アフターコロナのクリニック経営#5

#5 クリニック経営を継続するためにチームを整え続ける

Q .受診者数が多ければスタッフのマネジメントにはそれほど力を入れなくても良いでしょうか?

A .スタッフのマネジメントは経営の最重要事項です。受診者数が多くても油断しないようにしましょう

これまでクリニック経営冬の時代には今まで以上に経営に真剣に取り組む必要があることをお伝えしてきました。具体的には「コ・マ・チ」(コミュニティ・マーケテイング・チーム)を整え続けましょうということです。まず、コミュニティ(自院を受診する可能性のある方々)にマーケティング(コミュニティの方々が必要とする情報をわかりやすく伝え続ける)をしっかり行うと患者さんから選ばれるようになります。

患者さんに選ばれるクリニックになり、受診者数が多くなると経営はうまくいくと思いがちですが、そうとは限りません。多くの患者さんが来院して、売上・利益が十分ありながらも経営の危機に陥っているクリニックが沢山あるからです。

では、どのようなクリニックがそうなっているのでしょうか。
それは、「チーム」が整っていないクリニックです。具体的に言うと、院長先生とスタッフ、スタッフ同士に信頼関係がなく、スタッフがどんどん辞め、業務に支障をきたしているクリニックです。このような状況になってしまうと、院長先生は自分が経営者でありながら、クリニックに行きたくない、やめてしまいたい、とまで考えることになります。

スタッフが勝手なルールを作り出し動き始める

クリニックを開院してしばらくすると、スタッフが院長先生の言うことを聞かなくなり自分たちのルールで動き始めます。そのうち、スタッフを束ねるリーダー的な人が出現し、スタッフはその人の言いなりに動くようになります。院長先生が指示をし、注意をしても効き目がありません。スタッフに辞められると困るので、院長先生も厳しい態度をとることができず放置状態が続きます。そのうちリーダー的な人は自分が気に入らない人を辞めさせる行動を起こします。その結果、まともな感覚の優秀なスタッフは自ら退職していきます。

スタッフを新たに採用しますが、まともな感覚の人はすぐ辞めてしまい、残るスタッフはあまり仕事ができない、言われたことしかできないような人ばかりです。業務の質はどんどん落ちていき、悪い雰囲気になり、クリニックの評価が落ち、受診者数が減っていきます。業務がうまく回らなくなり、院長先生はどうしていいのかわからず、こんなことなら開院するんじゃなかった、クリニックを閉院して勤務医に戻りたい、などと考えるようになります。

ここまで読まれて暗い気持ちになった方もおられるかもしれませんが、現実にこのようなケースが多いのです。
なぜこのようになってしまうのか、院長先生、スタッフの行動や心理状態などをもう少し詳しく見ていきましょう。

院長がクリニックを運営できなくなる

まず開院当初は皆さん明るい未来に向かって頑張っていこう!という気持ちを持っています。しかし、いざ診療が始まると初めてのことばかりで、院長先生もスタッフも忙しく時間が不足してきます。様々な課題や疑問などが出てくるのでスタッフは院長先生に相談をしますが、院長先生はあまり現場の業務に関心がなく、みんなに任せるよ、などと言ってしまいます。
そうするとスタッフは自分たちのルールで動き始めます。その後、院長先生はスタッフの行動が気になっても、関係性を悪くしたくない、面倒だなどという意識が働き注意をすることができません。そうなるとスタッフは自分たちのルール、行なっていることで問題ないと思い、そのまま進んでいきます。そして、院長先生は現場の仕事についてほとんど理解できない状態になってしまいます。
院長先生はスタッフがいないとクリニックの運営ができないことに気づき、スタッフに辞められると困ると考えるようになります。その微妙な気持ちの変化でスタッフと院長先生のパワーバランスが崩れ、スタッフ側に力が移動します。スタッフの中にリーダー的な立場の人が出てくるとスタッフは院長先生よりその人の言うことに従うようになり、リーダーは自分に従う人ばかりを身の回りに置き、従わない人をパワハラで追い出そうとします。

スタッフの離職が増加する

結果、世間の常識とはかけ離れたルールで動くガラパゴスのようなクリニックが出来上がります。そうなると優秀でまともな感覚の人はこんなところにはいられないと思い、自ら辞めていきます。
スタッフが辞めると新たに採用をしますが、優秀でまともな感覚の人が入職するとすぐに組織の問題に気づきすぐに辞めてしまいます。あるいはリーダーがしっかり教育をしない、クリニックの悪いところなどを伝えるなどして辞めさせる方向で動きます。採用して残る人は他では採用されない能力の低い人、人の言いなりになる自発的な行動ができない人ばかりです。その結果、業務のレベルは下がり続け、患者さんからの評価が落ち、受診者数がどんどん減っていきます。

また、十分なスタッフが揃わず業務が回らなくなり、忙しくなったスタッフが辞めてしまいます。

このような負のスパイラルに入ってしまうクリニックは多く、それを改善するのは並大抵の努力ではできません。
次回はこのようにならないためにはどうすれば良いのかについて詳しくお伝えしてまいります。

プロフィール

近藤隆二(こんどう りゅうじ)

1957年生まれ

医業経営コンサルタント

ファイナンシャルプランナー(CFP)

一般社団法人 医業経営研鑽会 副会長

https://www.doctor-dock.jp

これまでに200件以上のコンサルティングと、50院以上の顧問契約を締結。決めつけを嫌い、さまざまな状況に応じたフレキシブルなコンサルティングを行っている。

クリニック開業後に苦戦する事例を数多く目にしてきた経験から、よい経営の方法を知らない先生のために、セミナー・執筆活動やブログ、動画セミナー、メールマガジンなどを利用し積極的に情報を発信。

院長先生をはじめスタッフも患者さんも幸せになれる、良いクリニックづくりを陰から支えていくことが役割であり使命。

「人が自分らしく自分の人生を生きる」 ことを実現させる手段として、開院を希望するドクター、開業医のための「クリニック経営講座(動画)」を配信中。