アフターコロナのクリニック経営#9

#9 クリニックの経営データは課題早期発見ツール

Q .クリニックの経営データは決算書だけ見ていれば良いでしょうか?

A .決算書は結果はわかりますが原因を追求することはできません。決算書以外の経営データを継続的に取るようにしましょう。

クリニックの決算書は大変重要なものです。
経営者である院長先生にとっては経営の状態を正確に把握し、課題を見つけ、対策を打つために欠かせない経営の羅針盤のようなものです。
医療の世界で言えば健康診断の結果表のようなものだと考えてください。

健康診断の結果に問題がある場合にはすぐに治療をしたり、再検査をするなど対策を打つことになります。
病気の早期発見・早期治療をするということです。
クリニックの経営でも課題の早期発見・早期治療が必要です。そのためには月次決算書の確認が欠かせませんが、そのデータだけで課題の原因を探るには限界があります。決算書には結果は表されていますが、その原因が全て書かれているわけではないのです。原因がわからなければ課題に対して適切な対策をすぐに打つことができず経営状態が悪化することになりかねません。

クリニックの利益が下がっているという具体的な状況で考えてみましょう。
利益が下がる原因は大きく二つあります。

経費が上がるか売上が下がるかです。

1.経費が上がっている場合

経費が上がっている原因はすぐにわかります。損益計算書の経費の内訳を見れば良いのです。
これまでと比べて経費が上がっている科目があればさらにその内訳をチェックすれば原因を突き止めることができます。そして、それが無駄なものであればすぐに削減すれば良いのです。

2.売上が下がった場合

厄介なのは売上が下がった時です。
売上が下がった原因は損益計算書を見てもわからないのです。売上の内訳見ても、社保売上、国保売上、自費売上などと分かれているだけですので、なぜそれが下がったのかは推測するしかありません。
推測では適切な対策を打つことは困難ですので、課題の原因を探究するためには決算書以外の経営データを取る必要があるのです。

ではどのようなデータを取れば良いのでしょうか。
売上が下がった原因は大きく二つあります。

患者数が下がったか診療単価が下がったかです。

この二つの原因を探究するためのデータを取っていく必要があるのです。
私のクライアントでは毎月様々な経営データを取り、それを時系列にまとめています。そして毎月の経営会議でそれを確認しながら課題を見つけ対応しています。
その表の項目は具体的には以下のようなものです。
(クリニックによって項目には違いがありますのであくまでも参考だと考えてください)

・総売上とその内訳(社保、国保、自費、診療科目別、医師別、診療内容など)
・診療日数
・レセプト枚数
・総患者数とその項目別内訳
・新規患者数とその項目別内訳
・新規患者の受診のキッカケ(看板、ホームページ、友人・知人の紹介、他医療機関の紹介、通りがかり、ミニコミ誌、行政の紹介など)
・種類別検査実施数
・ホームページのアクセス数(総数、ページ別)
など

これらのデータがあれば、1日あたりの患者数・売上、診療単価やレセプト単価、新規患者がどのようなルートで受診しているのかなど様々なデータの推移を見ることができます。
これが利益が増減した時の原因究明に大いに役立つのです。

利益が下がった原因が売上が下がったケースで考えてみましょう。
売上が下がったのは患者数が減ったのか、診療単価が下がったのか、あるいは両方なのかをチェックします。
患者数が減った場合は新規患者数が減ったのか再診患者数が減ったのかをチェックします。
新規患者数が減った時にはどのルートで受診した患者数が減ったのかをチェックします。
ホームページを見て受診した患者が減った場合はアクセス数(ページ別も含めて)を確認します。よく見られているページがあれば内容を確認して受診する可能性のある患者さんに役立つ情報を積極的に発信し、新規患者の受診を促進します。
その他にも様々な原因が考えられますが、上記のようにデータを元に対応をすると、推測や闇雲に対策を打つよりも効率的に成果が出る可能性が高くなります。

今回は患者数が下がったケースでお伝えしましたが、診療単価の推移をチェックすることも大切です。
診療単価の減少がタイムリーに分かりそれに対応することで売上の減少を最小限に止めることができるからです。
クリニックの状況によって必要なデータは違ってきますので、自院に必要なデータは何か個別に考えていきましょう。

決算書以外の経営データを取る方法として、まず電子カルテなどのデータを活用する方法を検討しましょう。
最近の電子カルテはデータ分析の機能が充実してきていますが、それだけでは必要なデータを揃えることができない場合もあります。
例えば、新規患者の来院ルートやホームページのアクセス数などです。そのようなデータは様々な手段で入手する必要があります。
自院にはどのようなデータが必要なのかを考え、スタッフの力も借りながらしっかりデータを取り継続的に経営の状態をチェックし続け対策を打ち続けてください。

プロフィール

近藤隆二(こんどう りゅうじ)

1957年生まれ

医業経営コンサルタント

ファイナンシャルプランナー(CFP)

一般社団法人 医業経営研鑽会 副会長

https://www.doctor-dock.jp

これまでに200件以上のコンサルティングと、50院以上の顧問契約を締結。決めつけを嫌い、さまざまな状況に応じたフレキシブルなコンサルティングを行っている。

クリニック開業後に苦戦する事例を数多く目にしてきた経験から、よい経営の方法を知らない先生のために、セミナー・執筆活動やブログ、動画セミナー、メールマガジンなどを利用し積極的に情報を発信。

院長先生をはじめスタッフも患者さんも幸せになれる、良いクリニックづくりを陰から支えていくことが役割であり使命。

「人が自分らしく自分の人生を生きる」 ことを実現させる手段として、開院を希望するドクター、開業医のための「クリニック経営講座(動画)」を配信中。

 

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