クリニック承継 買手の留意点 / 日本クレアス税理士法人 上田久之

日本クレアス税理士法人、上田様にクリニックの事業承継における買手の留意点についてお話をお伺いしました。
上田様には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOでもご講演いただいています。
※2022年11月1日にCPA EXPOは診療所マネジメントEXPOに名称を変更しました。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『クリニック承継 買手の留意点』
通常の新規開業は、思い描いたコンセプトに沿って理想的なスタッフを集めて理想のレイアウトで開業できるメリットがあります。一方で、オープン1日目に患者が0人の可能性もあります。
承継であれば比較的ローコストで開業できますし、ある程度の患者数も保証されています。メリットデメリット両方ありますが、承継開業も一つの選択肢であると思います。
実際、立派な診療所を経営されていても跡継ぎがいないために、廃業せざるを得ないという場合もあります。それを引き取っていただくことでお互いにメリットが生まれますので、今回はこの辺りについてお話しいたします。


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親子間・他人間での事業承継、それぞれのメリットデメリットを教えてください

可能であれば親子承継がベスト
親子承継と他人承継のどちらかを選択するというよりは、親子で事業承継できるのであれば親子承継するのがベストです。
ただ、診療科目が違ったり考えが合わなかったり、医学部の教授になってしまったり、子供の教育の都合があったりと、様々な事情によりどうしても親子承継できない場合もあります。
後継ぎがいなくて医療法人の解散や廃院をするのであれば、次の選択肢として他人承継があると考えております。
親子承継ができるのであれば、親子承継するに越したことはありません。

事業承継において起こる、失敗事例を教えてください

想定外のトラブルに注意が必要
所得や利益が上がることを見込んで営業権代をお支払いするわけですが、営業権代に見合うほどの収入が得られないことはよくある話です。

それから、買収したとたん予想外に従業員が一気に退職してしまうケースもありますし、戸建ての診療所の場合は買い取ってから想定外の大きな補修が必要になるケースもあります。
医療法人で雇用が継続している場合は、大きな未払い残業があれば追加の支払いが必要になることもあります。前経営者の診療報酬の請求方法に問題があった場合はM&A後返還を要求されることもありますし、M&Aをして1年間の雇われ院長を口約束でお願いしていたらそのまま居座られてしまったなど、様々なトラブルがあります。

トラブルを防ぐために、買い手側が事前に知っておくべきことはなんでしょうか

専門家によるチェックやサポートも必要
未払い残業といった労働債務で困らないように、規模にもよりますが労務監査はいれるべきです。診療報酬に関しては、専門家を入れて直近数か月のレセプトを見てもらう方が安心でしょう。
売り手としての経験で言うと、耐震上の問題があり断られたことがあります。

経営者は変わるわけですが、院長の評判がとんでもなく悪いとそれが尾を引くことがあります。 前院長の関連法人や業者がある場合は整理を行うことが、ポイントになります。

プロフィール


日本クレアス税理士法人
公認会計士・税理士
上田 久之 氏

私共は元々医療系の事務所であり、創業40年になりますが当初から開業医の先生方を中心にサポートを行っています。
また、大阪府における医師の働き方改革改善の委員会や、日本医療系コンサルタント協会大阪府の副支部長も務めております。

創業の支援としては、診療圏調査や融資の支援などを行っています。
開業されましたら、人事や労務の問題や節税対策・分院の展開などのお世話もさせていただいております。事業の出口となる廃業や医療法人の解散、あるいは親子での承継や他人承継まで、開業医の生涯に渡ってお世話することをビジョンとしています。
重視しているのはワンストップサービスです。
医療系の会計事務所だからこそできる、人脈を活かしたサービスを提供しております。例えば、医事紛争を専門にしている弁護士や厚生局の監査に特化したコンサルタント、労働基準監督署OBの社労士などと連携させていただいています。