ヘルスケアにおけるAI活用の最前線 / アマゾンウェブサービスジャパン 遠山仁啓

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社、遠山 仁啓様に国内外におけるヘルスケアAI実例についてお話を伺いました。
遠山様には現在公開中の診療所マネジメントEXPOでもご講演いただいています。
※2022年11月1日にCPA EXPOは診療所マネジメントEXPOに名称を変更しました。

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診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演テーマ『クラウドがもたらすヘルスケアの新時代』

今回お話ししたような、国内・海外問わずにAIソリューションの活用事例を、操作画面や動画なども交えつつ紹介できればと考えています。
AIを活用したい、新しいツールを前向きに導入したいというクリニックの皆様の参考になれば幸いです。

クリニック向けのAIソリューションの事例をご紹介ください

国内事例としては、東大発のスタートアップ企業であるエルピクセル株式会社さんが有名です。
脳のMRI・MRA画像を活用して脳動脈瘤を診断支援する仕組みであるEIRL ViewerをAWS
クラウドからサービス提供されています。
こちらは深層学習を活用した脳MRI分野のプログラム医療機器として国内初の薬事承認を受けています。

眼科関連の事例では、自治医科大学発のスタートアップ企業、DeepEyeVision株式会社さんがAIソリューションを展開しています。
こちらは学習済みの推論環境をクラウド上に実装されて、そこへ医療機関等にて撮影した眼底画像をアップロードすると、AIが診断支援を行い一次解析するという仕組みです。
読影医の読影時間を1/3以下に大幅に圧縮できたり、読影品質の平準化に貢献したりといった効果が表れています。

歯科口腔外科領域では、AOI国際病院さんがパノラマX線画像3万枚を用いた教師データによるディープラーニング技術を活用されています。
疾患認識や歯の欠損状況など、通常であればドクターの方が手作業で入力する部分を、AIが判断して判別できるものは対応するという仕組みで、既に「AI診断外来」という形で実際の診療に活用され始めています。

海外では、国内よりもヘルスケアへのAIソリューションの導入が活発です。
例えばアマゾンが提供している人工知能デバイスAlexaも医療用途に多く利用されており、
高齢者や目の不自由な方を対象に、在宅しながら投薬・疾患・治療方法を音声認識で確認できる仕組みが展開されています。
病院内での活用例としては、空きベッド状況の確認や、その患者さんの担当看護師が誰かをドクターが声で確認すると、音声で回答が返ってくるという活用事例もあります。

AWSクラウドを活用した事例としては、イギリスのバビロンヘルスにて導入されている、公的な医療保険サービスNHS向けのAIポータルというオンライン診療型電子カルテがあります。
こちらは表情認識や音声認識などAI技術が豊富に活用されており、患者が医師の話をリラックスして聞けているか緊張しているかなどを認識することが出来ます。
同じくバビロンヘルスが国民向けに提供しているAIドクターというサービスがあります。こちらはスマホ上で動くAIチャットボットタイプのアプリになっており、患者さんが現在どういう疾患が疑われていて、病院にかかるべきなのか、自己治療できるものなのか、どんな薬が処方されそうか、ということを確認できるツールです。
イギリスで始まった取り組みですが、既にアイルランドやルワンダなどでも普及しています。

今後、ヘルスケア領域においてAIはどのように発展していくと考えられていますか?

AIソリューションの中でも、ディープラーニングによる画像診断は急速に進化を遂げており、今後もこのペースで発展していくのではないかと考えています。
また音声認識の領域に対するニーズも根強く、例えば診察室の中の会話の内容を全て拾い上げたり、精度が上がればオペ室の中の会話を全て記録したりといった活用方法が可能になれば、さらに利用事例が増えるのではないでしょうか。
海外では一部で既に音声認識の活用が進んでおり、診察室の会話の内容を全て拾い上げてテキスト情報としてプロットした後に、AIがデータをサマライズし、カルテに差し込む内容をレコメンドしてくれるサービスが複数のベンダーから提供されています。
英語に比べると日本語は複雑な要素があり、英語圏と比較すると普及が遅れているのが現状です。

特に日本国内においてはAIを十分に活用できる人材が少なく、AIソリューションが停滞している要因の一つであると考えられます。
私は現在東京医科歯科大学にて非常勤講師を務めており、東京都と東京医科歯科大学の協定事業である「デジタルヘルス人材育成プログラム」という講座で講義をしています。
受講されているのは医学部生ではなく、医療従事者や医療関係の企業の方です。
今後はこういった活動の中から、AIソリューションをうまく扱える人材が増えるかどうかが国内の展開においては重要ではないでしょうか。

プロフィール


アマゾンウェブサービスジャパン株式会社

遠山 仁啓 氏

アマゾンウェブサービスジャパン株式会社の公共部門チーム(パブリックセプター)に所属しており、ヘルスケア専任の事業開発を担当しています。
当社に入社した際はソリューションアーキテクトという技術職で活動していましたが、1年ほど前に現在の事業開発担当へロールチェンジしました。
医療・ヘルスケア関連のビジネスディベロップメント担当として、中長期的なビジネス戦略の策定や推進、業界ステークホルダーとのリレーション構築、イベントや学会での講演活動、ガイドラインへの規制対応などを行っています。
また東京医科歯科大学にて非常勤の講師も務めている他、書籍の執筆やWeb上での情報発信なども行っています。