税理士と行う税務調査を防ぐコツ / TOMA税理士法人 田村信勝氏


クリニック経営をする上で、誰もが受ける可能性がある税務調査。今回は、TOMAコンサルタンツグループ株式会社の取締役を務める田村信勝氏に、税務調査の予防方法ついてお話を伺いました。
田村様には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOにご登壇いただきます。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『おさえておきたいクリニックのための税務調査対策』
講演では、税務調査に入られやすいクリニックの特徴や最近の税務調査の傾向、税務調査を予防するポイントについてお話しします。クリニックの中には、開業して1回も税務調査に入られていない施設もあれば、すでに数回入られている施設もあるでしょう。

特に、若い院長先生の中には、まだ税務調査を受けたことがない方や、税務調査の現場を知らない方も多いかと思います。講演を通して、税務調査の実情についてご理解していただければ幸いです。過去に税務調査で痛い目に遭った先生も、参考にしていただければ幸いです。


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税務調査の対象となるクリニックの特徴はありますか?

勘定科目で変動があるクリニックは要注意
税務調査の対象となりやすいのは、会計数値を財務分析したとき異常値がみられるクリニックです。例えば、申告書の勘定科目で、旅費交通費が去年より増えている、交際費が去年より減っているなど、大きな変動があると、税務署から注視されます。その後のデータ分析により最終選定に残れば、税務調査の対象になりやすいです。
言い方を変えれば、異常値が少ない決算書の作成ができると、税務調査に入られにくくなります。

税理士を変更したときは注意
財務分析の異常値により、税務調整が入りやすくなるのは、税理士を変更したときです。もともと「税理士が変わると税務調査が入りやすい」という噂もありますが、実際は決算書の傾向が変化するためです。

決算書は税理士の意向が反映されやすく、去年までは旅費交通費に計上していたものを車両費にしたり、交際費に計上していたものが会議費になったりという変動が起こることがあるためです。

法人や税務調査が入っていないクリニックは対象になりやすい
クリニックでは、どちらかというと税務調査を受けやすいのは、法人化している施設です。
税務調査は一定の割合で入るものなので、確率的に分母が小さい法人クリニックの方が、必然と税務調査が入りやすくなります。

また、10年など長期間、税務調査を受けていないクリニックも、調査対象になりやすいです。あとは密告をきっかけに税務調査を受ける例もあります。いわゆるタレコミですが、クリニックの元スタッフが、税務署に脱税疑惑を連絡することもあります。
税務調査の際に、署員が何か言うわけではありませんが、内部のことを把握している様子から分かります。

税務調査の予防のポイントについて教えてください


税理士ならではの書面添付制度を利用
税理士の場合、法人や個人のクリニックの確定申告をする際は、書面添付制度を利用できます。確定申告の内容に関する意見書を添付できる制度で、税理士のみ利用できます。例えば、その年に変動のあった勘定項目について理由を述べられるので、税務調査を予防できたり、調査日数を減らしたりすることに役立ちます。

実際に税務調査がある場合は、税理士に立ち会いを任せて問題ありません。税務調査は10時から始まって、16時半頃までかかることが多いためです。私の場合は、クリニックの診療に差し障りがないよう、院長先生に必要な時に少しだけ顔を出していただいて、後は任せていただいています。

税務調査で起こる失敗例はどんなものがありますか?

税理士への報告不足が申告漏れの原因になりやすい
院長先生と税理士のコミュニケーションが十分でないと、申告漏れが起き、追加納税が発生しやすいです。申告漏れを防ぐには、先生が「昨年はこんな事がありました」と税理士に自発的に報告していただくのがベストです。反対に、先生に隠す意図がなくても、「これは申告しなくてもいいだろう」と自己判断されると、申告漏れにつながりやすい場合があります。

そのため、当グループでは顧客の先生方に、原則、毎月1回の面談をお願いしています。毎月の面談で税理士とコミュニケ―ションを取ることで、申告漏れのリスクが減りますし、事前のアドバイスもしやすくなりします。

税理士事務所の中には、普段は資料をメールで送って、面談は年1回だけというところも多いかもしれません。税理士とのコミュニケーションが不足すると、後になって申告漏れが発覚することもあるので、普段から密なやり取りをしていただければと思います。

税務調査以外ではどんな相談をされることが多いですか?

事業承継などの問題も専門家がワンストップで解決
年配の先生の場合、事業承継のご相談を受けることが多いです。歴史のあるクリニックは院長先生も高齢なので、自院を子どもと第三者のどちらに譲るのか、それとも閉院するのか決めなければなりません。事業承継のご相談では、先生のニーズに合った対策をしながら、今後の方向性やゴールを決めていきます。

当社では、クリニックの経営パートナーを目指して、院長先生の顧問担当をさせていただいています。グループ全体では税理士以外にも、中小企業診断士・社会保険労務士・公認会計士・弁護士など専門家が在籍しております。担当者を窓口として、多様に対応できるのが強みです。

プロフィール


TOMAコンサルタンツグループ株式会社 取締役
TOMA税理士法人 税理士
田村 信勝氏

TOMAコンサルタンツグループの取締役として、医療関係に特化したお客様を対象にしたTOMA税理士法人のヘルスケア事業部を総括しています。

私は群馬県出身で、大学卒業後に医療専門の税理士法人に勤務しながら、税理士資格を取得しました。その後TOMAグループに入社し、17年になります。
得意分野は、病院・クリニック・調剤薬局といった医療関連の税務。
直接やり取りをする顧問先も抱えながら業務を行っています。具体的な内容は、医療に関連した節税指導・税務調査対策・財務改善医療法人設立等など多岐にわたります。