
はじめに
現代では、患者さんがクリニックを選択するにあたって、クリニックの立地や診療内容に加え、実際に通院した患者の生の声が意思決定に影響を与えるようになりました。
良い口コミは新規患者の獲得やクリニックへの信頼性向上につながりますが、悪い口コミは集患や採用活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、クリニックが口コミにどのように向き合うべきか、現状と対策、そして適法な良い口コミの集め方について解説します。
口コミ返信の基本方針とメリット・デメリット
口コミにどう対応するかは、クリニックの方針や体制によって異なります。
返信には信頼構築やMEO(Map Engine Optimization=地図検索対策)効果、患者との関係強化といったメリットがある一方で、時間や労力の負担、不適切な対応による逆効果といったデメリットもあります。
そのため、一律の対応ではなく、内容やリソースに応じて適切な方針を検討することが重要です。主な対応方法は以下の3つです。
①すべての口コミに返信する
信頼性や誠実さが伝わり、Googleの検索順位向上にもつながり、MEO対策にも有効です。ただし、時間や人手がかかる点が課題です。
②悪い口コミにだけ返信する
不満の解消や誤解の修正に役立ち、信頼回復のチャンスとなります。ただし、悪評ばかりに反応するとネガティブな印象を与えることもあります。
③返信しない
対応リスクを避け、業務負担を軽減できますが、悪い口コミがダイレクトに患者のクリニック選びに影響するため、集患においてデメリットが大きい場合があります。
悪い口コミが発生する背景と媒体
悪評の背景には、患者さんの不満、スタッフへの不信、あるいは誤解、悪意、さらには悪質業者の存在があります。
主な投稿先としては、Googleマップ、EPARKなどの医療ポータルサイト、求人サイト、匿名掲示板、クリニックのSNS・ウェブサイト、個人のSNSやブログなどが挙げられます。
特に退職者からの悪評は、院内事情に精通しているため影響力が大きく、集患・採用・情報漏洩に直結するリスクがあります。不和退職の背景には、ハラスメントや給与面での不満も関係しています。
悪い口コミへの対応策
1. 削除の可能性と限界
クリニック側が第三者の運営する口コミを自由に削除することはできません。Googleマップでは「不適切な口コミ」として報告できますが、運営がポリシー違反と判断しない限り削除されません。やむを得ない場合は、法的措置(損害賠償請求など)を検討しますが、専門弁護士への相談が不可欠です。
2. 誠実な返信による対応
削除が難しい場合は、口コミへの誠実な返信が重要です。返信は、他の閲覧者に対してクリニックの姿勢を伝える場であり、対応の誠意が評価向上に繋がることもあります。
適切な返信をすることで、クリニックの評価を向上させることも可能です。
口コミに対して返信すべきかどうかは、内容や意図、公開範囲を踏まえて慎重に判断する必要があります。一律に返信することで逆効果になるケースもあるため、以下のような分類で対応方針を検討しましょう。
■ 返信が望ましいケース
・患者の誤解や事実誤認による内容
→ 冷静に事実を説明し、誤解を正す。守秘義務を守りつつ第三者に伝わる表現を心がける。
・クリニック側に落ち度があると認識している場合
→ 感謝・謝罪・改善策をセットにして丁寧に返信。
・閲覧者にポジティブな印象を与えたいとき
→ クリニックの姿勢を示す意図で、定型文でなく個別に対応する。
■ 返信に慎重になるべきケース
・口コミ内容があいまい/主観的すぎる、返信によって激化する可能性がある
→ 内容次第で返信の有無を判断。返信が逆に刺激となる可能性も。
・返信によって他の閲覧者に不安を与えるリスクがある場合
→ 論点整理を優先し、必要な場合のみ最小限の返信。
- 返信文は第三者(閲覧者)に読まれることを前提に、「感情的に反論しない」「個人情報を書かない」「冷静にクリニックの姿勢を伝える」ことが重要です。
- なお、悪質な誤情報や誹謗中傷に該当する場合は、安易に返信せず、まずはインターネット上の誹謗中傷に詳しい弁護士へ相談することを推奨します。返信の内容が事実を認めた証拠として扱われ、不利に働く恐れもあるためです。
- また、口コミに返信する際は、どうしても感情的になってしまうこともあるため、可能であれば一度、第三者(社内スタッフやコンサルタントなど)に文面を確認してもらうと安心です。
また、返信例を用意しておくことで、クリニック全体の対応力向上にもつながります。
3. 証拠の保存
悪評に備え、口コミのスクリーンショットや印刷で証拠を残すことが重要です。書き込まれた日時やアカウント名の記録も忘れずに行いましょう。
4. 経営改善への活用
ネガティブな口コミは、サービス向上のための貴重なヒントでもあります。患者さんの指摘をもとに予約システムや接遇の見直しなどを行い、改善点を発信して信頼回復を目指しましょう。
5. 退職者対策
円満退職の促進、秘密保持契約の締結、ハラスメント防止、給与トラブルの回避が、悪評リスクの抑制に繋がります。
良い口コミを集めるための施策
1. 患者満足度の向上
診療の丁寧さ、接遇、待ち時間、院内環境といった全体的な質の向上が、自然な好意的口コミを生み出す基盤です。
2. 投稿の促進
口コミサイトの存在を患者に周知する工夫が必要です。QRコード付き案内カードや院内掲示、診察券への記載、来院後のSMS案内などが有効です。ただし、謝礼や割引などの見返り付き依頼は医療広告規制に違反するためNGです。
3. 良い口コミへの返信
良い口コミにも感謝の返信をすることで、書いた本人や閲覧者に好印象を与え、次回の投稿促進にも繋がります。
4. 情報発信の活用
SNSやホームページ、メルマガなどで役立つ情報を発信し、クリニックへの信頼性を高めることで口コミの土壌を整えましょう。
Googleビジネスプロフィール(GBP)の活用法
Googleマップ上での露出を高めるために、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)の運用が不可欠です。
Googleのアルゴリズムは、ビジネス情報の正確さや活動頻度、ユーザーとのやり取りの活発さも評価指標としています。
GBPを活用するポイント
- 最新情報の更新:診療時間、休診日、電話番号などを常に最新に保ちましょう。
- 写真の追加:外観、待合室、医師の紹介などの画像は、初診患者の安心感につながります。
- 投稿機能の活用:定期的にお知らせやコラムを投稿することで、検索エンジンへのシグナルが強まり、MEO対策にも有効です。
- 口コミへの返信:良い口コミ・悪い口コミ問わず誠実に対応することが信頼構築に繋がります。
- カテゴリの適切な設定:たとえば「内科」「小児科」など、正確な診療科カテゴリの設定がSEOに影響します。
医療広告規制と口コミの注意点
患者の自発的な口コミ投稿は規制対象外ですが、クリニック側が内容を編集・選別して公開することや、体験談を広告として使用することは禁止されています。返信や掲載の際も、虚偽・誇大・比較優良表現は避ける必要があります。
クリニックだけでの対応には限界がある
対応に悩む場合や悪質な投稿に困った際は、インターネット誹謗中傷や医療広告に詳しい専門家や弁護士に相談するのが賢明です。
また予防策として、クリニックで起きやすいトラブルや経営施策に詳しいコンサル業者の検討、患者とのコミュニケーションが可能なシステム導入、クレームに繋がりやすい「待ち時間」対策に注力するなどを検討できるとよいでしょう。
- クリニック専門科目に特化した 開業後の経営・マーケティング・オペレーション・マネジメントを オーダーメイド型で対応
- ①増患対策支援 ②患者満足度向上支援 ③診療効率向上支援 ④組織体制強化支援 ⑤事業計画構築支援 他
- まずは無料経営相談が可能です
- マーケティング・CRM、業務効率化、集患とリピート率の改善など、既存の電子カルテと連携など、運用に合わせカスタマイズ可能
- 患者様と直接やり取りをするためのチャット機能や問い合わせ機能、自動応答機能
- 物販に対応、自費診療・保険診療どちらでも活用可能
まとめ
現代のクリニック運営においてインターネット上の口コミを避けることは難しく、集患にも大きな影響があります。
上手に対応・活用することで、地域における信頼構築にもつながるでしょう。口コミは、今やクリニック経営における信頼構築の鍵となっています。
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