勤務医のまま始めるクリニック開業準備|積み重なる“スケジュール”を合理的に捌く【クリニック開業見通しサポートガイド】

「これ、全部自分でやるの?」

勤務医のまま始めるクリニック開業準備
積み重なるスケジュールを合理的に捌く

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はじめに:「病院勤務が忙しくて、開業準備が回らない」と行き詰まる前に

勤務医として働きながら、クリニック開業の準備を進めようとすると、スケジュールが雪だるま式に膨らみ、何から手をつけていいか分からなくなることも少なくありません。限られた時間の中で、戦略立案から融資交渉、物件探し、採用、行政手続までをすべてこなそうとすれば、どれだけ優れた医師であっても、開業の準備期間は容易にオーバーフローします。

本記事では「クリニック開業の準備期間やスケジュールを合理的に把握し、勤務医としての仕事と無理なく両立させる」ための全体像を解説します。
スケジュール全体の組み立て方や、役割分担・外注の考え方など、準備の全体像に焦点を当ててご紹介します。
詳細な準備内容やツール選定については、記事内の各リンクからご覧いただけます。

なぜ“スケジュールが積み重なる”のか?

開業準備には5つの並行レーンがある

クリニック開業の準備は、大きく以下の5領域で進行します。

開業準備における領域と主なタスク
領域 主なタスク例
戦略 診療圏調査、コンセプト設計、医業承継検討
資金 融資内諾、資金繰り、運転資金計画
物件 立地検討、居抜き案件の探索、契約交渉
人材 スタッフ募集、採用、研修
集患 ホームページ、広告設計、予約導線設計

これらはバラバラに進行するのではなく、互いに依存関係を持ちつつ並行して進めていかなければなりません。

参考記事【クリニック開業までのロードマップ

勤務と並行することで発生する“詰まり”

特に勤務医が開業準備を行う場合、次のようなタスクで詰まりが生じやすくなります。

  • 行政手続(保健所や厚生局への書類提出は平日日中のみ)
  • 医療機器の発注(納期調整・選定に時間がかかる)
  • スタッフ採用(応募・面接・内定まで1〜2か月は必要)

準備期間別のスケジュール圧縮リスク

準備期間とリスク内容
準備期間 リスク内容
12か月以上 余裕を持って各タスクに対応可能
9か月 行政手続や内装設計が重なり始める
6か月未満 すべてが同時進行。納期遅延や採用ミスのリスク

特に6か月未満で残りの準備を進める場合、すべての工程が同時進行となるため、合理的な役割分担や外注の判断が不可欠です。

準備期間の考え方:必要な時間の目安

一般的な目安

  • テナント型:12か月程度が理想
  • 医療モール・戸建て型:15〜18か月が安全

特に医療モールでは入居先の調整や、デベロッパーとのやり取りに時間を要します。

参考記事【クリニック開業物件の選び方

実際の統計と傾向:準備期間は「1年以上」が主流、ただし6か月未満も一定数

クリニック開業の準備期間については、開業支援会社や関連メディアが掲載する実例やスケジュール例を見ると、一般的には1年以上前からの着手が推奨されていることが多く見られます。

一方で、「物件が決まってから急ピッチで準備を進めた」という事例もあり、準備期間6か月未満で開業に至るケースも一定数存在します。
特に40歳以下の若手医師や、勤務医としての経験が長く「構想は練ってあった」という場合は、短期間での準備を現実的に実現することもあるようです。

なお、日本医師会の過去調査(2009年)では、開業医の平均年齢は41.3歳、開業後5年以内の医師では平均44.9歳とされており、開業準備が本格化する時期が40歳前後であることが多いと考えられます【出典:日本医師会「開業動機と開業医の実情に関する調査」】。

これらの傾向から、準備期間は「1年前から着手するのが理想的」とされながらも、実際には12か月未満、さらに6か月未満の短期決行型も一定割合存在するというのが実情です。

クリニック開業における短期決戦型のリスク

6か月未満のスケジュールで開業を進める場合、以下のリスクが生じます。

  • 融資審査と物件契約の順序が逆転し、交渉に不利
  • 医療機器の納期遅延で内装工程に影響
  • スタッフ採用が間に合わず、開業時のオペレーションが不安定に

こうしたリスクは、外注やIT導入などの合理化によって一部は吸収できますが、「開設届の提出時期」や「保健所や防災管理等の事前協議」など、どうしても時間が必要なものもある点に注意が必要です。
また、レセプト入金のタイムラグにも注意が必要です。開業初期は運転資金を6か月分程度用意しておきましょう。

参考記事
クリニック開業における実務的な行政手続きの時系列
クリニック開業におけるIT・ICT機器の選定ガイド
クリニック開業時の医療機器選定と配置

クリニック開業の時系列スケジュール(逆算型)

以下が開業時期から逆算した代表的なスケジュール例です。

開業までの時期別スケジュール
時期 主なスケジュール
12〜9か月前 診療圏調査、物件候補選定、概算予算・融資試算
9〜6か月前 融資内諾、物件契約、内装設計、IT要件定義
6〜3か月前 採用開始、機器発注、行政相談、HP制作
3〜0か月前 内装工事、スタッフ研修、開設届提出、内覧会

各タスクの具体的な段取りは以下からご確認いただけます

「全部自分でやらない」ための外注マップ

外注・委託の例
領域 外注・委託の例
調査 診療圏調査会社への依頼
資金 融資サポート、資金計画支援
内装 設計施工一括業者による対応
機器 納期管理まで含む導入業者
IT 開業・経営支援会社による導入代行
採用 採用媒体運用・人材育成
広報 ホームページ制作、SNS広告支援

外注やIT導入の「優先順位」は、開業スケジュール全体と密接に連動している

「何から外注・IT導入すればいいのか」は、多くの勤務医が直面する初期の判断ポイントです。
しかし、これは単なる「重要度の序列」ではなく、「開業までのスケジュールのどこに組み込むべきか」という現実的な優先順位に他なりません。

例えば、診療圏調査は「物件選定」の意思決定に直結するため、最初期に実施しないとすべてが後ろ倒しになります。
次にホームページやWeb導線は「開業前に検索される状態」を作る必要があるため、内装業者との打ち合わせと並行して動き出す必要があります。

電子カルテや予約システムも、院内ネットワーク構築や業務設計と直結するため、工事の前段階から選定しておかないと、直前で導入が間に合わないリスクがあります。

このように、「外注やITツールの導入順」は、スケジュールに基づいた合理的な順番であり、実際の現場では「必要性」よりも「設置タイミングと事前準備期間」で決まるのが実情です。

スモールスタート型のIT導入ロードマップ(例)

次に示すのは、「とりあえず開業を実現し、運営が安定してから徐々に合理化していく」というスモールスタート志向の開業医が想定する、段階的なIT導入の例です。

フェーズ別 優先ITツールと理由
フェーズ 優先ITツール 理由・前提
第1段階 予約システム 受付電話・紙台帳による予約管理の負荷を軽減。コストも抑えやすい。
第2段階 電子カルテ+レセコン 業務の中核を担うため必須。ただし機能比較や導入支援が必要で、準備期間を要する。
第3段階 POSレジ レジ会計・分析を効率化。手書きレジでも運用可能なため後回し可能。
第4段階 自動精算機・キャッシュレス端末等 初期費用が大きく、診療報酬・集患状況が安定した段階で導入検討。

予約システムは電子カルテより先に検討されることも多い
予約システムは低コストかつ早期導入がしやすく、Web問診やHP連携の入口にもなるため、開業準備の初期に仮導入するケースが一般的です。
一方、電子カルテは業務設計と直結し選定に時間がかかるため、順序としては「予約→カルテ」が現実的です。

科目別で異なる準備期間とスケジュール上の注意点

診療科別 特記事項
診療科 特記事項
内科 汎用性高いが競合多。集患と差別化設計が必要
整形 リハビリ室など内装に時間。物件選定から慎重に
皮膚科 自費診療導線の早期設計が鍵
眼科 精密機器の納期が長く、発注時期に注意

まとめ

勤務医としての業務をこなしながら、開業準備を合理的に進めるには、

  • 準備期間の見通しを立てて逆算型で動くこと
  • すべてを自力で抱え込まず、外注やIT導入を組み合わせること

が重要です。各タスクの詳細を確認し余裕のあるスケジュール設定を行うことで、開業準備や現行の勤務におけるイレギュラーにも無理なく対応できるでしょう。

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この記事の執筆監修者

DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)

DOCWEB編集部は、2016年の設立以来、一貫してクリニック経営者の皆さまに向けて、診療業務の合理化・効率化に役立つ情報を発信しています。
クリニックの運営や医療業務の改善に関する専門知識をもとに、医療機関の実務に役立つ情報を厳選してお届けしています。

開業準備期間はどれくらい必要ですか?
一般的には12か月程度が目安ですが、物件や診療科によっては6〜18か月と幅があります。
融資と物件、どちらを先に進めるべきですか?
並行が基本ですが、融資の内諾があると物件契約交渉がスムーズです。
スタッフ採用はいつから始めるべきですか?
採用活動は開業の6か月前が理想。内定から入職まで1〜2か月のリードタイムが必要です。
自動精算機は開業初期から導入すべきですか?
必須ではありませんが、受付の業務負荷軽減とキャッシュレス対応には有効です。高額ですが、人件費との比較や診療圏の患者層と合わせて判断しましょう。