
クリニック開業の第一歩は「計画」です。
この記事では、全診療科・都市部から郊外・地方までを対象に、初めて開業を検討する医師が「どこから手をつけるべきか」「どんな視点で計画を立てるべきか」を解説します。
本記事は、「【完全ガイド】クリニック開業の手順と成功へのロードマップ」シリーズの一環として、開業計画の準備に焦点をあてた実践マニュアルです。
後続の記事で詳細に解説される個別タスク(物件選定、資金調達など)の把握に入る前に、全体の構造を整理し、計画段階で押さえておくべき本質的なポイントを解説します。
「計画」とは「明文化」すること
人生に一度の開業。どんなに想いが強くても、計画なしに成功することはありません。
「いつ開業したいのか」「どこで開業したいのか」「どんな医療を届けたいのか」――このような根本的な問いに立ち返りながら、以下の視点での明文化が求められます。
- ビジョンの明確化(医療提供のコンセプト・将来像)
将来にわたって目指すクリニック像を言語化することで、すべての判断軸が明確になります。 - エリア戦略の仮決め(都市部/郊外、競合状況、人口動態)
物件選定や広告戦略の方向性を定めるうえで、エリア選定は早めに仮決定しておきたい要素です。 - 時期の仮決定(目安:準備開始から開業まで1年〜1年半)
医療機器の納品やスタッフ採用など、逆算すべき工程が多いため、目標時期の設定は重要です。 - 家族や勤務先との合意形成
準備期間中の時間的・精神的サポートを得るには、身近な人との意識共有が欠かせません。
この段階では、完璧な答えを出す必要はありませんが、「仮でいいから決める」ことが、後続のタスクの精度を高めていきます。
計画段階で考慮すべき7つの視点
クリニック開業の計画段階では、以下の7つの視点から検討していくと、全体像が整理しやすくなります。
まず考えたいのは「自分は何のために開業するのか」「どんな人生を送りたいのか」です。医師としての理想像とライフスタイルが一致しているかを確認しましょう。
- どんなクリニックにしたいか?
一人で完結型?スタッフを抱える?法人化を視野に? - どんな働き方・人生を送りたいか?
ワークライフバランス、子育て、セカンドキャリア
→ この問いへの答えが、「場所」「規模」「診療科」「勤務時間」に影響してきます。
診療科によって適した立地条件が異なります。地域の人口構成や競合の状況を踏まえ、患者動線を意識した検討が求められます。
- 診療科別の患者動線・需要特性
小児科/皮膚科:近隣密着型で徒歩圏を想定
内科:地域全体への訴求、駐車場重要
婦人科:プライバシー確保とアクセス両立 - 地方 vs 都市部
地方は競合少なく土地確保が容易、都市部は人通りは多いが賃料高・競争激化
→ 診療科ごとの戦略と立地の条件をセットで考えることが大切です。
開業に必要な準備期間はおおむね12〜18か月。下記のようなスケジュール感を念頭に、各工程のスタート時期を逆算していきましょう。
時期 | タスク |
---|---|
T−18か月 | ビジョン検討、家族の合意形成、情報収集開始 |
T−15か月 | エリア選定・市場調査、専門家選定 |
T−12か月 | 物件選び、資金調達検討、基本設計開始 |
T−9か月 | 医療機器・内装設計、業務フロー検討 |
T−6か月 | 工事着工、広告準備、チーム採用 |
T−3か月 | 内覧会計画、関係者挨拶、行政手続き完了 |
T(開業) | 開業 |
→ 病院勤務を続けながら、少しずつ準備することを前提に、タスクを「並列処理」していく必要があります。
経営の視点も欠かせません。理想を追いすぎてリスクを抱えないよう、現実的な資金計画を立てましょう。
- 初期投資の把握
内装・医療機器・広告・運転資金を含めて 7,000万〜1.2億円 程度が多い - 自己資金の目安
総投資額の2〜3割(約2,000万〜3,000万円)が理想 - リスク分散
規模を絞る、患者動線を汎用的にする、可変性のある物件設計
→ 無理のない返済計画を立てたうえで、「やりたいこと」と「できること」を見極めます。
開業はチーム戦です。信頼できる専門家とパートナーを早い段階で見つけましょう。
- 開業コンサルタント
- 医療機器業者/建築業者/税理士
- 調剤薬局/医薬品卸会社
- 先輩開業医からの紹介
→ 各分野に強みがあるため、自分に不足している知識・経験を補う存在を選びましょう。
開業に関する情報は玉石混交です。信頼性と網羅性を両立するため、情報源を複数持っておきましょう。
- 信頼できるウェブメディア
- 書籍(医師向けの開業本は限られているため厳選)
- セミナーや展示会(日医工連・診療報酬改定説明会など)
- 地域医師会・行政との情報連携
→ 情報の「質」と「鮮度」で大きな差が生まれます。
開業準備は長丁場です。一人で全てを抱え込まず、分担と共有の仕組みを整えましょう。
- 開業準備の定期ミーティングの設置(家族、専門家、関係者)
- ToDoリストの整理と優先順位の設定
- 家庭・勤務先の理解と協力を得る
→「一人でやり切る」のではなく、「誰とどう分担するか」の視点が欠かせません。
計画フェーズで決めるべきこと一覧(実務の視点)
以下は、各タスクの中でも「計画段階で方向性を決めるべき要素」です。
詳細はそれぞれの専門記事に譲りますが、ここでの意思決定が後工程の効率を左右します。
タスク | 計画段階で決めるべきこと |
---|---|
物件選び | 地域・駅距離・テナントor戸建て・駐車場の必要性 |
資金調達 | 自己資金額・融資先候補・保証人の有無 |
内装設計 | 動線の考え方・必要な部屋数・将来の拡張性 |
医療機器 | 概要イメージ(導入機器の種類、CT・エコーなど) |
ITシステム | クラウド or オンプレミス、使いたい予約・問診・電子カルテの方向性 |
スタッフ体制 | 医師一人 or 二診制、看護師/事務人数の目安 |
マーケティング | ターゲット層、開業後の訴求方法(Web/紙/紹介) |
まとめ|最初の一歩は「仮決定」でOK
開業準備は「完璧主義」よりも「仮決定と前進」が鍵です。
方向性を明確にすることで、協力者との対話も深まり、準備がぐっとスムーズになります。
まずは以下の3点を明文化してみましょう。
- なぜ自分は開業したいのか(ビジョン)
- どこで、いつ頃開業したいか(仮でもOK)
- 誰と開業準備を進めたいか(相談先を決める)
この「計画」フェーズを丁寧に進めることが、理想のクリニックの実現に直結します。
ダンドリ内ではそのほかの詳細なタスクや必要な手続きについて、詳しく解説していきます。
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DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)
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