
はじめに
オンライン診療は急速に進化を遂げている分野で、新しい医療の形として注力するクリニックも増え始めています。
オンライン診療システムは、独立型サービスから、オンライン診療システムを搭載した電子カルテまで、多様な選択肢が生まれています。
本記事では、オンライン診療システムの選び方、地域差、導入のポイント、そして実際のサービス情報を詳しくご紹介します。
オンライン診療システム導入のメリット
- 業務効率向上
- 予約管理、問診票記入、診療記録の管理がデジタル化されます。
- 電話対応の回数が減り、受付業務がスムーズに。
- 収益向上の可能性
- 遠隔地の患者も診療対象になり、診療の機会が増加する
- 再診患者の離脱を防ぎ、継続的な診療機会を確保しやすくなる。
- 診療の質向上と患者満足度の向上
- 患者の診療データを一元管理でき、適切なフォローアップが可能になる。
- 予約システムとの連携により、患者の待ち時間が短縮され、利便性が向上。
- 法規制対応と安全性の確保
- 専用のオンライン診療システムなら、厚生労働省のガイドラインに則った運用がしやすい。
- クラウド上でのデータ管理により、紙カルテの管理コストを削減できる。
クリニック向けのオンライン診療システムの種類と料金モデル
検索サイト型と自院専用型
患者は全国の医療機関を検索でき、オンライン診療システムの予約をとったりオンライン相談を受けることができます。患者の利便性が高く、新規患者の獲得も見込める大きなメリットがある一方、高齢の方にはシステムが複雑だったり、他院に患者が流れてしまう可能性があります。
クリニックのWEBサイトにリンクを貼ったり、医療機関コードを発行して患者にオンライン診療を予約してもらうシステムです。検索サイトと比較しても患者の流出が防ぎやすいと言えますが、検索サイト型と比較して準備に手間がかかったり初期費用が高めに設定されている場合があります。また、電子カルテや他システムと連携しやすいという特徴もあります。
利用料定額制と従量課金制
オンライン診療システムの利用料金体系は大きく二つに分かれています。
月額利用料が無料で1診療ごとにシステム料や事務手数料が発生する従量課金制プランと、月額利用料が固定されているプランです。
従量課金制プランでは手数料が1診療ごとに金額が固定されているタイプと診察代金に応じて%計算され手数料が変動するタイプがあります。
自院のオンライン診療の頻度、一回当たりの診察代などから最適なシステムを選定しましょう。
クリニックにマッチしたシステムを選ぶための比較ポイント
患者の特性に適した機能で比較
地域や患者層の特徴を考慮することで、より効果的なオンライン診療の運用が可能になります。
- 若年層や都市部の患者が多いクリニック
柔軟な予約管理機能: 多忙な患者が簡単にスケジュールを調整できる仕組みが求められます。
モバイル対応の使いやすいインターフェース: スマートフォンやタブレットで直感的に操作可能なデザインが重要です。
SNS連携: LINEなど普段利用しているアプリとの連携により、アクセスのハードルを下げる工夫が必要です。 - 地方や高齢者の患者が多いクリニック
通信環境に対応した設計: 通信インフラが不安定な地域でも利用可能な低帯域幅対応のシステムが有効です。
高齢者向けUI: 大きな文字や音声ガイドなど、操作のしやすさを重視したデザインが必要です。
診療科の特徴に合わせた機能で比較
診療科目ごとの特性を反映した機能の選択が、患者対応の質を向上させます。オンライン診療と相性が良いと言われる精神科と小児科を例にご紹介します。
- 精神科
プライバシー保護: セキュリティが強化されたシステムで、患者の個人情報を確実に保護。
長時間のカウンセリング対応: 安定した通信環境で、診療中の中断を防ぎます。 - 小児科
チャット機能: 親が簡単に相談できる仕組みを整備。
事前問診機能: 子供の症状を事前に把握し、スムーズな診療を実現。
柔軟な診療時間設定: 子供の急な体調変化にも対応できる診療枠の確保が重要です。
ケース別に求められる機能で比較
- 初診患者への対応
詳細な問診票のカスタマイズ機能で、診療科目やクリニックの特性に応じた事前情報収集を効率化。
電子カルテとの連携により、問診内容をスムーズに記録して診療計画に活用。 - 再診患者への対応
定期的な予約管理やリマインダー機能を備え、患者自身が予約を簡単に調整可能。
前回の診療内容や処方内容を即座に参照できる機能で、診療の継続性を確保。
その他 要確認ポイント
- 操作性と利便性
シンプルで直感的な操作が可能なデザインは、患者とスタッフ双方の負担を軽減します。 - 機能性
予約管理、決済といった基本機能に加え、チャット機能や電子処方箋といったクリニックに合った機能を選びましょう。 - セキュリティと法令準拠
医療データを保護するためには、関連する法律やガイドラインに適合したサービスであることが重要です。また、セキュリティの観点から患者に再ログインが必要な場合でも、操作が簡単でわかりやすく、スムーズに利用できるシステムを選ぶことで、診療時間の遅延を防ぎ、隙間時間でオンライン診療を行う医師にとっても効率的に利用できます。 - コストとサポート
初期費用や運用コストが継続的に負担できる範囲であるか、またトラブル時に迅速かつ適切なサポートが受けられる体制が整っているかを確認しましょう。
検索型オンライン診療システムの各サービス詳細情報

特徴 | 病院検索、オンライン服薬管理と連携、予約管理、 問診表管理、かかりつけ医登録 |
費用 | 無料(売上金振込手数料はクリニック負担) |
患者利用料 | システム利用料:診察・服薬指導それぞれに275円(税込) 処方薬配送550円~(税込) |
連携 | |
処方 | 薬局連携、配達可能(東京23区・横浜市・大阪市は当日配達可能)、バイク便 |
支払い | クレジットカードもしくはコンビニ後払い |
(出典:SOKUYAKU公式サイトhttps://sokuyaku.jp/sokuyaku_for_clinic/)
日本初のオンライン診療・オンライン服薬指導・処方薬宅配のワンストップ・プラットフォームを提供。
提携薬剤師によるオンライン服薬指導対応で診察後も安心です。

特徴 | 病院検索と予約・オンライン診療の予約ができる検索サイト リマインドメール、キャプチャ、チャット機能 |
費用 | 初期導入費、月額費用0円、 決済手数料10% |
患者利用料 | 郵送料は患者負担クリニック負担選択可能 |
連携 | ORCA、電子カルテCLIUSとの連携 |
処方 | 薬配達可能(Uber Direct活用し東京23区内30分以内に配達) |
支払い | クレジットカード決済 |
(出典:アイメッド公式サイトhttps://ai-med.jp/)
国内最大級の医療と美容に関するネットワークをもち、患者は病院の検索と予約、オンライン診療までをアイメッドのみで完結させることができます。美容や自費のオンライン診療での利用が多いですが、保険診療にも対応しています。

特徴 | 病院検索機能、問診表カスタマイズ可能、 オンライン資格確認、FitBitからPHRデータ取得、 導入までの初期設定を無料サポート |
費用 | 初期費用無料、月額10,000円(診療件数無制限) |
患者利用料 | オンライン診療利用料 100円 |
連携 | – |
処方 | 処方箋薬局連携 |
支払い | クレジットカード |
(出典:ANYMED公式サイトhttps://www.anymed.online/)
スマートウォッチと連携しPHRデータを取得、高齢者向けに看護師がデバイスを持って訪問するオンライン訪問診療にも対応。月額費用が固定なのでオンライン診療の件数が多い、複数医師でオンライン診療を行いたいクリニックにピッタリです。

特徴 | 医療機関検索サイト「病院なび」と連携、オンライン服薬指導対応、 予約から処方受け取りまでワンストップ、 国際的なセキュリティ基準「PCI DSS」完全準拠、 専用コールセンターによるバックアップ体制、 栄養相談サービス |
費用 | 要問い合わせ |
患者利用料 | – |
連携 | – |
処方 | 処方薬配送 |
支払い | クレジットカード決済 |
(出典:KAITOS公式サイトhttps://byoinnavi.jp/contents/kaitoslp/index.html)
日本最大級の医療機関検索サイト「病院なび」と連携し、患者はスマホやPCから気軽に予約を取ることが可能です。専用コールセンターによるバックアップ体制や利用者の栄養相談サービスといった充実したサポートがポイントです。

特徴 | 医療機関検索、カレンダー形式で入力しやすい予約管理、 疾患別の問診票、画面共有機能 設定や院内業務フロー設計を丁寧にサポート |
費用 | 初期費用・月額利用料無料。 クレジットカードの決済手数料含む事務手数料として4% |
患者利用料 | – |
連携 | – |
処方 | 薬局への処方箋連携、院内処方は宅配業者へ自動で集荷依頼 |
支払い | クレジットカード決済 |
(出典:curon公式サイト:https://micin.jp/)
導入実績6000件以上を誇るcuron。こちらのサービスも初期費用・月額費用無料で利用が可能です。自動集荷機能があり、院内処方でも処方薬の配送の対応がスムーズです。

- 予約管理、ビデオ通話による診療、診療費用の請求まで一元管理
- 料金:初期費用・月額固定費無料(Basic Plan)+ サービス利用料(決済金額3.5%)
- 処方:処方薬配送
- 支払い:クレジットカード、LINE Pay
(出典:LINEドクター公式サイト:https://linehealthcarecorp.com/ja)
日本で最大級の利用者を誇るLINEが開発した、オンライン診療サービスです。シンプルで理解しやすい設計に開発されてています。導入・固定費用が無料のため、試しに使ってみたいなど気軽な導入が可能です。

特徴 | 検索型。予約・オンライン診療・薬・処方箋の配送、 アラート機能、導入後の定期的な訪問・電話・メールで困りごとをサポート、 3省3ガイドライン準拠証明書取得 |
費用 | 要問い合わせ |
患者利用料 | 診療費/相談料、薬代/処方箋料・配送料 |
連携 | – |
処方 | 薬・処方箋の配送(最短当日) |
支払い | クレジットカード・医療機関窓口決済 |
(出典:CARADAオンライン診療公式サイトhttps://caradamedica.co.jp/)
大手ヘルスケア医療Q&Aサイト「CARADA 健康相談」を運営する株式会社カラダメディカが開発。
直感的に操作でき、高齢者にも使いやすいオンライン診療システムです。アンドロイド端末には対応していない点は注意が必要です。

特徴 | 予約機能、問診機能、画像で保険証等確認可能、チャット機能、処方箋送信 |
費用 | 初期・月額費用無料、診療ごと300円、 決済手数料ご請求額の4%(診療ごとの料金は患者負担も可能) |
患者利用料 | – |
連携 | – |
処方 | – |
支払い | クレジットカード決済、銀行振り込み、代金引換 |
(出典:Door.into 健康医療相談公式サイトhttps://medoor.com/webmed/)
専用のキーを持つ患者が気軽に健康相談ができる「Door.info 健康医療相談」のオンライン診療サービスです。診療が発生して初めて費用が発生するため、気軽に導入が可能です。
自院専用型のオンライン診療システムの各サービス詳細情報

特徴 | 患者向けLINEアプリ、カスタマイズ問診機能、 ヘルスケア業務管理(診察予約・オンライン診療・決済・配送)マーケティング分析と顧客管理 |
費用 | 個別見積り |
患者利用料 | – |
連携 | ORCA、電子カルテCLIUSとの連携 |
処方 | 薬局連携、配達可能 |
支払い | クレジットカード決済、銀行振込、 代金引換など、多様な決済方法 |
(出典:株式会社Wrusty公式サイトhttps://march-cos.com/)
LINEを基盤としたプラットフォームで、予約から配送まで一元管理でき、マーケティングツールも充実。離脱を防ぐ仕組みが多く盛り込まれたオンライン診療システムです。自由診療だけでなく、保険診療で自費収益の拡大を目指すクリニックにおすすめです。

特徴 | コニカミノルタPACS上でオンライン診療が行えるサービス 専用アプリ不要、ブラウザ使用で手軽に利用可能。 |
費用 | 要問い合わせ |
患者利用料 | 要問い合わせ |
連携 | 画像診断ワークステーション「Unitea(ユニティア)」 |
処方 | – |
支払い | クレジットカード、銀行振り込み、次回来院時支払い |
(出典:infomityオンライン診療サービス公式サイトhttps://www.konicaminolta.jp/healthcare/ict/medical-support/)
コニカミノルタ社の画像診断ワークステーション「Unitea(ユニティア)」を介してオンライン診療が行えるサービスです。(使用システムはYaDoc Quick)
専用アプリ不要、ブラウザ使用で手軽に利用可能です。柔軟な支払い方法に対応しています。

特徴 | HPにリンクを貼るだけで利用可能 予約機能、予約メニューごとの問診票設定、 通話オプション、Googleアナリティクス連携、 リマインドメール、医療スタッフによる代行予約 |
費用 | 個別見積 |
患者利用料 | – |
連携 | – |
処方 | 処方薬配達可能 |
支払い | クレジットカード |
(出典:LiveCallヘルスケア公式サイトhttps://www.spinshell.com/)
アプリ不要でクリニックのWEBサイトにリンクを貼るだけで利用できるオンライン診療サービスです。クリニック専用ブランディング機能があり、患者が安心して登録できるようページの独自カスタマイズ可能です。

特徴 | アプリ不要 画像等の検査データの共有・検査データの事前登録、 海外からのオンライン診療にも対応 電子聴診器を使用したオンライン聴診に対応 |
費用 | 個別見積 |
患者利用料 | – |
連携 | – |
処方 | – |
支払い | 施設ごとの決済方法に対応 |
(出典:スマートキュア公式サイトhttps://smartgate.jp/)
Ciscoのビデオ会議システムWebexを組み込んだクラウド型システムでWindowsPC、AppleMac、タブレット、スマートフォン(Android/iOS)のマルチデバイスに対応します。2022年の新型コロナ対応の際、世田谷区オンライン発熱診療サービスで採用実績があります。

特徴 | アプリを活用しかかりつけ医でオンライン診療を受けられるサービス 日時予約、簡易問診機能・写真送付、食事写真・血糖・血圧等の自己管理データを共有可能 |
費用 | 個別見積 |
患者利用料 | – |
連携 | 電子カルテ連携(オプション) |
処方 | 薬・処方箋の配送 |
支払い | PayPalによるクレジットカード決済、請求書発行 |
(出典:リモートドクター公式サイトhttps://remodoc.net/)
旧アイソル株式会社、現在はGMOヘルスケアが運営しているリモートドクターは、アプリで予約から支払いまでをワンストップで行うサービスです。自己管理記録の共有が可能で、慢性期疾患の患者さんの治療にも役立ちます。

特徴 | ヘルスケア機器連携、医師の空いた時間に予約枠設定 |
費用 | トライアルプラン0円、以後33000円/月額 |
患者利用料 | – |
連携 | – |
処方 | 処方薬配送対応 |
支払い | クレジットカード・医療機関窓口決済 |
(出典:ポケットドクター公式サイト:https://medrt.co.jp/)
ポケットドクターは高齢の患者でも使いやすいシンプルな設計で、慢性疾患を抱える患者や通院が大変な患者の定期診療に活用されています。バイタル情報の連携をすることで、精度の高い診療の提供を可能にします。

特徴 | 予約機能、カスタマイズ問診機能、メッセージ機能、モニタリング機能(医師の知りたい項目をかかりつけ医の決めた任意の日時に患者が記録)、専任のサポートデスクによるフォロー |
費用 | 要問い合わせ |
患者利用料 | – |
連携 | 主要12社の電子カルテと同じPCで利用可能 |
処方 | – |
支払い | クレジットカード決済、銀行振り込み、代金引換 |
(出典:YaDoc公式サイトhttps://www.yadoc.jp/)
患者とかかりつけ医だけをつなぐシンプルなシステム。受診患者の離脱を防ぎます。サポート体制の手厚さや、高齢の方も利用しやすい多様な支払い方法が用意されています。
まとめ
本記事では、ケースに応じたオンライン診療の重要ポイントを整理し、具体的なオンライン診療サービスについてご紹介しました。
選定には患者やスタッフの利便性を高める操作性、診療の質を支える機能性、安全性を担保するセキュリティ、そして予算に見合ったコストと充実したサポート体制が重要です。
それぞれの特徴を理解し、自院に最適なシステムを見つけることが、成功への鍵となるでしょう。
オンライン診療サービスに関する詳細な資料や、知識を深めるDOCWEB独自の動画も、ぜひお気軽にご活用ください。理想のクリニック開業にお役立ていただけますと幸いです。