アフターコロナのクリニック経営#10

#10 クリニックに上手にお金を貯める方法

Q .クリニックに上手にお金を貯めるにはどうすれば良いでしょうか?

A .まずは売上を上げて、適切な経費を保ち利益を出しましょう。利益が多くなったら、目的に応じて医療法人を上手に活用しましょう。

クリニックにお金が貯まる仕組み

クリニックの経営を継続するためには適切な額のお金を蓄えておかなければなりません。

お金の蓄積がないと新型コロナウイルスや院長先生自身の入院など、不測の事態に直面した場合に月々の支払いに困ってしまうからです。
まずはいくらお金があれば安心して経営できるのか考えてみましょう。
不測の事態で収入が途絶えたり減ったりしても、毎月の固定費、借入金返済などの支払いはしなければなりません。何か月分の支払い余裕を持っていれば自分は安心できるのか考えてみてください。

目標額が決まったらそれに向かってお金を貯めていきます。
お金がいくら貯まるのかは以下の計算式で概算できます。

貯まるお金の額=(売上−経費)−税金−借入金返済元本+減価償却費

この計算式からお金を貯めるにはまず利益を出さなければならないことがわかります。
利益を出す方法は大きく二つあり、売上を上げるか経費を下げるかです。まずはこの利益を上げることに集中してください。利益が少ない時には税額も少ないので節税対策をしても効果はあまりありません。
間違った節税対策を打つとお金を減らしてしまうこともありますので注意してください。

個人でお金を効率的に貯める方法

経営が軌道に乗り、利益が多くなると税金も多額になります。
こうなると様々な節税対策をすることになるのですが、個人で行える対策には限りがあります。

よく利用する制度には個人事業主の退職金制度である小規模企業共済、確定拠出年金、経営セーフティ共済などがあります。これらは全額所得控除されお金が貯まりますので節税効果は大きいのですが、クリニックの経営のためのお金を貯めるにはあまり適していません。
小規模企業共済は個人事業をやめた時に退職金として受け取ることになり、確定拠出年金は60歳にならなければ受け取ることができません。
経営セーフティ共済は解約した時点で課税されてしまいます。
小規模企業共済や経営セーフティ共済は工夫次第で活用できる可能性がありますが、掛け金には上限がありますので成果も限られます。

医療法人の活用方法

では、その他に税金を節約しながらクリニックに上手にお金を貯める方法はないのでしょうか。

有効な手段の一つとして医療法人の活用があげられます。
医療法人のメリットの一つは税率が低いことです。
個人の税率は課税所得が1,800万円を超えると約51%、4,000万円を超えると約56%と高くなります。これに対し医療法人の税率は800万円までの利益であれば約20%、それ以上は約30%と低くなっています。

例えば課税所得4,800万円の個人開設クリニックが医療法人を設立し、医療法人の利益を800万円にしたと仮定すると800万円に対する税金を約36%減らすことができます。具体的に計算すると800万円×36%=266万円の税金を節約することができるのです。
これならクリニックの経営に使えるお金を貯めやすくなりますね。
しかし、医療法人は良いことばかりではありません。
医療法人を設立すると院長先生が理事長になり法人から給与を受け取ることになります。理事長も社会保険に新たに加入しなければならず、高額の給与だと社会保険料も高くなるのです。
状況によっては医療法人と個人を総合した手元に残るお金の額はあまり変わらないこともありますので注意してください。(社会保険料は将来年金として受け取ることができればデメリットばかりではありません。)節税目的で医療法人を設立する時には具体的なデータでメリットが出るのかどうかをシミュレーションするようにしてください。

医療法人のもう一つのメリットは、貯まったお金や資産が相続財産にならずクリニックを承継した時に承継者が自由に経営のために使えることです。(平成19年4月以降に設立した医療法人に限る)個人事業の場合、院長先生が貯めたお金やクリニックの資産は全て院長先生の財産になります。
将来、子供にクリニックを承継した後に院長先生の相続が発生するとそのお金や資産は相続税の対象になります。

医療法人は相続対策としても活用できるのです。
低税率を活用してお金をしっかり貯め、将来の設備投資や承継後の様々な出費に備えるため活用していきましょう。

医療法人は便利なポケット

子供がまだ小さく将来の進路がまだよくわからないので承継資金を貯める意味がないという方もおられるでしょう。
そんな方はとりあえず医療法人に適切な額のお金を貯めておき、子供の進路や承継の意向などが明らかになってから活用方法を検討してください。
子供が承継しないのであれば、そのお金を設備投資などの経営に活用し、それでも資金が余るのであれば最終的には退職金として受け取ればよいですね
。個人の高税率で払った税金は後から戻してもらうことはできません。とりあえず将来に備えて低税率の医療法人に効率よくお金を貯めておき、状況によってそのお金の使い道を調整していきましょう。

医療法人は安定した経営や自分のライフプランを実現するための便利なポケットです。
その仕組みをよく理解し上手に活用していきましょう。

プロフィール

近藤隆二(こんどう りゅうじ)

1957年生まれ

医業経営コンサルタント

ファイナンシャルプランナー(CFP)

一般社団法人 医業経営研鑽会 副会長

https://www.doctor-dock.jp

これまでに200件以上のコンサルティングと、50院以上の顧問契約を締結。決めつけを嫌い、さまざまな状況に応じたフレキシブルなコンサルティングを行っている。

クリニック開業後に苦戦する事例を数多く目にしてきた経験から、よい経営の方法を知らない先生のために、セミナー・執筆活動やブログ、動画セミナー、メールマガジンなどを利用し積極的に情報を発信。

院長先生をはじめスタッフも患者さんも幸せになれる、良いクリニックづくりを陰から支えていくことが役割であり使命。

「人が自分らしく自分の人生を生きる」 ことを実現させる手段として、開院を希望するドクター、開業医のための「クリニック経営講座(動画)」を配信中。

 

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