院長のストレス軽減になる院内委員会の作り方_Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード38全文書き起こし

Podcast『院長が悩んだら聴くラジオ』シーズン1_エピソード38全文書き起こし

PODCASTエピソードはこちら

DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。

(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。

(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。

(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第38回始まりました。大西さんよろしくお願いします。

(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何でしょうか?

今日のテーマ:スタッフの役割分担

(高山)前回は模擬診療の話をしておりましたが、今回はどういったお話でしょうか?

(大西)今回はスタッフの役割分担についてお話ししたいと思います。役割分担は最初に決めておかないと、後から決めるのは難しいですよね。

(高山)役割分担を決めるには、まず役割を定義するところから始めるべきでしょうか?

(大西)そうですね。役割を定義し、それを誰が担うのかを決める、ということですね。

(高山)今日のテーマは、クリニックを運営する上で、院長のストレスを軽減できるような役割分担についてお話しできたらと思います。大西さん、よろしくお願いします。

(大西)お願いいたします。

クリニック運営に必要な業務分担

(高山)今回はスタッフの役割分担についてですが、スタッフの人数は一旦置いておいて、クリニックの運営に必要な業務分担にはどのようなものがあるでしょうか?

(大西)多くの医療機関では、委員会活動やQC活動、つまりクオリティサークルといったものを取り入れています。

これらは、病院勤務時代に経験している方も多いでしょう。

例えば、電子カルテ導入委員会や電子カルテ委員会、あるいは、何かを改善するためのQC活動などが挙げられます。

こういった活動を通して、大規模病院に勤務していた人は、自然と役割を担う意識が身についていることが多いです。

(高山)そうですね。

(大西)しかし、クリニックの場合は組織がそこまで大きくないので、何も決めないままスタートしてしまうケースが多いように思います。

「この人数だし、役割分担を決めるまでもないか」となりがちです。

(高山)「5人や6人しかいないのに、役割分担なんて」という声も耳にしますが、人数が少ないからこそ、役割分担を明確にする必要があると思います。

(大西)おっしゃる通りです。1人に業務が集中してしまうケースが多いからです。

できるスタッフが様々な業務を拾って対応することになってしまいます。

例えば、院長と右腕のようなスタッフの2人だけで、全ての業務を完結させてしまう、といったケースです。

(高山)確かに、手っ取り早くはありますね。

(大西)揉めにくいというメリットはありますが、他のスタッフはいつまでも受け身の姿勢で、自分たちの仕事だと思っていない状態になってしまいます。

(高山)役割や責任を与えられていないという認識からでしょうか?

(大西)そうです。「院長とあの人が考えていることで、自分たちはただ指示されたことをやればいい」という意識になりがちです。

(高山)指示されたことだけをやっていればいい、という考えではモチベーションも上がりませんね。

(大西)そうなんです。スタッフに主体的に動いてもらうには、平社員意識ではなく、当事者意識を持たせることが重要です。

そのためにも、委員会活動や役割分担は非常に重要になります。

(高山)なるほど。自分の仕事として捉えてもらうということですね。

(大西)そうです。クリニックの院内環境整備は、スタッフ全員の仕事です。しかし、多くの場合、「院長の仕事」だと思われています。

「物を買うのは院長の仕事」「トイレットペーパーを買うのも院長の仕事」と思っているスタッフもいるかもしれません。

「ボールペン1本買うのに院長に相談に行くなんて、時間の無駄だ」と院長は思うでしょう。

クリニックの成長と役割分担

(大西)1人か2人で始めたクリニックであれば、特に役割分担を決めなくても回るかもしれません。

しかし、スタッフが5人、10人と増えてくると、役割分担は必須になります。

(高山)人数が増えるほど、人に任せたり、自分がやらなくてもいい業務が増えてきます。

不思議ですが、その分、うまく役割分担をしなければ、組織はうまく機能しなくなってしまう。

(大西)その通りです。そして、人に指示を出す際も注意が必要です。「○○をやっといて」などと言うと、スタッフは受け身になってしまいます。

「私ですか?」「私、忙しいんですけど」などと言われるかもしれません。そうなると、院長も「俺の方が忙しい」と言い返してしまい、喧嘩になってしまう可能性もあります。

クリニックにおいて、院長より忙しい人はいませんからね。

(高山)そうですね。大人げない対応は避け、早い段階からスタッフに仕事を任せていくべきですね。

(大西)その通りです。そして、クリニックにおいて、役割分担は当たり前の文化として根付かせていく必要があります。

例えば、「美化委員会」を作るとしましょう。

トイレや床の掃除、エアコンの清掃、花の水やりなど、院内の美化に関する業務は、全て美化委員会が担当します。

美化委員会は、院内の美化に関する意思決定の中核を担います。

委員会の設置と運営

(大西)委員会は、2名体制で構成するのがおすすめです。

美化委員会、広報委員会、システム委員会の3つの委員会があれば、最低6名のスタッフが必要になります。

(高山)委員会のモデルケースを知らない院長先生も多いのではないでしょうか?

(大西)そうですね。私がこれまで支援してきたクリニックでは、全てこの3つの委員会を設置しています。

清潔さや安全性を保つためにも、委員会活動は重要です。

(大西)ちなみに、システム委員会は、業者対応が主な役割です。

医療機器やシステムに関することは、全てシステム委員会が担当します。

委員会のメンバーは、ある程度経験のある常勤スタッフが適任でしょう。

そうでないと、これらの業務は院長、あるいは奥様が担当することになり、負担が大きくなってしまいます。

奥様が美化委員会の仕事を全て担ってしまっていて、上手く機能していない、というクリニックも見てきました。

(高山)確かに、奥様はクリニック運営を良くしようと、良かれと思ってやってくださっていると思いますが、スタッフの仕事になってしまうと、うまくいかないケースが多いですよね。

(大西)そうなんです。例えば、ユニフォームをどうするかといった問題も、奥様が全て決めてしまうのではなく、スタッフ自身で考えて決めてもらうように促すべきです。

最初のうちはレールを引いてあげたくなりますが、あえてスタッフに任せることで、主体性を育むことができます。

院長の負担軽減とストレス軽減

(大西)奥様が手伝ってくれることはありがたいのですが、院長が本来やるべき仕事まで請け負ってしまっていると、院長自身の負担が増えてしまいます。

美化委員会、広報委員会、システム委員会の仕事まで院長がやっていては、身が持ちません。

奥様の協力が得られない場合でも、スタッフに仕事を割り振る仕組みが必要です。奥様の役割は非常に重要ですね。

(高山)本当にそうですね。

(大西)クリニックを美しく保つには、最初のルール決めが重要です。

10年経っても綺麗なクリニックは、美化委員会がしっかり機能している証拠です。

例えば、汚れを見つけた際の掃除の手順や、日々の掃除における役割分担などを明確に決めておく必要があります。

また、掃除チェックシートを作成するのも良いでしょう。チェックシートの有無で、クリニックの清潔度は大きく変わります。

(高山)トイレの清掃ひとつとっても、チェックシートの有無で清潔感が全く違いますよね。

(大西)その通りです。また、年に一度は専門業者に清掃を依頼するのも良いでしょう。

そのための予算も、あらかじめ確保しておくべきです。

最近は、人手不足もあり、清掃業務をアウトソーシングするクリニックが増えています。専門業者に依頼することで、より高いレベルの清潔さを保つことができます。

月に一度程度の頻度で依頼するのがおすすめです。必要経費として計上しておきましょう。

広報委員会の役割

(大西)広報委員会の仕事は多岐に渡ります。

勉強会の様子を撮影してホームページやSNSにアップしたり、新しいシステムを導入した際に情報を発信したり、クリニックのイベントの様子を掲載したり。

広報委員会は、クリニックの情報を発信し続けることが重要です。毎日発信するくらいの気持ちで取り組むべきです。

(高山)そうですね。広報活動を通して、チーム感や一体感を高めることができます。

(大西)その通りです。また、広報活動は、クリニックの思い出作りにも繋がります。

スタッフは、長い人だと20年以上一緒に働くこともあります。

3周年、5周年、10周年といった節目のパーティーを開催する際にも、広報委員会が作成した写真や動画などの素材があると便利です。

広報委員会がないと、そういった素材が不足してしまうケースが多いです。「人が誰も写っていない写真しかない」といった事態は避けたいですよね。

(高山)そうですね。「あ、この人、昔、クリニックにいたよね」と、モザイクのかかった写真を見ながら話すのは悲しいですからね。

(大西)ですから、日頃から広報活動に力を入れて、素材を蓄積していくことが大切です。

ホームページやSNSの更新は、院長の仕事ではありません。

広報委員会が責任を持って行うべきです。

院長がそういった業務までやっていては、時間がいくらあっても足りません。

更新が滞ってしまうと、情報発信の機会を損失してしまいます。

(高山)ホームページやSNSを更新しなくても、患者さんは来るには来ますからね。

(大西)そうかもしれませんが、患者さんが来なくなってからでは遅いんです。

ホームページを10年間運営しているのに、ほとんど更新されていないクリニックもあります。

そういったクリニックのホームページを見ると、「委員会活動が機能していないんだな」という印象を受けてしまいます。

システム委員会の役割

(高山)システム委員会の役割について教えてください。

(大西)システム委員会は、医療機器の故障や、新しいシステムの導入、トラブル対応などを担当します。

トラブル発生時のリーダー的存在です。

また、新しい業務に変更があった場合も、システム委員会が主導して対応します。

例えば、予約システムを導入する場合、院長が張り切ってシステムを選んでしまうと、他のスタッフから不満が出る可能性があります。

「院長が変なもの買ってきてしまった」などと言われるかもしれません。

しかし、委員会できちんと話し合って決めたのであれば、特定の誰かを責めることはできません。

委員会のローテーション

(大西)委員会は、定期的にメンバーを交代することが重要です。2年に一度くらいの頻度で交代すると良いでしょう。

(高山)メンバーを交代する理由は何でしょうか?

(大西)責任が固定化し、特定の人に負担が集中してしまうのを防ぐためです。

ローテーションを組むことで、特定の人が責められる事態を避けることができます。

また、ローテーションによって、スタッフ全員が様々な役割を経験することで、クリニック運営全体の視点を養うことができます。

美化委員会のメンバーをずっと同じ人にしていると、いわゆる「お局化」してしまう可能性があります。

2年に一度、メンバーを交代することで、フレッシュな発想を取り入れることができます。

「これまではこうだったけど、こういうやり方もいいよね」といった新しいアイデアが生まれるかもしれません。

(高山)なるほど。固定化を防ぐためにも、ローテーションは有効ですね。そういった風土を作っていきたいです。

例えば、委員会のメンバーが交代する際には、新しい取り組みを必ず行う、といったルールを設けるのも良いかもしれません。

お局の機嫌を伺うことなく、新しいことに挑戦できる雰囲気を作ることが大切です。

お局問題とストレス軽減

(高山)お局の機嫌を損ねないように、と気を遣ってしまうスタッフもいるかもしれません。

「今までこの仕事をやってきたのは私なのに」などと言われるかもしれません。

そういった事態を防ぐためには、院長先生から、最初から「そういうのは気にしなくていい」と伝えておくことが重要です。

(大西)おっしゃる通りです。お局を作らないことは、クリニック運営において非常に重要です。

院長先生にとっても、スタッフにとっても、お局の存在はストレスになります。「お局の機嫌を取らなければならない」ということは、「お局の機嫌が悪い」ということです。

機嫌が悪いということは、クリニックの環境が悪いということです。お局になってしまう人は、多くの仕事を抱え込み、他のスタッフに頼られてしまっている状態です。

本人は好きでやっているわけではなく、責任感からやっているのだと思います。しかし、その状態が続くと、お局自身も疲弊してしまいます。

(高山)なるほど。

(大西)役割を交代することで、責任感も分散され、お局の負担を軽減することができます。

また、他のスタッフから「○○さんが担当していた時は良かった」と言われることで、お局も喜びを感じるはずです。

役割のローテーション、委員会の設置、お局を作らない、業務を集中させない。これらは全て同じ方向を向いています。

委員会の目標設定

(高山)各委員会では、どのような目標を設定すれば良いのでしょうか?

(大西)委員会ごとにテーマを設定し、第1回目の会議で書面に残します。

「当委員会は、何を目標とするか」を明確にするのです。

年に一度、全体委員会を開催し、各委員会の方針を発表する場を設けるのも良いでしょう。

例えば、美化委員会であれば、「今年は院内の清潔度をさらに向上させる」といった目標を設定します。

目標は、できるだけ数値化、あるいは言語化すると良いでしょう。

最初から完璧な型があるわけではないので、試行錯誤しながら型を作っていくことが大切です。

私が支援しているクリニックでは、チェックシートを一緒に作成しています。

(高山)チェック項目を作成し、チェックできるような行動に落とし込んでいく、ということですね。

(大西)そうです。例えば、物を購入する際には、どのような申請書を作成するか、といったことも決めておく必要があります。

3つのサイトで価格を比較し、一番安いものを購入する、といったルールを設けているクリニックもあります。

こういったルールがないと、全てAmazonで購入してしまう、といった事態になりかねません。

「Amazonの方が便利だから」という理由で、値段を比較せずに購入するのは良くありません。

クリニックのお金は、スタッフ個人のものではないからです。3社程度から相見積もりを取り、どれが一番良いかを選定し、院長の承認を得てから購入する、という手順を踏むべきです。

そうしないと、お金の流れが不明瞭になってしまいます。

(高山)確かに、院長としては、お金の流れが不明瞭なのは不安ですね。

(大西)その通りです。稟議書のような書類を作成し、どのサイトで価格比較をしたか、見積もりを3社分添付する、といったルールを設けるのも良いでしょう。

院長は、最終的に承認するだけで済みます。ここまでやってくれると、院長も安心して任せることができます。

(高山)そうですね。選定プロセスが明確であれば、外れることも少ないでしょう。

中には、院長と親しい業者に全て発注してしまう、といったケースもあるようです。特に、システム関連の購入で起こりやすいです。

(大西)そうですね。システム業界の慣習なのかもしれません。例えば、パソコンを10台購入する場合、1台30万円で合計300万円です。

高額な買い物なので、慎重に選定する必要があります。

パソコンの価格は年々上昇しているので、1台10万円や5万円で購入できる時代は終わりました。

300万円のパソコンを10台購入すると、10%のバックマージンがもらえる、などと言われると、心が揺らいでしまうかもしれません。

しかし、そのバックマージンを受け取るのは誰なのか、という問題があります。担当者が個人的にバックマージンを受け取るのは、あってはならないことです。

(高山)300万円ともなると、バックマージンも高額になりますからね。

(大西)金額の大小に関わらず、あってはならないことです。しかし、金額が大きいからこそ、問題になりやすいのです。

公務員は、こういったトラブルを起こしやすいと言われています。

(高山)クリニックでも、そういったトラブルは起こるのでしょうか?

(大西)病院レベルではよくある話です。

ニュースで報道されることもあります。

クリニックでは、そこまで高額な取引は少ないので、あまり起こらないかもしれません。

しかし、病院レベルになると、2億円規模のシステム導入なども珍しくありません。1%のバックマージンでも200万円になります。金額が大きいため、トラブルに発展しやすいのです。

業務フローの策定と相互チェック体制

(高山)高額なシステムを導入する際は、業務フローを明確に定義し、チェック体制を整えることが重要ですね。

(大西)その通りです。相互チェック機能を働かせるために、2名体制で業務を行うようにしましょう。

1人だけで行うのは避けるべきです。

美化委員会と広報委員会のメンバーを兼任することは可能ですが、必ず2名以上で業務を行うようにしてください。

会議を開催する際は、司会と議事録係を決め、議事録は必ず書面で残します。司会は、院長ではなく、スタッフが行うようにしましょう。院長が全て話してしまうのを防ぐためです。

院長は、会議には参加せず、後ろで聞いていれば十分です。場合によっては、院長が不在でも構いません。

特に最初のうちは、スタッフも不安に感じているでしょうから、院長が同席することで安心感を与えることができるかもしれません。

しかし、慣れてきたら、院長は会議に参加せず、スタッフだけで進めてもらうと良いでしょう。

スタッフは、「これでいいのか」と不安に感じているかもしれません。院長は、診察室のドアを閉めて、外で会議の様子を聞くようにすると良いでしょう。

(高山)そうなんですか。

(大西)院長が会議に同席していると、スタッフは発言しにくくなってしまいます。院長がちらっと顔を出すだけでも、スタッフは萎縮してしまうかもしれません。ですから、院長は会議の様子を聞くだけで、口出しはしないようにしましょう。

業務改善委員会の設置

(大西)業務が滞ってしまう原因は、どうすれば改善できるのでしょうか?そういった問題を解決するために、「業務改善委員会」を設置するクリニックが増えています。

美化委員会、広報委員会、システム委員会だけでは解決できない問題を、横串で対応する組織です。

ストレスの原因と対策

(高山)業務改善委員会は、院長のストレス軽減にも繋がる、非常に良い仕組みだと思います。前向きな組織運営と言えますね。

(大西)美化委員会、広報委員会、システム委員会の中に、それぞれ業務改善チームを設けるのも良いでしょう。

マンネリ化を防ぐために、業務改善委員会を設置するクリニックが増えています。こういった取り組みは、開業して数年経ってから始めるケースが多いようです。

(高山)そうですね。開業してしばらく経ち、組織がマンネリ化してきたクリニックには、ぜひ取り入れていただきたいですね。

組織の活性化に繋がります。

(大西)ストレスは、なぜ生まれるのでしょうか?「自分だけが頑張っている」という思いが、ストレスの原因になることが多いようです。

(高山)院長もスタッフも同じように感じているのでしょうか?

(大西)その通りです。人間は、忙しくなると周りのことが見えなくなってしまいます。

周りが見えなくなると、自分しか見えなくなります。そして、「自分だけが頑張っている」と感じてしまい、ストレスが溜まってしまいます。

(高山)「他のスタッフは早く帰っているのに、自分だけ残業している」などと思ってしまう。

(大西)そうです。イライラしたり、泣いてしまったりするかもしれません。

しかし、それは、仕組みが悪いのです。特定の人に負担が集中してしまう仕組みが悪いのです。

ですから、早い段階で役割分担を行い、ストレスを溜め込まない組織作りをすることが大切です。

ストレスの原因は、自分の中にある「不公平感」です。

「隣のスタッフと比べて、自分の給料が少ない」「労働時間が長い」「あの人は無駄に残業している」などと考えてしまうかもしれません。

周りの人が悪く見えてしまう。

(高山)そうです。「私はこんなに頑張っているのに、院長は評価してくれない」と感じることもあるでしょう。

(大西)承認欲求が満たされないことも、ストレスの原因になります。

委員会活動を活性化させるには、委員会表彰制度を導入するのが効果的です。

頑張った委員会を表彰するのです。金一封でも良いですし、食事に連れて行くのでも良いでしょう。

(高山)なるほど。委員会活動に張り合いが出ますね。委員会活動を頑張ったところで、給料が上がるわけではないですからね。

(大西)中には、委員会活動に対する手当を支給しているクリニックもあります。

残業が増えてしまった場合は、残業代、あるいは委員会活動費として支給すると良いでしょう。

(高山)働いた分は、きちんと支払う必要がありますからね。

(大西)委員会活動を導入すると、どうしても業務時間内に委員会活動をしなければならないため、「あの人は委員会活動ばかりやっている」と思われてしまうかもしれません。

そうならないように、委員会活動の時間をきちんと確保することが重要です。

(高山)クリニックでは、昼休みにある程度の時間を取ることができますが、昼休みに委員会活動をするのは難しいですよね。

スタッフは、昼休みは家に帰っていることが多いでしょうから。

(大西)そうですね。クリニックによっては、委員会活動のために持ち帰り残業をしてもらわなければならないケースもあるでしょう。

その場合は、きちんと残業代を支払うべきです。在宅勤務が普及している時代ですから、Zoomなどで会議に参加しても良いかもしれません。

(高山)柔軟な働き方を認めることも大切です。病院では、付帯業務はサービス残業で行うのが当たり前だったかもしれません。

しかし、クリニックでは、パートさんやアルバイトの方に働いてもらっている場合も多いので、働いた分はきちんと支払う必要があります。

働き方改革と残業

(大西)働き方改革の良いところは、働いた分だけお金になるようになったことです。

(高山)当たり前のことですが、医療業界では当たり前ではなかった時代もありました。

(大西)「サービス残業」という言葉があるのは、日本くらいでしょう。

(高山)今でもそういった文化が残っている職場もあるかもしれません。

(大西)あるでしょうね。私がよく院長先生方から相談を受けるのは、「残業した場合は必ず申告するように言ってください。

きちんと評価しますから。隠れてこそこそ残業するのはやめてください。必要のない残業はしないでください」ということです。

最近では、残業申告制を導入するクリニックが増えています。

「今日、残業します。何時間です」と事前に申告してもらう。

(高山)私の会社でも、残業申告制を導入しています。そうしないと、やる気のあるスタッフがサービス残業をしてしまうからです。

(大西)困ったものですね。

(高山)スタッフが頑張ってくれるのはありがたいのですが、昔はサービス残業を推奨することさえありました。

「結果を出すには、それなりのやる気と努力が必要だ。頑張ろう」とスタッフに発破をかけていました。しかし、今はそうはいきません。

会社がサービス残業を容認しているとみなされてしまうからです。

残業する場合は、必ず申請してもらい、院長が承認しなければ残業はできない、というルールを設ける必要があります。

(大西)クリニックでは、残業が発生しやすい環境です。

6時に終わろうと思っても7時になってしまう、7時に終わろうと思っても8時になってしまう、といったことがよくあります。

あらかじめ残業の計画を立てておくことが重要です。

院長先生は、「今日、残業する?時間ある?」などとスタッフに声をかけるようにしています。

委員会活動の時間の確保

(高山)委員会活動の時間をどのように確保すれば良いでしょうか?各クリニックで工夫が必要だと思いますが、うまくやっているクリニックの例があれば教えてください。

(大西)午後休診の日の終業後を利用する方法があります。

(高山)水曜日や木曜日の午後ですか?

(大西)そうです。土曜日も可能です。クリニックは、患者さんが来ない時間帯を休診にしているわけですから、午後休診の日の終業後を利用するのは理にかなっています。

(高山)なるほど。そうなんですね。

(大西)月曜日と金曜日の午後は、患者さんが多いので休診にすることは難しいでしょう。

火曜日、水曜日、木曜日の午後は比較的空いていることが多いので、これらの曜日で午後休診を設定し、委員会活動の時間を確保すると良いでしょう。

全休にするか半休にするかは、クリニックの状況に合わせて決めてください。木曜日の午後を休診にしているクリニックが多いですね。

(高山)木曜日は休診のクリニックが多いですね。

(大西)土曜日は午前中に患者さんが集中するので、午前中だけ診療を行い、午後は休診にするという方法もあります。

土曜日の夕方5時や6時に来院される患者さんはほとんどいません。

(高山)そうですね。皆さん、週末は用事が多いですからね。

(大西)午後休診の半日分、あるいは全日分の給与を支払う、という方法もあります。委員会活動は、業務時間内に行うべきものです。

全員経営という意識改革

(高山)委員会活動は、院長が定義し、スタッフに通達し、役割を決めて、より良いクリニック運営を目指していくための活動です。

横串の業務改善委員会も設置し、それぞれが独立した組織ではなく、1つの目標に向かって有機的に連携する組織となるように、仕組みを整えることが重要です。

そして、最後に重要なのは、「全員経営」という意識を共有することです。

(大西)「全員経営」という言葉は、クリニックではあまり馴染みがないかもしれません。しかし、クリニックは、ベンチャー企業のようなものです。全員が経営者意識を持って働くことが重要です。

(高山)ベンチャー企業ほどアグレッシブである必要はないと思いますが。

(大西)クリニックの社風にもよるでしょう。クリニックであっても、ベンチャー企業のように運営することは可能です。

重要なのは、スタッフにクリニックへの愛着を持ってもらうことです。人事部のような他人事ではなく、「自分のクリニック」という意識を持って働いてもらうことが大切です。

(高山)愛着を持つことは、とても大切ですね。自分のクリニックだと、より責任感を持って仕事に取り組めます。

(大西)院長を「大臣」と呼ぶクリニックもあります。美化大臣、広報大臣、システム大臣などです。大臣には、大臣手当が支給されます。

(高山)面白いですね。大臣手当があるんですか?

(大西)役職手当のようなものです。

(高山)美化担当大臣、広報担当大臣、システム担当大臣。良いですね。

(大西)大臣は、2年に一度交代します。

(高山)院長は大統領ですか?

(大西)大統領ですね。議会はありませんし、外部監査もほとんどありませんから。

まさに大統領制です。三権分立はしていません。

コンサルタントや外部監査を入れるべきだと言われることもありますが、なかなか難しいです。

私もコンサルタントとして活動していますが、院長に雇われている立場なので、議会のようなチェック機能を果たすことはできません。

第三者的な意見の必要性

(高山)第三者的な立場から、「こうすれば良い」といった提案をすることはできるかもしれませんが、最終的な決定権は院長にあります。

(大西)そうですね。「大西さん、もう結構です」と言われてしまえばそれまでですから。

(高山)難しいところですね。

(大西)本当に難しいです。コンサルタントの悩みですね。これはまた別の機会にお話ししましょう。

(高山)今回は、スタッフの役割分担について、詳しくお話を伺いました。ありがとうございました。

(大西)ありがとうございました。

(高山)続きは次回にしたいと思います。

(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。

この番組への感想は「#院長が悩んだら聴くラジオ」でXなどに投稿いただけると嬉しいです。番組のフォローもぜひお願いします。

この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。

他の記事を読む  TOPへ戻る