディスカッション形式で学び、実際に勤務してもらっている現場で実践してもらい、使える技術にする。つまり経営者になるための必要な知識を使いこなせるレベルに持っていくようにします。この学びと実践のサイクルを高回転で回していくことで、安心して開業の準備が出来る他、隠れて開業準備に追われることもなく、堂々と準備が出来るようになります。

開業前のサポート体制だけでなく、開業支援の他、開業後もグループ購入をすることで血液検査や院内で利用する物品や予防接種の単価を抑えることが出来る体制になるので、より安定した経営が出来ると考えています。必要なところにお金をかけて、不必要なところにはお金をかけないで、経営効率をあげることがスタートから出来るのは、開業される先生のメリットになると思っています。

実際に2019年の4月から2020年4月に開業を予定されている先生が当院に入職予定で、本取り組みが試されます。外来診療、訪問診療、産業医など幅広く学びのチャンスが提供できるので、今後、開業を考えている先生方はこのような開業パターンが増えてくるのではないかと思っています。

医療職と経営の役割分担

今後は医療と経営の分離が進んでいくのではないかと思います。社会保障費の抑制は喫茶の課題であり、あらゆる方法で、医療効率を高め、セルフケアが推奨され、受診抑制が図られます。その流れの中で、医療機関が選ばれる時代が来て、クリニックが淘汰されるそう遠くなく到来するはずです。

資格を持った人がしかるべき仕事をするのが一番効率的で、医師は医師しか出来ない仕事、すなわち診察業務全般になりますし、看護師さんは医師がやらない医療行為、あとは事務全般になります。つまり医療行為以外の仕事を誰かが行うことが医療効率を高めることとなり、同時に医師や看護師が患者さんと向き合う時間を多く持つことが患者さんも満足する。そうすることで、全体がうまく回るようになります。

経営にはあらゆるやらなくてはいけないことがありますが、医療周辺の仕事をするのが事務職(長?)の仕事であると思います。内部の人間で適材な人材がいない場合は、ある程度アウトソーシングするというのも方法の1つだと思います。また事務長として雇われた人がなんでもやってくれるかというとそこはまた難しい問題で、どうしても個性が出てしまうと思いますし、得手不得手もあると思います。

大事なことはクリニックのボトルネックになっていることが何なのかを分析すべきで、患者さんが望んでいること、院長が望んでいること、スタッフが望んでいることを総合して考えていけるような存在が必要になってきます。元々教育学が好きなので、今後は医療事務だけでなく事務長養成などの人材教育の部分にも力を入れていこうと思います