クリニック業務フロー完全ガイド|診療科別の違いと職種別の役割も徹底解説

クリニック業務フロー完全ガイド|受付から会計・診療科別の違いまで徹底解説

はじめに:開業準備の“最後の盲点”とは

受付から診察、会計、次回予約までの一連の診療フローは、クリニックの開業後すぐに業務として始まる非常に重要な領域です。しかし、医療機器の選定や内装設計、採用活動などに注力するあまり、診療フローの具体的な業務設計が後回しになるケースも少なくありません。
診療フローは、患者の満足度や動線の快適さ、スタッフの業務効率や心理的負担、そして医師自身の生産性にも大きく影響するものです。

本記事は、「【完全ガイド】クリニック業の手順と成功へのロードマップ」シリーズの一環として、業務フロー設計に焦点をあてた実践マニュアルです。
標準的な診療フローをベースに、各ステップで発生する業務や職種ごとの役割、診療科ごとの違い、さらには開業前に実施したい模擬診療についても紹介します。

診療フローの基本を押さえる

クリニックにおける診療業務は、患者の来院から帰宅まで一連のプロセスで構成されています。この流れを「診療フロー」と呼び、スタッフの動きや導線設備配置の設計に直結する極めて重要な要素となります。

診療フローの全体像(標準形)

一般的な診療フローは以下のとおりです。

  1. 受付
  2. 問診・バイタル測定
  3. 医師の診察
  4. 必要に応じた検査・処置
  5. 結果説明・処方
  6. 会計・レセプト処理
  7. 次回予約

れは多くの診療科で共通する標準形であり、診療科によって検査内容やスタッフ配置が変化します。

急性疾患と慢性疾患で異なる診療フロー

急性疾患(風邪や外傷など)では、初診から診察・処方・会計までを即日で完結させる「即日対応型」が基本となります。
一方、慢性疾患(糖尿病や高血圧など)の場合は、バイタル測定や定期的な検査、医師による評価と生活指導を組み合わせた「継続フォロー型」となり、検査結果を前提とした診察フローが特徴です。

診療フローを整備するメリット

  • 患者動線の最適化と満足度向上
  • 業務の標準化によるスタッフの負担軽減
  • 電子カルテや予約・会計システムの設計がしやすくなる

診療フローは、単なる手順書ではなく、クリニックの運営全体に関わる「設計図」といえます。

各ステップで発生する具体的業務とは

診療フローの各ステップでは、職種ごとに異なる業務が発生します。業務の重複や漏れを防ぐためにも、誰がどこで何をするのかを明確にしておくことが大切です。

業務ステップ 主な業務内容
受付・来院前対応 ・保険証確認、問診票の案内、診察券の有無確認
・初診・再診・紹介状の有無などの振り分け
・電子カルテや順番管理システムへの入力
問診・初期対応 ・バイタルサイン(体温、血圧、脈拍など)の測定
・問診票の確認と医師への情報伝達
・看護師による予診や簡易問診の実施
医師の診察 ・問診、視診、聴診、触診などによる診断
・検査や処置の指示、処方内容の決定
・紹介状の作成、病状説明と生活指導
検査・処置 ・採血、X線、心電図などの検査業務
・創傷処置、点滴、吸入などの医療行為
・検査データの確認と記録
処方・服薬説明 ・院外処方箋の発行、患者への服薬指導
・医師による生活習慣指導、注意事項の説明
・再受診の案内や検査結果の通知方法の確認
会計・レセプト処理 ・診療内容をもとにした診療報酬の計算
・自己負担額の案内と支払い処理
・月末にレセプトを取りまとめ、保険者へ請求
予約管理 ・定期通院の次回予約、検査予約の管理
・紹介先病院や外部検査機関との調整
・患者ごとの来院頻度や対応方針の記録

職種ごとの業務と働き方を可視化する

診療フローの各工程には、医師だけでなく、看護師、受付スタッフ、医療事務など複数の職種が関わります。ここでは、それぞれの職種がどのような役割を担っているかを整理します。

職種 主な業務内容
医師 ・診断・処方・処置の実施
・検査の指示、診療録の記載
・スタッフとの情報共有やチーム連携
看護師 ・バイタル測定、問診、処置補助
・医師の指示に基づく注射・点滴・採血
・患者への生活指導や服薬指導
受付・医療事務 ・患者対応、電話応対、予約管理
・保険証確認、会計、レセプト作成
・電子カルテ・診療報酬請求システムの運用
その他スタッフ ・検査技師:採血、心電図、X線撮影などの実施と管理
・リハビリスタッフ:物理療法や運動指導
・クラーク・助手:診療補助、案内業務、患者移送

業務分担を明確にすることで、属人化の防止や業務効率の向上につながります。

診療科ごとの特徴を踏まえたフロー設計

診療フローは、診療科によって必要な工程や業務負荷が異なります。

診療科 業務上の特徴・留意点
内科 ・高血圧・糖尿病など慢性疾患管理が中心
・定期受診と検査スケジュール管理が重要
・予防接種や健康診断も対象
小児科 ・保護者への説明や対応力が求められる
・感染症対応における隔離動線が必要
・ワクチン接種スケジュール管理が重要
皮膚科 ・視診・触診が中心で処置は比較的短時間
・診察回転率が高いため予約枠調整が鍵
・処置後の軟膏・外用薬説明が多い
整形外科 ・レントゲンや処置(ギプス・注射)が頻繁
・物理療法・リハビリスタッフとの連携が重要
・高齢者対応と転倒対策に配慮が必要
耳鼻咽喉科 ・吸入・聴力検査・内視鏡が日常的に実施
・処置後の安静管理が必要な場合も
・耳垢・異物除去など短時間処置も多い
眼科 ・視力・眼圧測定、画像検査が多用される
・暗室対応や機器操作の専門スタッフが活躍
・白内障手術後の継続管理がある
泌尿器科 ・採尿・膀胱エコー・導尿など処置が多い
・プライバシー配慮と同性スタッフ配置が重要
・継続的な生活指導・経過観察も必要
精神科・心療内科 ・診察前スクリーニング・面談の工夫が必要
・問診や診察時間が長めに設定される傾向
・予約調整やプライバシー管理が最優先

診療科の特性を踏まえ、検査室や処置室、診察室の配置設計を行うことが重要です。

開業前に“模擬診療”を実施してみる

実際の業務導線やスタッフの動きを把握するには、開業前の模擬診療(ロールプレイ)が非常に有効です。

模擬診療についての詳細はこちら

模擬診療の流れ(例)

  1. スタッフが患者役と担当職種に分かれる
  2. 受付〜診察〜会計までを順に演習する
  3. 課題点や詰まりのある動線をその場で共有

実施のメリット

  • 患者導線や物品配置の改善点を可視化できる
  • 職種間の連携ミスや業務抜けを事前に把握できる
  • スタッフの教育・習熟の場として活用できる

開業前にこの演習を行うことで、開業初日から安心して診療をスタートできます。

おわりに

診療フローの設計は、開業後のスムーズな運営と医師・スタッフ・患者それぞれの満足度に直結します。
受付から診察、会計、次回予約までを一連の流れとして捉え、各工程に必要な準備や人員配置、業務フローを明確にしておくことが、効率的で質の高いクリニック運営への第一歩です。

開業準備の一環として、診療フローとスタッフ業務の見える化を行い、自院に最適な形を検討してみましょう。

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この記事の執筆監修者

DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)

DOCWEB編集部は、2016年の設立以来、一貫してクリニック経営者の皆さまに向けて、診療業務の合理化・効率化に役立つ情報を発信しています。
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