クリニックの開業資金|診療科別費用と融資の選び方ガイド

クリニック開業資金のリアル:診療科別費用と融資の選び方ガイド

はじめに:開業資金の不安、どう乗り越える?

クリニックの新規開業を考える際、多くの医師が直面する課題の一つが「資金の確保」です。
自己資金でまかなえるのか、融資は受けられるのか、診療科によってどれほど費用が変わるのか。

本記事は、「【完全ガイド】クリニック開業の手順と成功へのロードマップ」シリーズの一環として、開業資金についてまとめました。
診療科別の開業資金の目安と、利用できる代表的な融資制度について解説します。効率的で合理的なクリニック経営の第一歩として、資金計画の考え方を整理しましょう。

診療科でここまで違う!開業資金の目安

クリニックの開業費用は診療科によって大きく異なります。以下は、複数の情報源を基に算出された資金目安の一覧です。

診療科 開業資金目安(万円)
内科 5,000〜9,500
小児科 4,000〜7,900
皮膚科 2,000〜6,500
整形外科 5,000〜9,700
眼科 5,000〜8,900
耳鼻咽喉科 5,000〜9,700
産婦人科 5,000〜7,900
精神科・心療内科 1,400〜3,400
泌尿器科 3,000〜6,500
在宅診療 3,500〜5,000

たとえば、眼科や整形外科は高度な機器が必要なため高額に、精神科は設備が少なく低コストで済む傾向にあります。
中でも皮膚科はスタイルにより費用の幅が大きく異なります。

皮膚科の費用に幅があるのはなぜ?【実例比較】

皮膚科の開業費用は2,000万円から6,500万円までと幅があります。その要因は主に診療スタイルにあります。
方向性を明確にすることで、費用の見通しも立てやすくなります。

  • 一般皮膚科(保険診療中心):内装や機器投資を抑えられ、2,000万〜3,000万円台でも開業可能。
  • 美容皮膚科(自由診療):高額なレーザーや美容設備、高級感ある内装が求められ、5,000万円以上になることも。

費用を左右する4つのポイント

開業資金は、診療科だけでなく以下の要素にも左右されます。

  1. 医療機器の必要度:画像診断装置などを必要とする科目は費用が高額に。
  2. 施設要件:処置室・検査室の有無で内装費が変動。
  3. 患者層・内装:小児科や婦人科は「安心感」や「清潔感」を重視した内装が必要。
  4. 診療単価とのバランス:高コストでも単価が高ければ早期回収が可能。

これらを踏まえて、自院に最適な投資バランスを見極めましょう。

開業資金の内訳と地域差も押さえておこう

クリニックの開業費用は単なる総額だけでなく、その内訳と地域によるコスト差も考慮が必要です。

主な費用項目の内訳

費用項目 内容
不動産関連費 テナントの敷金・礼金・前家賃、または土地建物の取得費用
内装・工事費 診療科や法令対応に合わせた設計・施工費
医療機器・什器費 診療・検査・処置に必要な機器や家具
情報・通信機器費 電子カルテ、レセコン、OA機器など
備品・消耗品費 医薬品、事務用品、開業時の初期ストック
集患・広告費 WEB広告、チラシ、ホームページ制作など
人件費・運転資金 開業直後の資金繰り、給与の前倒し分など

首都圏と地方の費用差

一般に、首都圏ではテナント賃料や内装工事費が高騰しやすく、同じ規模・仕様のクリニックでも地方と比べて1〜2割高くなる傾向があります。一方、地方開業は物件費を抑えやすい反面、スタッフ確保や集患において独自の課題を抱えることもあるため、単純なコスト比較ではなく経営全体のバランスで判断することが重要です。

自己資金がある程度確保できたら…頼れる融資制度一覧

クリニック開業時には、公的・民間のさまざまな融資制度が活用できます。

  • 日本政策金融公庫(JFC):最大7,200万円(運転資金4,800万円)、原則無担保・無保証で女性や若年・高齢開業者に金利優遇あり。
  • 福祉医療機構(WAM):無床診療所なら最大3億円まで。医師不足地域では優遇措置も。
  • 民間金融機関(信用金庫・地銀など):地域密着型で柔軟な審査も。医師会と提携した専用ローンも存在。

自己資金の目安は全体の1〜2割とされますが、制度によっては自己資金不要なものもあります。

融資準備で必要な3つのこと

融資を受けるためには、以下の準備が不可欠です。

  1. 事業計画書の作成:事業計画書の作成:収支計画、診療方針、患者見込数などを具体的に記載。収支シミュレーション表や運転資金の予測も含め、説得力のある「事業計画書の書き方」を理解しておくことが重要です。
  2. 自己資金の証明:通帳や金融資産など、金融機関が確認できる書類を用意。
  3. 方向性の明確化:診療科・スタイル・立地条件などを明示し、融資側に信頼を与えること。特に「診療圏調査」で地域の需要や競合状況を把握しておくことで、説得力ある事業計画書が作成できます。

事業計画の精度が、融資可否に大きく影響します。

合理化・効率化の視点で考える資金戦略

無駄な初期投資を抑えるには、以下のような工夫も効果的です。

  • 高額な設備は「医療機器のリース」を活用することで初期費用を抑え、保守契約込みのパッケージも検討可能です。特に画像診断装置や内視鏡などの高額機器では、リース活用が経営の柔軟性を高めます。
  • デジタルサイネージやWEB広告を活用し広告費を最適化しましょう。
  • 自動釣銭機や予約システムを導入して人件費を削減しているクリニックも増えています。

必要な設備とそうでないものを見極めることが、合理的な資金戦略に繋がります。
また、人件費の計画と設備投資へ予算をこの時期に固めておきましょう。

開業準備を支えるプロフェッショナル

リニックの開業は、医療行為とは異なる「経営者としての意思決定」の連続です。その負担を軽減し、成功率を高めるためには、専門分野のプロフェッショナルに協力を仰ぐことが欠かせません。ここでは、クリニック開業時に頼れる主な支援業者の種類と、それぞれの役割をご紹介します。

■ 内装業者(クリニック専門)

医療法やバリアフリー法に対応した設計・施工が求められるため、医療施設に特化した内装業者の支援は重要です。診療科目に合わせた動線設計や、患者層に応じた空間づくりも、快適な医療提供と集患の両面に影響を与えます。

■ 税理士(医療業界に精通)

医療分野特有の会計処理や節税、法人化のタイミング、所得分散の方法など、専門知識が求められる分野です。開業準備段階から相談することで、融資や資金繰り計画の立案にも大きく貢献してくれます。

■ 開業コンサルタント

開業全体のディレクションを担う存在です。物件探しから資金計画、スタッフ採用、集患戦略まで、開業に必要な工程を一括で支援してくれるため、多忙な医師にとっては特に心強いパートナーとなります。

■ 医療機器業者

診療科に適した機器の選定や導入、場合によっては中古品やリースを活用したコスト最適化まで相談できます。保守・点検を含めた長期的視点での付き合いが前提になるため、早期の相談が望ましいでしょう。

■ ICT・レセコン・電子カルテ業者

電子カルテやレセコン、オンライン予約システム、自動釣銭機との連携など、クリニックの業務効率化に直結する分野です。開業初期からの導入で、人件費削減や患者満足度向上を実現することができます。

まとめ:費用を「正しく知る」ことが合理化の第一歩

診療科や開業スタイルによって、開業資金には大きな違いがあります。しかし、費用構造を正しく理解し、利用できる融資制度を活用すれば、自己資金が少なくても開業は可能です。

合理的な資金戦略を立てて、失敗しないクリニック開業を実現しましょう。

参考:
日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
独立行政法人福祉医療機構(WAM)「医療貸付」

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この記事の執筆監修者

DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)

DOCWEB編集部は、2016年の設立以来、一貫してクリニック経営者の皆さまに向けて、診療業務の合理化・効率化に役立つ情報を発信しています。
クリニックの運営や医療業務の改善に関する専門知識をもとに、医療機関の実務に役立つ情報を厳選してお届けしています。