改定の基本的視点と方向性を読み解く-診療報酬動向2026年度-_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード89全文書き起こし

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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

(高山)おはようございます。パーソナリティのドックウェブ編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山)「院長が悩んだら聞くラジオ」、第89回が始まりました。大西さん、今回もよろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。
今日のテーマは何でしょうか。

(高山)今日のテーマは「診療報酬の動向」です。

診療報酬改定の時期が4月から6月に施行へ

(大西)いよいよですね。来年、令和8年度の診療報酬改定が6月に行われる予定です。

(高山)最近は4月ではなく6月になりましたよね。

(大西)中医協(中央社会保険医療協議会)の中で「なぜ6月なのか」という議論を蒸し返した回があったのですが、「余裕があったほうがいいでしょう」という話で押し切られた形になり、今回も6月となります。

いつもは2月に方向性が決まってから4月実施なので、作業期間が1ヶ月ちょっとしかありません。それはミスの元になります。

厚労省、電子カルテメーカー、レセコンメーカー、そして医療機関も、みなさんあたふたしています。

「間違いのないように時間に余裕を持ってやりましょう」ということで、2ヶ月延長して6月1日から施行というのが今回も規定路線になります。

(高山)関係者はみんな大変ですからね。そろそろ2026年度改定の動向が固まってきた時期ですので、詳しく大西さんに語っていただきたいと思います。

(大西)よろしくお願いします。

診療報酬を議論する「2つの組織」の役割分担

(高山)2026年度(令和8年度)の診療報酬改定はどのように変わるのでしょうか。

基本的な方針の概要をお伝えいただけますか。

(大西)2025年12月9日に、社会保障審議会医療部会から「令和8年度診療報酬改定の基本方針の概要」が出されました。

診療報酬は2つの組織で考えています。1つは「社会保障審議会」、もう1つは「中医協」です。

実は昔は中医協だけだったのですが、20年ほど前に不正や収賄の問題があり、やり方が変わりました。

社会保障審議会と中医協でメンバーを分け、「大きな方針を決める側」と「細かい内容を決める側」に役割分担をすることで、聖域化をなくそうとしているのです。

(高山)細かい内容を決めるのが中医協ですね。

(大西)今日の話は大きいほうですので、マクロ的な視点で社会保障審議会で話し合われたことになります。

(高山)日本社会の人口動態や経済環境、家族構成の変化に合わせて診療報酬が改定されていくということですね。

日本経済の「新たなステージ」と公定価格のギャップ

(大西)今回の大きな目玉は、基本認識の中に「日本経済が新たなステージに移行しつつある」と書かれている点です。

(高山)安いものを追いかけてきた時代から、多少高くなっても良いものを良しとする価値観に変わってきていますね。

メーカーも値上げをしていますし、一消費者として値上げを実感するようになっています。

(大西)以前は「脱デフレ」がキーワードでしたが、今はあえて使いません。

デフレの反対はインフレですので、「脱デフレ=インフレ」と思わせたくないために「新たなステージ」という言い方をしています。

30年続いたデフレ経済は「安いものを良しとする世界」でしたが、今回のステージは「ある程度お金を出してもいいから、良いものを良しとする社会」です。

これをどう捉えるかは人それぞれですが、物価が上がり、賃金も上がっています。

ここで問題になるのが、診療報酬が「公定価格」である点です。

自由診療なら物価に合わせて値段を上げられますが、保険診療は国が定価を完全に決めているため、物価が上がっても据え置かれたままです。

このギャップが非常に厳しくなっています。

(高山)資本主義経済と半社会主義経済のぶつかり合いのような状態です。

(大西)資本主義は自由競争が基本でインフレが起きやすいですが、社会主義的な考え方では国が価格を決めるため、景気が上がりにくくデフレになりやすい性質があります。

しかし、風邪を引いて受診した際に「今日は1500円、明日は2000円」では患者さんも困ります。

だから日本はこのような形にしているのですが、いつも飲んでいる薬が突然30円上がるとなると大変ですよね。

(高山)患者さんの需要が増えたから値上げする、というわけにもいきません。

医療の場合は、患者さんが少ない病気の薬を高く設定する代わりに、高額療養費制度などで負担を抑える仕組みを作っています。

(大西)そこに歪みを感じることもありますが、今回の改定では「もうそんなことは言っていられなくなった」ということが大きなポイントです。

人口減少と「2040年問題」への対応

(大西)人口構成が変わり、日本は老人の国になりました。人口減少の中での「人材確保」が重要です。

人を確保するには給料を上げる必要がありますが、医療機関は公定価格で売上が決まっているため、なかなか上げられません。

(大西)また「現役世代の負担抑制」も課題です。

保険料が上がり続けると、若い人たちが医療を受けられなくなってしまいます。

医療費の9割は子供と高齢者が使っており、お金を払っている世代が医療機関にあまり行かないという不公平感をどう直していくか、というのが一つの焦点です。

さらに大きな課題が「2040年問題」です。

2040年には現在の団塊の世代が85歳以上になります。

85歳という年齢は個人差が大きく出る世代です。

ずっと元気な人もいれば、大きな病気を経験して不自由になる人もいます。その中で認知症の増加が大きな問題になります。

(高山)なるほど。私はもうすでに忘れっぽいのですが。

(大西)それは生まれつきかもしれませんね。面白いことに、忘れるか忘れないかの違いで、「昔は覚えていたのに忘れっぽくなった」という人が認知症で、「元々忘れっぽい」という人はADHDなどの傾向があると言われたりします。

認知症の原因が脳の萎縮であるとするならば、やはり身体のどこかが劣化してきているのだと思います。

そのような社会の中で、どのように医療を提供し続けていくかが課題です。

面白い話をするならば、洋服の脱ぎ着に時間がかかる世代ですね。

認知症の方が増えると、服の脱ぎ着などに時間がかかり、当然ながら診察時間も長くなります。

説明への理解にも時間がかかるため、これまでのようにスムーズには進まなくなります。

診察時間が延びれば労働時間も延びますが、一方で医療従事者の「持続可能な働き方」も確保しなければなりません。

医療現場では昼休みがなく残業も当たり前という状況が続いてきましたが、国は「昼休みを確保し、残業上限を守りなさい」と言い始めています。

目の前に処置が必要な患者さんがいればやらざるを得ませんが、一つの解決策として受け入れ人数を制限し、溢れる患者さんのために別のクリニックを作る「分院による分散」も考える必要があります。

無理をしている先生方には、ある程度まで来たら分院を作るなどして場所を増やすよう話していますが、やはり「医師や看護師の給料が高い」ことがネックになります。

医療機関が適切に利益を上げられなければ、分院を作ることもできず、ずっと自助努力という名の「無理」を続けることになってしまいます。

医療DXとイノベーションによる「質の高い医療」

(大西)3つ目の項目として「医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進などによる安心で安全な質の高い医療の実現」がありますね。

医療は高度化するほどコストがかかり、医療費が上がります。

一方で医療DXやイノベーションが進むと、効率化によってコストダウンに向かいます。

高度化はさせつつ、DXで効率化を進めたいという狙いがあります。

私たちの身の回りで、高度化によって人がいなくなった世界はたくさんあります。

例えばホテルです。

以前はスタッフが名簿を確認して名前を書く手間がありましたが、今は恐竜のロボットが自動でチェックイン・アウトを行う「変なホテル」のような場所も増え、誰とも会わずに済みます。

医療も同様のことができるのではないか、という発想です。

自動運転技術がバスの運転手以上の精度を持つ可能性があるように、医療の世界にもロボットが入ってきています。

掃除や夜中の巡回の警備ロボット、将来は薬を配るロボットが走り、看護師さんはモニター監視に専念する時代が来るかもしれません。

入浴や清拭もロボットが行い、Zoom越しにコミュニケーションを取って「お腹をさするロボット」が病室へ行く、といった未来です。

ロボットにエコー機能が付いていて、先生が画面越しに診察することもあるでしょう。

受付や会計周りのシステム化を評価し、質を高めていく。

システム化によって質が落ちるのではなく、レベルが上がって質が向上するという考え方です。

社会保障制度の維持と財務省との「調和」

(大西)4つ目は、高齢者が増えて医療費が上がり続ける中で、いかに制度を維持するかという視点です。

「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済再生との調和」が掲げられています。

(高山)この「調和」という言葉がミソなのでしょうね。

(大西)バランスです。医療費が上がるからといって、そこだけに財政を割くわけにはいきません。

教育、年金、防衛など、社会の安全をトータルで考える必要があります。

医療だけに予算を割くことはできないという、財務省の強い主張が見えます。

(高山)財務省、厚労省、医師会、支払い側、そして患者側のバランスをどう取るかという綱引きですね。

(大西)そのバランスを崩すと大きな問題になってしまいます。

今回は、これらの基本認識に沿って改定の議論が進められてきました。

いよいよ最終段階に入り、「具体的に何を変えるか」という話まで来ています。

(高山)令和8年度診療報酬改定の基本方針について、4つの項目を整理していただきました。

次回は、これらについてさらに具体的な方向性を掘り下げていきたいと思います。

それでは、続きは次回に。

今回もありがとうございました。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ、最後までお聞きいただきましてありがとうございました。

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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

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