学習する組織づくり(2)心理的安全性の作り方_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード61全文書き起こし

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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第61回始まりました。大西さんよろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?

今日のテーマ:学習する組織の要素「心理的安全性」

(高山)前回に引き続き「学習する組織づくり」ということで、その要素を3つ前回あげましたが、そのうちの1つ目、「心理的安全性の作り方」について深掘っていきたいと思います。

(大西)これは今Googleが提唱していて、すごく広まってきた考え方ですね。

もしかしたら、日本にはこれまでなかったのかもしれません。

今でこそ言われるようになりましたが、僕が若い頃はあまり聞いたことのない話だったので、ぜひ聞いてほしいなと思います。

(高山)ではこの後、心理的安全性について語っていきたいと思います。よろしくお願いします。

(大西)お願いします。

会議がうまくいかない原因

(高山)最近出てきたワードといっても、もう数年経っていますが、心理的安全性はどうやって作ったらいいでしょうか?

(大西)まず、会議で活発に議論ができる組織ということです。

そもそも会議をしていないクリニックもあるのですが、いざ会議をすると、まあうまくいかないですよね。

びっくりするぐらいうまくいかないです。

(高山)会議の進行は、そもそも難しいですよね。

(大西)大体院長がするのですが、院長発表会になってしまうんですよね。

(高山)独断講演会みたいな感じですね。

(大西)それだと、スタッフは寝てしまいますよね。

(高山)参加している人が黙っている時というのは、どういう心理なのでしょうか?

(大西)「早く終わればいいな」ですね。

(高山)院長としては、議論に参加してほしい、意見を言ってほしい、何かアイデアはないか、主体的に考えてほしい、といった期待をしてしまいますよね。

(大西)でも、そういう話し方をしていないんです。

(高山)では、話す側の問題ということですね。

(大西)決定事項を伝えるだけだと、話す余地がありません。

(高山)そうですね。決定事項を伝えるだけだと伝達の場なので、そうだと思うのですが、それで「意見ありませんか?」と一応聞きますよね。

(大西)そのあと、シーンとなりますよね。

(高山)ははは。

(大西)「意見ありませんか?」という質問がおかしいです。

(高山)意見は自然に出てくるものですから。

活発な議論を生む会議の進め方

(大西)「こういう議題で話し合います。今から10分間、用意スタート」というのが正しい進め方でしょうね。

(高山)テーマ設定が必要ですよね。

(大西)そうです。例えば、「休憩時間の過ごし方について話し合いたいと思います。

ではチームに分かれて話し合ってください」と促し、発表してもらいます。そうすると、休憩時間は何をしていいのか、何をしてはいけないのか、といったルール決めができるわけです。

(高山)うーん。

(大西)このあたりは結構大事なことで、休憩時間は何をしてもいいわけではないんです。

休憩時間も職務時間です。

最近この点を勘違いしている人が多いように感じます。

(高山)法律では8時間勤務で1時間休憩をしなさいというルールはありますね。

(大西)給料が発生しているわけです、休憩時間も。

(高山)これは発生しているときとしていないときがあるのではないでしょうか?

(大西)法律的に言うと、8時間勤務で1時間休憩となると、1時間分の給料を払っていることになりますよね。

(高山)8時間拘束ですよね。だから実働は7時間で、9時間拘束ではないですよね。

(大西)そうです。7時間働いて1時間休憩するわけですから。

そうなると、例えば休憩時間に外出していいのか、してはいけないのか、外出するなら事前に伝えてほしい、といったルールは一応必要かなと僕は思います。

(高山)そうですね。そこの細かいところは就業規則で規定する必要がありますし、パートなのか正社員なのかによっても違ってきますが、細かい話は一旦置いておいて。

(大西)テーマを決めて話し合い、そのまとめを発表して全員の意思決定をする、という仕組みが大事ということですね。

意見が出やすい環境の作り方

(高山)それを聞くとすぐ思いついてしまうのが、「意見は出したけど採用されない」「言っても結局トップの意見で覆されるんでしょ」といった白けた雰囲気が出てきそうなイメージがあるのですが。

(大西)基本的にはその場で解決しません。「挙がったテーマについて、どれを採用し、どれを採用しないかは後日報告します。要望は承ります」という形で、一度持ち帰るのがいいでしょう。

(高山)なるほど。それはいいやり方ですね。

(大西)僕らコンサルタントもそうなのですが、話し合ってそのまま放置もまずいですし、話したことに対してアクションリストを作って実行に移す必要があります。

その際に、いつまでに議論するかというアクションリストを僕は作っています。

結果をすぐに求めるような進め方をすると、危険が伴います。

(高山)そうですよね、様々な問題がありますよね。

(大西)法的な問題もあれば、スタッフのマインドが下がるという問題もあります。

せっかく出たアイデアはすごく大事なので、まずは「アイデアをありがとうございます。

前向きに検討させていただきます。

ただし、今日すぐには決定できないので、後日ご報告します」という対応でいいのではないでしょうか。

(高山)その場で決定しないという前提を設けることが大事なのですね。

組織の前提となる「理念・ビジョン」の共有

(大西)それと、もう一つ。先ほど高山さんがおっしゃったように、議論の中身が院長の意向と別の方向に進むケースがありますよね。

院長の思惑とは違う方向に、ですね。

(大西)それについては、先に宣言した方がいいと思います。「私たちの組織の理念に沿った議論をしてください」というように。

これはベクトル設定に関わってきますが、例えば「1日100人の患者さんを診たい」という議論をするときに、「そもそも100人も診たくない」という人がいたら話になりません。

「私たちのクリニックは、多くの患者さんに喜んでいただくために存在しています。さて、そのために何をすればいいか、議論してください」というのが正しい問いかけです。

その大前提を覆されてしまうと、議論になりません。

(高山)確かに。前提を揃えることは大事ですね。

(大西)そういう意味では、目標やベクトルのすり合わせを先にしておく必要があります。

ですから、会議の前には必ず理念の唱和をしてもいいくらいです。

(高山)もっと言えば、入社の段階でベクトルを合わせてもらう必要があるということですね。

(大西)そうです。「私たちは何のためにこのクリニックをやっていて、どんな思いでやっているのか」ということを熱く語ってからスタートした方がいいですね。

医療従事者としての心構え

(高山)そこに共感して入ってきてくれれば、それが働く目的になりますからね。もちろんお金も大事ですが。

(大西)働く目的が一致していない人たちが集まっても、うまくいきません。

(高山)大西さんとはこういう話ばかりしていますね。

(大西)皆さんそこで苦しんでいるでしょうから。お金を稼ぎたいだけなら、別に医療じゃなくてもいいと僕は思います。

(高山)確かに。そうですね。

(大西)何回も言っていますが、僕は「医療は『ありがとう』を集める仕事」だと思っています。

この感謝の心がない人が組織に入ってくると、非常にイレギュラーな存在になります。

(高山)なるほど。そういう人は、逆に入ってきてしまったら出て行ってもらった方がいいということですか?

(大西)そう思います。「ありがとう」が言えない人が入ってくると、結構きついですよ。

(高山)そもそも社会貢献的な立場、そういう職業ですもんね。

(大西)そうです。これは医師、看護師、事務、職種は全く関係ありません。

全員のベースにあるのは社会貢献です。

この話をまずした方がいいのかもしれませんね。

(高山)それはチームの目標以前の問題ですね。医療に携わる者としての前提というか。

(大西)そうです。だって私たちは国の税金や社会保険料を使って生きているわけですから。

社会貢献を前提に作られた制度の上で成り立っています。

(高山)そうですよね。収入の7割は税金や保険料から出ているわけですから。

(大西)そうですし、公費に関しては10割が税金です。そうなると、ここは自由競争の世界ではないわけです。

(高山)純粋な民間企業とは言えない、純公務員に近い立場と言ってもおかしくないですよね。

(大西)そうそうそう。その点を、「民間だから関係ない」と考えてはいけないんです。

(高山)そもそも民間企業なのか、ということすら、今考えると少し違いますね。

(大西)3割が民間、という感じですね。

(高山)半官半民みたいな。

(大西)そんな感じです。

(高山)その意識はないかもしれません、あまり。

(大西)オール自由診療なら民間ですが、保険請求をしている時点で、半分は公的な側面があるわけです。

(高山)根本的に、院長とスタッフ、特に医療から距離のある職種のスタッフとの間では、そうした認識の齟齬が生じていることにすら気づいていない可能性が高いですね。

心理的安全性の高いチームの特徴

(大西)「学習する組織」という点で言うと、「毎日を無事に過ごせればいい」と思っているスタッフもたくさんいるでしょう。

時間が過ぎるのを待っているだけ、という。
しかし、大前提として「社会貢献を通じて自分が幸せになる」というマインド、そして「そのためには努力や成長が必要だ」というマインドを最初に共有すべきです。

(高山)では、少し話を戻して、心理的安全性の高いチームにはどのような特徴があるのでしょうか。

(大西)まず、議論が出やすく話しやすい、ということです。そのためには、マイナス要素をなるべく排除してあげるのがいいと思います。

(高山)マイナス要素というと?

(大西)「愚痴」ですね。会議の場で不平不満が出てしまうような会議はしない方がいいです。

また、細かいことですが、「でも」「しかし」「だけど」といった逆説的な言葉を多用するのではなく、「それで」と肯定的に話を繋げる言葉を推奨した方が、議論はうまくいきます。

(高山)推奨する言葉を貼り出しておくのもいいかもしれませんね。

(大西)「愚痴禁止」は貼ってもいいと思います。

愚痴、例えば陰口は、言われて嬉しいものではありませんよね。

僕は「陰口を言うくらいなら、陰で褒めろ(影褒め)」と言っています。

(高山)「陰褒め」を流行らせましょうという話もしましたが、まだあまり流行っていませんね。

(大西)いえいえ、僕の界隈では流行っていますよ。

(高山)ははは。この番組でもう少し押していきましょうか。

(大西)あとは「評価する」こと。褒めることに近いですが、うまくいったら褒める組織であるべきです。

うまくいかなかったらけなす、という組織では、ひどい会議になってしまいます。

(高山)先ほど半官半民と言いましたが、公務員的な減点主義の発想はダメだということですね。

(大西)公務員が良い悪いという話はさておき、減点方式はきついです。

もう一つ、僕はよく「新奇歓迎」と言っていますが、これは「新しいこと」「奇妙なこと」を歓迎するという意味です。

「この人、変なことを言っているな」という見方を排除した方がいい。だって、最近の世の中では、変な人が成功していますから。

(大西)そうですね。

(大西)「新しいことを言っている」「変なことを言っている」というのは、自分の基準で評価してしまっているだけです。

未来志向で話しましょう、と伝えています。

ポジティブな言葉遣いの重要性

(高山)未来志向ですか。

(大西)そうです。過去にできなかったこと、過去になかったからといって、未来にもないわけではありません。

「過去にないからこそ、やるんじゃないの?」という発想です。

(高山)医療の世界でその発想は結構難しいですよね。

(大西)難しいです。でも、これからはAIを使うような時代ですから。

(高山)前例主義というか、AIを使うにしても過去のデータの蓄積があってこそで、ゼロから何かを生み出すというよりは、積み重ねの学問というイメージがあります。

(大西)ネガティブリスト、つまり「してはいけないこと」を決めがちなんです。

そうではなく、「したいこと」を決めた方がいい。

(高山)うーん。

(大西)だから会議ではいつも、「Will(~したい)」で話しましょう、「Must(~しなければならない)」で話さないでください、と伝えています。そうすると、言葉遣いが変わってきます。

(高山)どういうふうに変わるのですか?

(大西)「目標を達成したら、こういうことがしたい」という発想になります。しかし、日本の社会は「成果を達成しなかったら、罰を与える」という考え方が根強いですよね。

(高山)うーん。

(大西)これではベクトルが逆を向いてしまいます。達成しなかったことに対して罰を与える社会はまずいです。

達成したことに対して、褒美や報酬が与えられる社会を作らなくてはなりません。

(高山)いいことに目を向けるということですね。

(大西)そうです。悪いことには目を瞑る。目を瞑るとダメだと言われがちですが、いいことの量が悪いことを凌駕すればいいんです。

人間は「悪いことをしないように」と考えると、かえって悪いことをしてしまうものです。

「いいことをしよう」と考えると、悪いことをしなくなります。

「成功する」は成功しますが、「失敗しない」は失敗すると思います。

(高山)それはよく言いますね。

(大西)同じ意味のようで、全く違います。「成功する」は成功する。「失敗しない」は、成功はしないんです。

(高山)そうですね、「成功する」とは言っていませんからね。

(大西)その覚悟が言葉に出てしまうんです。

「失敗しないようにしましょうね」と言うのと、「うまくいくように考えましょうね」と言うのとでは、全く違う言葉です。

これを意識するだけで、人間はポジティブになれます。

(高山)院長も、スタッフの方々が前向きでポジティブに考えてくれる環境を作りたいと思っているはずなので、今回の大西さんの話を参考にして、組織づくりを進めていただきたいなと思いました。

(大西)はい。

(高山)ということで、この続きですね。あと2つ、「目標・ベクトル設定の仕方」と「教える体制づくり」について、また次回お話ししていきたいと思います。
大西さん、今回もありがとうございました。

(大西)ありがとうございました。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。

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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

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この記事の執筆監修者

DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)

DOCWEB編集部は、2016年の設立以来、一貫してクリニック経営者の皆さまに向けて、診療業務の合理化・効率化に役立つ情報を発信しています。
クリニックの運営や医療業務の改善に関する専門知識をもとに、医療機関の実務に役立つ情報を厳選してお届けしています。