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DOCWEB『院長が悩んだら聴くラジオ』この番組は開業医の皆さんが毎日機嫌よく過ごすための秘訣を語っていく番組です。 通勤時間や昼休みにゆるっとお聞きいただけると嬉しいです。
(高山)おはようございます。パーソナリティのDOC WEB編集長、高山豊明です。
(大西)おはようございます。パーソナリティのMICTコンサルティング、大西大輔です。
(高山) 院長が悩んだら聞くラジオ第47回始まりました。大西さんよろしくお願いします。
(大西)よろしくお願いします。今日のテーマは何ですか?
今日のテーマ:在宅医療
(高山)今日のテーマは在宅医療です。
(大西)在宅医療。出来てからもう20年くらい経ちますよね。
介護保険が始まった2000年頃から在宅医療も発展してきたので、もう20年以上経っていることになります。
今まさに、やらなければいけないのか、それともやった方がいいのか、みたいな議論がされていますね。
(高山)やらないという選択肢もあるのか。
それでは、在宅医療について深掘りしていきましょう。
在宅医療の成り立ち
(高山)最近、在宅医療は標準的な医療の形になりつつあるように感じますが、今後はどうなっていくのでしょうか?
そもそも在宅医療の成り立ちとは、どのようなものだったのでしょうか?
(大西)在宅医療のきっかけは、介護保険の導入もそうですが、高度経済成長期に病院の数が急増したことが背景にあります。
ある時期から、病院を作りすぎたという認識が厚生労働省に生まれたんです。
そこで、病院の数を減らす必要が出てきた時に、その受け皿として在宅医療が必要とされてきました。
厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムの柱の一つは、「住み慣れた地域で、どのように過ごすか」ということです。
それも、病院ではなく自宅で、という考え方です。
当時、どこで最期を迎えたいかというアンケート調査では、ほとんどの人が「自宅」と回答したにも関わらず、実際は病院で亡くなる人が大多数でした。
この現状を覆したい、というのが在宅医療の基本的な理念です。病院は8400件ほどありますが、急性期病院やケアミックス病院など、ごちゃ混ぜになっている病院も多い。
老人病院は全て介護施設にしてしまえ、という流れの中で、在宅医療を誰が担うのかという問題が出てきました。
そこでまず誕生したのが在宅クリニックです。
在宅クリニックの課題
(大西)在宅クリニックは、現在1万8000件ほどあるそうですが。
それでも足りていないので、今度は病院にも在宅医療に協力してほしい、という状況になっています。
つまり、病院でありながら在宅医療も行う、という矛盾した状況です。
病院と在宅医療の両立の難しさ
(高山)本来、病院は入院する場所で、在宅医療は退院後のフォローをするものですよね。
それを病院が両方行うというのは、やはり矛盾が生じるのではないでしょうか。
(大西)そうですね。飲食業界で例えるなら、レストランでありながらデリバリーも行うようなものです。
レストランは、本来デリバリーをしたくないはずです。
コロナでやむを得ずデリバリーを始めたレストランもありますが、以前は高級レストランなどはウーバーイーツの依頼を断っていました。
冷めてしまったら美味しくないですからね。
しかし在宅医療を担う病院は、レストランとデリバリーピザ屋を兼業するようなものなので、難しいのです。
(高山)最近は、病院主体ではなく在宅専門クリニックが増えてきていますよね。
(大西)増えてはいますが、頭打ちの状態です。
診療報酬点数が頭打ちになっていること、そして厚生労働省は儲かり始めると支援をやめてしまう傾向があること、そして何より在宅医療は想像以上に難しい、ということが原因です。
若手医師と在宅医療
(高山)医療技術や経験が必要ということでしょうか?
(大西)そうです。30代の医師が開業する場合、在宅医療はハードルが高い。
様々な疾患を抱える患者さんを診ながら、治療方針を立てていくのは非常に難しい。
さらに、入院が必要な患者さんを病院に紹介し、退院後に再びサポートをするには、病院との良好な関係が不可欠ですが、若い医師にはなかなか人脈がないので難しい。
開業した時に、以前勤務していた病院と良好な関係を築いていれば、紹介状を出しやすいですが、関係が悪化すると紹介先がなくなってしまいます。
そうなると、開業できる場所も限られてしまいます。
落下傘的に在宅クリニックを開業しても、地域の病院と連携が取れなければ成り立ちません。
病院との連携の難しさ
(高山)病院側も、在宅医療の受け皿が必要なことは理解していると思うのですが。
(大西)そう上手くはいかないのが人間関係です。
例えば、若い医師が病院と連携を取りたくて連携室を訪ねたとします。「連携をお願いしたいのですが」と挨拶しても、「うちは既にA、B、Cと連携しているので、お断りします」と言われてしまう。これが現実です。
(高山)厳しいですね。門前払いですよね。
(大西)門前払いというか、最初は歓迎ムードでも、結局紹介状は出してくれないことが多い。
地域によっては、「連携室に所属しませんか?」と病院側から営業をかけてくるところもあります。
そういう病院は話を聞いてくれる可能性が高い。
逆に、間口を広げている病院は、自然と門戸が開かれた体制になっていくものです。
(高山)ある程度の規模になると、病院の態度も変わってくるということですね。
地域連携室の仕事は、本来、多くの医療機関と広く連携していくことだと思うのですが、担当者の感情的な部分が影響しているように感じます。
(大西)退院先の病院、施設、クリニックは、できるだけ多く確保する必要があるはずです。
「いつも同じところにばかり紹介しているな」と感じることがあります。
連携室の仕事をお手伝いしていると、「電話しやすいところにばかり連絡しているんだろうな」と思うこともあります。
(高山)そういうものなのですね。
(大西)紹介は貸し借りです。以前勤務していた病院と良好な関係を築いていれば、紹介しやすい。
しかし、落下傘のように地域に飛び込んで開業した場合は、そうした貸し借りがありません。
だから、1軒1軒地道に関係を築いていかないと、ネットワークは広がらないんです。
(高山)自分のクリニックを持って、患者さんも順調に増えて軌道に乗っているのに、わざわざ在宅医療まで展開するのは大変そうですね。
(大西)そうなんです。多くの先生は、自分の患者が高齢化して、「先生、在宅医療もやってほしい」と頼まれて、在宅医療を始めるんです。
どれだけ人間関係を築けているかで、うまくいくかどうかが決まります。
(高山)高齢の先生も多いので、体力的に大変ですよね。
(大西)本当にそうです。私も50歳を過ぎて、体力的にきつくなってきました。以前は出張も楽勝でしたが、最近は大変だと感じるようになりました。
(高山)やはり、始めるなら早い方がいいということですね。
(大西)在宅医療専門ではなく、長く続けるつもりなら、40代のうちに始めるのがおすすめです。
人間関係を築くのは大変ですから。
(高山)40代、50代で一緒に働いてきた仲間と、60歳を過ぎてから新しく入ってきた人とでは、どうしても気を遣いますよね。
(大西)病院の先生の方が若い場合も多いですし。
同年代の医師との関係は、特に重要だと思います。
ベテランの医師が入ってくると、「おお、来たね」と少し身構えてしまうこともあるでしょう。
「先生、何の専門なんですか?」と尋ねられて、「在宅医療です」と答えると、「大変ですね。もう歳ですし…」と同情されてしまうかもしれません。それではうまくいきません。
60歳以上で在宅医療を始める医師へのアドバイス
(高山)60歳を過ぎてから在宅医療に挑戦する医師へのアドバイスはありますか?
(大西)まず、仲間作りは楽しいものだと考えてほしい。
在宅クリニックを開業するなら、「これから開業するので、ぜひ連携をお願いします」と、地域の医療機関に挨拶回りをしてください。
きっと楽しいはずです。
私がメディプラザを立ち上げたときは、電子カルテメーカーとのつながりは全くありませんでした。
そこで、1社ずつ「電子カルテの展示会に出店してくれませんか?」とお願いして回りました。最初の28社を集めるのに半年かかりました。
「初めまして。電子カルテの展示会を企画しているのですが…」と言っても、怪しまれるだけでしたから。
(高山)日本で初めてでしたからね。
(大西)2001年当時は前例がなかったんです。
在宅医療も同じです。
地域の医療機関を訪問し、関係を築くことが重要です。
開業医の先生は、病院や診療所への挨拶回りを苦手に思う方が多いようですが、「大西さん、行っておいて」と頼まれるから仕方なくやっているのでしょう。
お菓子を持って挨拶に行き、「今度、○○クリニックを開院します。うちはこういう医療が得意なので、連携をお願いします」と、積極的にアピールすることが大切です。
経験を活かす
(大西)在宅医療は、年齢を重ねた医師の経験が活かせる分野です。
60歳で定年退職後に開業した先生と話したのですが、「老後の楽しみで医療を続けたい」という先生と、「第二の人生をスタートさせたい」という先生がいました。
後者の先生は、「これまでは自分のやりたい医療ができなかった。これからは、得意分野である皮膚科の知識を活かして、アトピーや手足のトラブルで困っている患者さんと向き合いたい」と話していました。
在宅医療でも同じです。年齢を重ねたからこその経験を活かせるはずです。「在宅医療の医師だけど、心臓が専門です」「消化器が得意です」と言って、専門性を打ち出していくのも良いでしょう。
「消化器の検査が必要なら、私が行きますよ」と言えば、在宅医療のフォローアップも依頼してもらえるかもしれません。「置きに行く」ことができれば、関係を築くことができるんです。
ITへの投資
(高山)在宅医療が増えている中で、得意分野を特化していく、細分化していくというのは重要ですね。
在宅医療の先生は、コミュニケーション能力も高いですね。
(大西)在宅医療の先生は、患者さんと話すのが好きなのかもしれませんね。それも得意分野と言えるでしょう。
私たちは、先生方が患者さんと何を話しているのか、よく分かりません
。中には話す気力のない患者さんもいるのに、先生方は上手に患者さんとコミュニケーションを取り、患者さんを喜ばせています。
在宅医療の先生は、患者さんから「また来てくれた」と喜ばれるそうです。
患者さんは、先生を町で待ちわびているそうです。
「先生にこんな話をしたい」と。もちろん、「大丈夫、大丈夫」と言う患者さんもいますが、そういう患者さんには「大丈夫じゃないから、私が来たんだ」と方言を交えて話しかける。
大丈夫な患者さんは呼ばれないんです。「大丈夫じゃないから見ているんだ」と。
そして「今日は元気そうだね。また来週来るね」と帰って来られる。これは素晴らしい医療だと思います。
在宅医療は、患者さんが生きているか、亡くなっているかを確認する「見回り」です。
患者さんから「生きてるよ」と言われると、ドキッとするそうです。
一方で、ご家族が色々話してくれることもあるので、やはりコミュニケーション能力は重要です。
まとめ
(大西)まとめると、在宅医療で成功するには、仲間作りが大切です。
自分の経験を活かし、コミュニケーション能力を磨くことが重要です。
在宅医療の開業資金は、建物を建てたり医療機器を購入する必要がないので、比較的少なくて済みます。
では何に投資すべきか?それはITです。
電子カルテ、SNSによる連携システム、在宅で使えるエコーなど、ITへの投資は惜しまないでください。
在宅医療では、連携先とのコミュニケーション方法を、開業当初から決めておくことが重要です。
電話やFAXでのやり取りは負担が大きいので、メールやLINEなどを活用しましょう。
在宅クリニックは、IT化を進めることが重要です。連携病院も、それに合わせてIT化を進める必要があります。
若い先生なら、訪問看護ステーションに指導することも仕事の一つになるでしょう。
何も買わないなら、システムに投資してください。
全てはやってみなければ分かりませんが、大切なのはチャレンジ精神です。
(高山)大西さん、今回もありがとうございました。
(大西)ありがとうございました。
(高山)院長が悩んだら聞くラジオ 今回もお聞きいただきましてありがとうございました。
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この番組は毎週月曜日の朝5時に配信予定です。それではまたポッドキャストでお会いしましょう。さよなら。
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