
はじめに
近年、政府の医療DX政策の加速により、クリニックレベルでも電子カルテ導入や地域医療連携、電子処方箋対応が求められる時代になりました。東京都では、こうした動きに対応すべく、開業医や診療所の運営者に向けた複数の手厚い補助金制度を展開しています。
本記事では、2025年度の最新情報に基づき、医科診療所向けの5大補助制度を整理。対象・補助額・併用可否・申請時期などをわかりやすく解説します。
東京都クリニック向け補助金の全体像
2025年度、東京都が展開する医科診療所(クリニック)向けの主な医療DX関連補助金は以下の5つです。
補助制度名 | 主な対象 | 補助率 | 補助上限額 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|
診療所診療情報デジタル推進事業 | 医科診療所 | 3/4 | 最大3,000千円(無床) | 電子カルテ導入・改修 |
医療機関診療情報デジタル導入支援事業 | 医科診療所・病院 | 3/4 | 最大1,000千円 | 電子カルテ導入検討費用(コンサル等) |
医療DX人材育成支援事業 | 医科診療所・病院 | 10/10 | 最大500千円 | 研修費・資格取得費 |
地域医療連携システム整備推進事業 | 医科診療所・病院 | 3/4 | 最大2,000万円 | ネットワーク環境整備 |
電子処方箋普及促進事業 | 保険医療機関の診療所・病院 | 1/4(ICT基金併用) | 最大135千円 | 電子処方箋システム導入 |
各補助金の詳細解説
1.診療所診療情報デジタル推進事業
- 対象:東京都内の医科診療所(無床・有床)
- 補助率・上限:3/4、上限3,000千円(無床診療所)
- 用途:電子カルテ導入、既存システムの連携・改修、機器購入、セキュリティ対応
- 申請締切:2025年8月29日(金)
- 備考:既存システムを他社製品と連携する場合も対象
2.医療機関診療情報デジタル導入支援事業
- 対象:東京都内の医科診療所および病院
- 補助率・上限:3/4、上限1,000千円
- 用途:電子カルテ導入検討時のコンサルティング費、導入計画策定費
- 申請期間:2025年6月2日~10月31日
- 備考:職員人件費は対象外。開業前・準備段階でも申請可能
3.医療DX人材育成支援事業
- 対象:東京都内の医科診療所・病院
- 補助率・上限:10/10(全額補助)、上限500千円
- 用途:スタッフのIT研修費、資格取得費、代替職員人件費
- 公募予定:2025年夏以降
- 備考:事務長・看護師などスタッフの育成にも活用可能
4.電子処方箋活用・普及促進事業
- 対象:東京都内の保険医療機関(医科診療所・病院)
- 補助率・上限:1/4(国のICT基金補助後に都が追加助成)、補助上限135千円
- 用途:電子処方箋導入・レセコン/カルテの改修、導入指導料
- 公募予定:2025年10月~12月
- 備考:542千円は対象経費の上限。補助金額はその1/4が実際の上限(135千円)。国補助申請(ICT基金)を事前に行っておく必要あり
5.地域医療連携システム整備推進事業
- 対象:東京都内の医科診療所・病院(医療ネットワーク加入検討者)
- 補助率・上限:3/4、上限2,000万円(病床規模に応じて変動)
- 用途:連携用サーバー整備、ネットワーク構築、セキュリティ、HPKI対応
- 申請締切:2025年6月30日(月)
- 備考:東京総合医療ネットワーク等への接続が想定される
IT導入補助金との併用はできる?
これら東京都の補助金事業は、いずれも原則として他の補助制度(例:国のIT導入補助金)と併用不可とされています。重複による二重補助の回避が理由です。
ただし、電子処方箋に関する事業は国のICT基金との連動前提で設計されており、IT導入補助金と対象経費が被らなければ併用可能なケースもあります。
対象外に注意:病院専用制度も存在
名称が類似していても、診療所が利用できない補助金制度もあります。代表的なのが「病院診療情報デジタル推進事業」。こちらは病院のみ対象の制度です。
また、「医療サイバーセキュリティ対策支援」など、一部事業は診療所も対象ですが、補助要件や規模が異なるため、個別に確認が必要です。
東京都以外で使える制度はある?
東京都以外でも、医療DX推進を目的とした補助制度が一部の自治体(例:大阪府など)で実施されています。とはいえ、多くの地域では国の制度が中心です。
国の補助金例
- 医療提供体制設備整備交付金(電子カルテ情報共有サービス導入)
- 社保支払基金(ICT基金)による電子処方箋補助
- IT導入補助金(クラウド予約システム、業務管理ツールなど)
都外で開業する場合でも、自治体サイトや商工会議所、県医師会等で最新情報を確認して適切な補助金・助成金を受けられるようチェックしましょう。
まとめと今後のアクション
- 東京都の補助制度は、開業前・後を問わず診療所にとって非常に有利
- 導入支援・人材育成・ネットワーク・処方箋までフルスペックで対応可能
- 多くの補助金は2025年度前半〜中盤に公募期間が集中、スケジューリングが肝心
「電子カルテ導入検討」→「人材育成」→「地域連携」→「電子処方箋対応」というステップで段階的に制度活用を計画しましょう。
診療科・タイプ別電子カルテ比較記事リンク
参考サイト(公式)
- 東京都保健医療局「診療所診療情報デジタル推進事業」
- 東京都医療DX人材育成支援事業
- 東京都電子処方箋普及促進事業
- 社会保険診療報酬支払基金「ICT基金」
- 厚労省「電子カルテ情報共有サービス」
- IT導入補助金2025年度版(中小企業庁)
- 大阪府「電子処方箋導入支援事業」
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DOCWEB編集部(一般社団法人 DOC TOKYO)
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