患者の記憶に残るクリニックのコミュニケーション / メディカルコンソーシアムネットワークグループ 理事長 山田隆司

NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長、山田隆司様に患者から選ばれるクリニックのポイントについて伺いました。
山田様には、現在公開中の診療所マネジメントEXPOでもご講演いただいています。
※2022年11月1日にCPA EXPOは診療所マネジメントEXPOに名称を変更しました。

診療所マネジメントEXPO講演内容をお聞かせください

講演タイトル『患者から選ばれるクリニックのコミュニケーションを考える』
クリニックの広報においては、ただ宣伝をするだけではなく、患者にクリニックの記憶を定着させる必要があります。
人は、記憶の中からクリニックを選択し、その上でインターネット検索をして最終的に受診を決めるからです。また、記憶に残らなければ口コミを書いてくれることもありません。

つまり、患者を増やすためには記憶に残し、患者の行動変容を促すような広報設計が必要なのです。
そこで講演では、記憶に残るような広報設計を行う方法について詳しくお伝えできればと考えています。


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日本の医療について、どのようなビジョンを描いていらっしゃいますか

3~5年先の潜在患者の集客を見据える
私は1990年より、亀田総合病院附属幕張クリニックの準備室長を務め、2006年からは医療法人敬和会大分岡病院(現・社会医療法人)広報・マーケティング部を創設し部長・顧問として勤務してきました。
現在も、医療法人の広報顧問や広報室長として広報やマーケティングに関する仕事に携わっています。

その経験から言えば、クリニックなどの医療機関におけるブランディングや広報においては、もちろん地域や患者とのコミュニケーションも重要なのですが、それ以上に他のクリニックや急性期病院との地域連携が重要です。

また同地域の医療機関以外にも、自院を患者に知ってもらうための窓口となるような銀行・保険会社とも連携してコミュニティを形成し、短期的ではなく3~5年先の潜在患者の集客を意識して広報戦略を立てていくことが、これからのクリニック経営には求められていると考えています。

患者に選ばれるクリニックにはどんな特徴があるでしょうか

医師の診療姿勢やスタッフへの教育が重要
患者に選ばれるクリニックとそうでないクリニックの違いとして重要な点は、院長である医師の診療姿勢と、各スタッフの患者への対応です。

クリニックを受診した患者は医師の診療の丁寧さや情熱を肌で感じるため、医師の診療姿勢は良くも悪くもクリニックへの評価や口コミに直結してしまいます。
それを理解して、良い口コミや評価を得るような診察を心掛けることが集客のためには肝要です。

また患者が見ているのは診療姿勢だけではありません。
医師のスタッフに対する態度や対応も案外見られているため、そういった細部への配慮も欠かせません。

また、医師の対応がどんなに良くても、在籍するスタッフの接遇や対応に不満がある場合、患者のリピート率は低下し、良い口コミも書いてくれなくなります。
ですから、院長は、雇用するスタッフに対して十分な教育や経営理念の共有を行うことが重要です。

患者は、クリニックのエントランスから会計に至るまで、提供されるサービスやホスピタリティの満足度に応じてクリニックを評価しています。
こういった「クリニックが行うべき当然の努力」を怠ってしまうと、選ばれるクリニックになることは難しいです。
逆に、こういった努力を継続的に行っていけば、良い口コミが書かれて自然と新規の患者が増えていきます。

クリニック院長ができる広報とは、どんなものがありますか

記憶してもらえる広報設計を考える
クリニックの広報を考えた時、つい「どうしたら自分のクリニックのことを患者に伝えられるか」ということに囚われてしまい、発信する方法や手段ばかりを色々と考えてしまう院長が多いように感じます。
しかし、そこまで特別に構える必要はなく、重要なことは「どう記憶してもらえるか」です。

院長がどんなに自分のクリニックの情報を発信しても、患者が体調が悪くなった時、クリニックを記憶していなければ選択肢に上がることはありません。

また、集客にとって重要なことは、医師の技術や腕といった、評価が難しい面よりも、クリニックの清潔感や居心地の良さ、医師の診療姿勢やスタッフの対応、接遇などのサービスやホスピタリティの面で差別化を計ることです。

患者は、エモーショナルな部分で、クリニックを評価して選択します。
例えば、顧客が何か商品を買う時、多くの人はその企業のブランド力で商品を選びます。
クリニックも同様です。「新しくて綺麗」「内覧会で感じが良かった」など良いイメージを作り上げ、クリニックのブランド力を高めることで、初めてクリニックの記憶を患者に植え付けることが可能であり、そこまでしてようやく患者のクリニック選びの候補に上がるのです。

人間は、記憶して初めて行動に起こすというプロセスを辿ります。
記憶に残らなければ、受診もしないし、再診もしないし、良い口コミも書いてくれないのです。

こういった広報設計を行うには、案外ちょっとした気配りや変化を付けることで簡単かつ迅速に実践可能です。

プロフィール


NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ
理事長
山田隆司氏

東京医学技術専門学校(臨床検査)を卒業後、1990年から亀田総合病院に入職し、附属幕張クリニックの開院に向けて準備室長、事務長を歴任しました。
その際、千葉事業部管理部長、関連の会員制医療クラブ本部長なども兼任し16年間務め上げました。

そこで得た病院経営、特に広報やマーケティングにおける知見をもとに、2006年より、医療法人敬和会大分岡病院(現・社会医療法人)広報・マーケティング部を創設し部長・顧問として2015年まで勤務致しました。

その後、東京に戻り、NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループを立ち上げ、現在は全国病院広報実務者会議、病院広報誌編集会議などを主催し、病院における広報活動についての講演などを行なっています。
また、多摩大学医療・介護ソリューション研究所フェローや、DPCマネジメント研究会の理事も担当しています。医療リスク広報、心理学・脳科学と広報などの講演も行っています。