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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
オープニングトーク
(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第30回始まりました。大西さん今回もよろしくお願いします。
(大西)よろしくお願いします。記念すべき30回ですね。
(高山)そうですね。とうとう30回まで来ましたね。春から始めまして、毎週毎週地道に積み上げてきましたけども。
(大西)すごいですね。やり続けることはすごいです。
そうですね。それでは前回の第29回の続きの話をして行きたいんですけど、今日のテーマは何でしょうか?
開業準備におけるスタッフへの理念浸透
(高山)前回は、開業準備直前にはスタッフが集まったら、スタッフ同士の理解を深めることから準備を始めましょう、という話がありました。理解が深まった上で開業すると良いですね、と。
今回は、院長先生がスタッフに何を分かってもらうべきか、について話していきたいと思います。
(高山)よろしくお願いします。
(大西)よろしくお願いします。
院長がスタッフに伝えるべきこと
(高山)院長はスタッフに何を伝えれば良いでしょうか?
(大西)ズバリ、先生が大切に思っていることを伝えて欲しいんです。それはミッションと言えるかもしれません。
(高山)ミッション。医師として開業する、ということを選んだ理由ということでしょうか?
(大西)そうです。なぜこのクリニックを作ろうとしたのか?これを恥ずかしがらずに堂々と話してほしいんです。
例えば、「地域に貢献したい」とか「地域の幸せのために」とか「この地域における医療を支えたい」など、ありきたりな言葉を使う先生もいるでしょう。
(高山)そうですね。よく聞きますね。
(大西)こうした言葉の裏には、必ず理由があるはずです。私がよく先生方に話すのは、なぜ医師を目指したのか、大学病院時代、勤務医時代、どんな経験をしてきたのか、ということです。
そのポイントポイントに、先生の人となりが出るんです。例えば、ある先生は開業にあたって、ご自身の家族に医療関係者はおらず、医師の家系でもない、とおっしゃっていました。
でも、いとこのお兄様を大きな病気で亡くされた経験があり、もしかしたら医療で救えたんじゃないか、支えられたんじゃないか、という思いが、開業の原点になっているそうです。
誰かを救いたい、そのための方法の一つが医師という職業なのではないか、という考え方に基づいているんですね。
そうすると、一人ひとりの患者に対する接し方が変わってくるんです。
患者への思いやり
(高山)目の前の患者が自分の身内だったら、大切な人だったら、おろそかにできないし、おろそかにするという考えすら思いつかないですよね。ただただ大切にしよう、という気持ちしかありません。
(大西)その先生は理念に「患者を自分の家族と思いなさい」と書いてあるそうです。
家族や親戚、仲間が大切なのと同じように、患者さんを大切に思うことで、思いやりや優しさ、気遣いなどが自然とできるようになる、という考えです。その根底には、身内を亡くされた経験があるんですね。
医師を志した理由
(高山)開業する以前に、そもそもなぜ医師になろうとしたのか、ということも、スタッフに伝えておいた方が良いでしょうか?
(大西)そうですね。私は医療事務の専門学校で講師をしているのですが、生徒によく「なぜ医療事務になりたいんですか?」と質問します。
すると、「看護師になりたかった」「身内に看護師がいる」「母親が医療事務をしている」など、様々な答えが返ってきます。
中には「誰かの役に立ちたい」と言う生徒もいます。他の仕事はたくさんあるのに、あえて医療事務という仕事を選んだ、そのベースには、誰かの役に立ちたいという思いがあるわけです。
医師は、その最たるものだと思います。自己実現のためではなく、社会貢献のために、という思いが強いのではないでしょうか。
(高山)もともとそういうことを目指す方は、自分のことよりも貢献したいという原点があるはずですね。
(大西)開業する際に、場所も重要です。なぜこの場所を選んだのか、というエピソードも大切です。
生まれ育った町なのか、親が生まれ育った町なのか、以前勤めていた病院の近くが良いと思ったのか、など。
開業後は、町の会合やお祭り、ボランティア活動などにも積極的に参加してほしいと思っています。
医療機関は地域住民の一部であり、公共性が高いので、地域との関わりは大切です。
清掃活動など、出たくないと思うスタッフもいるかもしれませんが、進んで参加したいと思う人がいる組織が、クリニックには向いていると思います。
社会貢献への意識
(高山)意外と自分のことは気づきにくいものですよね。「自分は社会貢献なんて考えていない」と思っている先生でも、一般の人から見れば、すでに十分に社会貢献をしている場合も多いと思います。
自分の中では当たり前でも、特別なことだと思っていない先生もいるのではないでしょうか。
(大西)それを言語化するのが、理念やクレドです。言語化の大切さを私は強く感じています。
私はよく「コミュニケーションおばけ」と言われるのですが、言葉にすることをとても大切にしています。
なぜなら、言葉には責任が伴うからです。自分が発した言葉によって、自分の生き方が、行動が変わってくるからです。
言霊の力
(高山)自分の生き方に反映していく、支えられていく、言霊の力ですね。
(大西)院長の最初のプレゼンは、まさに言霊の始まりです。
前の日に寝ずに考えても良いので、なぜ医師になったのか、なぜこの場所で開業するのか、なぜこのスタッフを選んだのか、その理由を言語化して伝えてほしいんです。
なんとなく、ではなく、ちゃんと答えを用意して話してほしい。なぜ?という問いへの答えは、後から見つかることもあるでしょう。
しかし、言葉は嘘をつかないと思います。
言葉の選び方
(大西)かっこつけた言い方をすると、そういう人生になる、言葉の通りになる、という言葉選びは大切です。「言葉を選べない」「ついつい人を傷つけてしまう」という人は、その裏に何か理由があるはずです。
(高山)深い話ですね。
(大西)終わらないのでさらっと触れますが、人の個性は言葉によって作られると思っています。
理念、クレドの言語化
(高山)特に、様々な人が集まって一つのクリニックを作る場合は、言葉の定義や意味、方向性を揃えていく必要がありますね。
(大西)自分の言葉がどれだけの影響力を持つのか、院長は理解する必要があります。
(高山)スタッフは院長の言動を見て、それに合わせて行動します。
(高山)「そんなつもりではなかった」という言葉は通用しません。経営者なのですから。
失敗することもあるでしょう。何かを言って悪く伝わることが怖いからと、何も話さない先生もいますが、それでは「あの先生は何を考えているか分からない」と思われてしまいます。
コンフリクトを恐れない
(大西)自分の考え方を伝え、大切にしていることを伝え、「これについて皆さんの意見を聞きたい」と、コンフリクトを恐れずに話すことが大切です。コンフリクトが起きても、それを修復すれば良いのです。
「分からない」というのが一番怖い。院長が何を考えているか分からない、スタッフが何を考えているか分からない、それは、進むべき方向、ベクトルがない状態です。これは開業すると必ず起きることです。
(高山)そこに視点が行くかどうかで大きく変わってきますね。意識があるかどうか、です。
(大西)開業前に考えていたはずのことなのに、答えが出ない。だからこそ、言語化する練習が必要なんです。
理念、クレド、それにまつわるエピソード、この3つが土台です。なぜ理念を作ったのか、なぜクレドが必要なのか、その裏にあるエピソードは何か、これらを整理整頓しておけば、必要な時に言葉が出てきます。
言語化の機会
(高山)普段考えていない先生でも、開業準備の期間は言語化する良い機会になりますね。
(大西)言語化した理念やクレドは、スタッフにも伝わり、ホームページを通じて患者さんにも伝わります。
日々の診療活動の中でも、患者さんに伝わっていくのです。私は尊敬する先生方にいつも「理念、クレドを実践していますね」と伝えています。
先生だけでなく、スタッフも実践している組織は強いです。理念、クレドに反する人は、その組織に入りづらくなります。
高いレベルの組織
(高山)当たり前のレベルが一定以上になる、ということですね。以前、大谷翔平選手が所属するドジャースは、「勝つためには何でもやる」という価値観があり、それが強さの秘訣だと聞きました。
4番バッターであっても、1点が必要な時はスクイズをする、など。理念が一貫しているチームは強いですね。
(大西)私は大学時代にラグビーをやっていましたが、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という言葉があります。
最初は意味が分かりませんでしたが、やっていくうちに理解できました。ワンマンプレーは点に繋がりませんが、自分の犠牲は点に繋がります。
自分が起点となって、みんなを集めてスタートを切る、ラグビーで言う「集合」という行為が、チームプレーを生み出すんです。
理念、クレドを決めて浸透させる、そのための第一歩が開業前の研修にあるのではないでしょうか。
面接の段階から、「私はこういう考え方です。ついていけそうですか?」と伝え続けることが重要です。
理念は進化するもの
(高山)スタッフが集まってから言語化するのではなく、採用面接の前段階で言語化しておくと良いですね。
(大西)先日、開業10年目の先生から「理念を見直したい」という相談を受け、理念の研修を行いました。
スタッフ全員の価値観と先生の価値観をすり合わせていく作業です。これもエピソードトークですね。
「こういう理念にしたいけど、みんなはどう思う?」と聞いてみると、「違和感がある」「何かを足した方が良い」など、スタッフから様々な意見が出てきました。良い組織だと思いました。
そこで、どんな価値観を持っているか、というバリューが重要になります。先生はビジョンを語り、「5年後、10年後、こんなクリニックにしたい。だから、こういう理念にしたい」と話すと、皆が納得していました。
理念は作って終わりではなく、常に進化していくものです。
(高山)バージョンアップしながら、皆で作り上げていく、ということですね。
(大西)その根底にあるのは、先生の心の言葉、内なる言葉をいかに言語化できるか、ということです。言語化することの大切さを、開業を検討している先生方にぜひ考えていただきたいですね。
(高山)今回はクリニックの開業前に考えるべき理念、クレドについて話しました。続きは次回にしたいと思います。大西さん、ありがとうございました。
(大西)ありがとうございました。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。この番組への感想は「#院長が悩んだら聴くラジオ」でXなどに投稿いただけると嬉しいです。番組のフォローもぜひお願いします。この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。